『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』あらすじ・ネタバレ感想!後の伝説となる青年の苦悩

映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』公式ページ

映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』は、1980年代を代表する伝説的な英バンド「ザ・スミス」のボーカルであるモリッシーの若き日を描いた伝記映画であり、青春映画です。

イギリスでは2017年に公開され、日本では2019年5月末に初めて劇場公開されました。

ポイント
  • 内気な青年スティーヴン・モリッシーが“「ザ・スミス」のモリッシー”になるまでの物語
  • 「ザ・スミス」のファンにはたまらない演出や“ジョニー・マー”の登場シーン
  • 優れた芸術作品を生み出すことに伴う苦悩や痛みが克明に描かれる

それではさっそく『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』をレビューしたいと思います。

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『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』作品情報

映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』

出典:映画.com

作品名 イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語
公開日 2019年5月31日
上映時間 94分
監督 マーク・ギル
脚本 マーク・ギル
ウィリアム・タッカー
出演者 ジャック・ロウデン
ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ
ジョディ・カマー
シモーヌ・カービー
音楽 イアン・ニール

【ネタバレ】『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』あらすじ・感想


モリッシーも最初は内気な青年だった

本作『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』はバンド「ザ・スミス」のドキュメンタリーではなく、冴えない青年スティーヴン・パトリック・モリッシーが、歌手として、アーティストとして目覚めていく過程にフォーカスした映画です。

そのため、本作でジャック・ロウデンが演じるモリッシーは、今私たちが想像するようなモリッシーとは少し印象が異なります。

劇中でのモリッシーは無口で、職場に馴染めず、音楽を聴くことだけが心の支え、「俺以外は全員バカだ」と周りを見下しながらも自信が持てず積極的に行動できない…誰しも自分の思春期と重なるのではないでしょうか。

ライブに通ってはNMEに批評文を投稿するも新聞に自分の文章が載らないことに落胆。

NMEとは?
ニュー・ミュージカル・エクスプレスの略称。
イギリスの音楽雑誌です。

バンドにボーカルとして加入し成功を収めるも、大手レコード会社から声をかけられたのはギタリストだけ。

将来ロックスターになるとは思えない様相ですが、挫折に次ぐ挫折の中で漏らす皮肉たっぷりの毒舌と、モノローグで語られる詩には、すでに「ザ・スミス」の世界観が構築されています。

ルックスも今のモリッシーの面影はあまり感じられないし、映画自体はモリッシーの才能が開花する前に終わりますが、ラストシーンで満を持して現れる“「ザ・スミス」のボーカリスト・モリッシー”として完成したシルエットを見たときは胸が高鳴り熱くなりました。

「ザ・スミス」ファンは確実に興奮する演出

本作『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』は実は非公認の伝記映画なので、劇中でザ・スミスの楽曲は使用されません。

しかし曲は流れずとも、ファンなら思わずニヤリとする演出が散りばめられていました。

モリッシーの批評文に目をつけてバンド加入を後押しするリンダー・スターリング(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)と、仕事をクビになったモリッシーが墓地の側で落ち合う場面があるのですが、その光景はザ・スミスの3rdアルバム「The Queen Is Dead」に収録されている「Cemetery Gates」が描く情景とぴったり重なります。

“A dreaded sunny day. So I meet you at the cemetery gates.”

「恐ろしく晴れた日は、墓地の門で会おう」というフレーズが印象的な曲。

歴史的な名盤「The Queen Is Dead」の中で、私が一番好きな曲です。

また、映画終盤で職業安定所に行き、“食肉工場”での仕事を紹介されて露骨に拒絶反応を示すモリッシーからは、「食肉は殺人」と題した2ndアルバム「Meat Is Murder」を連想せずにはいられませんでした。

そして、何と言ってもジョニー・マー(ローリー・キナストン)の存在感が素晴らしいです。

ジョニー・マーは「ザ・スミス」のギタリスト。

このバンドは、モリッシーとマーの2人によって成り立っていたものであり、その切なく流麗なギタープレイは天才と呼ぶにふさわしく、バンド解散後も精力的に音楽活動を続けています。

劇中ではバンド結成にも至らないため、キービジュアルで強調されている割に出番は多くないのですが、いずれ絶対的なコンビになることが分かっているからこそ、失意の底に差し込む希望の光のように見えて存在そのものが感動的でした。

芸術作品との向き合い方を考えさせられる

モリッシーに限らず、偉大なアーティストたちのほとんどは、常人には想像もつかないような孤独を抱え、苛まれていることが多いです。

いつまで経っても努力が報われず「生き方が分からない」「この世界は僕に向いていない」と涙ながらに訴えるモリッシーの姿に胸が痛くなりました。

おそらく凡人は、ここまで自分を追い込むことすらできないのだと思いますが、それでも狂ったように詩作を続けるモリッシーからは「自分にはこの生き方しかない」という強い意志が溢れていました。

音楽だけでなく、絵画でも文学でも優れた芸術作品はアーティストのとてつもない苦悩があって生み出されていることを改めて痛感させられます。

芸術鑑賞に正しい形はありませんが、アーティストへの敬意をもって作品に込められた魂と向き合うことを、どんな時でも意識すべきだと思いました。

「ザ・スミス」が、モリッシーが、伝説的なバンドとして名声を獲得するまでに積み上げてきたことに想いを馳せれば、何度も聴いた名曲たちも今までと違って聴こえるような気がしませんか。


『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』まとめ

以上、ここまで『イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語』を紹介させていただきました。

要点まとめ
  • アーティストとして完成されたモリッシーのシルエットは感動もの
  • 曲は流れなくても、曲の情景が脳裏に浮かぶシーンの数々
  • アーティストへの敬意をもって芸術作品と向き合う必要性を再認識

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