奴婢出身から高麗政権のトップまで上り詰めた実在の人物であるキム・ジュンを主人公に、彼の生きた混迷した時代も同時に描いた歴史大作時代劇。
『武神』は、仏教経典の総称「大蔵経」製作から1000年を記念して製作されたドラマとしても有名であり、記念すべき作品でもあります。
「大正新脩大蔵経」の底本となったことでも知られています。
ソフトなイメージの強い個性派俳優キム・ジュヒョク初の時代劇!今までのイメージを覆し、激しく・男らしく・潔いキム・ジュンを演じています。
それでは、さっそく韓国ドラマ『武神』をレビューしたいと思います。
目次
『武神』キャスト・相関図
キム・ジュヒョク / 役:キム・ジュン
- 武将宅の使用人の息子
- 寺に預けられ懸命に優れた武術や学問を取得する努力家
- 身分が低くても自ら行動できる男になりたいと願う斬新派
- 主君チェ・ウに絶対的な忠誠心を抱く
パク・サンミン / 役:チェ・ヤンベク
- 奴婢出身、武術の腕が認められ親衛隊で活躍
- キム・ジュンの良きライバル
- 途中キム・ジュンに対抗するべく道を外してしまう
チョン・ボソク / 役:チェ・ウ
- 代々武将チェ・チュンホンの息子
- キム・ジュンの身分を解放し自らの側に置く
- 父チェ・チュンホンの死後、武臣政権の2代目当主となる
キム・ギュリ / 役:チェ・ソンイ
- チェ・ウの一人娘
- 奴婢であったキム・ジュンの才能にいち早く気づき、好意を抱く
- 親の決められた結婚をするが、キム・ジュンを忘れることができない
【ネタバレ】『武神』あらすじ・感想
ソフトなイメージを奪回!初めての時代劇に挑むキム・ジュヒョク
韓国ドラマ『武神』で初の時代劇出演となり、激しくクールな武将の役を演じた俳優キム・ジュヒョク。
今までのドラマや映画などで見せてきた「ソフトなイメージ」を脱却し、新たな新境地を開きます。
また、キム・ジュヒョクの父で俳優のキム・ムセンもよく時代劇に出演していたこともあり、初の時代劇でも困惑はなかったようですが「とにかくハードだった」と、後に彼は語っています。
青年期の頃のキム・ジュンを演じているのには、少し違和感がありましたが…。
相変わらず見事に若さ溢れる姿を熱演、しかも僧として寺に入るので坊主頭!
個人的にはこの姿に少しショックを受けましたが、それでも奴婢から武将の最高地位を築くまでに変身していく姿はキム・ジュヒョクのストイックな演技力が十分に発揮され、やはり素晴らしい演技派俳優だなぁと見ていて胸が高まります。
大作時代劇には珍しい「ラブストーリー」も必見!
男臭い時代劇のように見えますが、実は大作時代劇には珍しくしっかりとしたラブストーリーも見どころです。
ムセン(=後のキム・ジュン)とウォラ(ホン・アムル)、そしてキム・ジュンとなった後に主君の愛する女性アンシム(ホン・アムル/二役)が命を落としたウォラに似ているとのことで、主君からアンシムを奪うことになったり、さらに主君の娘ソンイ(キム・ギュリ)とキム・ジュンとの叶わない恋など、かなり見ごたえのあるラブストーリー設定が展開されます。
このラブストーリーですが、実は実際の歴史書に基づいて描かれているようで、「主君の許嫁と密会していた」など、激動の歴史の渦に翻弄された展開も必見です。
キム・ジュン役を演じているキム・ジュヒョクも、ラブストーリ-シーンばかりはいつもの優しくてソフトなイメージを垣間見ることができます。
この時代にも切ない恋模様が展開されていて、しかも歴史書に記載されているところも貴重ですね。
ちなみに余談ですがラブ系繋がりで。このドラマの後にキム・ジュヒョクとキム・ギュリの交際が発覚!ですが、1年で破局しました。
少しドラマでの「情」があったのでしょうか?
