なんの先入観もなくキャッチーな題名に惹かれて視聴したトッド・グリムソン著のホラー小説を原作とする『ブランニュー・チェリーフレーバー』が、面白い! どんな甘い「チェリーの味」がすると思いきやとんでもありません。
むしろ生粋のダーク・ホラーで、見たことがない世界観に驚愕します。魔術、呪い、復讐、幻想、バタバタと人が死んでいくなんでもありの展開、グロテスクでありながら、なぜか魅力的。
強い目ヂカラをもつ主演のローサ・サラザールの存在感も手伝い、オカルト要素も全く気になることなく、最後まで目を離すことができない作品となっております。
それでは『ブランニュー・チェリーフレーバー』について解説していきます。
・裏切られた信頼と正体不明の魔女
・生み出し続ける白猫
・暴走する呪い
・搾取する側、される側
・ボロの本当の狙い
目次
【ネタバレ】『ブランニュー・チェリーフレーバー』解説・感想
盗まれた新人監督の作品
新人映画監督のリサ・ノヴァ(ローサ・サラザール)は、ハリウッドで名をはせたプロデューサーのルー・バーク(エリック・ラング)からの電話を受けて心を躍らせています。
リサの制作した短編映画を見て気に入ったというルーは、映画を長編化してリサを監督させると約束します。当初は、リサに目をかけ、ハリウッドで名を売り出すのに協力を惜しまないようにみえたルー。
しかし、映画出資者の主催するパーティーに向かう車内でリサの太ももに触れるルーの手をリサが振り払ったことでこれまでの良好な関係が、もろくも消え去ることになると、その時リサは思いもよらないのでした。
復讐のための呪い
パーティーでリサを凝視する謎の女性ボロ(キャサリン・キーナー)。リサに「一緒に来た男性はあなた抜きでよからぬ相談をしているわよ」と言い、「あなたを傷つける人は、私が傷つけてあげる」と謎の言葉を残して、その場を去るのでした。
ボロの言う通り、パーティーの後にルーとの関係は決裂し、リサの作品の監督にジュールス(ジェイソン・ブレア)を指名、ルーは、リサを排除する動きを見せはじめます。
ルーの気まぐれなやりかたに納得がいかず、自分の作品を取り戻しに、ルーの自宅に怒鳴りこんだリサ。
そんなリサに逆ギレし、「芸術とは、残酷なもので、この世界は食うか食われるかだ!」
と言い放ちリサの首を締めて、追い出すルーの有様に激怒したリサは、激情のまま「自分の作品と取り戻し、アイツに地獄をみせてやる!」
とルーに呪いかける契約をボロと交わしてしまうのでした。
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なんとリサの口から吐き出され、子猫が生まれてくるシーンは衝撃すぎて、次の展開への期待はマックス、目が離せなくなるのです!
リサとルーをとりまく不可解な出来事
ルーに呪いをかけたと公言するリサの自宅は、ボロにもらった植物がツタを這わせ、建物全体を覆いつくす成長ぶり。
リサ自身にも正体不明のものが見えるようになり友人のコード(マニー・ハシント)とクリスティーン(ハナー・レビアン)にも心配されるようになります。
そんな中でもリサの短編映画「ルーシーの瞳」の上映会を催し、どこまでもリサをおちょくる行為を続けるルー。呪いの効果が現れず、イラつくリサは、家を覆いつくした植物の花粉を呪いの促進のためにルーに摂取させることまでする始末。
そしてリサとルーの周辺で、ジュールズが全身火だるまとなる事故が起き、ルーの息子のジョナサン(ダニエル・ドヘニー)が巨大クモに噛まれ廃人と化す、不審なことが次々と起こるようになるのでした。
呪いの効果が出始めたころに、リサの部屋の床に出現した謎の扉。地下へと続く不思議な空間にはジャガー柄のソファーがぽつんとある部屋で、えぐりだされた目玉や、顔のない女性の幻覚にリサは恐怖を感じ、怯えます。
ルーもまた、一連の不可解な出来事の裏にはリサの存在があると疑い、ラルフ(ダーシー・ローリー)とジェームズ(ショーン・オーウェン・ロバーツ)と使いリサの身辺調査を始め、リサとの争いの応戦に備えるのでした。
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その子猫の生き血をすするボロに、もうなにがなんだかわかりません!スピーディーかつグロテスクな展開に、視聴者は好奇心だけがお友達!もう見続けるしかないのです。
ボロの正体
リサの弱みを握ろうと、ボロのもとを訪れたルーに、リサの呪いの存在を悪びれもせずに明かしたボロ。
呪いでルーと共生関係にあるリサには、短編映画撮影で何かあったはずだと、ルーをけしかけてリサとの対決に彼女の秘密を暴くようそそのかすのでした。
リサとルーの争いを横目に、ルーの息子ジョナサンをゾンビにして自分の手下に仕立てあげ不審な行動もみせるボロは、リサの過去に興味を示すのに理由がありました。
ボロは900年もの間、人間に乗り移っては、生きながらえてきた存在。
