今や誰もが知るパリのシンボル「エッフェル塔」の設計者ギュスターヴ・エッフェルの仕事と、その裏に秘めた女性との愛を描いたフランス映画『エッフェル塔~創造者の愛~』が3月3日(金)より公開されます!
伝記映画に見える本作ですが、ラブロマンスの要素に関しては、史実をベースに、ギュスターヴ・エッフェルとその恋人アドリエンヌとの愛をイメージしたラブロマンスとなってます!
・なぜエッフェルとアドリエンヌは引き裂かれてしまったのかを描くラブロマンス
・恋模様だけじゃない!現場監督の悲喜こもごもも赤裸々に見せる!
それでは『エッフェル塔~創造者の愛~』をネタバレなしでレビューします。
目次
『エッフェル塔~創造者の愛~』あらすじ【ネタバレなし】
著名な建築家ギュスターヴ・エッフェルの新たなプロジェクト
1886年9月パリ。アメリカの自由の女神像建造に貢献したギュスターヴ・エッフェル(ロマン・デュリス)はパリで注目を集める設計士となっていた。しかし彼は名声よりも、もっと実用性のあるプロジェクトに熱意を注いでいた。そのため、3 年後に控えた「パリ万国博覧会」のシンボルとなるモニュメントの話よりも、地下鉄を作って労働階級の人々の助けになるようなものを作りたいと訴え続けている。
そんな中、エッフェルに「パリ万国博覧会」に向けたモニュメントの製作依頼が政府から舞い込んでくる。最初は乗り気でなかったエッフェルだが、友人であり記者のアントワーヌ・ド・レスタック(ピエール・ドゥラドンシャン)に誘われた政府のパーティーに参加する。そこでアントワーヌから妻・アドリエンヌ・ブールジュ(エマ・マッキー)を紹介される。
大臣からは「戦争に敗れた今、我が国に必要なのはシンボルとなるモニュメントだ」と説得されたエッフェルは、突如として乗り気でなかったプロジェクトを引き受けると宣言。さらには条件として、高さ300mもある鉄塔をパリの中心に建設し、階級問わず、すべての人が見て楽しめるものにする」と申し出る。その決意の裏には、アントワーヌが紹介した妻・アドリエンヌの存在があった。
エッフェルとアドリエンヌの出会い
アントワーヌがエッフェルに紹介したアドリエンヌは、エッフェルが20代のころにボルドーで出会った元恋人だった。当時のエッフェルはボルドーで鉄橋の建築を指揮しており、少ない予算の影響で、現場の職人が事故に遭うほど劣悪な環境で仕事をしていた。
職人を守り、現場を良くしようと奮闘するエッフェルを偶然見かけたアドリエンヌは、彼を誕生日会に招待する。エッフェルとは住む世界の違うブルジョアのアドリエンヌだが、2人は徐々に惹かれ合っていく。やがていつかは結ばれると思っていたエッフェルとアドリエンヌだったが…。
前途多難すぎる「エッフェル塔」建設
アドリエンヌとの再会を機に、万博に向けたモニュメントの制作に取り掛かるエッフェルだが、その道は非常に険しかった。前代未聞の高さを持つ塔の建築と、その後の維持における危険性を訴える住民や、パリの景観を損なうとして芸術家も反対の声を上げる。
最初に塔の安全性を説明した銀行でさえ、資金の提供を渋りだし、そこへ賃上げを訴えストライキを起こす現場の職人たち…。
このままでは資金難でプロジェクトが中止になってしまうというその時、エッフェルの前に現れたのは、今も想う女性・アドリエンヌだった。エッフェルは無事プロジェクトを完遂できるのか。そしてエッフェルとアドリエンヌの間に何があったのか?
