2022年5月13日の劇場公開に先駆け、同年4月28日よりNetflixで配信が開始されたアニメ映画『バブル』。
アニメ『進撃の巨人』の荒木哲郎監督とWIT STUDIOが再タッグを組んで挑んだオリジナル長編アニメーションです。
世界中に降り注いだ泡《バブル》によって重力が壊れた東京を舞台に、少年少女の不思議で運命的な出会いを、美しい背景美術や爽快なパルクール・アクションとともに描きます。
脚本を『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』の虚淵玄、キャラクターデザイン原案を『DEATH NOTE』の作画で知られる小畑健、音楽を『甲鉄城のカバネリ』『プロメア』の澤野弘之が担当しました。
主人公のヒビキ役には俳優の志尊淳、謎の少女・ウタ役には声優初挑戦となるアーティストのりりあ。、そして科学者・マコト役には女優の広瀬アリスがキャスティングされています。
早速、アニメ映画『バブル』をネタバレありでレビューしていきたいと思います。
目次
アニメ映画『バブル』あらすじ
重力が壊れた東京で出会う少年少女
世界中に降り注いだ泡《バブル》によって重力が壊れ、水没都市と化した東京。
ライフラインが途絶え、居住禁止区域となったエリアは、降泡現象で家族を失った一部の若者たちの住処となっています。
彼らはチームを組んでパルクールバトルを行い、その勝敗に生活物資を賭け、競っていました。
渋谷を拠点とするチーム・“ブルーブレイズ(通称・BB)”のエースであるヒビキ(志尊淳)は危険なプレイスタイルで注目を集めていましたが、ある日、重力が歪む海に落下してしまいます。
そこへ突如として不思議な少女・ウタ(りりあ。)が現れ、ヒビキを救出。
言葉が少なく野性的な行動を繰り返す、まるで幼子か野良猫のようなウタでしたが、驚異的な身体能力を持っており、チームの一員としてBBの暮らす船で生活をともにすることに。
船には降泡現象の調査をしている科学者・マコト(広瀬アリス)も暮らしており、ウタの面倒を見るようになります。
やがて、幼い頃から特殊な聴覚を持っているヒビキにしか聴こえていなかった“音”にウタが反応を示し、二人は心を通わせていきます。
しかし、ヒビキがウタに触れようとすると、ウタは悲しげな表情を浮かべて拒むのでした。
その矢先、再び降泡現象が始まり、東京はまたしても沈没の危機に陥ります。
ウタは泡から聴こえてくる音に誘われるようにして姿を消しました。
世界の崩壊が近付く中、ヒビキとウタが辿る運命とは……。
【ネタバレあり】アニメ映画『バブル』見どころ・感想
“人魚姫”と“知的生命体”
物語のモチーフとなったのは『人魚姫』。
「少女が恋した末に泡になる」という展開を「泡が恋して少女になる」という逆の流れに組み替えることにしたのが物語の着想源だったと明かされており、劇中でも繰り返し言及されます。
ヒビキに恋をした泡《バブル》の一つが意思を持って恋をして……そうして生まれたのがウタです。
少女の姿を手に入れたばかりのウタは幼子状態でしたが、すぐに言葉を習得し、自由気ままではあるものの、人間の生活に溶け込んでいきます。
というのも、ウタたち泡《バブル》の正体は、“宇宙からやって来た知的集合体”。
地球を侵略しに来たのか、偶然辿り着いたのかは明らかになっていませんが、知能があることは確かなようで、ウタの成長速度にも納得です。
そんなウタには、人魚姫と同じく姉がおり、物語終盤では「お姉さま」と呼ばれる存在と対峙することになります。
対峙するということは、少なからず泡《バブル》は人間を敵視しているように思えます。
そのように、本来ならば敵対する相手である人間の世界を守ったウタは、最後に泡となって消えていきます。
