映画『ダークナイト トリロジー』三部作まとめ!バットマンに関する“ある問い”と、その答えについてを徹底考察

映画『ダークナイト トリロジー』三部作を徹底考察!アメコミ映画に与えた影響、バットマンに関する問いと答えとは?

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今回の記事は、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト トリロジー』三部作についてを取り上げたいと思います。

なぜ『ダークナイト』だけに焦点を当てずに、『ダークナイト トリロジー』三部作に焦点を当てるのか。

その理由は、『ダークナイト トリロジー』が三部作であることに意味があるためです。

それでは大きく3つの主題で、その意味を説明していきます。

映画『ダークナイト トリロジー』三部作がアメコミ映画に与えた影響

映画『ダークナイト トリロジー』三部作がアメコミ映画に与えた影響

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本題に入る前に、『ダークナイト トリロジー』三部作の二作目にあたる『ダークナイト』がどれだけアメコミ映画に与えた影響が大きかったのかを語っていきます。

分かりやすいところで数字の面から見ていきましょう。

『ダークナイト』は全米で5億3,523万4,033ドル、世界で10億493万4,033ドルという興行収入を稼いでいます。

これは2008年公開当時の全米ランキングで『タイタニック』に次ぐ2位、世界歴代ランキングに目を向けると『タイタニック』、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』という誰でも知っているような作品に次いで、歴代4位という記録です。

しかもこの全米興行収入は、インフレ率を調整すると6億7,129万9,400ドルとなります。

MCUでは『ブラックパンサー』がインフレ率を調整すると6億8,721万3,600ドルなので同じくらい稼いでいますが、『ブラックパンサー』がMCUの18作品目だったのに対し『ダークナイト』はシリーズものではない単独作品だと考えると凄さが実感できると思います。(※数字は全てBox Office Mojo調べ。)

そして興行的成功による世界的な話題と『ダークナイト』のヴィランであるジョーカーを演じたヒース・レジャーの迫真の演技が世界的に評価され、アメコミ映画で初のアカデミー賞を取りました。

『ダークナイト』がアメコミ映画で初めてのアカデミー賞を取ったいう事実が世界に与えた衝撃は凄まじく、ハリウッドでは低く見られていたアメコミ映画というジャンルの確固たる社会的地位を築きました。

『ダークナイト』という作品は、今までのアメコミ映画とは全く違うシリアスな作風であったため、その後のアメコミ映画ではシリアスな作風も取り入れられていきます。

そして今や映画界の話題をかっさらい、世界興収が10億ドル以上という作品が何作品も生まれるまでになりました。

映画『ダークナイト トリロジー』三部作の裏にあるバットマンに関する問い

『ダークナイト トリロジー』三部作は、バットマンというヒーローを主人公にした映画なのですが、バットマンには長年続いていて未だに決着がついていないある問いがあります。

