2020年、新型コロナウイルスの影響により日本での公開が約2ヶ月遅れたジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』。
映画館が営業再開になり、復活第1作目として鑑賞した方も多いのではないでしょうか?
緩いテンションで予想外の展開を見せる独特過ぎるゾンビ映画です。
- 『パターソン』のジム・ジャームッシュ監督が手掛けるゾンビ映画
- ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントンなど、とにかくキャストが超豪華!
- 正直好き嫌いが分かれそうな作品。
マルコヤマモト
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目次
『デッド・ドント・ダイ』作品情報
作品名 | デッド・ドント・ダイ |
公開日 | 2020年6月5日 |
上映時間 | 104分 |
監督 | ジム・ジャームッシュ |
脚本 | ジム・ジャームッシュ |
出演者 | ビル・マーレイ アダム・ドライバー ティルダ・スウィントン クロエ・セヴィニー スティーヴ・ブシェミ ダニー・グローヴァー ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ ロージー・ペレス イギー・ポップ セレーナ・ゴメス トム・ウェイツ |
音楽 | スクワール |
『デッド・ドント・ダイ』キャスト
ビル・マーレイ / クリフ・ロバートソン
- センターヴィルの警察署長
- 街で起きた奇妙な事件に2人の部下とともに挑む
アダム・ドライバー / ロナルド・ピーターソン(ロニー)
- センターヴィル署の巡査でどんな時も飄々としている
- 体格に似合わず愛車はスマート
- 過去にマイナーリーグで活躍していた経験あり
ティルダ・スウィントン / ゼルダ・ウィンストン
- センターヴィルに新しくやってきた謎の外国人
- 葬儀屋を営んでいる
- 葬儀屋の奥に仏像と日本刀が飾ってある謎の部屋がある
クロエ・セヴィニー / ミネルヴァ・モリソン(ミンディ)
- センターヴィル署の巡査
- おとなしいがヒステリーな一面も
- ロニーに想いを寄せている?
スティーヴ・ブシェミ / ミラー
- センターヴィルの農夫で白人至上主義者
- 動物を盗む人間には容赦ない
- 実は街の人たちに嫌われている
ダニー・グローヴァー / ハンク・トンプソン
- 銃器や金物を扱う店を営んでいる黒人の年配男性
- 殺人事件が起きたダイナーの常連
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ / ボビー・ウィギンス
- 雑貨店とガソリンスタンドを併設する店を営んでいる
- ホラーオタクの青年で、ゾンビ映画にも精通している
- 名前が似ているからビルボ・バギンズ、フロドと呼ばれることがある
イギー・ポップ / コーヒーゾンビ
- ダイナーに現れたカフェイン中毒のゾンビ
- 見た目はまんまイギー・ポップ
- カップルで女性のコーヒー・ゾンビと一緒に行動している
トム・ウェイツ / 世捨て人のボブ
- 俗世から離れて森の中で自然的な生活を営む老人
- 見た目ほど悪い人物ではないが、双眼鏡を使って常に街の人たちの様子を伺っている
- たまにミラーの農場からチキンを拝借して食べている
【ネタバレ】『デッド・ドント・ダイ』あらすじ
平和な町で起こった奇妙な殺人事件
アメリカの平和な田舎町センターヴィル。
町の警察署長のクリフ(ビル・マーレイ)と巡査のロニー(アダム・ドライバー)は、住民同士のいざこざの対応に追われていました。
白人至上主義者の農夫・ミラー(スティーヴ・ブシェミ)の農場から、森に住む世捨て人のボブ(トム・ウェイツ)がニワトリを盗んだという通報があったのです。
しかし、センターヴィルで起こる事件はこれくらいのもので、クリフ、ロニー、女性巡査のミンディ(クロエ・セヴィニー)が活躍しなくても、平和は保つことができていました。
パトロールの最中にラジオをかけたロニーとクリフは、『The Dead Don’t Die』という曲を耳にします。
「なにか馴染みがある曲だ」とクリフがつぶやくと、ロニーが「テーマソングですから」と返事をしました。
町の人々は、最近起こる奇妙な現象に気づいていました。
いつになっても太陽が沈まず外は明るいまま、時計やスマホが急に動かなくなり、警察無線やテレビにも異常が起きていたのです。
テレビのニュースでは、エネルギー企業が行っている北極での水圧破砕工事が地球の自転軸を狂わせ、異常気象が発生しているのではと伝えています。
それに加えてセンターヴィルでは、動物のが突然姿を消したり凶暴化するなどの異常行動も発生していました。
そして、翌朝クリフのもとにセンターヴィル史上最も大きな事件の報せが届きます。
なんと、街にある唯一のダイナーの経営者・ファーン(エスター・バリント)と女性の店員の、内臓を食いちぎられた無残な死体が発見されたのです!
