魔女の呪いで不老不死のヴァンパイアとなったコリンズ家の当主バーナバスが、蘇ったのは200年後の世界!
『ダーク・シャドウ』は、1960年代に全米で昼帯ドラマとして放送され、人気を博した同名ドラマを基に、 ティム・バートンのテイストを存分に盛り込んでリメイクされたジョニー・デップ主演のホラー・コメディ。
ヴァンパイア、魔女、幽霊、狼人間が登場するゴシック・ホラー要素満載なのに、子孫たちとの時代のギャップに、理解があやしい大仰なバーナバスが、視聴者をいい塩梅に笑いへと誘ってくれる、そんな作品です。
・コリンズ家の末裔
・魔女の執着
・孤独からの解放
それでは『ダーク・シャドウ』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『ダーク・シャドウ』あらすじ・感想
蘇ったヴァンパイア
時は1972年、メイン州コリンズポートの建設現場で、地中に埋まっていた箱を掘り出した11人の現場作業員が無残に殺される奇怪な事件が起こります。
その直後に、土地の名家でありながら没落したコリンズ家の屋敷に現れたバーナバス(ジョニー・デップ)。
200年前にイギリスから両親とともにアメリカに渡ってきたコリンズ家2代目の当主バーナバスは、漁村だったコリンズポートに水産事業を起こし、富をもたらした盟主。
コリンズ家の使用人だったアンジェリーク(エヴァ・グリーン)の恋心を踏みにじったことで、恨みを買い、魔女となったアンジェリークの呪いにより不老不死のヴァンパイアへと変えられていたのです。
バーナバスへの恋が叶わず、嫉妬に狂った魔女は、バーナバスの恋人ジョゼット(ベラ・ヒースコート)を死に追いやっただけでなく、バーナバスを地中深くに生き埋めにしていたのでした。
そんな暗い箱の中から、解放されたバーナバスは、200年の間にすっかり荒れ果てた自分の屋敷に舞い戻ったのでした。
コリンズ家当主のエリザベス(ミシェル・ファイファー)は、かつての当主に、屋敷内に隠れ財産があると知らされ、バーナバスを家族の一員として迎え入れます。
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没落したコリンズ家の再興
屋敷に住んでいたのはバーナバスの末裔のエリザベスと娘のキャロリン(クロエ・グレース・モレッツ)、エリザベスの弟のロジャー(ジョニー・リー・ミラー)とその息子のデビッド(ガリバー・マクグラス)。
思春期の反抗的なキャロリンや、無気力なロジャー、精神的に不安定な少年デビッドとコリンズ家の面々はなかなかの曲者揃いで、家業の水産業はすっかり低迷していて、バーナバスの時代の富と栄華は見る影もありません。
ヴァンパイアとなっても家族を一番に思うバーナバスは、落ちぶれた一族を再興させようと立ち上がるのでした。
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バーナバスが不在の200年の間に、コリンズポートの町の名士として港を牛耳っていたのは、時代を超えて、周囲の目を欺き続け、生きながらえていた魔女のアンジェリーク。
バーナバスに呪いをかけただけで飽きたらず、コリンズ家が衰退していくのを面白がっていたというのです。
バーナバスが地中から這い出て蘇ったことを知ったアンジェリークは、恋しくて憎いバーナバスに恋人として、ビジネスのパートナーとして手を組みたいと不条理な提案をします。
そんな、アンジェリークの手をふり払いのけ、バーナバスは一族の栄光を取り戻すのにがむしゃらに前に進むのでした。
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アンジェリークを拒みながらも誘惑には、あっけなく負ける…魔女とヴァンパイアの不思議なラブシーンが、まるでプロレスのようで大爆笑です。
ジョゼットに生き写しのヴィクトリア
200年もの長い眠りから覚め、現世に戻ってきたバーナバスが驚いたのは、最愛のジョゼットに生き写しのデビットの家庭教師のヴィクトリア(ベラ・ヒースコート/二役)の姿。
ヴィクトリアに恋したバーナバスに、ヴィクトリアも、幼いころから人には見えない存在が見え、その不思議な力に導かれてバーナバスのいるコリンズポートまでやってきたというのでした。
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ティーンエイジャーらしく、悪態をつきながら、大真面目なバーナバスにテキトー答えるクロエ・グレース・モレッツがツボです。
魔女の毒牙に団結する一族
ヴィクトリアに心を奪われ、呪われたわが身を嘆くバーナバス。アンジェリークに人間に戻して欲しいと懇願するバーナバスの姿に、呪いをかけてなお自分のものにならないと激怒したアンジェリークは、ついにコリンズ家に牙をむきます。
そして200年前と同じように、コリンズポートの町の住民も巻き込んで、バーナバスを破滅させようと屋敷にやってきたアンジェリーク。
魔女の本性をみせたアンジェリークにエリザベス、キャロリン、デビッドとそれぞれのもつ力を合わせ、コリンズ一家はバーナバスの心血を注いで築き上げた屋敷で、最終決戦を迎えたのでした。
そして最後に、意外な形で解放されたバーナバスの呪いとは?
