映画『コレット』は、実在のフランス人小説家シドニー=ガブリエル・コレットの伝記ドラマ。
ノーベル文学賞候補にも選ばれたフランス文学界を代表する女性作家を、キーラ・ナイトレイが見事に演じています。
- 19世紀フランスの衣装や風景、小道具など可愛らしい美術にときめく
- 現代にも通じるコレットの先進的な価値観と生き方の惚れ惚れする
それではさっそくレビューしたいと思います。
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『コレット』作品情報
作品名 | コレット |
公開日 | 2019年5月17日 |
上映時間 | 111分 |
監督 | ウォッシュ・ウエストモアランド |
脚本 | リチャード・グラツァー ウォッシュ・ウエストモアランド レベッカ・レンキェビチ |
出演者 | キーラ・ナイトレイ ドミニク・ウェスト デニース・ゴフ フィオナ・ショウ エレノア・トムリンソン ロバート・パフ レイ・パンサキ |
音楽 | トーマス・アデス |
【ネタバレ】『コレット』あらすじ・感想
19世紀フランスの可愛らしい美術
物語の舞台は19世紀後半のフランスの片田舎から始まり、20世紀初頭のパリへと移っていきます。
物語の進行に合わせて変化していくコレット(キーラ・ナイトレイ)の衣装が魅力的でした。
14歳年上の男性、小説家ウィリー(ドミニク・ウェスト)と恋に落ち、結婚するまでの序盤は、純粋無垢な心象を表すように“少女”的なドレス。
ウィリーのゴーストライターとして、そして作家としての才能が開花し生活が豪奢になると、コルセットできっちり絞ったシンプルかつ力強いドレス。
夫ウィリーの束縛から逃れ、情熱の赴くままに自分の道を歩み始める後半は、男性用のスーツからパントマイム巡業のための派手な衣装まで、目まぐるしく移り変わるどんな服装も美しく着こなすキーラ・ナイトレイに見惚れっぱなしの2時間でした。
また、豊かな自然や美しい街並み、どの場面のどの瞬間を切り取っても洗練された絵になる風景も見どころです。
さらに執筆道具がペンとインクからタイプライターに、移動手段が馬車から車に、時代に合わせて変化していく小道具など美術すべてにアンティークな魅力が溢れていて興奮しました。
1つ気づいたことは、こういった“お洒落なフランスへの憧憬”は、フランス以外の国がフランスを舞台に制作した映画の特徴かも、ということ。
『ミッドナイト・イン・パリ』などが良い例かと思います。
逆にフランス映画、最近観た作品でいうと『マルヴィン、あるいは素晴らしい教育』や『若い女』ではお洒落なカットはほとんどなく、自国の生々しい現実に焦点を当てている印象があります。
“外から見た理想のフランス”と“リアルなフランス”のギャップが見られるようで興味深いですね。
あと、映画の前半ではフランスが舞台で登場人物も全員フランス人という設定なはずなのに、英語を喋っていることに違和感を抱いていましたが、キーラ・ナイトレイをはじめとした俳優陣の演技力やテンポの良いストーリー展開に引き込まれるうちに全く気にならなくなりました。
ノンフィクションの作品をファンタジックな美術と素晴らしいキャストで描く優れたバランス感覚の映画です。
コレットの先進的な価値観と生き方
2019年現在、世界中で「#MeToo」運動をはじめとする性犯罪や理不尽に強いられてきた男尊女卑、男性から女性に対する性的搾取へ反旗を翻す動きが広がっています。
また、LGBTQの人々が差別に屈しないために団結し、同性婚を認める国や州が年々増えていくなど、“自分らしく生きる”ための権利を少しずつ獲得し始めています。
痛ましい性暴力などの事件は後を絶ちませんが、それでもようやく人の尊厳が守られる社会へ向けて動き始めたと言えるのではないでしょうか。
そしてコレットは、今のこの時代を遥かに先取りしていた人物でした。
映画中盤コレットはゴーストライターとして夫ウィリーを支えることに不満を募らせていきます。
そもそも妻の著作物を自分の名前で出版し富を築くウィリーの行為が論外ですが、“夫を支える妻”という男女の社会的役割分担に疑問を持つこと自体少なかったと考えられるこの当時に、夫に対して訴訟を起こして裁判で自分の著作権を勝ち取ったコレットはセンセーショナルな存在だったのではないでしょうか。
コレットは恋愛においても性別に縛られず、男女を問わない多様な恋愛遍歴を持っています。
劇中でもコレットが女性と不倫する場面がありますが、「女は男を愛し、尽くすものだ」とか「女はドレス、男はジャケットにネクタイ」とか固定的なジェンダーの価値観から解放されたコレットは「#MeToo」時代を生きる私たちに勇気を与えるシンボルにもなり得ると感じました。
ちなみに、不倫に関しては、ウィリーもコレットの不倫相手と関係を持つほか、過去にも浮気をしているので一概にコレットだけに非があるわけではありません。
しかし、コレットの生き方が先進的に見えるということは、この100年間世界全体でジェンダーに関する価値観が更新されていないと受け取ることもできてしまいます。
ウィリーのように、自分の欲求を満たすために女性を搾取することしか考えていない男性の存在が、今も変わらない世界共通の課題であることも再認識させられました。
時代や価値観がどのように変化しても、マジョリティとマイノリティという構図がある限り、コレットのように周囲の訝しげな視線に負けず、ありのままの自己表現をためらわない生き方は難しいのかもしれません。
だからこそ、性差別に声を上げて戦った先駆者である彼女の物語が、今取り上げられることに大きな意味があると思いました。
『コレット』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
【著名人コメント紹介❣️】
編集工学研究所の所長、松岡正剛さんよりコメントが到着しました✨✨
#コレット https://t.co/cBnpAf5atd pic.twitter.com/1ZYqmwSiH6— 【公式】映画『コレット』 (@Colette_movie) 2019年4月28日
以上、ここまで『コレット』について紹介させていただきました。
- 目まぐるしく変わっていくキーラ・ナイトレイの衣装の着こなしに感動
- フランス以外の国が制作したからこその美しいフランスの理想像
- 「#MeToo」時代のシンボルにもなり得るコレットの自分を偽らない生き方
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