2015年1月~3月NHKBSプレミアムにて放送されたドラマ『だから荒野』は、桐野夏生原作の小説をドラマ化したものです。
小説執筆にあたっては、前年に発生した東日本大震災を意識していたことを作者が明かしています。
本ドラマでは、原作同様に長崎の原爆がテーマとなっており、不可避な災害に見舞われた人々の人生から普通の主婦が多くのことを感じ取り、現実の不満を解消し立ち直っていきます。
主人公は、専業主婦・森村朋美(鈴木京香)です。
朋美は46歳の誕生日に、身勝手な夫や息子たちと決別し、1,200キロの旅路へ出発します。
初めて高速道路に乗った朋美は西へとひた走り、路上で次々に衝撃的な出来事に遭遇し、途方に暮れてしまいます。
美貌の青年・亀田章吾(高橋一生)と老人・山岡孝吉(品川徹)の二人連れに拾われ、たどり着いたのは長崎でした。
かつて原爆により荒野と化したこの町で様々な人々と巡り会ううちに、朋美は自分の心の中にある「荒野」の存在に気づき、再生への道を模索し始めます。
約4週間の長崎ロケを敢行し、坂の多い長崎の美しい景色もドラマの見どころになっています。
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目次
【ネタバレ】『だから荒野』あらすじ・感想
第1話「逃げる主婦」あらすじ・感想
専業主婦の森村朋美(鈴木京香)は46歳の誕生日に家族を外食に誘います。
しかし、次男の優太(濱田龍臣)はドタキャンし、夫の浩光(杉本哲太)はママタクならば行くと言い出します。
家族から祝いの言葉もなく、浩光は「誰もお前のことなんか見てないよ」と言います。
朋美は、家族の愛のない対応に家出を決行します。
旧友の知佐子(YOU)に連絡を取り、家を出たことを話すと、驚きながらも応援してくれました。
知佐子と会話をする中で、朋美は以前付き合っていた人がいる長崎に行くことを決意します。
はじめて乗った高速道路で一路西へ向かい、パーキングエリアで裸足で歩いている百音(小野ゆり子)を拾いホテルに泊まりますが、翌朝百音は朋美の車と共に消えてしまいました。
ミルトモ 編集部
多くの主婦は、夫や子どもの無神経な言動に苛々したり、自分の頑張りが認められないと感じる時が数多くあります。
鈴木京香が美しさを押し隠し、疲れた主婦の姿をリアルに演じているところに共感が持てます。
また、杉本哲太のダメ夫ぶりが鼻につくところがさすがの演技です。
家出という大胆な行動に出る朋美ですが、最初の夜から波乱があり、これから道中どうなっていくのだろうという期待があります。
第2話「もう一つの人生」あらすじ・感想
車がなくなった朋美が「九州まで」と書いた段ボール紙を抱えてヒッチハイクをしていると、二人組の男性が拾ってくれます。
朋美は美貌の青年・亀田章吾(高橋一生)と老人・山岡孝吉(品川徹)の車に乗って長崎へ向かいます。
途中、朋美は山岡から長崎での被爆体験を聞きます。
その夜、宿で朋美は章吾たちに家出してきたことを告白します。
夜が更け、章吾が朋美の部屋にやってきますが朋美は拒みます。
朝になると章吾は消えていました。
朋美は山岡を乗せて長崎へやってきます。
ネットカフェで寝泊まりをしていると、次男の優太のブログを見つけ、これまで知らなかった一面を知るのでした。
ミルトモ 編集部
章吾と山岡に出会った時、朋美はスコールのようなにわか雨の中、水たまりの中で裸足でまるで踊っているようでした。
ミルトモ 編集部
章吾たちもこの朋美の魅力にひかれ、車への同乗をOKしてくれたのかもしれません。
もう1つ、章吾を演じる高橋一生の魔性の魅力が垣間見えて、ワクワクしました。
エイプリルフールなので嘘つき置いとく。#だから荒野 pic.twitter.com/TsvV0Eat1I
— すだち (@s_donc0206) March 31, 2017
掴みどころのない謎な雰囲気を静かに醸し出しています。
ミルトモ 編集部
第3話「初恋の男」あらすじ・感想
