映画『クリード 炎の宿敵』は、『クリード チャンプを継ぐ男』の続編にあたる作品です。
同時に、あの超名作『ロッキー』シリーズのその後を描くストーリーでもあります。
この「炎の宿敵」とは誰のことを指していて、どんな物語なのか。私なりにヒモ解いていきます。
- 涙なしには観られない感動の名作
- 男たちの様々な想いが交錯する物語
- そして、男たちの様々な成長を描く物語
それではさっそくネタバレありでレビューしたいと思います。
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目次
『クリード 炎の宿敵』作品情報
作品名 | クリード 炎の宿敵 |
原題 | Creed II |
公開日 | 2019年1月11日 |
上映時間 | 130分 |
監督 | スティーヴン・ケイプル・Jr |
脚本 | ジュエル・テイラー シルヴェスター・スタローン |
出演者 | マイケル・B・ジョーダン シルヴェスター・スタローン テッサ・トンプソン ウッド・ハリス フィリシア・ラシャド フロリアン・ムンテアヌ ドルフ・ラングレン |
音楽 | ルドウィグ・ゴランソン |
【ネタバレ】『クリード 炎の宿敵』あらすじ・感想
ハンカチ必須。3人と3つの想い。
①アドニスvsヴィクターの1戦目と、ロッキー・バルボアへの感情移入
かつてロッキーは、ライバルであり親友のアポロを目の前で殺されてしまいます。(『ロッキー4/炎の友情』参照)
ロッキーは、あのとき自分がタオルを投げ込んで試合を終わらせるべきだったのではないか?と後悔しているのです。
アポロの死は、ロッキーにとって最大のトラウマとなっています。
アポロの息子であるアドニスと出会ったときのロッキーの気持ちを思うと泣けてきます。
今作、まさにそのトラウマが呼び起されるのです。
ロッキーは、アドニスの試合をテレビで見ています。
その対戦相手はヴィクター・ドラゴ。アポロを殺したイワン・ドラゴの息子です。
追い込まれてしまうアドニス。
その試合を見つめているロッキー(=シルヴェスター・スタローン)の演技が素晴らしい。
まさにあの時のトラウマを思い出す不安な表情。
「親友のアポロだけでなく、その息子も同じ目に合うのではないか。」
思わずロッキーの気持ちに感情移入してしまいます。
シルヴェスター・スタローンの表情、そこから読み取れる感情。涙なしには観られませんでした。
②アドニスvsヴィクターの2戦目と、イワン・ドラゴへの感情移入
※イワン・ドラゴ(以下:ドラゴ)、ヴィクター・ドラゴ(以下:ヴィクター)と記載。
今作のもうひとりの主人公と言っても過言ではない存在、イワン・ドラゴ。
ロッキーに敗れてしまった彼は、なにもかも失います。
「オレは全てを失った。祖国も。尊敬も。」
このように語るドラゴは、息子ヴィクターを最強のボクサーに育て上げます。
アドニスとの1戦目で注目され、祖国の信用を取り戻しかけます。
そして迎える2戦目。ドラゴはヴィクターに大いなる期待をしています。
1作目の『ロッキー』で、試合を控えたロッキーはこのように語ります。
「最後のゴングが鳴ってもまだ立っていられたら、オレがただのゴロツキじゃないことを生まれて初めて証明できるんだ。」
今回はドラゴにとって「ただのゴロツキじゃないことを証明するための戦い」だと言えるのではないでしょうか。
すべてを失ったドラゴがこのチャンスに賭けるのです。
試合終盤でヴィクターはアドニスに押されてしまいます。
今度こそ信頼を取り戻せると思っていたのに…。
ここでドラゴは、かつてロッキーができなかったことを成し遂げます。
ヴィクターのためにタオルを投げ込み試合を終わらせるのです。
ドラゴが勇気を振り絞ったこの局面は、ドラゴが33年ぶりにロッキーに勝てたとも言えると思うのですよ。
