バレンタインの季節が近づくと観たくなる映画『ショコラ』。
自らのルーツである南米のショコラを広めるために世界中を旅している母娘が、宗教の色が強い町に流れ着き、差別を受けながらも親交を深めようとするヒューマンドラマです。
アカデミー作品賞をはじめ数々の賞にノミネートされた作品で、時を経てもなお愛され続けています。
世界3大映画祭の全てで女優賞を受賞した経験がある名女優、ジュリエット・ビノシュが主人公のヴィアンヌを演じ、ヴィアンヌと恋に落ちるジプシーの青年をジョニー・デップが演じています。
- ベストセラーの映画化
- 美しいショコラの数々にうっとり
- 宗教と人間関係が絡む考えさせられるストーリー
今回はそんな映画『ショコラ』をネタバレなしでご紹介します。
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目次
『ショコラ』作品情報
作品名 | ショコラ |
公開日 | 2001年4月28日 |
上映時間 | 121分 |
監督 | ラッセ・ハルストレム |
脚本 | ロバート・ネルソン・ジェイコブス |
原作 | ジョアン・ハリス |
出演者 | ジュリエット・ビノシュ ジョニー・デップ ヴィクトワール・ティヴィソル アルフレッド・モリーナ ヒュー・オコナー レナ・オリン ピーター・ストーメア ジュディ・デンチ キャリー=アン・モス レスリー・キャロン ジョン・ウッド |
音楽 | レイチェル・ポートマン |
『ショコラ』あらすじ【ネタバレなし】
世界を旅するショコラ
1959年、北風が吹くある日。
シングルマザーのヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘のアヌーク(ヴィクトワール・ティヴィソル)は、フランスの小さな村にやって来ました。
ヴィアンヌはショコラ専門店・マヤを開店しますが、村はちょうどカトリックの断食の季節。
そんな時期にショコラ専門店を開くなんて変わり者だと思われてしまいます。
カトリック信仰が根付いたこの村では、伝統や規律が重んじられているようでした。
特に敬虔なクリスチャンであるレノ伯爵(アルフレッド・モリーナ)はヴィアンヌのことを強く差別し、村の人々にも関わらないように指示します。
そんな中、ヴィアンヌの店には美しいショコラが並び、豊満な香りが漂っていました。
ヴィアンヌは人それぞれの好みに合ったショコラを選ぶことが得意で、ショコラを渡された村人の心は少しずつ変化していきます。
ショコラに癒やされる人々
ある日、夫・セルジュ(ピーター・ストーメア)の暴力に悩むジョセフィーヌ(レナ・オリン)が来店しますが、ショコラを忘れて帰ってしまいます。
次に訪れた客は犬を連れた老人・ギヨーム(ジョン・ウッド)。
ギヨームはオデル(レスリー・キャロン)に片思いしていますが、気持ちを伝えられずにいました。
ヴィアンヌはオデルにショコラを贈ったらどうかと提案します。
店の常連客になったのは、気の強い老婆・アルマンド(ジュディ・デンチ)。
娘のカロリーヌ(キャリー=アン・モス)と仲が悪く、孫のリュック(オーレリアン・べアレント・ケーニング)に会わせてもらえないことを寂しく思っていました。
2000年前のレシピで作るホットチョコレートにチリペッパーを入れて差し出すと、アルマンドは夢中になって飲みます。
そうしてヴィアンヌの店が軌道に乗り始めた頃、娘のアヌークは学校でいじめられていました。
アヌークは空想の友達であるパントゥールをバカにされ、悲しんでいます。
ヴィアンヌのおじいさんの昔話を度々聞きたがるアヌークに、父と母のショコラと放浪の物語を語ります。
ヴィアンヌの作るショコラは、マヤ時代に起源があるのでした。
それぞれの想いとショコラ
ヴィアンヌの店は人気店となりましたが、レノ伯爵によって良からぬ噂を立てられてしまいます。
憤りを感じたヴィアンヌはレノ伯爵に直談判しに行きますが、イースターまでには店を畳むことになるだろうと言い返されてしまいました。
一方、再び店にやって来たジョセフィーヌは、夫と別れる勇気がないことを打ち明けます。
思い悩むジョセフィーヌにショコラを差し出すと、気に入って少し元気を取り戻すのでした。
さらに、店ではアルマンドと孫のリュックが再会します。
絵を描くのが得意なリュックは、アルマンドの絵を描く約束をして帰っていきました。
しばらくして、夫の暴力に耐えかねたジョセフィーヌが家出してきました。
ヴィアンヌは店で保護したうえで、レノ伯爵に相談します。
レノ伯爵は宗教の教えによってセルジュを改心させようとしますが、なかなかうまくいきません。