朋美は初恋の男・宮内繁(豊原功補)に再会しますが、かつてのりりしい面影はなく、失望します。
浩光はゴルフサークルの竹内(笹野高史)から女性会員へのセクハラを疑われ、また母の美智子(茅島成美)には妻の家出を知られてしまいます。
朋美は三浦(泉谷しげる)の食堂でバイトを始めますが、忙しい中、山岡に付き添うはめになったため、章吾に連絡をとろうと勤務先に電話をします。
しかし、そこに彼は在籍していませんでした。
ミルトモ 編集部
朋美の好きになった男性は頼りにならず、結局は自分自身で荒野を乗り切っていかなければならないのですね。
また、山岡も今回は朋美のお荷物的な感じになってしまい、章吾も連絡がとれず不信感満載です。
ミルトモ 編集部
第4話「母親失格」あらすじ・感想
知佐子の彼氏登場で福岡行きをドタキャンされた朋美は山岡の家に居候することになり、生活費を山岡に渡します。
ある日突然、山岡家のガスが止まったため朋美がガス会社に問い合わせると、料金未納のためと回答され不審に思います。
朋美が渡した生活費も見つかりません。
山岡は原爆で生き残った自分を罪深いと思い、生涯独身を貫いたと言います。
朋美は「優太ならあげるわよ」と知佐子に言ったことを山岡に告白し、自分は母親失格だと言うのでした。
一方、ネットで母親の書込みを見つけた優太は、タマコ(フィギュア)片手に高速バスで一人長崎へ向います。
そんな中、老婦人・加藤桂子(中原ひとみ)の家でダンスを踊ったりと謎を深める章吾が怪我を負って山岡の家にやってきます。
ミルトモ 編集部
原爆を体験し生き残った者にしかわからない罪深く思う気持ちを厳かに受けとめ、自分自身の置かれた立場を省みます。
この世に生を受けたものの命を大切にしなければなりません。
まして、自分が産んだ子どもならなおさらです。
第5話「息子の家出」あらすじ・感想
章吾が顔に傷を負って、山岡家に転がり込みます。
朋美は章吾に不審な想いを抱きます。
そんな中、優太が家出して長崎に来ます。
朋美は、山岡に付き添って祈念館に行くよう優太に促します。
優太は入場者に無視されながらも、原爆の悲惨さを語る山岡の姿に何かを感じていました。
一方、山岡の通帳から大金が引き出されていると知った朋美は章吾への疑いを山岡にぶつけると、山岡は章吾を信じていると言って「人を疑うことは心を貧しくする」と朋美を諭しました。
山岡の教会での講演に付き添った朋美は、章吾が養護施設の出身だったことを知ります。
ミルトモ 編集部
この時点で御年80歳を迎えた品川の原爆の語り部役は、実にはまり役でした。
章吾を疑う朋美をピシッと戒めるところも、さすがの貫禄でした。1本筋が通っています。
また、優太にとって山岡との交流はこれからの人生の大きな指針を示してくれそうです。
ミルトモ 編集部
第6話「妻と夫」あらすじ・感想
優太が作った砂漠のジオラマを見て、章吾は涙を流します。
朋美は、章吾を疑った自分を恥ずかしく思うのでした。
度重なる中抜けで三浦の食堂をクビになった朋美は、その三浦の紹介で大森(大高洋夫)の居酒屋で働くことになります。
山岡に感化された優太は長崎でやり直したいと言います。
一方、朋美の夫・浩光は近くある夫婦同伴の接待のことで悩んでいました。
百音に乗り逃げされた車が大阪で見つかり、確認のために大阪の警察署に駆けつけた朋美は「車はあげたもの」とすでに連行されていた百音をかばいます。
朋美は警察に来た浩光と久々に再会しますが、相変わらずの態度に改めて幻滅し、優太と二人で長崎で出直そうと決意します。
朋美は、高齢者向けの宅配弁当の仕事を始めるため、ボランティアで高齢者に知り合いの多い章吾に協力を求めました。
そんな中、老婦人・桂子の甥・順吉(工藤俊作)が弁護士を連れて山岡の家に乗り込んできました。
ミルトモ 編集部
長崎にやってきて、朋美自身は山岡の影響もあって視野が広くなり、だいぶ前向きになりました。
ミルトモ 編集部
優太と章吾の今後の展開も気になります。
第7話「悪魔と天使」あらすじ・感想
