今や日本でも知らない人はいない清涼飲料業界の重鎮「コカ・コーラ」と「ペプシ」。そんな両社がトップの座をかけて、消費者を巻き込んだ企業戦争を巻き起こしていたのをご存じでしょうか?
今回はアメリカで勃発した「コーラ戦争」を、コカ・コーラとペプシの関係者をはじめ、ジャーナリストなど様々な視点を交えて解説するドキュメンタリー映画『COLA WARS / コカ・コーラvs.ペプシ』をご紹介します!
・両者の意地がぶつかり合うアイデア合戦
・PRの先駆者となったペプシ
目次
『COLA WARS / コカ・コーラvs.ペプシ』あらすじ【ネタバレあり】
コーラ戦争勃発!
今や炭酸飲料業界のトップに君臨するコカ・コーラとペプシ。しかしこの2社が業界を独占するまでには、血で血を洗うかのような企業戦争があった。
1886年に誕生したコカ・コーラに対し、1983年に生まれたペプシは常にコカ・コーラの後を追う形だった。コカ・コーラは「コーラ」の代名詞ともいえるほど巨大な企業に成長しており、ペプシは常にコカ・コーラに勝つ策を模索していた。そんな中でペプシはあるキャンペーンを考案する。
それは街頭でペプシとコカ・コーラ、それぞれの商品名を伏せて味を比べさせるもの(通称:ペプシチャレンジ)だった。告知費用も安いうえに、ペプシ側にほとんどリスクがなかったので、「ペプシチャレンジ」は大成功。多くの人はペプシがおいしいと答えたのだ。
変化を嫌うコカ・コーラ、苦戦を強いられる
1970年後半になると、国外では圧倒的シェアをもつコカ・コーラはペプシに小売で追い抜かれてしまう。何か対策を打たねばならないコカ・コーラだが、機密扱いになっている調合レシピは100年間変更されておらず、この味を変えることはまず不可能といわれていた。さらにはレシピを明かさなければ販売を許可しないというインドに対して、コカ・コーラはインドでの販売を断念するほど、調合レシピを明かすことはなかった。
味を変えられないコカ・コーラは、当時まだ普及していなかったダイエット飲料「ダイエット・コーラ」を発表。最初はこの商品に「コカ・コーラ」の名をつけるのを避けたが販売数が伸びず、その後は現在も知られる「ダイエット・コーラ」として打ち出した。CMでも女性だけでなく男性にもリーチしたことから、ペプシの次となる市場3位まで上り詰めた。
炭酸飲料業界とスターを結び付けた先駆者
両者の戦いが過熱する中で、ペプシは新しい広告の形を模索する。当時のCMは消費者目線に沿ったホームドラマのような内容が多かったなかで、ペプシはCMに華やかな業界で活躍するスターの起用を考えた。
ペプシがCM出演に声をかけたのはあのマイケル・ジャクソン。出演料に500万ドルを払い、若者に向けたCMを狙ったのだ。しかしCMの撮影中、演出用の炎がマイケル・ジャクソンの髪につき、病院に搬送される事故が発生。一時は「スターを病院送りにした企業」という汚名が着せられそうになった。
それでもCMが放送されればその反響はすさまじく、マイケルが自身の楽曲を提供したこともあって、コカ・コーラの売り上げから5%差まで追い詰める。次第にCMではスターを起用する形が普及していき、両者のCMも映画さながらの演出がされるようになっていった。
そしてお互いのCMでライバルをけなすような内容を取り入れることで、コーラ戦争は消費者の間でも大きな注目を集めるようになる。
ついに「コーラ戦争」が佳境を迎える…!