その後、今度はヴィクターと一緒に自分もトレーニングをするドラゴの姿も含めて、涙なしには観られませんでした。
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③試合と私生活の交錯。アドニス・クリードへの感情移入
主人公アドニスは、今作でビアンカと結婚し娘のアマーラが生まれます。
アマーラにはビアンカと同じく聴覚の障がいがあるのでした。
初めての娘に戸惑うアドニスは、強い父であろうとします。
しかし、すでに彼は1つの困難にぶつかっています。
ヴィクターとの1戦目で容赦なくやられてしまっていたのです。
誰よりも強くあろうとしているアドニスに重い現実がのしかかっています。
ある日、アドニスはアマーラを連れてジムへ行きます。
ボクサーとしての自分、そして父親としての自分を責めます。
思わずアマーラの前で泣き叫んでしまいます。しかし難聴のアマーラには聴こえません。
ひとりで涙を流すアドニスの姿に、涙なしには観られませんでした。
このように、アドニスとヴィクターの1戦目ではロッキーの気持ちを思い泣き、2戦目ではドラゴの気持ちを思い泣き、試合以外のところではアドニスの気持ちを思って泣いてしまう。
『ロッキー』の歴史がつながって、すべてにおいて素晴らしい映画なのです。
「炎の宿敵」とは誰にとっての誰のことを指しているのか
邦題「炎の宿敵」。
もちろんドラゴを意識したタイトルです。
そして同時に、ドラゴを演じたドルフ・ラングレンのことも意識しているようにも捉えられます。
ラングレンはスタローンをはじめとして、実は様々なアクションスターと戦っています。
『ユニバーサル・ソルジャー』シリーズではジャン=クロード・ヴァン・ダムと、『エクスペンダブルズ』ではジェット・リーと、『バトルヒート』ではトニー・ジャーと戦っています。そして、多くの場合ラングレンは敗北しています。
『ロッキー4/炎の友情』で注目されたあと、ドラゴと似たような役を演じては負けるというパターンが数多くありました。
強いイメージがあるからこそ、やられ役になってしまうのです。
ラングレンは『ロッキー4/炎の友情』で売れたが故に、不遇な役者となってしまったとも言えるかもしれません。
これは正にイワン・ドラゴの人生と重なります。
ラングレンは次のように語っています。
「自分は再びドラゴを演じることに興味がなかった。」
出典:『クリード炎の宿敵』パンフレット
ラングレンは、なぜ再びドラゴを演じようと思ったのでしょうか。
彼もまた、ただのゴロツキじゃないことを証明しようとしたのではないでしょうか。
それをする役に、良くも悪くも自身の転機となった役を選んだのです。
結論を言えば、今作はまさに史上最高のドルフ・ラングレンを見ることができます。
ドラゴ役に再び向き合ったラングレンに拍手を送りたくなります。
自身にとって良くも悪くも特別な存在であるドラゴに、ラングレンは複雑な想いを持っていたことでしょう。
ある意味で「宿敵」だったのです。
「炎の宿敵」とは、ドルフ・ラングレンにとってのイワン・ドラゴのことを指しているとも捉えることができるのです。
『クリード 炎の宿敵』まとめ
以上、『クリード 炎の宿敵』について感想と考察を述べました。
- 様々な男たちの人生を描いたドラマ
- 全キャストの素晴らしさ
- 『ロッキー』シリーズ、『クリード』シリーズの最新作にして最高傑作
なお、今作をご覧になるうえで、『ロッキー』『クリード』シリーズすべてを見ているに越したことはありませんが、今作だけ見ても充分に楽しめます。(もし、事前に見るとしたら『ロッキー4/炎の友情』がおすすめ)
40年以上前に作られた大傑作映画『ロッキー』の魂が、今もなお受け継がれています。
ご覧になった誰しもに特別なものを残してくれる人生の教科書です。
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