『フラットライナーズ』は、自らの身体を実験に使って「死後の世界」の体験に臨んだ医大生たちを描いたエリオット・ペイジ主演作品。
心臓をとめて、蘇生するその危険な実験で、医大生たちがそれぞれに、未知なる世界から持ち帰ってきたものとは?をサスペンスたっぷりに描いたスリラー。
1990年に制作されたスリラーで同名映画のリメイクでもあり、オリジナル作品へのオマージュで、キーファー・サザーランドが教授役でカメオ出演している心憎い演出もされております。
・臨死体験を続けるメンバー
・冴えているようにみえた脳
・良心の呵責と罪の意識
それでは『フラットライナーズ』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『フラットライナーズ』あらすじ・感想
禁断の実験
医大生のコートニー(エリオット・ペイジ)が興味を持つのは、死後の世界。
9年前に交通事故で妹のテッサ(マディソン・ブライジス)で失って以来、アフター・ライフ「死後の生」はあるのかを探求しています。
そんなコートニーはある日、同級生のソフィア(カーシー・クレモンズ)とジェイミー(ジェームズ・ノートン)に課外授業を口実に真夜中、災害用の使われていない病院の地下施設に呼び出し危険な実験の提案をします。
臨死状態のときに、身体が浮かぶ感覚や光が見える現象を科学的に検証したいと、自分を仮死状態にして、蘇生して欲しいとふたりに頼むコートニー。
臨死体験の間の脳は、すべてモニターして記録、死に瀕したときの脳がどう働いているのか興味をそそそられたジェイミーとソフィアは、コートニーが心停止状態を入るのを見守るのでした。
ところが、コートニーの蘇生にてこずるソフィーとジェイミー。同級生のレイ(ディエゴ・ルナ)とマーロー(ニーナ・ドブレフ)の助けを借り、やっとの思いでコートニーを死の淵から引き戻したのでした。
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臨死体験「フラットライナーズ」
自分の身体から抜け出た感覚に陥り、高い所から景色をみたという臨死体験をしたコートニー。
一時の「死」の間にモニターしていたコートニーの脳に古い記憶、情動的記憶を司る部位に活動があったのをみて、仲間たちはすっかり興奮します。
そして実験以来、脳が活性化されたように記憶がクリアになり、行動に明らかは変化が出て、すっきりとした表情をみせるコートニー。
そんなコートニーの様子に刺激されたジェイミーは、自分も臨死体験に挑みたいと言い出します。
臨死体験後に、勘が鋭くなり、病院での研修でも冴えた動きをするジェイミー。その様子を見たマーローとソフィアもまた、心肺停止状態を自分たちの手で作り出しては、蘇生する危険なコートニーの実験を続けるのでした。
レイだけただひとり、仲間の死さえ恐れない行動に懐疑的な視線を送るのでした。
コートニーの死
臨死体験をしてからというもの、むこうみずな行動をとるようになったコートニーと仲間たち。
そんな中、コートニーは9年前に交通事故で亡くなった妹の幻覚に悩まされるようになります。脳裏に埋もれていた事故の記憶が蘇り、罪の意識に苛むようになったコートニー。
「臨死体験の実験は、科学の探求のためでもなんでもなく、ただ妹が恋しかっただけ」と、仲間に動画を残し、悪夢にとらわれたまま錯乱状態で窓から転落、命を落としたのでした。
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良心の呵責
コートニーの死にショックを受けるジェイミー、ソフィア、マーローとレイ。ジェイミーは、赤ん坊の声を聞こえる幻聴を体験するようになり、幻覚にとらわれ怪我するほど。
ソフィアとマーローも、聞こえるはずない声に悩まされ、幻覚がみえるようになり、身辺では不審なことが起こるようになります。
そんな中、過去の過ちで、良心の呵責に感じていることが臨死体験によって増幅され、精神を追いつめる幻覚となってあらわれていることに気づいたソフィア。
ジェイミーは、高校生の時に妊娠をさせた恋人を見捨てたこと、ソフィアは、成績を争っていた同級生をSNSで写真を流し破滅させたことを告白し、ふたり自分勝手な行動で傷つけた相手に許しを求め、責任ある行動をとることで、うちなる恐怖からの解放をはかるのでした。
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罪と向き合うこと
ジェイミーとソフィアが、過去の過ちと向き合う中、マーローが胸の奥にしまっていたのは、病院での研修中の医療ミス。
誤った薬の処方で患者を死に追いやっただけでなく、そのミスを隠ぺいしたマーローの罪の意識は大きく、心を蝕んでゆきます。
自分を許せず理性を失い、暴走するマーローがたどりついたのは、フラットラインを体験した病院の地下室。
罪悪感から逃れるために、死を選んだマーローに、レイたちは再び蘇生を試みるのでした。そして生と死をさまよう中、マーローがたどりついたのはその罪と向き合い、自分を許し生きていくという選択だったのです。
『フラットライナーズ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『フラットライナーズ』をレビューしてきました。
・恐ろしい副作用
・心の奥底に潜んでいた罪の意識
・自分と向き合うことで前に進む
1990年に制作されたオリジナルから、プロットをそのままにリメイクされた『フラットライナーズ』。
オリジナル作品が面白かっただけに、本作『フラットライナーズ』にはパンチがきいていない印象を受けます。
死後の世界への探求が、意識の奥底に埋もれていた過去の悔恨、罪の意識が恐怖となってあらわれる物語。
臨死体験からの生還で行動が大胆になったように見えたのは束の間、自分自身で向き合うことをせず、封印してきた暗い過去を噴出させ幻覚をみる医大生たち。
エリオット・ペイジ演じるコートニーが、錯乱するほどの恐怖に陥り、あっけなく命を落としてしまうのは、意外な展開でした。
死してなお一瞬だけ、活動する脳に残る記憶、向き合わなければいけないのは己の心!と着眼点はユニークでしたが、後に残る臨死体験したメンバーたちフラットライナーズに迫る恐怖の描き方は、ツメが甘い!
強い印象を残すエリオット・ペイジが登場しなくなる中盤以降、主演は不在となり物語をひっぱる求心力が弱まります。
恐怖に苛む様子を演じるニーナ・ドブレフたちキャストの健闘空しく、どこか空回り。
キャストにも物語にも感情移入しきれず、クライマックスを迎えてしまうのが作品の減点ポイントだったでしょうか。
禁断の一線を越えたのに、バラバラとまとまりのないエピソードが連続して、軽いタッチのエンディングに着地。
ラストには、拍子抜けすらします。珠玉だった1990年オリジナル版からイメージの違う本作『フラットライナーズ』。ここまで新旧作品の印象が異なるとは!それでも、たまにはこういう作品を見るのもアリかなと思います。
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