「罪の声」などで知られる人気作家・塩田武士が、主人公に俳優の大泉洋をイメージしながら執筆した同名小説を、実際に大泉主演で映画化した『騙し絵の牙』。
大手出版社を舞台に、廃刊の危機に立たされたカルチャー誌の編集長が、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描きます。
監督を務めたのは『桐島、部活やめるってよ』などで知られる吉田大八。
大泉を取り囲む共演には松岡茉優、佐藤浩市、中村倫也、池田エライザ、宮沢氷魚、國村隼、小林聡美など、ベテランから若手まで豪華な実力派キャストが揃い、物語を盛り上げます。
今回はそんな映画『騙し絵の牙』をネタバレありでご紹介します。
目次
映画『騙し絵の牙』作品情報
作品名 | 騙し絵の牙 |
公開日 | 2021年3月26日 |
上映時間 | 113分 |
監督 | 吉田大八 |
脚本 | 楠野一郎 吉田大八 |
原作 | 塩田武士 |
出演者 | 大泉洋 松岡茉優 宮沢氷魚 池田エライザ 斎藤工 中村倫也 坪倉由幸 和田聰宏 石橋けい 森優作 後藤剛範 中野英樹 赤間麻里子 山本學 佐野史郎 リリー・フランキー 塚本晋也 國村隼 木村佳乃 小林聡美 佐藤浩市 |
音楽 | LITE |
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映画『騙し絵の牙』登場人物・キャスト
速水輝 / 大泉洋
- カルチャー誌“トリニティ”の編集長
- 様々な出版社や雑誌を転々としており、気持ちとしてはフリー編集者
高野恵 / 松岡茉優
- 文芸誌“小説薫風”の新人編集者
- ひょんなことから速水によって“トリニティ”に引き抜かれる
東松隆司 / 佐藤浩市
- 薫風社の専務
- 革新派であり、新社長の座を狙っている
伊庭惟高 / 中村倫也
- 薫風社の社長である伊庭喜之助の息子
- 新社長の座を狙っている
宮藤和生 / 佐野史郎
- 薫風社の常務
- 保守派であり、惟高の後見人
江波百合子 / 木村佳乃
- 文芸誌“小説薫風”の編集長
- 保守派であり、宮藤を慕っている
二階堂大作 / 國村隼
- 大御所小説家
- “小説薫風”の看板作家でもあるが…
久谷ありさ / 小林聡美
- 文芸評論家
- 速水とは古い付き合いらしい
城島咲 / 池田エライザ
- 人気ファッションモデル
- 速水に目を付けられているのには、とある理由が…
矢代聖 / 宮沢氷魚
- 新人小説家
- 新人賞の選考で高野が見出すが…
謎の男 / リリー・フランキー
- 謎の中年男
- 速水とともに高野の前に現れ…
【ネタバレ】映画『騙し絵の牙』あらすじ
戦いの始まり
ある日、大手出版社・“薫風社”の社長である伊庭喜之助(山本學)は、犬の散歩中に倒れてしまい、そのまま亡くなりました。
薫風社の文芸誌・“小説薫風”の新人編集者である高野恵(松岡茉優)は、新人賞の選考作品の中から新人小説家・矢代聖(宮沢氷魚)の『バイバイを言うとちょっと死ぬ』を夢中で読んでいたところ、喜之助の訃報を知ります。
喜之助の訃報はさっそくニュース番組でも取り上げられ、薫風社の新社長の座には誰が就くのか特集が組まれているほどです。
そこにゲストとして出演していた文芸評論家の久谷ありさ(小林聡美)は、次期社長は喜之助の息子・惟高(中村倫也)でも、後妻・綾子(赤間麻里子)でもなく、専務である東松龍司(佐藤浩市)が最有力だとコメントします。
実は、惟高はニューヨークへ転勤することが決まっていたのです。
喜之助のお通夜には、惟高はもちろんのこと、東松や常務の宮藤和生(佐野史郎)、久谷など多くの関係者が訪れていました。
厳かにお通夜が行われた後、高野は小説薫風の編集長・江波百合子(木村佳乃)や江波の右腕である三村洋一(和田聰宏)と連れ立って、大御所小説家・二階堂大作(國村隼)の作家生活40周年記念パーティーへ向かおうとします。
なかなかタクシーが捕まらず困っていたところに、薫風社のカルチャー誌・“トリニティ”の編集長である速水輝(大泉洋)が乗ったタクシーが通りかかり、仕方なく同乗することにしました。
