デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、メリッサ・レオなどの名優が数多く出演している映画『フライト』。
日本での予告編では”航空サスペンス”として宣伝されていましたが、実際の本編はアルコール依存症の主人公を描くヒューマンドラマに近いという印象を受けました。
- 英雄とも悪者とも取れない機長ウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)。
- ウィップが変化していく過程が、まるで自分のことかの様に訴えかけてくる。
- ただの飛行機事故を取り扱ったサスペンス映画ではない、れっきとした名作!
それではさっそく『フライト』の作品情報・あらすじ・ネタバレ感想を書いていきたいと思います。
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目次
『フライト』作品情報
作品名 | フライト |
公開日 | 2013年3月1日 |
上映時間 | 139分 |
監督 | ロバート・ゼメキス |
脚本 | ジョン・ゲイティンズ |
出演者 | デンゼル・ワシントン ケリー・ライリー ブルース・グリーンウッド ドン・チードル ジョン・グッドマン メリッサ・レオ ジェームズ・バッジ・デール |
音楽 | アラン・シルヴェストリ |
【ネタバレ】『フライト』あらすじ・感想
何が起こるかわからない展開!
とにかく見ていて、次にどういう展開になっていくのかがまったく見えてきません!
それゆえ、ずっとワクワクして見ていることができます。
まず物語の大枠である「主人公のウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)が英雄なのか犯罪者なのか?」という答えが、本当に曖昧なまま進んでいきます。
ここがはっきりしてくれると、私としても安心して見ることができるんですけど、決して安心させてくれないんです(笑)
それは「ウィップが他の誰にもできない飛行方法で大勢の命を救ったのに、飲酒業務がバレてしまって有罪になるかもしれない」という内容的な話だけに留まらず、ウィップの言動や性格自体が「英雄なのか犯罪者なのか」見ていて判断しきれないんです。
まるでカリスマのような振る舞いをしたかと思ったら、見ているこっちがため息をついちゃうようなどうしようもないことをしたりする。
しかもそういう大枠だけじゃなく、細かい場面場面を見ても、次の場面で一体どうなるのかすら読めません。
深刻な流れかな?と思って見ていたら突然軽いタッチの雰囲気に変わったり、楽しい感じだったのに突然深刻ムードになったり…良い意味で次々と期待を裏切ってきます。
ちなみに、この雰囲気を変えるのに一役買ってるのが、ジョン・グッドマンが演じるハーリン・メイズですね。
この「先がまったく見えない感じ」が、最初はなんとなく不安というか心地悪いのですが、慣れてくると逆に楽しくなってきます。
「アルコール中毒からの更生」という題材としては敬遠しがちな物だけど、すごくリズム感が良くて最後まで楽しく見ることができます。
訴えかけてくるストーリー
本作『フライト』という映画は、飛行機がメインの映画ではありません。
タイトルや予告編から、どうしても飛行機やパイロットの話なのかな?と思ってしまうのですが、実際はひとりの男が自分や人生と向き合い変化していくヒューマンドラマです。
飛行機や事故は、主人公ウィップが自分自身や人生と向き合うための「きっかけ」に過ぎず、そのあとの出来事や周りの人々との触れ合いの中で変わっていく物語です。
そして、それらが強く訴えかけてきます。
「あなたは、どうですか?」と。
パイロットとしてのその圧倒的な才能や実績、肩書きで、周りの人々は基本的にはウィップに対して協力的でいつも助けてくれます。
しかし、アルコール依存時のウィップのこういう人たちへの態度は、決して感謝や配慮に満ちている素晴らしいものとは言えません。
もちろんそんなウィップに呆れて、家族を含め離れていく人も出てきます。
ウィップは、物語の最後の最後までアルコール依存から抜け出せず、周りの人に迷惑をかけ続けます。