現場にはコーヒーがこぼれたり、コーヒーポットが割られていたことから「野生動物の仕業ではないか?」とクリフは推測しました。
しかし、意見を求められたロニーはすかさず、「殺人事件はゾンビの仕業である」と言い放ってクリフを呆然とさせます。
異常気象で町にゾンビが大量発生!
ロニーの答えはあながち間違いではありませんでした。
クリフとロニーが墓地を調査すると、墓の下から何かが這い出たような形跡を発見したのです。
慌てるクリフがロニーにゾンビの倒し方を尋ねると、ロニーは「頭を狙うんです。何が何でも頭を殺る。」と答えました。
その頃、ダイナーでの殺人事件は町中の噂になっていました。
少年拘置所に収容されているティーンネイジャー3人は「時間軸がずれてゾンビが蘇った」とつぶやき、都会からセンターヴィルにやってきた若者3人組は巡回してきたロニーにモーテルの戸締まりをするよう促されます。
雑貨屋を営むホラー映画オタクのボビー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は豊富なゾンビ映画の知識を生かして、金物屋のクリフ(ダニー・グローヴァー)と立てこもりの準備を始めていました。
そして、いつのまにか「まずい結末になる」が口癖になっていたロニーの言う通り、事態は次第に悪い方向へと進んでいったのです…。
夜になり、センターヴィルの墓地から続々とゾンビが登場し、町に溢れかえります。
ゾンビたちは自分の欲望のままに行動しており、昨日ダイナーを襲ったのはコーヒーを求めてやってきたコーヒー・ゾンビのカップル(イギー・ポップ/サラ・ドライバー)だったことがわかりました。
その頃、刑務所に保管されていた酔っぱらいのマロリー(キャロル・ケイン)の死体もシャルドネ・ゾンビとして蘇っていましたが、ロニーがナタを振りかざし頭を切り落とされます。
町にやってきた日本刀を振りかざすミステリアスな葬儀屋の女主人・ゼルダ(ティルダ・スウィントン)に警察署の留守を任せて、クリフ、ロニー、ミンディはパトカーで町の様子を伺いに出かけました。
クリフとロニーの結末は!?奇想天外なエンディング
町にはすでにゾンビが溢れかえっています。
コーヒー・ゾンビの他にWi-Fi・ゾンビ、ブルートゥース・ゾンビ、ギター・ゾンビ、サッカー・ゾンビ、ファッション・ゾンビなどのゾンビたちが生前自分たちが依存していたものを求めてさまよっていました。
そして、ミラー、ボビー、ハンクや都会からやってきた若者たちも、ゾンビたちに襲われて命を落としてしまうのでした…。
少年拘置所のティーンネイジャー3人組はクローゼットに隠れて事なきを得て、その後拘置所を脱出することに成功します。
しかし、クリフたちが運転するパトカーは墓地で立ち往生、すぐさま大量のゾンビに囲まれてしまいました。
そんななか、祖母のゾンビを発見したミンディがパニックを起こして外へ飛び出していったのです。
「まずい結末になる」
絶体絶命の状況にあるクリフとロニーでしたが、クリフは最悪な結末になるとわかっているロニーが、常に飄々としていることが気になって訪ねます。
すると、ロニーは「脚本に書いてあった」「脚本はジム(ジャームッシュ)からもらった」と答えたのです。
クリフは「自分は出演シーンしかもらっていない」と少々苛ついて返事をしました。
その時、日本刀を持ったゼルダが墓地に駆けつけます!