パーティー会場に着くと、小説薫風一同は二階堂に挨拶しに向かいますが、そこへ速水が割って入ってきます。
すると、速水は相手が大御所の二階堂であろうとお構いなしに作品への意見を次々と口にし、挙げ句の果てに新人である高野に二階堂の代表作『射程』の感想を言うよう話を振ってきました。
高野は戸惑いますが、正直に「女性描写に関する価値観が古いのではないか」と語り、二階堂の機嫌を損ねて、場の空気を乱してしまいます。
後日、社内で江波と顔を合わせた速水は、もう二階堂に近付かないよう命じられました。
さらに、東松からは売上が右肩下がりであるトリニティの廃刊を仄めかされます。
速水は自身がトリニティ編集部に来たばかりであることや発行部数を増やすための仕込み中であることを語り、東松に時間を貰ったうえで編集部のメンバーを招集しました。
副編集長の柴崎(坪倉由幸)、ベテランの中西(石橋けい)、若手の安生(森勇作)など、それぞれが特集のアイデアを挙げますが、それらはどれも使い古されたものばかりで、速水は売上が落ちているのは構成のマンネリ化にあると指摘します。
そして、現状を打破するために新企画として連載ものの立ち上げを提案しましたが、編集部のメンバーは消極的な様子でした。
一方その頃、小説薫風編集部では新人賞の選考が行われていました。
高野は夢中になってチェックしていた矢代の作品を推しましたが、江波はその実力を認めながらも、他の作品とのバランスが取れないことや個性が強すぎること、それらが選考委員の負担になることを理由に却下します。
動き出す薫風社
薫風社では役員会議が行われ、東松が新社長に就任。
東松はさっそく、不採算部門の整理と独自の物流ルート構築を目的とする“プロジェクト・KIBA”の立ち上げを提案します。
その裏では、喜之助の後妻・綾子や大手外資系ファンドの代表である郡司一(斎藤工)らが、プロジェクト参加の意思を示していました。
続いて、東松は赤字が続いている小説薫風を月刊から隔月刊に変更しますが、二階堂がニュース番組に出演し、隔月刊化を非難。
社内でも、以前より東松に反感を抱いていた保守派の宮藤らが立ち上がり、反対の姿勢を示します。
一方で、隔月刊化に伴い、高野は人員削減の一環として販売管理部への異動を命じられました。
憧れだった文芸誌の編集から外されて落ち込む高野が、父(塚本晋也)の営む小さな書店で店番をしていると、そこに何故か速水が現れ、人手不足だからと言ってトリニティに勧誘してきました。
高野を引き抜いた速水は、小説薫風が独占契約をしている二階堂の新連載をトリニティで始めたいと提案します。
そして、二階堂との交渉の場へ参加することになった高野は、速水にそそのかされ、一対一で二階堂の応対をすることになりました。
二階堂は速水が来ないこと以外に、東松がいないことにも憤慨し帰宅しようとしていたため、高野は先日のパーティーでの失礼を詫び、引き留めることに成功します。
高野の謝罪を受け入れ、機嫌を良くした二階堂は改めて席につき、趣味でもある高級ワインを次々に注文しました。
高野は二階堂のペースについていけずに酔ってしまい、その勢いで読者のニーズに応えるべきだという意見を再び展開してしまいます。
また二階堂の機嫌を損ねてしまうかと思われたその時、ワインを持った速水が現れ、二階堂のグラスに注ぎました。
二階堂は一口飲むと「美味い」と呟きますが、実はそれはただの安物でした。
速水は二階堂が驚いた一瞬の隙をつき、自身の主張を述べていきます。
最初こそ速水の言葉を受け入れなかった二階堂でしたが、新しい提案に目を丸くし、その提案に便乗することにします。
交渉が上手くいった帰り、速水は泥酔した高野をタクシーに乗せました。
その時、高野が落とした鞄の中身を拾ってやりますが、一束の原稿を渡しそびれたことに気がつきます。
それは新人賞落ちをしてしまった矢代の原稿でした。
後日、速水と二階堂は記者会見を開き、トリニティの新企画として二階堂の代表作『忍びの本懐』をコミカライズした『沈む月、金糸雀の夢』を連載すると発表。