良くも悪くもライバルなキム・ジュンとヤンベク
毎度のことですが、例に漏れず『武神』でもライバルの存在がいます。
キム・ジュンと同じ奴婢出身という境遇、良き理解者であり、親友でもあるのですが、同じ女性を愛し、さらにキム・ジュンの出世への不満や憎悪が出てくる…という「良くも悪くもライバル」な存在のヤンベク(パク・サンミン)。最後には、キム・ジュンと敵同士で剣を交えることになってしまうのです。
ヤンベクからしてみれば、確かに同じ奴婢上がりのキム・ジュンが自分より上に出てしまったので、ライバルどころか「本当の敵」になってしまうのもわかる気がします。
キム・ジュンを敵視するまでになってしまったヤンベクなのですが、それでもキム・ジュンは「真の友情」を取り戻そうとヤンベクを最後まで信頼するのですが、結局その努力もむなしく、最終的に剣を交えてしまいます。
キム・ジュンの異様な出世もそうですが、敵視された一番の理由は、やはりウォラであったと思います。ヤンベクにとってウォラは癒しの存在であったため、キム・ジュンとウォラの再会は本当に辛かったことなのでしょう。
少しヤンベク目線で書いてしまいましたが、とにかくキム・ジュンはヤンベクを最後まで「友」とし、ヤンベクは「敵」として、すれ違ってしまう過程が非常に切ないのです。
「王」より「武将」が権力を持つ
高麗時代も後期、この時代もやはり「王」より「武将」が結果的に政治的地位を持っていた時代。
日本も幕末時代から軍国主義へのように、高麗も特殊な政権体制でありました。
ドラマ『武神』を見ていると、「王の立場」が本当に肩身が狭きものだと痛感します。
王宮と武将がWin-Winになってれば、もっと歴史も変わっていたのか?もっと現代につながる時代背景も変わったのか?と思ったりします。
やはり、小さな国を必死で守るためには「武力」の力が必要だったのかもしれません。
日本も小さな国なので、このあたりの考えは同じだったのかなぁ?とも思いますが、そういう意味でも韓国時代劇を見ていると朝鮮史を本当に勉強したくなってくるのです。
出る釘は打たれる?最高地位まで築いたキム・ジュンは。
いよいよ、主君チェ・ウ(チョン・ボソク)の死後、キム・ジュンが主君へ。
チェ・ウには2人の息子がいたのですが、その息子を押さえ最高地位に立ったキム・ジュン。
周りの部下たちの支えもあり、みんなが納得のいく最高な主君が誕生したように思えました。
ですが、やはり「出る釘は打たれる」という言葉のごとく、キム・ジュンに対して反発する人が出てくるわけです。それも可愛がっていた部下が…。
その時にはすでにキム・ジュンも気づいていたことがドラマ内で描かれており、非常に切なく、胸が痛むのです。
いくら優れた人材であれ、最高の地位を得ると打たれてしまうのか?いや、キム・ジュンはそれでも最期まで小さな国「高麗」を守ろうとしたのです。隣国の大国の手下には断固としてなりたくなかったのです。
戦をしてても自らの力で国を守りたいキム・ジュンと、戦をせず大国の傘下を選ぶ王宮との意見の対立が、最後にキム・ジュンを殺害することになってしまいます。
本当にキム・ジュンを葬らなければならなかったのか?経過してきた時代がそうさせたのか!?
いずれも、国のために・民のための考えであったことは間違いありません。
最期のキム・ジュンは自分を裏切った部下の剣を自らに刺すシーンがあるのですが、このシーンにキム・ジュンの生き様の全てが描かれていたように思います。最期は武将として散ったのですね。
『武神』キャスト・あらすじ・ネタバレ感想まとめ
激動の時代に奴婢から這い上がった実在のヒーローの話でしたが、奴婢から主君に立つことは、現代に置き換えても本当にあり得ないほどに偉大な話であったと思うのです。
なので、この時代の方々からしてみれば、本当にヒーローだったに違いありません。このヒーローに鼓舞されて、民がもう少し立ち上がれば…とも勝手に思ったりしたのですが、やはり現実的には不可能なことだったのかもしれません。
キム・ジュンがまだ奴婢を抜け出していない時に、こんなことを言っています。
「奴婢でも男らしく生きる道はあります」
この言葉が、キム・ジュンを最高地位まで目指せた原動力になったに違いありません。
小さな国「高麗」による大国との壮絶な関係や武将と王宮の対立、そして仲間同士の対立。
色々な意味で壮絶な実話に基づく韓国歴史ドラマなので、まだご覧になっていない方はぜひ見てみてください。おすすめです!