『君の名前で僕を呼んで』はアンドレ・アシマンの同名小説の映画化。
少年エリオと青年オリヴァーの恋が育まれて、実った恋がどのような結末を辿るのか、それを素晴らしいイタリアの片田舎の風景と共に味わう映画です。
「人に恋する」とはこのことかと、大人でも若者でも共感する作品だと思います。
最後まで見るとどのキャラの目線でも「嗚呼」と感嘆の声を漏らし、見た人は涙なしには見られないでしょう。
また、今作はモラトリアムの時期の少年が「人との繋がりを強く固く結ぼうとも、どうしようもないことがある」ということを飲み込んでいく物語でもあります。
多くの人が大人になっていくうちにたくさん味わった「裏切りや、嫌い」という別れではなく、「切ない」別れを少年エリオは味わうのです。
- 美しい聡明な少年エリオの心の動きに、心をわしづかみにされていく展開。涙必至。
- イタリアの最高の夏の景色に心を洗われる。こんなきれいな映像今まで見たことない!必見!
- 誰もなにも否定しない、大人たちの優しい目線が感じ取れる役者の名演技。そして、含みあるセリフ回し。
では、『君の名前で僕を呼んで』をネタバレありでレビューしたいと思います。
目次
映画『君の名前で僕を呼んで』作品情報
作品名 | 君の名前で僕を呼んで |
公開日 | 2018年4月27日 |
上映時間 | 132分 |
監督 | ルカ・グァダニーノ |
脚本 | ジェームズ・アイボリー |
原作 | アンドレ・アシマン |
出演者 | アーミー・ハマー ティモシー・シャラメ マイケル・スタールバーグ アミラ・カサール エステール・ガレル ビクトワール・デュボワ バンダ・カプリオーロ アントニオ・リモルディ アンドレ・アシマン ピーター・スピアーズ |
音楽 | ロビン・アーダング |
【ネタバレ】映画『君の名前で僕を呼んで』あらすじ
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聡明な少年エリオと自信家のオリヴァーの出会い
エリオは夏、北イタリアで教授の父と母と共に別荘で暮らしています。
そこには毎年父を目当てにホームステイする研究者の若者がやってくるのですが、今回の夏やってきたのは自信家で大柄の青年オリヴァーでした。
爽やかな彼と夏を過ごすことに、少し不満のある思春期のエリオ。
自信家な大人への辟易とした態度を取ります。
しかし、部屋は隣同士。
エリオは忙しい両親に代わって、街を知らないオリヴァーを案内しなければなりません。
エリオは警戒し、「横暴だ」と言ったり、距離をとったりする様子を見せます。
しかし、徐々にオリヴァーと過ごす時間が増えて、2人は距離を縮めていくのでした。
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美しい映像と知的な会話
父とオリヴァーは考古学を専攻しています。
エリオもその影響を受けていて、彼らの会話には考古学の知識とそこからともなう知性と優雅さがにじみ出ています。
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聞いていて心地がいいピアノ音楽が流れ、情景は美しい海と空の青とレンガ造りの建物の白、杏の黄色が目に入ります。
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そして、知的な会話の1つに「君の名前で僕を呼んで」というのがあります。
恋が実っても、2人は愛していると言い合いません。
ただお互いの名前を連呼し、それを「愛の言葉」とします。
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夏の終わりと別れ、その後の冬
夏の恋の後、季節が変わり冬のシーンで物語は締め括られます。
ユダヤ教に属しているエリオ一家はクリスマスを重んじ、別荘でクリスマスを迎えます。
そこにオリヴァーを呼ぶのですが、電話で彼はエリオに結婚の報告をしてパーティーに来ることはありませんでした。
それに対し、エリオからオリヴァーに非難の言葉はありません。
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ただ、「君の名前で僕を呼んで」と、オリヴァーに愛の言葉を請うだけでした。
そして、自分はオリヴァーに愛の言葉を伝えます。
エリオの様子を見た両親は気を利かせてその場を去り、残されたエリオは暖炉の火を見てオリヴァーとの恋の終わりに涙します。
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【ネタバレ】映画『君の名前で僕を呼んで』感想
理想の夏休みとひと夏の恋