速水はそれだけでは飽き足らず、「目玉はいくらあってもいい」と言って、矢代の『バイバイと言うとちょっと死ぬ』の連載を提案します。
さっそく、高野は矢代に連絡を入れましたが、そのまま音信不通になってしまいました。
その頃、速水は新たに目をつけていた人物に会いに行きます。
大人気のファッションモデル・城島咲(池田エライザ)のもとを訪れた速水は、咲がかなりの銃器マニアであることを知り、自身もサバイバルゲームが好きだと言って関わりを持つことに成功。
▼━━
じ
ょ 城
う 島 ”闇を持つモデル”
じ
ま 咲
さ
き
━━▲☑表紙の雑誌は○冊⁉️
超人気✨ファッションモデル👠☑可愛いだけじゃ無い、
意外な趣味の持ち主💥モデルとは別に
やりたい事があるとか…🤔#池田エライザ#ダマキバ登場人物紹介 pic.twitter.com/COe9vdnQkr— 映画『騙し絵の牙』公式 (@damashienokiba) January 29, 2021
そして、速水が「“城島咲”は本名なのか」と尋ねると、咲は質問の意図がわからず不審に思いながらも頷きました。
その後、速水は咲の疲れた表情に気づき、咲のマネージャーに確認します。
どうやら咲は、最近SNSでネットストーカーにつきまとわれていることを気に病んでいるようでした。
そんな折に速水は、咲が本名をアレンジした“ジョージ真崎”の名義で小説『花と硝煙』を執筆していたことを知り、トリニティで連載をしないかと誘います。
事務所にも隠していた事実を知る速水を警戒する咲でしたが、言葉巧みにオファーされ、連載を持つことにするのでした。
一方、高野は仕事の合間に父の書店を手伝っていました。
店にやって来た女子高生が「“神座詠一”の本はないのか」と尋ねてきたので案内しますが、ベストセラー小説を生み出したのにも関わらず、もう何年も作品を出していない幻の作家である神座のことを、何故こんなに若い子が知っているのか不思議に思います。
すると、その女子高生は「この人の作品は映画にもドラマにもなっていないから、本を読むしかない」と言いました。
このことから神座に興味を持った高野は、情報通の久谷に神座の居場所を尋ねますが、神座の今を知る者は誰もいないと返されてしまいます。
神座は約20年前に薫風社から『おかえり、クリスタ・マコーリフ』を出版したのを最後に、行方をくらましていました。
神座は自分の原稿に鉛筆(編集者や校正者によるゲラへの指摘や修正箇所の書き込み)を入れられることを嫌っており、『おかえり、クリスタ・マコーリフ』も自身の手で改稿作業を行なっていたそうですが、こだわりの強い神座に痺れを切らした薫風社が出版を強行してしまったのでした。
結果、小説は大ヒットしてベストセラーとなりましたが、神座は裏切られたショックから姿を消したと言われています。
高野は社内の資料室に保管されていた『おかえり、クリスタ・マコーリフ』の原稿をコピーして自宅に持ち帰り、夢中になって読み込んでいるうちに、あることに気がつきました。
そして、とある飛行場へ向かうと、神座の飛行機を探し始めます。
ちょうど目当ての機体に歩いていく男の姿を見つけ、高野はとっさに「神座先生!」と大声で呼びかけました。
男はその名前に反応して振り返りますが、すぐ前に向き直って飛行機へ乗り込み、飛び立ってしまいます。
実は、高野は作中の風景描写の変化や登場人物が飛行機を操縦する様子から、執筆の間に神座自身が小型機のライセンスを取得し、実際に操縦するようになったのだと考え、ライセンスを取れる飛行場を調べ上げていました。
作中に登場する風景に合った飛行場を全国から探し出し、神座らしき男の後ろ姿を目撃するところまで漕ぎ着けたのです。
高野から一連の話を聞いた速水は感心し、「神座が日本にいるとわかっただけでも意味がある」と高く評価しました。
その後、咲の連載を獲得した速水はトリニティの編集者たちを鼓舞します。
一緒に仕事をしたいと思ったことのある著名人にダメ元で連載のオファーをするよう指示し、相手が渋るようであれば「あの城島咲もやる」と伝えるように命じました。