日本刀でゾンビを斬り倒すかと思いきや、実はゼルダは宇宙人で、突如現れた宇宙船に乗って去ってしまったのです!
唖然とするクリフとロニー。
この展開はロニーの脚本にも書いておらず戸惑いますが、2人は意を決して最悪の結末を打開するためにゾンビに挑みます。
「台本通り」に銃とナタでゾンビと戦うクリフとロニーでしたが、圧倒的な数のゾンビに敵うはずもなく、やはりロニーの言ったとおり「まずい結末」になってしまいました。
森の中からその様子を見ていた世捨て人のボブと、拘置所から逃げ出した3人組だけが助かったというわけです。
マルコヤマモト
『デッド・ドント・ダイ』感想:【注意】これは普通のゾンビ映画ではない!
普通のゾンビ映画ではない!
第72回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、話題になった『デッド・ドント・ダイ』。
まさかのジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画ということで会場は騒然…。
マルコヤマモト
今作では最近のゾンビ映画にアルようなスリルやスピード感は一切ないからです。
なぜなら、監督がジム・ジャームッシュだからです。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『パターソン』などで知られるゆったりしたドラマを描くことが多い監督です。
マルコヤマモト
『デッド・ドント・ダイ』は、ジム・ジャームッシュ監督による、唯一無二のゾンビ・コメディ。
まさにそういった感じで見ていただけると、しっくり来るんじゃないかと思います。
マルコヤマモト
普通の人生を生きる人々を普通に描くのがとても上手なジム・ジャームッシュ監督ならではの、ゾンビ含む個性豊かなキャラクターたちがだんだんと愛おしく感じるはずです。
また、今作にはジム・ジャームッシュ監督自身が感じた人間への危機感が描かれています。
例えば街を歩いていてもスマホに見入る人々、思いやりをなくし、自分のことしか考えられなくなっている人間の様子をメタファーとしてゾンビに投影しているようです。
街の人たちがいざという時に誰とも助け合わずにゾンビにやられていく姿=他人への無関心を表しています。
マルコヤマモト
「まずい結末になる」
マルコヤマモト
それにしても伏線回収もしないとっ散らかった展開、豪華キャストは犠牲になりまくり、宇宙船…と超展開を迎えたラストはまさにコント!
こんな豪華キャストが大真面目に繰り広げるゾンビ・コメディは今までなかったのでは!?
マルコヤマモト
出演キャストが超豪華&オマージュも満載!
アダム・ドライバーとビル・マーレイが並んでいるだけでゆるゆるでもうニヤニヤ。
マルコヤマモト
マルコヤマモト
そんな豪華なキャストが集結した今作!
マルコヤマモト
例えば、アダム・ドライバーが演じる、ロニー・ピーターソンの名前はもちろん『パターソン』からのオマージュですよね。
ロニーの車のキーについた帝国艦隊のキーホルダーを見たゼルダが「『スター・ウォーズ』!名作ね!」と言うシーンには思わずニヤリ。
リアルで早いゾンビではなく、ノロノロとしたシンプルなゾンビは、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』『ゾンビ』への愛を感じます。
マルコヤマモト
ジム・ジャームッシュが直々に製作を求めたのは、グラミー賞を受賞したカントリー歌手スタージル・シンプソン。
既存曲かと思ったら描き下ろしで贅沢!
