1億部のベストセラーとなった官能恋愛小説を3部作に渡って実写映画化した『フィフティ・シェイズ』シリーズ。
日本でもR-15、R-18指定で公開されるなど、センセーショナルな内容が話題を集め、きわどい内容の作品にも関わらず、世界的なヒット作となりました。
今回は記念すべき第一作となった『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15)から、最終章『フィフティ・シェイズ・フリード』(18)までをまとめてレビューします!
・主演はリメイク版『サスペリア』(18)のダコタ・ジョンソンと『ベルファスト』(21)のジェイミー・ドーナン
・日本でもR15,18指定を受けたセンセーショナルな作品
目次
『フィフティ・シェイズ』シリーズの原作はイギリス発の官能小説
『フィフティ・シェイズ』シリーズの原作はイギリスの女性作家E・L・ジェイムズによる官能小説です。
当時は主婦が執筆した女性向け官能小説(マミーポルノ)と評され、アメリカでベストセラーとなりました。
実は『フィフティ・シェイズ』シリーズは、同じく映画化され話題となったステファニー・メイヤー著の『トワイライト』シリーズの二次創作(向こうではファン・フィクションと呼ばれる)として誕生しました。
そのため、最初から書籍が販売されていたわけではなく、最初はオンライン小説として発表され、話題を集めていきました。
2011年には書籍化され、2015年で売上部数が全世界において1億2500万部をこえるなど、大ヒット作品として現在まで知られています。
『フィフティ・シェイズ』シリーズのキャスト紹介
ここからは『フィフティ・シェイズ』シリーズに出演するメインキャストをご紹介します。
ダコタ・ジョンソン(アナスタシア・”アナ”・スティール役)
本作の主人公。当初は恋愛経験ゼロの女子大生でしたが、2作目では大手出版社に就職。さらには出世までとクリスチャンと出会ってから絵に描いたような成功を掴んでいます。
クリスチャンとサドマゾの関係を結ぼうとする一方で、歪んだ愛情表現しかできない彼を変えたいと努力しますが…?
ジェイミー・ドーナン(クリスチャン・グレイ役)
若手実業家であり大富豪。物語スタート時は27歳。金も地位もルックスも手にしているにも関わらず、女性関係の噂が全くない人物。たまたま学生新聞のインタビューで知り合ったアナに強く惹かれるが、彼には公にできない秘密がありました。
キム・ベイシンガー(エレーナ・リンカーン役)
クリスチャンのビジネスパートナーであり、過去に関係のあった女性。かなり歳が離れているが、実はクリスチャンとの間にある秘密があり…?
第一作『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』では名前だけ登場しますが、2作目『フィフティ・シェイズ・ダーカー』から本格参戦。
アナにクリスチャンとの関係を続ければ、いずれ不幸になると警鐘を鳴らす、謎多き女性として登場します。
ベラ・ヒースコート(レイラ・ウィリアムズ役)
第二作『フィフティ・シェイズ・ダーカー』から登場。クリスチャンの元恋人であると同時に、従属者としてズブズブの関係を持っていた。クリスチャンと別れたあとも、問題行動を繰り返しており、遂にアナもその標的になってしまう。
エリック・ジョンソン(ジャック・ハイド役)
第二作『フィフティ・シェイズ・ダーカー』から登場。アナが就職したら出版社の上司。イケメンで頼れるオーラもムンムンですが、実はとんでもない男で…?
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』あらすじ
恋愛経験ゼロの女子大生アナ(ダコタ・ジョンソン)は、学生新聞の取材で大企業のCEOクリスチャン・グレイにインタビューすることに。27歳にして億万長者となったクリスチャンだが、アナの純粋さに惹かれ、アプローチを仕掛けてくる。
次第にクリスチャンに惹かれるアナだったが、クリスチャンと付き合うには様々なルールや秘密保持が交わされる。しかし本当にクリスチャンが秘密にしたいことは、これまでの女性とサドマゾの関係でしか関わることができない、ということだった。それを知ったアナの行動とは…?
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』【ネタバレあり】感想
イケメンは何を買っても許される?