山岡家に弁護士が押しかけ、章吾がボランティアと称して老人からお金を詐取していると言います。
朋美が問い詰めると、章吾は「僕はダメな大人なんだ」と優太にわびて山岡家を去ります。
山岡は幼なじみの篠崎(奥野匡)から、原爆症の妹・淑子と結婚しなかったことを責められます。
一方、東京では浩光のもとを優太の担任教師・川井(山下容莉枝)が訪ねてきました。
担任によると、優太は学校でイジメにあっていたということでした。
さっそく長崎に来た浩光は、優太と一緒にいるのはエゴだと朋美を責めるのでした。
ですが朋美は、百音から初めて会ったときより見違えたと言われ勇気をもらいます。
その後、章吾が山岡から詐取した金を返しにきました。
山岡は章吾を招き入れ「私は深い罪を犯した」と告白をし始めます。
ミルトモ 編集部
信頼する山岡は幼馴染に責められるようなことをしていて、自分から罪を犯したと告白します。
朋美が優太と一緒にいるのはエゴなのでしょうか。
ミルトモ 編集部
第8話(最終回)「告白」あらすじ・感想
山岡は、朋美、優太、章吾に「廃墟に立つ少年」は自分自身であり、自分のせいで妹を死なせたと告白します。
朋美は、山岡に会って救われたと感謝の気持ちを伝えます。
山岡は、自分こそ朋美に会って救われたのだと語ります。
章吾は警察に出頭する決意を固め、人を騙して生きてきたと朋美に告白します。
「抱きしめてもいいですか?」#だから荒野 pic.twitter.com/tOs9uIxEm6
— てん (@yumemiruusagi_t) December 29, 2016
最後に桂子に会った章吾は、桂子が騙されていることに気づきながら、あえて騙され続けていたことを知ります。
優太は、山岡の話を語り継ぎたいと「語り部の会」に参加します。
浩光と長男・健太は、優太の語り部デビューを見るため、車で長崎へやってきました。
優太は聴衆の前で、自分が引きこもっていたことや母親が家出したことを話します。
人前で話す優太を見直した浩光は、朋美のことを家事をこなす便利なおばさんではなく、ひとりの人間として尊敬します。
帰って来いという浩光に、朋美はもう少しここで頑張りたいと答えます。
そして、今日も朋美は山岡に付き添い家を出ます。
ミルトモ 編集部
優太が勇気を出して語り部をする姿は感動的でした。
そして、それを見るために浩光と長男・健太が朋美と同じように車で長崎までやってきました。
ミルトモ 編集部
父子がこれまで顧みなかった母の印象を語り合い、それを通して気持ちが通じ合いました。
朋美は夫のもとに帰らなかったけれど、家族それぞれが今までとはちょっと違い、未来に希望を見出そうとしています。
『だから荒野』まとめ
もう1回観たいドラマ#だから荒野 #高橋一生 pic.twitter.com/dQyl9RsqeM
— yumi_1224 (@pripriprincess) October 18, 2017
家族に対して、朋美のようなやりきれない気持ちを抱えている主婦はたくさんいます。
朋美は家出という大胆な行動に出て、行く先々で色々な人に出会います。
最終は長崎の山岡のもとで、ゆっくりと頭を冷やして今までのことや今後のことを考えることができました。
この先、覚悟を持って家族のもとに帰った朋美は、もう家出はせず、どっしり構えることができる気がします。
最後は、家族それぞれもお互いを尊重できるようになって良かったです。
人間、誰しも心の奥に罪を抱え、荒野を歩いています。
人生を達観し、心に罪を抱えて一人荒野を歩いてきた先人達の言葉から、それぞれが希望の光を見出しています。
自分の人生を荒野から沃野に変えて行こうと努力し、前進することに人生の意義がある、という主張が強く感じられました。
山岡の訥々と語る長崎の原爆の悲劇と現代家庭の危機が上手くシンクロしていて、見ごたえのあるドラマでした。
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