この2人は男性で、ラブラブした描写より友情のような関係性を魅せてくれます。
しかし、時に2人は友情を超えた「特別な関係」と思えるシーンがいくつかあります。
例えば、エリオのピアノ演奏をオリヴァーが聞くシーン。
エリオ自身が作曲した曲をオリヴァーが気に入るのは、オリヴァーがエリオに愛情を示している暗示の様に思えます。
エリオもオリヴァーとのやり取りの後、「キツく言い過ぎた、嫌われたかも」というメモをエリオは書いていました。
しかし、映像では2人の距離が近くなる描写はそれほどありません。
こうして2人は、お互いに言葉や行動はなくとも、心の距離を縮めていきます。
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客観的に見ると2人は恋の色に染まっている様子はなく、映像だけでは愛の言葉がないとわかりにくいかもしれません。
だからこそ、察して余るものがあると思えます。
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罵倒のない最後の電話と最高の愛の言葉
2人の恋は、電話でオリヴァーが「結婚したこと」をエリオが伝えられ、幕を閉じます。
しかし、エリオはオリヴァーを責めませんでした。
ただ最後の愛の言葉を請い、相手を想って会話を続けます。
そして、暖炉の火を見つめるエリオは涙を流し、エンドロールが流れます。
そのシーンにはセリフはありませんでした。
乱暴なそぶりも見せません。
ただ静かに、エリオはオリヴァーを想って泣くだけです。
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この2人は確かに恋に落ち、特別な関係になります。
しかし、オリヴァーもエリオも大人過ぎて恋に溺れることはありませんでした。
聡明な2人らしい結末です。
見ている者としては、「オリヴァーがひどい」とは言えませんが、「泣かないでエリオ」とは言いたくなります。
たき火越しに見せるエリオの撮影が、見事だと思いました。
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両親の理解ある愛の目線
エリオの両親、特に父親はエリオの恋に気付いています。
父親はその恋をあからさまに指摘することも、怒ることもありません。
エリオに「息子の恋」を応援しているということを伝えるシーンがあるくらいです。
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偏見がないということが、まず1つ。
エリオの家は、宗派的に同性愛を禁じられているところです。
それをもちろんエリオの父親も理解しているでしょう。
しかし、彼は暖かく2人の恋を見守ることに徹しました。
2人の恋が終わった時、エリオの父親はオリヴァーを責めることはせず「おめでとう」と結婚を祝い、息子のエリオには心配そうな目線を向けました。
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そして、両親は気を利かせてエリオを1人にしてあげます。
息子の恋を「息子の為だけ」のものにしてあげて、余計な茶々を入れない両親の配慮は本当に素敵だと思いました。
この映画のキャラクター達は、愛に満ちていて最高に心が温まります。
そして、「両親が気を使っている」とあからさまな演技がなくてもわかるのが、『君の名前で僕を呼んで』の凄いところ。
自然な演技で、知的な家族を見事に演じ切っていました。
父親とエリオが話すシーンもそうです。
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映画『君の名前で僕を呼んで』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
発売中の雑誌SPRiNGのカルチャーアワード2018《映画部門》で、 #君の名前で僕を呼んで が堂々第1位に!本当に皆様に愛される作品となり嬉しい限りです🙇 pic.twitter.com/T9skkX86dz
— 映画『君の名前で僕を呼んで』公式 (@cmbyn_movie_jp) December 27, 2018
映画の参考になったでしょうか?
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この恋がどれほど切ないか、エリオの聡明さ、オリヴァーの大人の対応などを味わっていただければ嬉しいです。
以上、『君の名前で僕を呼んで』のレビューでした。
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