映画『エンテベ空港の7日間』は、43年前に起きたハイジャック事件を映像化した作品です。
本作の注目すべき点は、過去に何度も同じ事件を題材として映画化されてきたにも関わらず、それらとはまったく新しい視点から描かれていることです。
- 映画『エンテベ空港の7日間』は「エンテベ空港奇襲作戦」という史実を基にした社会派映画
- 映画の冒頭と終盤に組み込まれているダンスシーンは最重要場面
- 女性革命家ブリギッテ・キュールマンを演じる女優ロザムンド・パイクの存在感
映画『エンテベ空港の7日間』は、テロリストたちが見た“エンテベ空港での緊迫した7日間”が、どんな一週間だったのかを描写しています。
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目次
『エンテベ空港の7日間』作品情報
作品名 | エンテベ空港の7日間 |
公開日 | 2019年10月4日 |
上映時間 | 107分 |
監督 | ジョゼ・パジーリャ |
脚本 | グレゴリー・バーク |
出演者 | ダニエル・ブリュール ロザムンド・パイク エディ・マーサン リオル・アシュケナージ ドゥニ・メノーシェ ベン・シュネッツァー |
音楽 | ロドリゴ・アマランテ |
【ネタバレ】『エンテベ空港の7日間』あらすじ・感想
『エンテベ空港の7日間』の制作者たちは、なぜ「エンテベ空港奇襲作戦」を題材にしたのか
映画『エンテベ空港の7日間』の制作者たちは、なぜ今になって40年以上も前の「エンテベ空港奇襲作戦」という事件を取り上げたのでしょうか?
過去には、救出する側を描いた作品はあってもテロリストたちから見たハイジャック事件の映像化は実現されていませんでした。
この点を踏まえて掘り下げていけば、『エンテベ空港の7日間』という作品からのメッセージがいったい何なのかを推測することができます。
誰もが忘れかけていた過去の事件を取り上げた背景には、イスラエルとパレスチナ問題があります。
『エンテベ空港の7日間』は、この両国の間にある根強い問題が何十年経っても解決されていないところに着目しているのです。
2019年現在も、イスラエルとパレスチナは和平条約を結ぶことなく、憎しみいがみ合う関係のまま戦争が後を絶えません。
「エンテベ空港奇襲作戦」の舞台であるエールフランス航空機ハイジャック事件には4人の主犯格が存在しています。
パレスチナ解放人民戦線の分派メンバー2人と、西ドイツのテロリストグループ「革命細胞」の2人がこの騒動を引き起こしました。
本作『エンテベ空港の7日間』は、彼らハイジャックの実行犯を中心に物語が展開する一方、同時進行で人質側と救出作戦を実行に移そうとする政治家側の場面を交互に挿入している構成になっています。
ラストの人質救出という物語の最終局面を迎えるストーリーテリングは、まさに圧巻の一言。
本作の脚本がすごく秀逸で魅力的なものになってもいるし、撮影面での豊かな表現力にも注目してほしいところです。
特に印象として残っているシーンが、ハイジャック後の2日目の朝の場面です。
エンテベ空港に着陸した旅客機の乗客が迎えた翌朝の光景がどうしても脳裏から離れません。
このシーンでは、眩しいぐらいの朝日が飛行機から降りてくる人質たちを照らしています。
朝を迎える時は誰もが爽快な気持ちになれるはずの朝日が、ハイジャック犯にいつ撃たれるか分からない乗客たちの恐怖を皮肉っているように描かれているのです
『エンテベ空港の7日間』では、ハイジャック犯の行動にハラハラさせられる緊迫したストーリーと、美しい朝日とは反対に乗客の命が危険と隣り合わせという設定が見どころです。
まさに、テロリストたちの視点から描かれるイスラエルとパレスチナ問題を鋭い角度から訴えた骨太なソーシャル映画なのです。
監督ジョセ・パリージャやスタッフ、映画のシナリオを執筆した脚本家による新しい視点で再構築し、完成した映画『エンテベの空港の7日間』は、イスラエルとパレスチナという難しい題材をテーマにした唯一無二の映画になっていると思います。
冒頭と終盤に挿入されるダンスシーンは、『エンテベ空港の7日間』における最重要場面
ここから少しディープな話をします。
映画の冒頭から唐突に始まる舞踏家グループによるダンスシーンは、観ていて圧倒されるほど迫力があります。
私はドラムのビートや珍しいリズムに胸が踊らされました。
ただし、頭の中を整理して一度考えてみて下さい。
『エンテベ空港の7日間』の主題は、ハイジャッカーの犯行と人質を救い出すストーリーを中心にしている社会派映画のはずにも関わらず、作品の序盤、中盤、終盤に差し込まれているダンスの場面にはどんな意味が隠されているのでしょうか?