『ダーク・シャドウ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ダーク・シャドウ』をレビューしてきました。
・コリンズ家の偉大な当主
・魔女の歪んだ恋心
・欲張りすぎたストーリー
バーナバスが魅力的
陰鬱でほの暗いライティングに浮かぶ青白い顔を主人公に、映画で描くのが印象的なティム・バートン作品にあって、ジョニー・デップ演じるバーナバスは、やっぱり魅力的。
200年の年を経て、社会の価値観が大きく変わった世界に戻ってきたヴァンパイアのバーナバスを、大胆で繊細、善良で邪悪、礼節があるようで無礼と、絶妙なバランスで、ジョニー・デップが嬉々として演じているようにみえます。
ミシェル・ファイファー、ヘレナ・ボナム=カーター、ジョニー・リー・ミラー、クロエ・グレース・モレッツと、全員が主役をはれる実力俳優たちの中にあって、ジョニーの存在感は群を抜いています。
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つめこみすぎて、忙しい
1966年から5年にわたって全米で昼帯ドラマとして放送された『ダーク・シャドウ』。
1225話からなる本家ドラマのエピソードの要素を盛り込むのに、ティム・バートン作品はいささか欲張りすぎたようにみえます。
冒頭では、いったんヴィクトリアの目を通して、物語が語られるかと思いきや、そうではなく、あくまでバーナバスの屋敷に帰還するまでのことであり、ヴィクトリアは中盤の露出は少なくなります。
バーナバスと末裔たちとの時代ギャップネタ、コリンズ家の再興、ヴァンパイアと魔女の確執、ヴィクトリアの正体と、追いかける要素が多くちりばめられており、忙しさを覚える視聴者もいるはず。
クライマックスでは狼人間、幽霊と作中で多くふれられていないくだりも唐突に登場して、ちょっとビックリ。欲張りすぎた感がいなめません。
オリジナル・ドラマからのストーリーに固執しすぎず、もっとシンプルに削ぎ落したものにしても、十分に面白かったように思います。
そうはいっても、『ダーク・シャドウ』には、バーナバスのキャラクターに一貫した笑いがあるため、焦点ボケは、さほど気になることはないのでご心配なく。
そして『ダーク・シャドウ』のオリジナル・キャストのバーナバス役のジョナサン・フリッドを含む4人の粋なカメオ出演やアリス・クーパーの登場と、ファン・サービスを忘れておらず、エンターテイメント作品としての風格は健在です。
バーナバスと魔女アンジェリークとの闘いの果てに、バーナバスにとってのハッピー・エンドを迎えた『ダーク・シャドウ』。
ティム・バートン作品の要素が全部つまった贅沢な作品であり、なにより仰々しいヴァンバイアを演じるジョニー・デップの誘う笑いが、存分に楽しめるホラー・コメディです。
是非、ご覧ください。