この時に流れてる音楽が「悪魔を憐れむ歌」なのは、細かい一芸で曲名を知ってると笑えますね。
そんなウィップが裁判で、最後にたったひとつの嘘をつけないことで人生は一変します。
その嘘とは、機内から消えた酒ビンを業務中に飲んだのは「かつての恋人だ」と証言すること。
ウィップはこの嘘が言えず、自ら有罪を選びます。
ウィップが我に返る感動的な場面です。
そして自分を取り戻し、家族を含めた大切なものを取り戻していったことは、部屋の壁に飾ってある写真が証明しています。
大勢の命を救った凄腕の機長ウィップよりも、アルコール依存を認め刑務所に入っているウィップの方が、大切なものに囲まれているというのは皮肉でもあり、観ている人に対する強いメッセージでもあります。
大切なものを無下にしてしまう状態をアルコール依存症という形で表現し、そこからの再生というストーリーは、私たち観客が無関係な話ではなく、油断すると同じことをやってしまっているのではないか?という示唆を与えてくれるのです。
散りばめられた伏線とメッセージたち。
ウィップが変わっていく過程には、たくさんの伏線やメッセージが散りばめられていて、それらはそのまま私たちへのメッセージにもなっています。
まずは事故で大怪我を負ったクリスチャンの副機長が言った言葉。
「事故は悲劇であり祝福でもある。」
宗教に偏屈なウィップの心には届いておらず、むしろ不利な証言が出ないことに安心すらしているのが想像つきます。
しかし、結果として事故を通して自分と大切な人を取り戻すことになるので、まさに悲劇が素晴らしい変化をもたらしてくれています。
まるで悲劇にしか見えないことも、しっかり向き合うことで良い変化のきかっけになっていく。
次に、息子に言われる「何者なの?」という質問。
映画の途中で自宅を訪れたときと、有罪判定になった後のウィップにこの質問は投げかけれらます。
自分と向き合うことが求められるこの質問に、肩書き(機長)を持っていたウィップは答えようともしませんが、嘘をつくのをやめた後のウィップは微笑んで「良い質問だ」と言います。
自分を偽って生きていると、たとえ立派な肩書きを持っていようとも自分がわからなくなる。
ここでも大切なことを伝えてくれています。
それから、ニコール(ケリー・ライリー)に誘われて参加する、アルコール依存症の集会でのスピーチ内容。
自分がアルコール依存症であることを確認し、嘘で人生を固めていることを認識することで、本当の自分を自覚する。
壇上の男がこう話しているのを聞いて、ウィップは耐えられずその場を立ち去ります。
おそらく、すべてが自分にも当てはまるからでしょう。
そして最後は、映画ラストでウィップの刑務所内の部屋にあるメッセージ。
変えらえないものを、受け入れる心。
変えらえるものを、変える勇気。
ウィップで言えば、
- アル中や有罪であることは変えられず、それを受け入れること。
- そして嘘をついたり自分をごまかすことをやめる、自分を変えていくこと。
ウィップには、嘘をつくことでアル中や有罪にならずに済む道も用意されていました。
しかし、それらを受け入れ、勇気も持って変化することで、大切なものを取り戻したのです。
まさに、この物語のすべてといっても過言ではないメッセージです。
『フライト』まとめ
6.何度も見た映画
「フライト」
飛行機事故のパイロットのお話。圧巻の最初の30分事故シーンは何度も見返してしまうリアル。ドラッグやアルコホリックの話なので、決して人に勧める綺麗な映画じゃないけど、自分の心に残ってる。「こちらSOUTHJET227、垂直制御を完全に失った…これより背面飛行する」 pic.twitter.com/2wS8vm9nzx— あお。〈イカムスメ〉 (@blue_na_ringo) 2019年3月2日
「アルコール依存症からの再生」という重苦しいストーリーですが、テンポよく楽しく最後まで観ることができます。
そして、その物語は、人生で大切なことを示してくれていて、観終わった後はどこか心が温まる映画でした。
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