かつて熱帯雨林の地で、メスの白いジャガーの化身の聖霊に見初められた男性で、白ジャガーにより与えられた力でその地の王にまでなった過去がありました。
ところが、その王国が窮地に陥ったときに、また白ジャガーの力を頼り、見返りに自分の妻を生贄に差し出す要求に応えず裏切ったことで殺されてしまった王だったというのです。
その王は、怒った白ジャガーに襲われ死ぬ直前に、通りかかった女の子に乗り移って以来、ボロとして10数年おきに健康な人間の身体を乗り換えてきたというのです。
魔術により、リサの姿と、白ジャガーがつながる予言をみたボロは、ルーとリサを引き合わせ、自分のもとに来るように仕向けていたのです。
そして、白ジャガーとつながりのあるリサの肉体が最初から狙っていたのでした。
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短編映画「ルーシーの瞳」
リサとルーの対決は、ルーがリサの殺害依頼を出す、ぬきさしならない事態にまで陥っていました。
ルーの手下のジェームズに襲われ、リサは瀕死の重傷を負わされるものの、ボロの魔術によって復活します。
それと同時期に、ルーにより探し出され現れたのが、リサの短編映画「ルーシーの瞳」の主演女優のメアリー(シエナ・ワーバー)。リサとの映画撮影で右目の眼球を失っていたメアリーは、映画の出資者であり、リサの恋人でした。
右目を失った経緯の記憶がないメアリーは、ルーのもつリサの映画をみてショックを受けます。
これまでCGだと思っていたリサの短編映画に、恋人メアリーが目の前で自らの目をえぐりだし食べてしまう衝撃のシーンを、リサはワンシーンとして採用していたのです。
リサとの映画撮影で、役にのめりこんでしまったメアリーは、幻覚作用のあるペヨーテをリサとふたりで服用して、役と現実の区別がつかなくなり、リサの狂気的な演出と後ろに潜む怪物に駆り立てられ恐ろしい映画が出来あがったと気づくのでした。
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そしてペヨーテの効用でメアリーの見たリサの背後の怪物は一体なんだったのでしょう?
幻覚の正体
ボロとの対決を前に、ルーとの争いに決着をつけたリサ。
自分の映画を取り戻し、ルーに地獄を味あわせたことに虚しさを覚えます。
ボロとの呪いの契約をきっかけにリサの寝室の床に出現した地下へと続く扉。正体不明のジャガー柄のソファーと、顔のない女性が、ボロの存在に警鐘を鳴らす母だと気づいたリサは、本当の敵は、白ジャガーの血をひくリサの肉体を狙うボロだと気づきます。
これまでリサを吐き出して生み出してきた白猫の生き血を飲んでいたボロは、白ジャガーの力を受け継ぐ、若く強いリサ身体に乗り移ることが本当の目的だったのです。
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『ブランニュー・チェリーフレーバー』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ブランニュー・チェリーフレーバー』をレビューしてきました。
・泥沼化するリサとルーの争い
・白いジャガーの化身とボロ
・乗り移る身体
エッジの利いた奇抜なストーリー
新人監督リサの短編映画をネタに栄光を取り戻したい身勝手なプロデューサーのルー・バーク裏切りに端を発したリサの復讐劇。
リサの望みを叶えようと近づいてきた魔女の呪いを描いた単純な物語かと思いきや大間違い。
リサが呪いの報酬として口から子猫を吐き出して生み出すわ、呪いの影響で植物が建物を覆いつくすわ、ボロはゾンビの手下を作るわと、次から次へと予想もしない展開に息つく暇がありません。
そして終盤に、リサのルーへの復讐劇は、リサに取り入るためだけのもので、ボロの真意があぶりだされてくるのです。
ボロとの契約のおかげで、理解に苦しむ幻想をみて恐れるリサの謎と、人間の身体を乗り換えながら生きながらえてきた聖霊のような存在となったボロとの攻防で、クライマックスを迎えます。
プロデューサーのルーとのせめぎあいは、最後にはどうでもよくなるのですが、その物語の巧妙な成り行きから、目が離せません。
リサのルーへの復讐劇の合間に、ボロの悪だくみもちょこちょこ挟んでおり、謎と疑問が散りばめられているしかけに視聴者が、楽しめるようにもなっております。
Netflixのリミテッド・シリーズらしく、エッジの利いた奇抜なダーク・ホラーで、好き嫌いはわかれるとは思います。
それでもスタイリッシュでミステリアス、グロテスクでありながら、見たくなるような絶妙なバランスで表現されており、一風かわったトーンの『ブランニュー・チェリーフレーバー』を一気見したくなること請け合いです。
蔵商店
ぜひご覧ください!
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