『ザ・コンサルタント』は、素性のすべてが謎に包まれた会計コンサルタントを取り巻くベン・アフレック主演のアクション。
シカゴの田舎町に事務所をかまえた会計士クリスチャン・ウルフの請け負った企業財務調査の仕事をストーリーの主軸に、「会計士」の正体を探る金融犯罪の捜査官クリスチャンの生い立ちを回顧する視点で物語は進んでいきます。
裏社会にかかわらない、危険のない「安全な仕事」と引き受けたはずの帳簿監査が、思わぬ方向に向かったことで、全ての糸が絡み合い終結していく見事な構成です。
世界中の犯罪組織の裏帳簿を扱いながら、長年生き延び続ける男の正体を紐解く、謎解きミステリーでもあります。
- 田舎のしがない会計士の本当の正体
- 引き受けた「安全な」仕事
- 謎の「会計士」の正体を追う捜査官
- 人と違う息子に厳しい現実に立ち向かう力をつけさせる軍人の父
- 命を狙わる経理担当者のディナ
- 「会計士」のもつモラル
それでは『ザ・コンサルタント』をネタバレありでレビューします。
目次
映画『ザ・コンサルタント』作品情報
作品名 | ザ・コンサルタント |
公開日 | 2017年1月21日 |
上映時間 | 131分 |
監督 | ギャビン・オコナー |
脚本 | ビル・ドゥビューク |
出演者 | ベン・アフレック アナ・ケンドリック J・K・シモンズ ジョン・バーンサル ジョン・リスゴー ジェフリー・タンバー ダエグ・フェアーク ロン・ユアン ゲイリー・バサラバ グレゴリー・アラン・ウィリアムズ |
音楽 | マーク・アイシャム |
【ネタバレ】映画『ザ・コンサルタント』あらすじ・感想
引き受けた「危険のない」はずの仕事
イリノイ州シカゴ郊外に小さな会計事務所をかまえるクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)の正体は、犯罪組織や危険人物の脱税や資金洗浄を行う裏帳簿を仕切る裏社会の会計士。
そんなフロントとして看板を掲げる事務所を開いていても、犯罪とは無縁で家計の苦しい地元の農家夫婦には、真摯に税金対策の相談にのる、無愛想で良心的な会計士のクリスチャン。
蔵商店
犯罪を生業とする顧客を多くもつクリスチャンに、「命の危険のない、安全な仕事」をしてほしいと心配する助手の言葉に耳を傾け、次の仕事に選んだのは大企業リビング・ロボ社の会計監査の仕事。
リビング・ロボ社に使途不明金を発見した経理担当のディナ (アナ・ケンドリック)が、数か月かけて見つけた帳簿上の矛盾を精査して欲しいというのが依頼内容です。
リビング・ロボ社の15年分の財務書類を驚異的な集中力で読み込んで6,100万ドルにも及ぶ不正送金を見つけ出したクリスチャンでしたが、その報告を前に、財務担当役員のエド (アンディ・ウンバーガー)の不審な死により、クリスチャンの仕事は社長のラマー・ブラックバーン(ジョン・リスゴー)により一方的に打ち切られてしまったのでした。
オープニングで苦しい家計にあえぐ農業を営む夫婦の相談に、税金対策に知恵を授ける愛想もそっけもないクリスチャンですが、コンサルティングのあとに夫婦は大喜び!
普通の生活をおくる罪のない人たちには、良心的で親切な会計士であることがわかるのです。
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「会計士」の正体を探るメディナ捜査官
近く引退する金融犯罪捜査網のレイ・キング(J.K. シモンズ)局長に、裏社会の裏帳簿を完璧なまでに管理、悪党たちに殺されることなく生き延び続ける謎の男の正体を探る特命をうけたメディナ捜査官(シンシア・アダイ=ロビンソン)。
その「会計士」と呼ばれる伝説の男の手掛かりは、「カール・ガウス」、「ルー・キャロル」の2つの偽名と後ろ姿の写真だけ。
難航する「会計士」の捜査に知恵を絞るメディナがたどりついたのは、たった1人で、マフィアのアジトにのり込んで9人の悪党の命を奪ったニューヨークの殺人事件。
マフィアの張込み捜査で残っていた録音ファイルに、かすかに残る犯人の声に気づき、増幅させた音声。
そこには、完璧な抑揚とピッチで童謡「ソロモン・グランディ」を呪文のようにとなえる、信じがたい犯人の声が録音されていたのでした。
その声を分析したヒントから、「会計士」の偽名が、過去の有名な数学者で、自閉症をもつ人物のものと突き止めたメディナは、確実に「会計士」の正体へと近づいていくのでした。
当時の張込み捜査に、助っ人として捜査官として参加していたキング。
マフィアが殺された現場に踏み込み、姿なき「会計士」にたった1度だけ出会ったと回想します。
9人もの人間を殺した直後の「会計士」の「お前は、どういう人間か?」という問いに、「冴えない捜査官かもしれないが、俺はいい父親だと誇れる」と答えたキング。
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軍人だった父の教え
リビング・ロボ社から一方的に仕事を打ち切られ、仕事をやり通すことができず、動揺がかくせないクリスチャンに傭兵たちが襲いかかります。
スナイパーでもあり、マーシャルアーツに精通するクリスチャンは、危険な男たちの襲撃に臆することなく敵を倒し、難を逃れるのでした。