1985年、コカ・コーラでは社員すら予想しなかった変化が起きる。それは100年もの間守られてきた機密の調合レシピを変更することだった。
このころは企業同士の戦いだけではなく、消費者の間でも「コカ・コーラ派」「ペプシ派」で対立が生まれるほど「コーラ戦争」は社会現象となっていた。
そんな中で味を変えたコカ・コーラだが、肝心の新しい味は受け入れられず、消費者たちを怒らせてしまう。
ついには元の味に戻すよう、抗議団体まで生まれる始末だった。この状況をペプシが見逃すはずもなく「味を変えたのは負けを認めたのも同じ」と大々的な広告を打つ。
結局コカ・コーラは新しい味のコーラと、以前の調合レシピに戻した「コカ・コーラ クラシック」を同時に販売することになった。
こうして佳境を迎えたコーラ戦争だがまだまだ両者の戦いは終わっておらず、今ではほかの企業はこの2大炭酸飲料企業に飲み込まれるほどの勢力で続いている。
『COLA WARS / コカ・コーラvs.ペプシ』感想
もはや喧嘩?企業同士の泥試合
市場の競争とは、お互いの企業が高めあって、よりより商品やサービスを生み出すことが大切です。
しかしこの「コーラ戦争」においては「高めあう」いうより、「潰しあう」イメージが非常に強いです。実際、この戦争で新商品を出しているのはコカ・コーラのみで、ペプシはあくまで広告戦略だけでコカ・コーラに勝負を挑んでいます。だからこそ、コカ・コーラの”味変更”を弱みと受け取り、付け込むような広告を打ったのでしょう。
さらにはお互いのCMでは相手のことをディスる内容を入れるなど、そこにリスペクトの精神はまるでなく、ほとんど喧嘩みたいな状態になっています。
作中では当時を知る両社の関係者インタビューも盛り込まれていますが、「相手の商品名なんて絶対言わない」「子どもには自社のコーラしか飲ませない」など、ずっとファイティングポーズで発言していて凄いです…(笑)まだ「コーラ戦争」は終わっていないんだと実感しました。
両者の意地がぶつかり合うアイデア合戦
しかしこの「コーラ戦争」で新たに生まれたものもありました。それは広告の手法です。
今でこそ日本の企業CMでも著名人を起用するのが当たり前となっていますが、コーラ戦争が勃発する以前のアメリカでは、消費者に身近な商品のCMに著名人を起用することは稀でした。
マイケル・ジャクソンを起用したペプシのCMは「企業がCMに著名人を起用する」手法の先駆けと言っても過言ではないのです。
また、コカ・コーラがペプシの対抗馬として開発したダイエット・コーラも今ではメジャーな商品ですが、当時は非常に珍しい商品であり、ダイエット飲料のCMを男性に向け打ったことも異例でした。
個人的に衝撃的だったのが、映画のようなCMを打ち出すようになった際、リドリー・スコットを起用していたペプシです。ガチすぎる…。新商品こそあまり誕生しなかった「コーラ戦争」ですが、斬新な広告の手法を生み出した点ではとても興味深い戦いでした。
コーラ戦争は今も続いている?
上記でも書いたように、両社は特に和解したわけでも終戦を宣言したわけでもありません。当時ほどの熱はありませんが「コーラ戦争」自体は終わっていないのです。
作中では取材に応じている両社の関係者に、ペプシが行った「ペプシチャレンジ」をしてもらっています。みんな自社の看板を背負っているので、必死だったり、冗談を言って見逃してもらえるように”保険”を掛けたりと、そのリアクションは様々です(笑)
そして正解するとめちゃくちゃ喜ぶ人もいれば「当然でしょ?」とドヤ顔の人も…。言い方は悪いですが、たかが炭酸ジュースでここまでアツくなるのですから、やはり両社の戦いはまだまだ続いていると実感できる演出でした。
『COLA WARS / コカ・コーラvs.ペプシ』あらすじ・感想まとめ
・新しい広告の手法が誕生する瞬間が分かる!
・取材を受ける関係者のリアクションがいちいち面白い
以上、ここまで『COLA WARS / コカ・コーラvs.ペプシ』をレビューしてきました。
今でこそペプシのような、他社をディスる演出のCMが流れたら炎上は必須でしょう。しかし「コーラ戦争」のように、企業がバチバチに闘うやり取りが見れないのは、ちょっと寂しいかも…という気持ちが沸くアツい作品でもありました。
ヤマダマイ