マルコヤマモト
SNSでのみんなの感想・評判
「デッド・ドント・ダイ」
ゾンビ映画だけれど、やっぱりジャームッシュのタッチなんですねー。
所々でユーモアも効いてるし、グロいシーンもあるけれど、気品があるります。
音楽がたまらなく良い。
ジャームッシュがゾンビ?と
少し斜に構えて観たけれど、アリかナシかで言えば間違いなくアリです! pic.twitter.com/bKSPxPqWHA— 森の音の映画クロニクル (@5GhOKjn9YuThlYa) June 5, 2020
『デッド・ドント・ダイ』J・ジャームッシュ監督が創ったゾンビ=社会風刺物…想像の遥か斜め上を緩く爆走しつつ、驚愕の展開。質問するクリフと回答するロニー…会話が全く噛み合ってない様に見えて、実は阿吽の呼吸で行動するバディな2人が兎にも角にも最高に面白くて。やり過ぎのプロップにも爆笑。 pic.twitter.com/SLHaJhawfd
— Keinosuke O (@HIP_K) June 7, 2020
『#デッド・ドント・ダイ』
いや〜これはちょっとなぁ..。
豪華役者陣とかゾンビの個性とかメタ構造とか面白いとは思うけど、とにかく平坦で退屈。
シュールすぎるギャグやクドいギャグも合わないし終盤はかなり困惑。
ジャームッシュ監督は初めてだけどこの監督とは相性が良くないのかも。 pic.twitter.com/9v7YnKNeH7— ヨッシー/映画当たり屋CH (@atariya_ch) June 5, 2020
「デッド・ドント・ダイ」ジャームッシュの中でもかなり好き嫌いが別れると思うし欠点もあるが愛さずにはいられない、言わば”Chillなゾンビ映画”。何より目配せとしてのオマージュだけではなく、ゾンビという存在に込めた文明批判の精神まで踏襲してロメロへのリスペクトを込めた本気さに感動する。 pic.twitter.com/pICrLafAit
— 朝田 (@WhiteFerrari98) June 7, 2020
マルコヤマモト
ゾンビ映画として見に行った人は、きっと物足りなく感じたと思います。
物語もあまりにも平坦で、ゾンビもノロノロしている。
ゾンビ映画としての「スリル」を求めているときっと肩透かしを食らうかも。
前提として今作は「ジム・ジャームッシュ監督作品」ということを頭に置いておくと、多少納得できるかもしれません。
マルコヤマモト
『デッド・ドント・ダイ』には監督作品へのオマージュも込められているので、事前に鑑賞しておくと面白い発見があるかも。
マルコヤマモト
『デッド・ドント・ダイ』まとめ:ジム・ジャームッシュが描く日常が愛おしい
マルコヤマモト
- 『デッド・ドント・ダイ』はただのゾンビ映画ではなく「ジム・ジャームッシュ」のゾンビ映画
- 物語がより日常に近い感じ&古いゾンビ映画をリスペクトしているので人によっては退屈に感じるかも
- 社会問題などのメタファーも込められた個性豊かなゾンビ含むキャラクターたちがとても愛おしく感じた
マルコヤマモト
アダム・ドライバー主演の『パターソン』で1人の男の日常を描いたジム・ジャームッシュ監督。
ジム・ジャームッシュ監督作品に登場するキャラクターたちはとても魅力的で、今作『デッド・ドント・ダイ』にも同じものを感じます。
たしかに、ゾンビ映画にしては平坦すぎる物語で少し退屈に感じる人もいるかもしれません。
でも、『デッド・ドント・ダイ』はきっと私たちの日常に一番近い物語で、だからこそジム・ジャームッシュ監督に作られたんだな…と納得できる作品でもありました。
マルコヤマモト
コーヒーやWi-Fiを求めてさまよう姿は、もしかしたら私たち自身なのかもしれません。
マルコヤマモト