『コクソン』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督衝撃のデビュー作である映画『チェイサー』。
2004年に韓国で実際に起きた凄惨な連続殺人事件から着想を得て、2008年に公開された作品です。
映画全体が緊張感とリアルな描写に満ち、思わず目を覆いたくなるシーンもあります。
正直観る人を選ぶ作品かもしれませんが、公開当時の韓国では観客動員500万人を超える大ヒット。
2008年の韓国アカデミー賞にあたる「大鐘賞」の主要6部門の他、大韓民国映画大賞を受賞しました。
- ナ・ホンジン監督衝撃の「観る人を選ぶ」長編デビュー作
- ハ・ジョンウ&キム・ユンソクの怪演が見もの
- 心拍数が爆上がり!ただのサスペンスでは片付けることができないストーリー展開
そんな衝撃の映画『チェイサー』をネタバレありでレビューします。
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『チェイサー』作品情報 2004年に韓国で起きた連続殺人事件を題材にした衝撃のサスペンス。 『神と共に 第一章……
目次
『チェイサー』作品情報
作品名 | チェイサー |
公開日 | 2009年5月1日 |
上映時間 | 125分 |
監督 | ナ・ホンジン |
脚本 | ナ・ホンジン |
出演者 | キム・ユンソク ハ・ジョンウ ソ・ヨンヒ チョン・インギ パク・ヒョジュ キム・ユジョン ク・ヌボン イ・シンホ |
音楽 | キム・ジュンソク チェ・ヨンナク |
【ネタバレ】『チェイサー』あらすじ・感想
決して万人にはおすすめできない映画
衝撃の内容過ぎたので、本作『チェイサー』に関しては先に注意書きとしての感想を少し書いておこうと思います。
『チェイサー』は正直、観る人を選ぶ作品です。
リアルなグロ描写、恐ろしい場面がたくさんあるので、心臓が弱い方やグロが苦手な方にはおすすめできません。
映画をおすすめするレビューサイトで記事を書いておきながらも勇気を出して言うと、最初から観ないという決断が正しいと思います。
マルコヤマモト
あなたも、この衝撃的な事件をモデルにした映画の目撃者になりましょう。
ただ、評価するポイントもそれだけたくさんあるということで、決して本作『チェイサー』が駄作というわけではないので勘違いなさらぬよう。
『殺人の追憶』など、実際の事件に着想を得て制作された映画は多数あれど、今作『チェイサー』の凶悪度具合は最悪。
犯人役を演じたハ・ジョンウですが、今回は凄まじすぎます。
良い人のふりをして、平気な顔してたくさんの人を残酷に殺害します。
ハ・ジョンウの狂気に満ちた演技、表情が焼き付いて離れません。
「ハ・ジョンウ映画にハズレ無し」のキャッチは本当です。
マルコヤマモト
映画を観ている最中に心拍数が上がっていることを実感するという体験は『チェイサー』が初めてでした。
それくらい衝撃的でショックが大きい作品です。
マルコヤマモト
『チェイサー』の基になった凄惨な事件とは?
『チェイサー』は実際の事件に着想を得て製作されたわけですが、その事件内容は超衝撃的なものでした。
実際の事件は「ソウル20人連続殺人事件」と呼ばれ、2003年から2004年の間に発生しました。
犯人のユ・ヨンチョルは逮捕までに富裕層の高齢者や風俗嬢の合計20人を殺害、数人については殺害後その肉を食べたことを自白しています。
マルコヤマモト
事件の背景にはユ・ヨンチョルが歩んだ転落人生がありました。
中学の頃から窃盗を繰り返し、風俗嬢の妻と結婚した後も窃盗や性犯罪を繰り返し、合計11年間の刑務所生活を送っていたのです。
愛想を尽かした妻はヨンチョルと離婚。
風俗嬢を狙った犯行は離婚した妻へのあてつけの意味もあったようです。
マルコヤマモト
事件は、映画と同じく相次いで女性が行方不明になったことを不審に思った出張マッサージ店のオーナーが警察に連絡したことから発覚しました。
映画『チェイサー』では、風俗マッサージ店の店長オム・ジュンホをキム・ユンソク、犯人チ・ヨンミンをハ・ジョンウ、犯人に捕らえられる風俗嬢をキム・ミジンをソ・ヨンヒが演じています。
元刑事対猟奇殺人犯の追跡劇の始まり
今作は「ソウル20人連続殺人事件」が発覚する時点の物語が描かれています。
風俗嬢のミジン(ソ・ヨンヒ)は7歳の娘ウンジと一緒に暮らしています。
ある日、熱を出していたミジンでしたが「人手が足りない」とジュンホから呼び出され、客の対応をすることになり、娘を置いて仕事にでかけます。