マコトに『人魚姫』を読んでもらった時から、自分を人魚姫、ヒビキを王子様と考えていたウタなので、人魚姫と同じように泡となって消滅することは想定内だったのかもしれません。
一方で、ウタの身体はヒビキと触れ合うと泡になってしまうという描写がありましたが、これはウタにとって想定外だったようで、その都度悲しみの表情を浮かべていました。
人魚姫は王子様に会うために足を得ますが、その代わりに声を失ったため、意思疎通が図れなくなってしまいます。
同じように、ウタにとっての代償が、触れ合えないということだったのかもしれません。
ヒビキに名前を付けてもらって、少しずつ言葉を覚えて、知識も身に付けて、意思疎通が図れるようになっていきます。
それでも、触れ合うことは許されないというのが、二人の間に切実さを持たせていました。
ヒビキとウタがお互いを意識し合う場面では、劇画タッチで描かれたそれぞれの顔が大写しになるカットがあり、互いが互いを特別に想っていることがわかりやすく描写されています。
突然のタッチの変化に驚く人もいるかもしれませんが、好意を持ってしまえばフィルターがかかってしまうのは現実でもよくあること……恋は盲目なのです。
斬新な世界設定
『人魚姫』という古き良き題材をモチーフにしながらも、世界設定が斬新な『バブル』。
泡《バブル》が降り注ぎ、重力が壊れた東京という舞台設定からドキドキさせられます。
街全体が廃墟と化した水没都市・東京を跳び回る少年たちの絵は、ビジュアルとしてもワクワクしました。
生活物資を賭けてパルクールで競い合うという基本情報等は正直ツッコミどころ満載ですが、説明とともに映し出される爽快アクションのおかげで没入することができます。
背景の映像美はもちろんのこと、重力がない世界で行われているパルクールの表現が独特で、アニメーションならではの面白みがありました。
秋葉原や渋谷、東京タワー近辺など、取材をもとに3Dモデルを作成したり、ドローンで建物を上から撮影したりと、こだわって作られたそうです。
リアルさが追求されているからこそ、ファンタジーな魅力に磨きがかかっています。
斬新といえば、“泡の生命体”という設定にも言えるでしょう。
ただ漂っている、ただ浮遊しているだけの泡ではなく、生命体なのだと思わされるのは、色に秘密があるからでした。
泡の持っている微妙な色のグラデーションをコントロールして、その生命感が表現されたといいます。
泡《バブル》が怒って赤くなる様子は何となく『風の谷のナウシカ』に出てくる王蟲の目を想起させられましたが、言葉を持たない生命体の感情的な表現と思えば、近いものがあるかもしれません。
荒木監督作品と繋がりの深いキャスト
脇を固めるキャストには、これまで荒木監督作品に出演してきた声優陣が顔を揃えています。
ヒビキが所属するパルクールチームのリーダー・カイ役には、『進撃の巨人』で主人公のエレン・イェーガーを演じた梶裕貴がキャスティングされています。
同じく『進撃の巨人』でアルミン・アルレルトを演じた井上麻里奈も、ヒビキたちを脅かす敵チームのリーダー役で参加しました。
『甲鉄城のカバネリ』からは主人公・生駒を演じた畠中祐や、ヒロイン・無名を演じた千本木彩花が参加し、『バブル』の試写会後には生駒の友人・逞生を演じた梶裕貴、荒木監督を含めた4ショットを披露していました。
さらに、『DEATH NOTE』の主人公・夜神月、『甲鉄城のカバネリ』の天鳥美馬を演じた宮野真守が、ヒビキら少年たちを見守る年長者・シンの声を担当しています。
こうしたゆかりのある声優陣が集い、魅力的なキャラクターたちに仕上がっています。
アニメ映画『バブル』まとめ
・鮮やかな色彩とリアルな背景から成る映像美
・定番ラブストーリーと斬新な世界設定
いかがだったでしょうか。
アニメ映画『バブル』は、2022年5月13日から劇場公開予定、同年4月28日よりNetflixで配信中です。
urara