その問いとは、バットマンは狂人であるヴィランを捕まえるヒーローであると同時に、バットマン自身も狂人なのではないかということです。

この問いが出てきた背景には、原作コミックの歴史を振り返る必要があります。

バットマンが原作コミックで初登場した時のバットマンのヒーロー像は現在とだいぶ違いました。

初登場した当初は、悪人であれば躊躇なく殺してしまうようなキャラクターであり、やっていることは悪人と変わらない状態でした。

しかし、原作コミックがリブートされた時に、バットマンのヒーロー像も一新されました。

その際に、過激な面はなくなり、現在のようにヴィランは殺さず自分は捕まえるだけというヒーロー像が確立されました。

ただ、普通の人間であるバットマンは、ヒーローとしてヴィランを殺さずに捕まえるため、犯罪をしているという点ではヴィランと何も変わりありません。

そこで、見方によってはバットマンもヴィランと同じ狂人なのではないかという問いが生まれてくるわけです。

原作においてバットマンの永遠の宿敵であるジョーカーというヴィランは、バットマンをことごとく試してきます。

バットマンはジョーカーによる自分の心をこれでもかとえぐってくるような非道な行いによって怒りが頂点に達し、何度も本気で殺しかけています。

しかし、ジョーカーを殺してしまったらヴィランと全く同じになってしまうため、何とか一線を越えないように踏みとどまり、ジョーカーを殺すことはしません。

このようにバットマンにはヒーローとしての面とヴィランのような狂人としての面という二面性があり、純粋にヒーローとは言い切れない部分があります。

さて、『ダークナイト トリロジー』三部作では、この問いに対してどう描いて答えを出したのか。

その点を順番に見ていきたいと思います。

映画『ダークナイト トリロジー』三部作で描いた問いに対する答え

まず答えを先に言うと、バットマンはヴィランとは違う紛れもないダークヒーローだということです。

クリストファー・ノーラン監督は、バットマンの映画を作るにあたり、この問いが頭の片隅にあったのだと思います。

そして、バットマンは紛れもないダークヒーローだということを観客に示すために、バットマンの誕生からゴッサム・シティの真のヒーローになるまでを『ダークナイト トリロジー』三部作で丁寧に描きました。

それでは三部作のタイトルを『バットマン ビギンズ』から順番に見ていきましょう。

①『バットマン ビギンズ』

作品名 バットマン ビギンズ
公開日 2005年6月18日
上映時間 141分
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
デヴィッド・S・ゴイヤー
原作 ボブ・ケイン
ビル・フィンガー
出演者 クリスチャン・ベール
マイケル・ケイン
リーアム・ニーソン
ケイティ・ホームズ
ゲイリー・オールドマン
キリアン・マーフィー
トム・ウィルキンソン
ルトガー・ハウアー
渡辺謙
モーガン・フリーマン
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
ハンス・ジマー

『バットマン ビギンズ』あらすじ・問いの答え


『バットマン ビギンズ』は、バットマンの誕生譚を描いたストーリーとなっており、ブルース・ウェインが幼少期に両親を殺されてから、なぜコウモリの姿を模したスーツを身につけてバットマンになったのかが描かれています。

この時はまだ警察からヒーローとは認知されておらず、コウモリのようなマスクをつけた得体の知れない奴が警察気取りのことをしているとしか思われていません。

後にバットマンの良き理解者として協力することになる警官のゴードンも、バットマンのことを信用していませんでした。

しかし、ヴィランであるラーズ・アル・グールによって、ゴッサム・シティが壊滅の危機にさらされた際、バットマンによって街が救われたことから全面的に信頼を寄せるようになります。

街の危機を救ったブルース・ウェインは犯罪者に対する抑止力としてコウモリのマークをライトで空に投影して、警部補に昇進したゴードンと共にバットマンとしてヒーロー活動を続けていくのでした。

そんな中、ゴッサム・シティにバットマンの永遠の宿敵であるジョーカーの影が迫っていました。

この作品ではバットマンがラーズ・アル・グールというヴィランに対して行うある選択に狂人としての一面が描かれています。

バットマンはラーズ・アル・グールとの決着をつけた時、殺すことはしませんでしたが助けるということもしませんでした。

つまりバットマンはラーズ・アル・グールを見殺しにしたということになるわけで、自分の手で直接ではないにせよ間接的に人を殺しているわけです。

その行動は人を殺しているという点でヴィランと同じです。

これは『ダークナイト』でバットマンがどういう選択をするのかという布石なのではないかと自分なりに考えています。

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②『ダークナイト』

作品名 ダークナイト
公開日 2008年8月9日
上映時間 152分
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
ジョナサン・ノーラン
原作 ボブ・ケイン
ビル・フィンガー
出演者 クリスチャン・ベール
マイケル・ケイン
ヒース・レジャー
ゲイリー・オールドマン
アーロン・エッカート
マギー・ジレンホール
モーガン・フリーマン
音楽 ハンス・ジマー
ジェームズ・ニュートン・ハワード