正直、予備知識を持たずに本作を観るとなると、始まって最初のシーンがダンスなの?と驚かされてしまいます。
事実、私は前情報なしに映画を鑑賞しましたので、作品の冒頭から衝撃を受けてしまいました。
一回観ただけでは理解しにくい場面なので、二回目でやっとこのダンスシーンは映画の中でもっとも重要な部分なのではないかと推測することができました。
ですから、まずはこちらを読んで予備知識を吸収してから本作『エンテベ空港の7日間』を鑑賞しても良いと思います。
さて、論点でもある作中に設けられたダンスシーンは、監督ジョセ・パジーリャが製作段階で組み入れようと思いついたシーンになっています。
もともとのシナリオにはなかった、監督が自ら発案したオリジナルの場面なのです。
振り付けは実際に活動するイスラエルの舞踏集団バットシェバの演目「エハッド・ミ・ヨデア」を起用しており、まさにそれがイスラエルとパレスチナが抱える国際問題を暗喩していました。
両国が抱える問題と踊りの中にある主旨こそが、監督自身が一番伝えたい部分だったのです。
女優ロザムンド・パイクの活躍は破竹の勢い
最後に、本作『エンテベ空港の7日間』にて注目したいところは、主演女優であるロザムンド・パイクの演技です。
彼女は現在公開中の映画『プライベート・ウォー』(2019年9月公開)でも主役を演じています。
また、『荒野の誓い』(2019年9月公開)にも出演しており、主演級の映画が3本連続で公開されているケースは非常に珍しく、ロザムンド・パイクという女優の活躍を実感せずにはいられません。
さらには2019年11月に公開される『THE INFORMER/三秒間の死角』というアクション映画にも主役として抜擢されています。
彼女の活躍は飛ぶ鳥を落とす勢いで、ここまで出演作が続いてるのは賞賛に値します。
ロザムンド・パイクは、2018年の第76回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)主演女優賞にノミネートを受けたばかりですし、今後の活躍には期待が高まるばかりです。
話を元に戻すと、本作『エンテベの空港の7日間』に出演しているロザムンド・パイクの演技にも当然ながら注目してみてください。
テロリストの中では、唯一の女性として他の男性陣にも引けを取らない、銃を片手に勝ち気な女性レジスタンスを熱演しています。
特に私が印象に残った場面は、ハイジャックを実行する数ヶ月前に、計画についての会合を開く場面で放ったセリフとその後の顔つきです。
「私は革命家よ」と覚悟を決めて発言するブリギッテの心情を汲み取るように凛々しい顔をするロザムンド・パイクは、言葉や仕草に頼らず、表情ひとつで演技ができる演技派女優たる実力を示しました。
テロリストとして、革命家としてのブリギッテを演じたロザムンド・パイクは、たくましい男性に見えるほどかっこいい女性でした。
『エンテベ空港の7日間』まとめ
✈ENTEBBE
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📢コメント到着‼️
\伊原六花(女優)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄登美丘高等学校ダンス部元キャプテン。
劇中に登場するバッドシェバ舞踏団(イスラエルを代表する世界的なコンテンポラリー・ダンス・カンパニー)のダンスについて公開劇場は☟
https://t.co/ra33pn1XCx … pic.twitter.com/3WsPIUzOp9— 映画『エンテベ空港の7日間』公式アカウント (@Entebbe7A) October 7, 2019
以上、ここまで映画『エンテベ空港の7日間』について紹介させていただきました。
- エンテベ空港で起きたハイジャック事件は、知っておくべき事件史のひとつ
- 作中のダンスシーンには、作品世界と濃密な関係性が伺えます
- 女優ロザムンド・パイクは、注目すべき役者のひとりです
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