編集者たちはその言葉を胸に様々な人物にオファーをかけ、次々に行動を起こしていきました。
渦巻く陰謀と策略
ある日、トリニティ編集部に見慣れない若い男性の姿がありました。
何とその男性は、速水の手によってついに連絡を取ることができた矢代でした。
速水が社内を案内すると言って矢代を連れ出すと、そのスタイルの良さと格好良さに社内は騒然とします。
しかし、これはきっかけに過ぎず、速水は久谷に協力を依頼して彼女が司会を務めるトークショーに矢代と咲をセットで出演させたり、週刊誌を焚き付けて二人のスキャンダルをでっち上げたりと、矢代の知名度を上げるための仕掛けを次々に披露していきました。
元から大人気の咲がSNSにツーショットを上げたことも相まって、美男美女の二人は一躍時の人となっていきます。
しかし、そんな中、大きな事件が起こってしまいます。
咲が以前から悩まされていたネットストーカーに、自宅マンションで襲われたのです。
そして、咲は3Dプリンターで自作し、携帯していた拳銃を発砲してしまいました。
正当防衛とはいえ、咲は銃刀法違反の罪で逮捕されます。
トリニティ編集部では、咲が務めた表紙の差し替えや連載の打ち切りが話し合われましたが、速水は事件と表現は関係がなく、そのせいで優れた才能を潰してはならないと重役たちを説得します。
さらに、咲がストーカー被害に苦しんでいた事実が世に出たため、世間からの同情が見込めると考えた速水は、東松をも丸め込みます。
こうして咲の連載を打ち切ることなく、表紙もそのままに発行されたトリニティのリニューアル新装刊号は、重版がかかるほどの売れ行きを見せ、良い結果を出しました。
その矢先、高野は父から書店を畳むことを告げられます。
加えて、直後に父は倒れてしまい、病院に搬送されて緊急手術を受けました。
一方その頃、宮藤は不祥事をも利用する速水を快く思っておらず、反撃に出ようと考えていました。
同じく速水に対して良くない思いがあったトリニティ編集部の柴崎は宮藤らに協力し、矢代に声を掛けていました。
実は、矢代は本業である小説家としての活動を疎かにし、トリニティの顔としての活動をさせられていることに不満を持っていたのです。
そして、矢代は宮藤によって小説薫風へと引き抜かれていきました。
さっそく、小説薫風は記者会見を開き、トリニティが矢代の原稿を横取りしたこと、その横取りされた『バイバイを言うとちょっと死ぬ』を小説薫風で連載することを発表します。
しかし、この会見で矢代は「この小説を書いたのは僕じゃない」と衝撃の発言をしました。
この作品は失踪した友人が書いたもので代わりに応募したこと、宮藤が芥川賞を取らせてやるというのでその気になってしまったことなど、赤裸々に告白します。
記者たちが騒然とする中、司会進行をしていた江波が会見を中止にする旨をアナウンスしますが、宮藤は記者が言った「薫風社も落ちたもんだな」という言葉に憤慨し、逆ギレしてしまいます。
こっそり会見を見に来ていた高野は、檀上から降りた矢代が速水とともに会場を後にする姿を目撃し、二人を追いかけました。
見つかってしまった速水は、矢代と高野を連れ、とあるホテルの一室へと向かいます。
そこで待っていたのは、あの幻の作家・神座(リリー・フランキー)でした。
実は、『バイバイを言うとちょっと死ぬ』を執筆したのは神座であり、約20年ぶりに執筆した小説に対する世間の反応を見るため、“矢代聖”という名前を使って発表したといいます。
高野が落とした原稿を拾った速水は、この作品を読んで神座のものであると気がつき、売れない役者に矢代を演じさせ、プロモーション活動をさせていたのでした。
真実を知った高野は「人を騙すのがそんなに面白いですか」と怒りをぶつけましたが、速水は迷わず「面白い」と言い放ちました。
後日、会見での失態から宮藤は辞任し、小説薫風も廃刊することに。
これを機に、東松は本格的にプロジェクト・KIBAを始動させようとします。