そして、そこでリビング・ロボ社の不正を発見したディナの命も狙われていることを知ると、彼女の自宅に急行、傭兵に襲われ危ないところを救いだすのでした。
ただの会計士だとばかり思っていたクリスチャンが、冷静に襲撃する男たちを倒すさまに驚くディナ。
ディナを助け出し、逃れた高級ホテルでポツポツと自分のことを話すクリスチャンにディナは耳を傾けたのでした。
クリスチャンは高機能自閉症で、幼少のころから人とかかわることがうまくできず、家族とともに苦労してきました。
軍人だった父は、人と違うクリスチャンと弟を分け隔てすることなく、決して甘やかすことをせず、母が去ってなお、兄弟たちを極限にまで追いつめ、マーシャルアーツを含む特殊技能を教え込んだというのです。
少年時代に基地から基地へと17年間で34回もの引っ越しつづけたクリスチャンは、「人生は選択肢の連続」という父に「犠牲者になるか、ならないかは自分次第」とスパルタだった父の言葉を胸に強く刻んでいるのでした。
幼少の頃に、パニックを起こすと言葉の韻を踏んだ、童謡「ソロモン・グランディ」を繰り返すことで、落ち着きを取り戻していたクリスチャン。
成人してなおクリスチャンは強いストレス下では、そのわらべうたをつぶやくのです。
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謎の青年「囚人831号」
「会計士」につながるわずかな情報を元に、粘り強く捜査を続けるメディナは、ついにシカゴの郊外で小さな会計事務所をかまえる会計士「クリスチャン・ウルフ」の存在を探しあてます。
会計事務所のほかに、ネイルサロン、中華料理屋、洗濯屋と現金決済の商売をする店舗との共同経営を隠れ蓑に、マネーロンダリーを行う手口に気付いたメディナ。
ただ一つ腑に落ちないのが、世界中の裏社会の勘定管理、資金洗浄をしているのもかかわらず、ハーバー神経科へ100万ドルもの多額の寄付をしているという事実。
そのお金の流れだけがどうしても理解できないキングとメディナでしたが、ついに「会計士」の正体をつきとめたのです。
そして急行したクリスチャンのシカゴの自宅で、クリスチャンが実はマフィアの資金洗浄を40年間務めていた「ブラックマネーの神様」と言われたフランシス・シルバーバーグ(ジェフリー・タンバー)と同房だった「囚人831号」だと、気づいたキング。
クリスチャンは年老いた裏社会の会計士が、獄中で目をかけ、手塩にかけ育てたサバン症候群で数字に強い天才的な能力をもつ青年、名前すらわからない「囚人831号」だったのです。
そして、ニューヨークのマフィアの殺害は、出所直後にフランシスが殺されてしまったことに対するクリスチャンのマフィアへの復讐だったと確信します。
そのキングも、「会計士」が正体に迫った捜査の手からすり抜け続けることを、悔しがる様子もなく、淡々とクリスチャンの行動を理解するのでした。
父とも師とも仰いだフランシスの死の復讐として、マフィアを殺した「会計士」のクリスチャンと出会ったキング。
これまで、キングの検挙してきた金融犯罪は、「会計士」の助手からの電話によるものといい、クリスチャンは「会計士」の道義に反する犯罪者を捕まえることに協力してきたというのです。
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悪党の道義
リビング・ロボ社の巨額の不正資金の流用のからくりが、明るみに出ることを恐れた人物こそ、自分たちの命を狙う黒幕だと気づいたクリスチャン。
その正体が、リビング・ロボ社の株価の操作を目的とした社長のラマー自身だと気づいたクリスチャンは、ディナを命の狙い続ける危険なもくろみに終止符を打つため、傭兵たちを率いるブラクストン(ジョン・バーンサル)の待ち受ける、ラマーの自宅に単身乗り込むのでした。
そして、ラストでは「会計士」が、名前も事務所も全てを捨てて、また新たな土地に向けてトレーラーを引きシカゴを後にします。
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映画『ザ・コンサルタント』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
- 数字に天才的な能力を持つ会計コンサルタント
- 大企業の不正を探し当てた経理担当と会計士
- 「会計士」の正体を探る捜査官メディナ
- 悪党の道義
- 正体不明のままのコンサルタント
以上、ここまで『ザ・コンサルタント』をレビューしてきました。
『ザ・コンサルタント』は、ベン・アフレック主演のアクションでもあり、ミステリー。
クリスチャンによる企業の財務調査と、「会計士」の正体を探るメディナの捜査、クリスチャンの生い立ちを追う回顧録の3つの主軸がうまく交差し、緊張感を損なうことなくストーリーは進みます。
企業の陰謀、捜査ミステリー、家族愛、盛りだくさんな内容となっており、2時間超えの作品でありながら全くだれずにエンディングを迎えます。
タフで不死身な無表情な主人公のアクションを魅せつつ、謎の要素を多く残し、次回作への期待も続く力強い作品です。