幼い頃、海の食堂での1人の少年との「たった一度の、たった数十分の出会い」を忘れられず人の心を癒す料理人となった女性と、空腹で来た少女にチョコをプレゼントしようと待ち続けた心優しいかつての少年からメスのように冷たい医師に変貌してしまった男性。
「食べ物はよい思い出でもあり、思い出したくないものもある」と、食べ物にまつわる思い出の深さも教えてくれる物語が『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』です。
チョコレートに秘められた2人の秘話や初恋、日々を大切に生きる姿を描いた『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』をネタバレありでレビューします。
『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』キャスト
ユン・ゲサン / 役:イ・ガン
- コソン病院の脳神経外科医で、コソングループの孫
- メスのように冷たい心の持ち主、だが本当は「温かい心」を隠している
- 幼い頃、食堂へ来てくれた少女が忘れられない
ハン・ジウォン / 役:ムン・チャヨン
- 人のことを思い心を込めて料理し、いつも人の心を癒し続けるシェフ
- 数々の料理コンテストで受賞した経歴をもつ
- 幼い頃ある事故に遭い、チョコレートをくれた命の恩人が忘れられない
チャン・スンジョ / 役:イ・ジュン
- イ・ガンと同様、コソングループの孫
- 幼い頃から、ガンとの後継者争いを強いられる
- プライドは高いが、実力も優れた天才的な精神外科医
ユ・テオ / 役:クォン・ミンソン
- ガンの親友で、チャヨンの元恋人
- コソンホスピスの院長であるヒョンソクの息子
- コソンの顧問弁護士
ミン・ジヌン / 役:ムン・テヒョン
- チャヨンの弟で、唯一の肉親
- 人生一発逆転を狙っているため、ずっと無職
- 意地を張るのと裏腹に、本当は心優しい青年
【ネタバレ】『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』あらすじ・感想
20年以上すれ違うガンとチャヨン。
ガンとチャヨンの出会いは20年前、2人が小学生の頃の「たった一度の、たった数十分の出会い」。
チャヨンは少年時代のガンに海の食堂で心温まる料理をもてなされたことが忘れられず、1年後またガンの食堂を訪ねますが彼はソウルへ行ってしまっていました。
これが最初のすれ違いです。
それから20年後、チャヨンが入院した病院で医師をしていたのが、ガンでした。
チャヨンだけが気づくのですが、ガンは全く気づかず。
退院後チャヨンは再会できたガンに告白しようとするのですが、その時には彼はリビア戦線の従軍医師に派遣されておりそこで生死をさまよう状態だと聞かされ、ショックを受けてガンとの関係を諦めます。
前から知り合いだった弁護士のミンソンからずっと求愛されてきたチャヨンは、彼求愛を受け入れることにします。
しかし、1年後ミンソンが親友だと紹介してくれたのは死んだと思ったガンでした。
もう会えないと思って忘れようと努力をしていたガンを目の前に、チャヨンは彼への思いが止められません。
しかしミンソンへの申し訳ない気持ちもあり、チャヨンはギリシャへ逃げるように旅立ちます。
それから5年後、ミンソンが余命わずかの病気になり、最後の願いをかなえるためにチャヨンは韓国に戻りそこでガンと再会します。
チャヨンはミンソンの入院していたホスピスで働き始め、ガンは右手の後遺症が手術不可能になってしまいホスピスへ移動となりそこで偶然再会したのです。
そして、幼い頃初めて出会ってから26年。
ガンとチャヨンは、少しづつお互いに不思議な縁があることに気づき始めるのです。
ガンとチャヨンにとってチョコレートが意味するものとは
ドラマの中で、辛いことがあるとすぐにチョコレートを食べて元気を出すチャヨンですが、それにはとても深い思い出がありました。
チャヨンがガンと初めて会ってから2年後、とある百貨店の崩壊事故に巻き込まれてしまいます。
とてつもない大惨事の中、救助隊の救出を待つチャヨンは、近くにいたおばさんから「息子に買った」というチョコレートをもらい、生きる力をもらった過去がありました。
これを機にチャヨンは辛いことや悲しいことがあればチョコレートを食べて、誰かの役に立つ人になりたいと今までの人生を乗り越えてきました。
一方ガンは、母がチョコレートを買いに行った百貨店での事故に巻き込まれて亡くなってからチョコレートを食べなくなりました。