速水には、トリニティを1年以内に廃刊にすること、速水をプロジェクトの重役に就けること、このプロジェクトは先代社長が約5年前から温めていた構想だったことを明かしました。
そこへやって来たのは、アメリカから戻ってきたばかりの惟高でした。
惟高はプロジェクト・KIBAは時代遅れだと東松に告げると、社長の座を渡すように言います。
それというのも、惟高は自らアメリカでAmazonとの提携交渉を成立させ、薫風社のコンテンツを読者に直接届ける新しい方法を考え、行動していたのでした。
さらに、その裏には速水と惟高が手を組んでいる事実があります。
惟高はかつて速水が編集長だった雑誌のファンであり、社内から古い考えや保守派の分子を排除すべく、自身による改革のために速水を薫風社へ引き込んでいたのでした。
東松は惟高や速水のやり方を「無理だ」と言って反対しますが、速水は「無理だからこそ面白い」と告げます。
そして、「お疲れ様でした」と声をかけられた東松は、自身の今までを悔やみながら辞任していきました。
実は、東松は「KIBA」のことをプロジェクトの内容通り「K(言葉)・I(イメージ)・BA(場)」だと思っていましたが、先代社長のイニシャルである「K.IBA」から名付けられたものでした。
会心の一撃
高野は撤収が始まった小説薫風の編集部を訪れます。
江波は編集長を辞任し、総務部預かりとなることが決定したそうです。
「肩の荷が降りた」と語る江波は、自分は高野にとって良い上司じゃなかったと謝ります。
そして、高野に「良い本を作って」と微笑みました。
一方、トリニティは存続が決まり、速水はAmazonでウェブコンテンツとして販売することをメンバーに告げますが、一同はいずれ人員削減するのだろうと消極的な様子です。
そんな中で迎えた12月23日。
速水はついに復帰を決意した神座の新連載の担当を、高野に任せることにしました。
高野と速水は会社の屋上で語り合い、速水はトリニティが落ち着いたら、また新しく面白いことを始めるためにトリニティを離れると話します。
ところが、先にトリニティを離れたのは高野でした。
高野は速水のデスクに退職届を残し、静かに薫風社から飛び出して行ったのです。
7ヶ月後。
高野は父が畳もうとしていた書店を継ぎ、リニューアルオープンさせていました。
コンセプトは「この書店でしか手に入らない物を売り、出版する本屋」。
高野は出版社に依存せず、本当に良いものや自分が売りたいものを読者に直接届けようと、新たな形の本屋を目指し、久谷のトークショーにも出演するなど活動を始めたのです。
店長は体調が回復した父、そして、スタッフとして薫風社を辞めた江波がいました。
高野が薫風社を辞めた2日後の、12月25日。
高野は神座とともに、飛行場で話し合っていました。
神座は『バイバイと言うとちょっと死ぬ』をしばらく寝かすことにした代わりに、新しく物語を執筆していると言います。
高野は自分の構想を語り、神座は高野の企画に協力することにしました。
そうして、高野の書店には神座の最新作『非Aの牙』が並んだのです。
3万5千円という、かなり攻めた価格設定ですが、神座の最新作を求める人々で長蛇の列ができていました。
その頃、高野に出し抜かれていたことを知った速水は、あの屋上で激しい怒りと悔しさに駆られていました。
後日、速水は咲が服役している刑務所を訪れます。
そこで咲に「獄中で新作を執筆しないか」と語りかけました。
咲はまず断りますが、速水に「君は書くことが生きること」「僕は書かせるしかない」と言われ、心が揺らぎます。
そして、咲が去り際に「それ、本当に面白いですか?」と問うと、速水は迷わず言いました。
「多分、めちゃくちゃ面白いです」と。
【ネタバレ】『騙し絵の牙』感想・考察
複雑ながらエンタメ性の高いストーリー
塩田武士による同名小説が原作の映画『騙し絵の牙』。
塩田は俳優の大泉洋を主人公として想定し、出版業界と大泉を4年間に渡って徹底的に取材したうえで書き上げたといいます。