『ダークナイト』あらすじ・問いの答え


『ダークナイト』ではブルース・ウェインがバットマンとしての活動を止めざるをえないまでに堕落する様が描かれます。

ジョーカーという素性の全く分からないヴィランによって、人間の悪の部分というのがあぶり出されていきます。

ジョーカーによってバットマンの狂人としての面がより際立っており、「バットマン自身も狂人なのではないか?」という問いに、より直接的に踏み込んでいます。

それがよく分かるシーンが、バットマンとジョーカーの対話シーンです。

このシーンで、ジョーカーはバットマンにゴッサム・シティを永遠に変えてしまったのはバットマンという存在自体であり、警察から見れば自分と同じ狂人であると話します。

それゆえ、世の中が善良ではなくなり、倫理やモラルといったものが崩壊したらすぐに捨てられ除け者にされてしまう存在だと。

つまり、バットマンとヴィランの境界線は非常に曖昧であり、いつバットマンが狂人として見られるようになってしまってもおかしくないということを意味しています。

バットマンは、ジョーカーによって最愛の人を殺されてしまうという悲劇に見舞われることもありましたが、ジョーカーを止めるため、バットマンのマスクを脱ぐことはありませんでした。

そして、バットマンはジョーカーを捕まえることができましたが、自分はハービーデント(トゥーフェイスとうヴィランであったが、バットマンとゴードンによってその事実はゴッサム・シティの市民に隠されている)を殺してしまったことで、ヴィランと同じ狂人として警察から追われる身となります。

ゴードン警部補の息子を助けるためとはいえ、ヴィランを殺してしまったバットマンですが、最後のシーンではゴードン警部補のセリフから希望が感じられます。

ゴードン警部補の「彼はヒーローじゃない。沈黙の守護者。我々の監視者。闇の騎士(ダークナイト)だ」というセリフと共に、バットマンが警察から逃げるエンディングのシーンでは明るい光に向かって逃げており、このまま堕落したままでは終わらないという意味だと考えることもできます。

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③『ダークナイト ライジング』

作品名 ダークナイト ライジング
公開日 2012年7月28日
上映時間 165分
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 ジョナサン・ノーラン
クリストファー・ノーラン
原作 ボブ・ケイン
出演者 クリスチャン・ベール
マイケル・ケイン
ゲイリー・オールドマン
アン・ハサウェイ
トム・ハーディ
マリオン・コティヤール
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
モーガン・フリーマン
音楽 ハンス・ジマー

『ダークナイト ライジング』あらすじ・問いの答え


『ダークナイト ライジング』は、バットマンが堕落してから這い上がる様が描かれます。

『ダークナイト』で一度答えを出したかに見えましたが、『ダークナイト』の布石をしっかり回収しています。

そして作中で描かれるその布石を回収する「ある描写」によって、クリストファー・ノーラン監督はバットマンが紛れもないヒーローであるとはっきり明示しています。

その描写とは、ベインというヴィランに背骨を折られるほどの重傷を負わされ完全敗北したバットマンが、ベインと決着をつけるため、夜ではなく昼に戦っている描写です。

バットマンが夜ではなく昼に戦うということには、たいへん大きな意味があります。

バットマンは闇に隠れて活動するようなダークヒーローではなく、ゴッサム・シティの紛れもないヒーローになったということです。

その証拠に、バットマンはゴッサム・シティを救うためにある行動に出ます。

バットマンがベインを倒した時、実はラーズ・アルグールの娘が真の黒幕であり、ベインは部下の一人に過ぎなかったということが分かります。

そしてその娘は、父の意志を継いで時限式原子爆弾を使いゴッサム・シティを消滅させようとします。

しかし、バットマンは時限式原子爆弾をゴッサム・シティから遠く離れた海上まで運び、そこで爆発させることでゴッサム・シティを救います。

エンディングの場面では、自分の命を犠牲にしてゴッサム・シティを救ったヒーローとしてブロンズ像が作られました。

ゴッサム・シティの人々の記憶にはバットマンというヒーローが永遠に残り続けますが、ブルース・ウェイン本人は生きていてゴッサム・シティではないどこかで静かに暮らしている描写があります。

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映画『ダークナイト トリロジー』三部作の徹底考察まとめ

ここまで映画『ダークナイト トリロジー』三部作について、「バットマンは狂人なのではないか?」という問いに対する答えをどう描いてきたのかを中心に語ってきましたが、よく考えて作られているなぁと改めてつくづく実感します。

『ダークナイト トリロジー』三部作ではバットマンがヒーローとして描かれましたが、バットマンをどう描くかは作り手の解釈次第です。

私はバットマンが性善説の体現者、ジョーカーが性悪説の体現者とするなら、ジョーカーに屈せず戦い続ける限りバットマンはヒーローだと思います。