自分が雇っている風俗嬢が相次いで姿を消していることを不審に感じたデリバリーヘルスのオーナーで元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)は、顧客名簿に共通の電話番号を見つけます。
他の店舗の名簿にも同じ電話番号があり、その後女性が行方不明になっていることが明らかになりましたが、店主たちは「仕事が嫌になったのだろう」と女性たちの行方について深く探ろうとはしていませんでした。
その番号の持ち主は、今まさにミジンが対応している客でした。
ジュンホはすぐさまミジンの携帯へ連絡し、家の場所など相手の情報を探るように指示します。
そして、様子を見てすぐさま脱出するように伝えたのです。
ジュンホは同時に元刑事という人脈を活かし先輩刑事にも連絡を取りましたが、市長の警護担当でなかなか取り合ってもらえません。
その頃、男の家に上がり込んだミジンは、自分が恐ろしい状況に置かれたことに気が付き始めます。
シャワーを浴びようと風呂場に入ると血のついた髪の毛を発見したミジン。
携帯の電波はつながらず、窓を開けても隣の家の壁が外への道を塞いでいます。
「コンドームを車に忘れたから取りに行く」と嘘をついて家を出ようとしますが、逆に男に捕らえられ、浴室へ連れ返されてしまいます。
服を脱がされ、手足を縛られ、ミジンが抵抗できないようにした男は、ミジンの頭をノミのようなものでかち割ろうと攻撃してきます。
ミジンは攻撃を交わしながらも深い傷を負い、その場で意識を失います。
ミジンを拘束した男こそ、一連の殺人事件の犯人チ・ヨンミン(ハ・ジョンウ)でした。
ヨンミンがミジンを攻撃している最中に来客があります。
この家に住んでいるパク執事という人物を訪ねてきた高齢夫婦でした。
ヨンミンは夫婦を招き入れますが、その後すぐに夫婦を殺害、浴室に遺体を隠します。
この時点でヨンミンはすでに数人を殺しており、庭に埋めていました。
そして、殺した人物の家(パク執事の家)に住んでいたのです。
高齢夫婦を殺害したあと、車で家を出たヨンミンはジュンホの車と接触事故を起こします。
「保険で処理をするから」と名前と住所を聞き出そうとするジュンホは、ヨンミンのシャツに付いている血飛沫を見てあることに気づきます。
そして、顧客名簿で見た電話番号に電話をかけたのです。
すると、ヨンミンの電話が鳴り響きます。
「お前、ツイてないな…」
ジュンホは捕らえようとしますが逃げ出すヨンミン。
狭い路地の街を追いかけ回し、ジュンホはとうとうヨンミンを捕まえ警察へ引き渡します。
どこまでも救いようがない話
しかし、ここからが大変だったのです。
警察は2人を見た目で判断し、ジュンホがヨンミンに暴行を働いたと勘違いします。
ですが、取調べ中にヨンミンが9人を殺したと自供し始めたのです。
自供内容に信憑性があることからヨンミンはジュンホの先輩、ギル刑事に警察署まで連行されます。
その途中で、ミジンがまだ生きているということを告白したのです。
逮捕状なしの逮捕は事件の証明ができない場合12時間の期限で釈放されるため、ジュンホは自分の脚と舎弟のオジョの助けを借りてミジンの居所を探ります。
さらにジュンホはミジンの自宅へ向かった際に、彼女に娘がいることを初めて知るのでした。
行く宛がない7歳の娘を車で連れて、ジュンホは独自の捜査を始めます。
そんな中、ヨンミンが過去に2回の事情聴取を受けており、どちらも証拠不十分で釈放されたという情報が入ります。
ヨンミンの自供で殺害した人数は12人に増えていました。
12人もの人数を家の庭に埋めることは不可能と判断した警察は、近くで唯一の山に捜索隊を出し遺体を探させることにしました。
ジュンホの捜査で、ヨンミンが過去に出会った風俗嬢に対し同棲を迫り断られると、血まみれで狂気を持った写真を送り「殺す」と脅されたという情報を得ることができました。
その頃、ミジンが風呂場で意識を取り戻していました。
彼女の目の前には知らない老夫婦の遺体…。
ミジンは脱出すべく、風呂場のタイルを使って手足の拘束を切ろうと試みます。
ヨンミン釈放まで時間がありません。
ジュンホは刑事たちが黙認するなかヨンミンに暴行を加え、遺体の遺棄場所を聞き出すことに成功しますが、遺棄場所の住所である石材店とミジンの車が見つかった地域が離れていることから、ジュンホはヨンミンが嘘の情報を教えたことを見抜きます。
しかし、検察の手が入り釈放されたヨンミンに暴行を加えたジュンホを捕らえる命令が下されます。
捕まるわけには行かないジュンホは必死の逃走を始めますが、期限の12時間が過ぎ、ヨンミンは今回も証拠不十分で釈放されてしまったのです。