出会いのきっかけはアナがルームメイトに代わって若手実業家のクリスチャンに取材したことから。
この質疑応答の段階から、だいぶクリスチャンの匂わせな回答があり、やれ「支配欲が大事」とか、趣味は「肉体を使うこと(意味深)」と答えています…。今の時代ならコンプラ違反スレスレのやりとりです。
よくネット広告とかでは「地味なヒロインがめちゃくちゃイケメンとお近づきに…///」みたいな内容のマンガが流れてきますが、本作のヒロイン・アナはバイト先が金物屋というくらいには地味なヒロインです。恋愛経験もありません。
当然(?)アナに興味を持ったクリスチャンはバイト先の金物屋までやってきますが、その時の買い物リストが…。
・結束バンド
・ロープ
・テープ
人でも誘拐するのかな?こんなのイケメン実業家じゃなければ通報されるレベルですが、クリスチャンの堂々とSMで使うであろう道具を買っていくシーンはかなりシュールでした。
雇用契約書並みに細かいSM契約書
本作で描かれるサドマゾの関係は、あくまでお互いが楽しむことを前提としています。そのため、プレイ中に問題が起きないよう、こと細かい「契約書」をクリスチャンが用意し、それに対してアナがあれこれ訂正を要求する交渉の場が設けられます。
ただクリスチャンも「めちゃくちゃにしてやるぜ!」みたいな感じではなく、アナの交渉に適宜応じたり、あくまでアナにサドマゾでしか得られない快楽を知ってほしい様子が見て取れました。SMを極めたものは一周回ってみんな紳士・淑女なのかもしれない…。
プレイとしては目隠しとかスパンキング、手錠の拘束ぐらいという、割とよく知るSMの内容に終始していました。
ちなみにクリスチャンが目覚めたきっかけは、当時親しかった女性がサドで、クリスチャンはマゾ側で経験したから。
マゾ側の快楽も知っているからこそ、あれだけ堂々のアナに快楽を与えられると自信満々なのか…?ある意味最強のサディストなのかもしれません…。
『フィフティ・シェイズ・ダーカー』あらすじ
前作のラストではクリスチャンの歪んだ愛情表現を受け入れられずに、彼の元を飛び出していったアナですが、クリスチャンはこれまで付き合ってきた女性にはない魅力をアナから感じていました。
大学を卒業したアナに、クリスチャンはめげずにアプローチをしてきます。アナもクリスチャンのことはずっと気にかけており、再び交際するにあたって、アナはある条件をクリスチャンに要求します。
一方、社会人となったアナの前に現れたのはクリスチャンだけではありませんでした…。
『フィフティ・シェイズ・オブ・ダーカー』感想【ネタバレあり】
アナに襲いかかる3人の刺客!
2作目『フィフティ・シェイズ・オブ・ダーカー』では、グレイのアナに対する溢れ出る金持ちならではの愛情表現がみどころですが、ほとんどメンヘラと紙一重な表現で攻めまくります。口座を勝手に調べて金を振り込んだり、アナの勤め先を買収してポストを与えたり…。
もちろん、アッチの方もかなり奔放になっており、やたら人が集まる場所でパンティを脱げと命令したり、変なビーズ?をあそこに入れさせて、そのまま仮面舞踏に連れて行くなど、文字通りヤリたい放題でした。
これではクリスチャン一強の世界で面白くもなんともありません。そこに3人の刺客が現れます。
・上司ジャック(セクハラ)
・クリスチャンの元カノ(メンヘラ)
・全ての元凶、エレナ(クリスチャンをSMに引き込んだ張本人)
ただこの刺客、牙を剥く相手はクリスチャンではなくアナです。いけない愛ほど高い障壁があるといいますが、アナに立ち塞がる3つの障壁のうち、2つはコンプラ違反と傷害未遂という。
もはやセンセーショナルでもなんでもない、ただひたすら迷惑な連中たち…。
お金持ちだけどある事は0円!?