『エッフェル塔~創造者の愛~』感想
誰もが知るエッフェル塔に“あったかもしれない”熱烈な恋愛
本作はあらすじや概要だけ見ると、 まるでエッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェルの伝記映画のように思えますが、これは半分正解です。
基本的には史実に基づいたエピソードですが、 本作のかなめである 「エッフェルが突然プロジェクトを受け入れ た理由」 については、当時の資料を基に描かれたフィクションの部分も占めているとのこと。
過去に20代のエッフェルとアドリエンヌが熱愛関係にあった点や、 エッフェルが塔の建設にはじめは関心を示していなかったことは資料によって明らかになっています。しかし肝心の「なぜ心変わりしてエッフェル塔建設に挑んだか?」 については未だ不明な点 が多いです。
そこで本作では、 エッフェル塔建設プロジェクトを決意する直前に、 エッフェルがアドリアンヌにあったのではと仮定し、その背景にあったであろうエッフェルとアドリエンヌのラブストーリーを描いています。 (確証はないですが、お互いの息子と姪が結婚しているなど、 再会を裏付けるような痕跡はあります)
だからこそ、2人の恋模様に関しては非常にドラマチックな内容となっており、 なぜ2人は引き裂かれてしまったのかを、フランス映画らしくエモーショナルに描いていました。
一方で、エッフェルがプロジェクトを進めるうえでぶつかる様々な困難などは忠実に再現されているため、 2つの要素のギャップを感じられる、一風変わった作品でもあります。
なぜエッフェルとアドリエンヌは引き裂かれてしまったのか
本作の見どころであるエッフェルとアドリエンヌの過去では、 労働者階級のエッフェルとブルジョアのアドリンヌがどのように距離を縮めたのか、 そして上手くいくはずだった2人の関係がなぜ変わってしまったのかが注目のポイントです。
身分に翻弄されたのか、はたまた時代に翻弄されたのか・・・。 そして同時に、なぜエッフェルはアドリエンヌと再会したことをきっかけに、 あれだけ拒絶して「パリ万国博覧会」のモニュメント制作プロジェクトを引き受けたのかも気になるところ。 そこには確実にアドリエンヌの存在が関係していますが、 皮肉にもエッフェルは再び彼女を選ぶか、自分の信念でもある仕事を選ぶのか、 そのはざまで激しく葛藤します。
プロジェクトは前途多難で、300mもある鉄塔の建設を危険視する人々から抗議を受け続ける日々。 すべてを投げ出してしまいたくなる状況で現れたアドリエンヌの存在は、エッフェルの心を激しく動かします。しかしアドリエンヌは友人の妻・・・。 まさに八方ふさがりのエッフェルが極限の状態で見出した答えは必見です。
恋模様だけじゃない!現場監督の悲喜こもごもも赤裸々に見せる!
個人的に本作を観て良かったと思ったのは、エッフェルのプロジェクトに携わる様子も丁寧に描いていた点です。 ラブロマンスだけでなく、 彼の仕事における姿勢もしっかり見せています。
例えばエッフェル塔を建設する前に「この建造物は危険ではない」ことを証明するために、 小サイズの模型を作成して説明をする場面があります。塔が災害に耐える様子を実際に水や風を使って再現するだけでなく、 電気を落として避雷針としての活用を見せるなど、建築物に詳しくなくても引き込まれる描写がありました。 (それだけエッフェルがこのプロジェクトに本気という意味でもあります)
現場での作業も危険そのもので、心もとない命綱だけを頼りに、手作業で高所の鉄骨を組み合わせていきます。 手に汗握る建築シーンは、ラブロマンスを売りにした作品ではなかなかお目にかかれないのではないでしょうか…?
また、偉業を成し遂げた建築家と聞くと超人のように聞こえますが、現場でのエッフェルは非常に職人思いの人物です。 危険な作業でも「絶対に事故や犠牲者は出さない」と何度も口にしていました。現場でケガをした人物を見つけると、すぐに診てもらうよう促したりするなど、無謀なプロジェクトに携わりながらも、無謀な仕事を押し付けない人柄が印象的でした。
実際に建築現場で働く人にエッフェルの仕事ぶりを見てもらって、感想を聞いてみたくもなりました!
『エッフェル塔~創造者の愛~』あらすじ・感想まとめ
・2人が引き裂かれた理由とエッフェルの選択が見どころ
・エッフェルの仕事人としての姿勢も必見
以上、ここまで『エッフェル塔~創造者の愛~』をレビューしてきました。
誰もが知るエッフェル塔に隠されたラブストーリーと、建設プロジェクトがいかに苦難の連続だったかがうかがい知れる本作。 同時に「愛か仕事か」を迫られるエッフェルを見ると「今は仕事や活動が楽しくて仕方ない!」という人にも見て欲しい作品だと感じました。こうした人の前に運命の相手が現れたとき、どのような決断をするのか考えさせられます。
いつかは来るかもしれない難しい決断に備えて、心の準備となる作品にもなるかも…?