映画:『フリークスアウト』あらすじ・感想!マイノリティの葛藤を敵味方問わず描いたファンタジー戦争アクション

(C)2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A.

(C)2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A. フリークスアウト

ナチス・ドイツ軍と異能力者による激しい戦いを描いた映画『フリークスアウト』が5月12日(金)より公開されます。

これまで多くのナチス・ドイツにまつわる映画が制作される中、本作はイタリアの監督による“異能力バトル映画“として制作されていました。

ポイント
・『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の監督最新作
・マイノリティたちの活躍を描く
・ファンタジー×ド派手なアクションが見どころ

異能力や特殊な世界観はもちろん、戦争映画ならではのハードなアクションも詰まった異色作となっています。

それでは『フリークスアウト』をネタバレなしでレビューします。

『フリークスアウト』あらすじ【ネタバレなし】


異能力者だけのサーカス団

第二次世界大戦下のイタリア。「メッツァ・ピオッタ」はユダヤ人の団長イスラエルが率いる5人の小さなサーカス団である。

メンバーは異能力の持ち主であり、触れたものに電気を通す少女マティルデ、虫を自由に操れるアルビノのチェンチオ、多毛症の怪力男フルヴィオ、全身磁石の道化師マリオが、その能力で観客を楽しませていた。

彼らは家族のように共に暮らしているが、異能力のせいで普通に暮らすことができずにいた。

ある日、「メッツァ・ピオッタ」が観客を盛り上げていると、そこにナチス・ドイツ軍の空襲が起こる。客の大勢が死んでしまうなか、「メッツァ・ピオッタ」は何とか戦火を生き延びる。

空襲を生き残った「メッツァ・ピオッタ」はイタリアから逃がれるために、イスラエルの提案でアメリカへ脱出しようとする。しかしイスラエルはマティルデたち4人から預かった移動資金を持ったまま姿を消してしまう。

ナチス・ドイツのサーカス団に隠された恐ろしい秘密

イスラエルがカネをもって逃げたと思ったマティルデ以外の3人は、仕事を求めてナチス・ドイツの広告塔である「ベルリン・サーカス」へ入団しようとする。

しかし、マティルデだけはイスラエルの身に何かがあったと信じ、独りでイスラエルを探し出すと決意する。

「ベルリン・サーカス」はド派手なパフォーマンスで知られており、チェンチオたちのような特殊な力をもつ人たちを集めていた。

それは団長であるフランツの計画であり、彼はサーカスを利用して異能力者を集めて人体実験を繰り返していた。

ナチス・ドイツを勝利に導くために凶行を続けるフランク。彼との出会いはマティルデたち4人をナチス・ドイツ軍との激しい戦いへと巻き込んでいく…。

『フリークスアウト』感想

(C)2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A. フリークスアウト

(C)2020 Goon Films S.r.l. – Lucky Red S.r.l. – Gapbusters S.A.

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の監督最新作

『フリークスアウト』は『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(15)の監督ガブリエーレ・マイネッティの最新作です。

こちらはイタリア映画としては異色のダークヒーローものであり、本国のアカデミー賞(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞)にて、7冠の受賞を成し遂げています。日本の原作アニメを大胆に取り入れたことで、日本でも大きな話題を集めました。

『フリークスアウト』と『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』はジャンルは違えど、監督ならではの共通点があります。

『フリークスアウト』の大きなポイントは異能力者によるファンタジー×ド派手なアクションです。人々への見世物として生計を立てていた4人が、計らずしもヒーローのような活躍を見せていく痛快なストーリーが見どころのひとつです。

一方で、日本で「鋼鉄ジーク」といえば、永井豪原作によるアニメとして75年に放送され、イタリアでも79年に放送された作品です。

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は主人公がひょんなことから超人的なパワーを得ますが、自分を「鋼鉄ジーク」の主人公に重ねることで、私利私欲のためから正義に目覚めていく姿を描いたダークヒーロー映画となっています。

両作品とも、計らずしも超人的な能力を得ていること、そしてその使い道が最初は「正義」や「他人を守る」ために使われていないことが印象的です。

また、社会と馴染むことができず苦労をしている様子も共通点であり、『フリークスアウト』では、さらに戦争という過酷な時代をマイノリティとして生きる大変さも描かれていました。

ナチス映画は史実に基づく場合はシリアスな作品が多く、フィクションとして描く場合は振り切ったコメディが目立ちますが。

しかし『フリークスアウト』はそのどちらでもなく、ファンタジーとしての面白さと、戦争の過酷さ、マイノリティの描き方が印象的な作品でした。

マイノリティたちの活躍を描く

タイトルにある「フリークス」は特殊な容姿や行動を見世物とする見世物小屋「フリークショー(Freak show)」から来ていると考えられます。

「異能力」と言うと聞こえがいいかもしれませんが、電気を操るマティルデはその能力から人と触れ合うと感電させてしまうし、怪力男のフルヴィオは多毛症のため、サーカス以外の仕事に就くことができないと嘆く場面がありました。

作中では4人以外にも異能力者や見た目が特殊な人間が存在しており、「フリークス」というよりは「マイノリティ」に近い描き方がされていると感じました。

異能力者ゆえに普通の生活もままならない4人が、イスラエルを探すためにナチス・ドイツと闘う場面は、迫力があると同時にマイノリティとなった彼らが力強く前進しているようにも見えてとてもよかったです。

また、マイノリティとして活躍するのは4人だけではありません。

4人が出会う人々には、戦争で体が不自由になった人々で結成された、ナチス・ドイツに対抗する組織も登場します。また、敵にもマイノリティとして葛藤を抱く人物がいるなど、敵味方問わないマイノリティの描き方も注目してほしい作品です。

ファンタジー×ド派手なアクションがみどころ

本作はアクション要素も見どころのひとつであり、歴史・戦争映画でありながら「異能力」による演出はファンタジー映画に近いものを感じさせます。どこかおとぎ話のように思える演出やサントラも、その理由のひとつです。

ナチス・ドイツがテーマの映画と聞くと、どうしても史実の関係から重い映画を創造してしまうかも知れませんが、本作は割と痛快なアクションとなっていました。

作中ではサーカス団の4人を「ファンタスティック・フォー(驚異の4人組)」と表現するシーンがあり、アメコミのようなヒーローものにも近いかもしれません、

一方で、戦争ならではの銃火器によるアクションもしっかり描いており、マシンガン、戦車、狙撃手など、戦争アクションにはおなじみの演出が詰まっています。特に最後に繰り広げられる戦いはかなりカオスですごかったです…!

『フリークスアウト』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・監督の前作との共通点であるヒーローもの要素アリ
・敵味方問わず描かれるマイノリティの葛藤
・異能力×戦争アクションは必見!

以上、ここまで『フリークスアウト』をレビューしてきました。

本作の上映時間は141分。やや長いのが気になりますが、異色のジャンルを掛け合わせたことで「ナチスドイツ映画」にまた新しい作風を生み出しました。

「もうナチスドイツものはお腹いっぱい…」という方もぜひ見て欲しい作品です!

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