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元々大泉と親しい関係にあった編集者が持ち込んだ企画であり、編集者やマネージャーの話を聞きながら、「どんな大泉洋を観たいのか」について話し合ったうえで出来上がった作品で、実際に映像となったことで原作段階から大泉が想定されていたという強みが大きな魅力となって現れました。
大手出版社を舞台に描かれる陰謀と策略の物語は、出版業界の厳しい現状を丁寧に描き、独特の人間関係を表現しながらも、エンターテイメント性の強いものとなっています。
登場人物が多い作品は役名と姿がすぐに合致せず、観ている側がなかなか物語に集中できないパターンが多々ありますが、本作は登場人物の紹介に工夫がされているように感じました。
例えば、冒頭で社長が亡くなることにより、突如始まる次期社長争い。
ニュース番組で特集されている場面を挟むことで、実際の番組のようにパネルを使えるので、自然に勢力図を見せることができます。
ここで番組のゲストとして勢力図の説明をするのは、小林聡美演じる文芸評論家・久谷。
久谷は作中において、松岡茉優演じる高野に情報を与える役回りなので、久谷が説明をすること自体も自然ですし、「そういう役回りなんだ」ということを観ている側が自然に理解できます。
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バトルゲームのような爽快感のある音楽で気分が盛り上がることも、エンドロールが書籍風の縦書きになっていることも、エンターテイメント性を強める要素になっています。
“牙”を剥いたのは誰だったのか
『騙し絵の牙』で注目したいのは、速水の“主人公性”についてです。
物語の主人公は、大泉演じる速水。
飄々としていて、不思議と存在感が大きな男です。
巧みな話術で人々を翻弄し、陰謀も策略も裏切りも何でも来いと言わんばかりのコミュニケーション能力。
どこか冴えない雰囲気を残しながらも、そのカリスマ性は敵からも認められるほど。
優しそうにも見えますが、「面白い」のためなら酷なことも厭わないような、そんな冷たさも感じられるかもしれません。
urara
広告や予告編で押し出されているような「騙し合いバトル」とは少し違った印象を受ける本作は、出版社内の勢力争いの中で各々の思惑や過去、本性とともに、心に秘めた熱い気持ちが見えてくる作品となっています。
その中で、速水は人々の心をかき乱し、状況をかき回すだけかき回して、自身は飄々とした態度を崩しません。
そんな速水が心を乱される存在、それが高野です。
時に素で語り合い、彼女の能力に驚き、感心する…。
そして、最後には高野に出し抜かれ、初めて大きな感情の揺れを露わにします。
速水が感情を揺さぶられたのは大きく二回。
urara
今まで各方面に牙を剥いてきた速水が、初めて牙を剥かれた存在。
自身の心の内を素直に明かしながらも、最後の最後に強烈な牙を剥く…。
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映画『騙し絵の牙』キャスト・あらすじ・ネタバレ感想・考察まとめ
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映画『騙し絵の牙』#大ヒット上映中
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コメントが到着👋🤣週末は、ぜひ劇場で#騙し絵の牙 をお楽しみください😏☝#大泉洋 #松岡茉優 #宮沢氷魚 #池田エライザ #中村倫也 #佐野史郎 #木村佳乃 #佐藤浩市 #吉田大八 pic.twitter.com/vHd9JAOZ0O
— 映画『騙し絵の牙』公式 (@damashienokiba) April 2, 2021
- 先の読めない展開にワクワクが止まらない
- 豪華キャストを贅沢に使ったエンターテイメント作品
- 本好き、エンタメ好きの方必見!
いかがだったでしょうか。
『騙し絵の牙』は2021年3月26日より公開中。
ぜひ、原作小説とあわせてお楽しみください!