こうしてヴィアンヌの店は村人に受け入れられていきますが、村の川にジプシーが流れ着いたことで再び村人が遠のいていきます。
それは、村でのジプシーを差別する運動に反して、ヴィアンヌがジプシーの家族と関わっていくからでした。
ジプシーの青年・ルー(ジョニー・デップ)と親睦を深めるヴィアンヌとアヌーク。
ヴィアンヌはルーが好みそうなショコラを贈りますが、美味しいけど好みではないと言われてしまいます。
みんなが幸せになる道を模索するヴィアンヌは、アルマンドの助言からパーティーの開催を計画しますが…。
『ショコラ』感想
ショコラが持つ力
舞台となる小さな村には、厳格なカトリック信仰が根付いています。
ヴィアンヌやジプシーに対するよそ者を差別する空気、夫から暴力を振るわれても別れられないというジョセフィーヌの悩み、仲違いしたままのアルマンドとカトリーヌの親子関係。
宗教観から保守的で差別的、禁欲的になっていったのであろう村には閉塞感が漂い、人間関係も悪化しやすくなっています。
そんな中で閉じた村人の心をほぐし、変化をもたらすのは甘くほろ苦いショコラ。
流れ者でシングルマザーのヴィアンヌは、村にとって遠ざけるべき存在です。
それでもヴィアンヌのショコラを口にした人々は幸せな気持ちになります。
urara
ヴィアンヌのショコラが魔法的なのは、ヴィアンヌ自身が自由の象徴だからでもあります。
閉鎖的な村が開放的に変わっていくために、ヴィアンヌとショコラの存在は必ず必要でした。
また、ヴィアンヌがよそ者として差別されているために娘のアヌークもいじめられてしまいます。
母親が祖母を嫌っているために孫であるリュックは祖母に会えません。
『ショコラ』では、こうした大人たちの関係性に子どもが巻き込まれてしまう現実も描いています。
それはあってはならないことだと誰もがわかっているはずなのに、自分が信じるものの本質を見誤って悲しいことをしてしまうのは、いつも大人たちです。
urara
世界を旅するヴィアンヌとジプシーの青年・ルーが惹かれ合うのも自然なことで、村に新しい風を吹き込む後押しをしたように感じました。
『ショコラ』をつくった人々
原作はジョアン・ハリスの同名小説。
ハリスの作品には母と娘の関係性や信仰上の問題、食を通した考え方など共通したテーマが見られていて、『ショコラ』ではそういったハリスのテーマが色濃く描かれています。
また、監督のラッセ・ハルストレムはドッグムービーやディズニー映画など幅広いジャンルの作品を手がけていますが、そこにもいくつかの共通項があります。
例えば、ハルストレム作品には嫌な人物があまり出てきません。
いわゆる悪役や憎まれ役自体は存在しますが、その人物もちゃんとした指針を持って行動しているため、観ている側は嫌いになりきれないのです。
urara
しかし、純粋な心を持った子どもが登場することで、利己的な面が強くなってしまいピュアな気持ちを忘れた大人がより酷い人に見えるのです。
そのためハルストレム作品では、ピュアな子どもや子ども心を忘れない人物がキーパーソンになっていきます。
『ショコラ』においては、もちろん主人公のヴィアンヌが代表的。
ジュリエット・ビノシュが、自由奔放で強い意志を持ったヴィアンヌを名演しています。
ジプシーの青年・ルーを演じたジョニー・デップは、ハルストレム監督の作品『ギルバート・グレイプ』に引き続き筋の通った青年を演じました。
強烈なキャラクターを多数演じているため、個性的な姿のほうが見慣れている人も多いかもしれませんが、『ショコラ』での自然体な演技は爽やかでセクシー。
urara
そして、劇中最も存在感を放っているのがジュディ・デンチ。
一見気難しいけど本当は心優しい老婆・アルマンドを演じ、娘や孫との関係に思い悩む人間味溢れる姿は非常に印象的です。
『ショコラ』のキーパーソンともいえる存在で、アルマンドの言葉がなければ挫けていたのではないかと思うほど、ヴィアンヌの支えとなっていた人物。
urara
村の慣習や宗教が人間関係に関わってくる複雑さと、母娘の絆、仲間の温かさが感じられ、信じているものや自分の在り方について考えさせられる作品になっています。
『ショコラ』まとめ
いかがだったでしょうか。
甘くほろ苦いラブロマンスと考えさせられるストーリーが、観る者を魅了する大人のヒューマンドラマ『ショコラ』。
古い考えを捨てて新しい気持ちを手に入れたい時、心にそっと響く作品です。
おとぎ話のような物語に夢中になってみてはいかがでしょうか?
- ショコラの魔法にかけられたような気持ちになる
- 元気と優しさを与えてくれるラスト
- 演技派俳優たちの名演
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