そして、このお互いのチョコレートへの秘話が、のちに2人にとって懸命に生きる原動力となり、やがて”運命の赤い糸”のように2人をつないでくれるように描かれています。
かとリーニョ
親の後継者争いの道具とされてきたガンの従兄ジュン
韓国ドラマあるあるですが、必ずと言っていいほど出てくるのが「後継者争い」。
このドラマでは、ガンの父親の生家である「コサン病院」を巡る争いが繰り広げられます。
ガンの父親は、コサン病院の会長の次男で兄よりも優秀でしたので後継者とみなされていましたが、愛する女性と離島に逃げてしまい、さらに早くにこの世を去ってしまっています。
その父親の息子として生まれてきたガンですので、やはり病院の後継者争いに加わるわけですが、毎日毎日悲しくて辛い日が続きます。
そして、ガンと同じように大人になった青年もいました。
それは、ガンの従兄のイ・ジュンです。
ジュンは医者の息子として裕福に育ちますが、幼い頃からコサン病院のオーナーになるためにガンと対立を強いられていました。
ジュンは実力で十分ガンと勝負できた天才的な神経外科医でしたが、彼の両親は姑息な手段を使います。
ガンと真っ向から勝負できない苛立ちと、なぜガンと争わなければいけないのかという疑問を持ったジュンは、後半から実は大好きだった陶芸をやって人生の再出発を目指していくのです。
かとリーニョ
「食べることは、生きること」死を前に食べたい忘れられない味
『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』は中盤から舞台がホスピスへと移るのですが、そこでのエピソードも本当に深くて切なく、涙を流す場面が多いです。
かとリーニョ
チャヨンの元彼ミンソンは病で余命わずかとなった時はすでに別の女性と付き合っていましたが、死を目前にして食べたいと言ったのが、チャヨンの作ったギョウザ鍋だったのです。
ミンソンはチャヨンのギョウザ鍋を食べ穏やかな最期を迎えました。
そして余命わずかのため養子に出されたアメリカからホスピスへ来た青年も思い出の味としてチゲを食べたがります。
ですがチャヨンたちが作るチゲは思い出の味とは違うようで、最後には彼の母がそのチゲを再現し、青年は満面の笑みでチゲを食べ幸せな最期を迎えます。
人には、多かれ少なかれ思い出の味があると思うのですがこのドラマでは「おいしいものを食べることは、生きる力を与えてくれる」ということが描かれています。
かとリーニョ
ラスト、ガンとチャヨンの愛とガンとジュンの関係はどうなるのか?
幼い頃から、長い間争ってきたガンとジュン。
彼らはすでに自立したいい大人、この争いに意味はあるのか?とお互い虚しさに気づいていました。
祖母が倒れ、実はジュンの父親はコサン病院の会長の血を引いていないという決定的な事実も明らかになり、ジュンは今までの愚かさを恥じます。
ガンはホスピスの相続権をもらい、あれだけ争ったコサン病院はジュンの母に託します。
そしてジュンは、ガンと理解し合える関係になれたと、自分の人生を生きることに。
さらに、ガンは自身の母親が崩落事故の時に、生死をさまよいながら生きるように励ました女の子がチャヨンだったこともわかりました。
ですが、ガンはチャヨンに「それは僕の母です。」と言わなかったのです。
かとリーニョ
2人は大切な人と日々愛していきながら大切に生きることを選んだのです。
『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』まとめ
『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』は最初甘いラブロマンスなような感じもしましたが、内容はとても深くじっくり見ていかないとキャラの気持ちがくみ取れないほど、ゆっくりじっくり描かれたヒューマンドラマだったように思います。
ガンとチャヨンの恋はもう毎回本当にもどかしく、最後の2話くらいでやっとガンがチャヨンのことを思い出した時には「今気づきましたか!?」と、見ながらツッコミを入れたくなるほどの長いロマンスでした。
ですが、なんだか久しぶりの「少し前の王道の韓国ドラマ」を見たという感覚もあり懐かしい感じもしました。
何気ないセリフに数々のメッセージが込められていたり、小さなエピソードを盛り込みながら、主人公のストーリーがゆっくり流れていく感じでとても内容の深い心温まるドラマでした。
『チョコレート:忘れかけてた幸せの味』はゆっくりとしたドラマが見たい方にはとてもおすすめの作品だと思いますので、ぜひご覧になってみてくださいね。