手足の拘束具を説いたミジンは必死の想いで家の外へ駆け出し、近くの売店に逃げ込みました。
売店の女店主に今までの経緯を話し、警察に連絡するように助けを求めると奥の部屋で休ませてもらうことに。
しかし、運悪くその売店にタバコを切らしたヨンミンが立ち寄ったのです。
「変な男に監禁されたという女が奥にいる。」
女店主の言葉にヨンミンはハッとし、ミジンが奥の部屋に隠れていることに気づきます。
そして「自分が防犯をする」と言って女店主から金槌を受け取ると、その場で女店主を殺したのです。
ヨンミンは奥の部屋に怯えるミジンを見つけると、彼女の頭に何度も何度も金槌を振り下ろしました。
ジュンホが売店にたどり着いた時、すでに遺体が運び出されていました。
家ではヨンミンが切り落としたミジンの生首と手首を熱帯魚の水槽に入れ、眺めていました…。
ジュンホは教会を頼ってヨンミンの居場所を探します。
すると、教会の設計をしたパク執事ならばヨンミンのことを知っているかもしれないという情報を聞き出し、まさにヨンミンの居場所であるパク執事の家を訪ねたのです。
錠前を開けジュンホが忍び込むと、身なりを整えたヨンミンが出かけるところでした。
ジュンホはヨンミンを家の中に戻しますが、ヨンミンが所持していたナイフで太ももを刺されブチギれ、ヨンミンをさんざん殴りつけます。
トドメをさせるか…という時にジュンホは水槽の中にミジンの生首があることを発見し、怯んでしまいます。
すると、今度はヨンミンがゴルフクラブを持って襲いかかってきたのです!
落ちていた金槌で応戦するジュンホでしたが、ヨンミンに鈍器で頭を何度も殴られます。
意識が朦朧とするなか、ジュンホは金槌で殴り返しヨンミンが床に倒れました。
怒りのあまり馬乗りになり金槌で殴りつけるジュンホを見て踏み込んできたギル刑事らは唖然。
刑事らは辞めるように説得しますが、ジュンホの脳裏にはミジンと娘の顔が浮かびます。
しかし、ジュンホはとどめを刺せぬまま刑事たちに取り押さえられました。
ヨンミンは瀕死の状態でしたが、まだ息はありました。
ジュンホは運ばれていくヨンミンと床に転がるミジンの首を見つめていました…。
後に警察が庭を掘り起こすと、たくさんの死体が発見されました。
ジュンホは事件捜査中に事故にあったミジンの娘・ウンジが入院している病院へ向かい、未だ意識が戻らぬウンジの手を握りました。
ジュンホは窓の外に拡がる美しいソウルの夜景を眺め、ため息をついたところで物語は終わります。
観終わった後の感想
マルコヤマモト
映画の出来が酷いわけではなく、ここまで救いようがない悲しい映画に今まで出会ったことがなく、心が酷く痛みました。
まず実際に起きた事件が酷すぎるし、よくここまで描いたな…というナ・ホンジン監督と主演2人とミジンを演じたソ・ヨンヒのガッツに拍手を送りたいです。
グロさですが、ミジンを殺すシーンが白黒映像になっています。
他1シーンほど白黒になっている箇所があるのですが、最初はそれが演出だと気づかず画面の不良だと思っていました。
ですが、違うのです…。
色がついているとあまりにリアルすぎるため、あえて白黒にしたのだとミジン殺害のシーンを見て理解できました。
マルコヤマモト
韓国映画特有の「痛さ」が観ているこちらにも突き刺さるような作品でした。
う~ん!しかし、ハ・ジョンウ先生はこの頃まだお若いのに凄まじい演技をしていらっしゃる!
映画の好みは人によりますし、『チェイサー』は最初に書いたように誰にでもおすすめできるわけではありませんが、ただただ凄まじい作品です。
観終わった後、非常に疲れますが経験値はアップしたような気がします…。
マルコヤマモト
ナ・ホンジン監督の長編作品はあと2本ほどありますが、どちらもこのようなテイストなので体調万全で挑んでください…。
マルコヤマモト
『チェイサー』あらすじ・ネタバレ感想:まとめ
以上、ここまで映画『チェイサー』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- 演技、脚本、全てが凄まじい!あなたはこの追跡劇についてこれるか!?
- 人によって好き嫌いが分かれる映画。筆者も「大好き」とは言えないがとても衝撃を受けたという意味では、良い映画と出逢うことができ感謝している。
- 画面を通して「痛さ」を感じることができる特異な作品。ハ・ジョンウ演じる犯人がトラウマ級に怖い。
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