本作の最大の見どころはSMとしての契約を超えた愛、つまり2人の結婚までを描いている点です。ひとつ気になったのは、クリスチャンが寝言のふりをしてアナにプロポーズをしていた点です。
…大富豪なのに、プロポーズにかけた費用0円!?!
筆者の知り合いには「ヘリをレンタルしてプロポーズした」「船上でプロポーズした」など、特別な空間を出すために費用を費やした人を何人も見てきました。
しかしあろうことか、欲しいものはなんでも金で手に入れる男はベッドの中で、寝言がどうかもよくわからんテンションで結婚してほしいと言っていました。いいの?金持ちならそんな感じのプロポーズでもいいものなの??
ただ改めてちゃんと渡した婚約指輪のダイヤがエグいほどデカくて気を失いそうになりました。お見それいたしました…。
『フィフティ・シェイズ・フリード』あらすじ
前作でクリスチャンがアナにプロポーズし、今作で晴れて夫婦となったふたり。悠々自適なハネムーン、仕事も順調なアナは、セクハラ上司、クリスチャンの過去の女たちなど、さまざまな困難を乗り越えてきました。しなしただひとり、ジャックだけは復讐を諦めていませんでした。
さらにアナとクリスチャンの間に起きたある出来事をきっかけに、2人の意見が分かれて衝突してしまう。果たしてふたりは夫婦として本当の幸せをつかみ取れるのか!?
『フィフティ・シェイズ・フリード』感想【ネタバレあり】
あらゆるジャンルが入り乱れる最終章
これまであくまでラブロマンスものとして制作されてきた『フィフティ・シェイズ』シリーズですが、最終章ではカーアクションからサスペンスな展開まで、いろいろなジャンルがてんこ盛りです。
正直、最初の大きなテーマであった2人のサドマゾの関係はどんどん薄くなっているような…。
最後にアナとクリスチャンの前に立ちはだかるのは、2作目『フィフティ・シェイズ・オブ・ダーカー』でアナにセクハラをして解雇されたジャック。
彼は解雇されたこととは別に、かつてクリスチャンと同じ家族の養子として引き取られていた過去がありました。クリスチャンが優秀な子どもだったことで、グレイ家として大きな資産を手に入れましたが、その恩恵に預かれなかったジャックは報復を考えたのです。
ジャックはクリスチャンの妹を誘拐するに飽き足らず、アナに身代金を持ってくるように脅します。果たしてアナとクリスチャンの運命は?…という、サドマゾの関係などまるで関係ないドラマが展開されるのが最終章です。
結局2人の関係はどうなったの?
1作目でサドマゾの関係を結び、2作目でプロポーズ、3作目ではアナがクリスチャンの子どもを身ごもります。
しかしクリスチャンにはまだ父親になる準備ができていない(というのはおそらく建前で、アナが赤ちゃんにかかりきりになって自分に振り向いてもらえなくなることを恐れている)と困惑してしまい、2人の間にわだかまりが生まれてしまいます。
ただ今回の事件を乗り越え、アナは無事出産。子どももすくすく育ち…とここまではいいのですが、肝心のサドマゾの関係性はどうなったのか?
結局明言はされていませんでしたが、ラストではこれまでの出会いからを回想しながらプレイの準備をするシーンがあり、家族が増えた以降については特に説明はありませんでした。
最終章にて、あくまでこの物語がSMの魅力でなく、「SMでしか女性と関われなかったクリスチャンがアナと出会って純愛を覚えた」というメッセージがあったのでしょう(そう思いたくなるレベルでその要素は薄まっていました…汗
以上、ここまで『フィフティ・シェイズ』シリーズをレビューしてきました。
最終章にもなると、かなり最初のテーマであった禁断のエロティックロマンスの感は薄れてしまっていました。
ちなみに『フィフティ・シェイズ』シリーズは観客からの評判や興行収入で見ると大成功した作品ですが、批評家からの評判は悪く、第36回ゴールデンラズベリー賞では2015年の最低作品賞を受賞するなど、一般客層と大きな反響の違いが出ています。
映画ファンとライト層で捉え方が違う、ユニークな作品なのかもしれませんね