映画『ある少年の告白』あらすじ・ネタバレ感想!同性愛者の矯正施設における実態を描いた実話に基づく人間ドラマ

出典:『ある少年の告白』公式ページ

映画『ある少年の告白』は、事実を基に作られたある同性愛者の矯正施設の実態を描いた問題作であり、主人公や家族が葛藤を抱えながらも成長していくヒューマンドラマです。

ポイント
  • 日本では馴染みのない、同性愛者の矯正施設による驚愕の真実とは。
  • 主演であるルーカス・ヘッジズの演技が、とにかく素晴らしいです。両親役はラッセル・クロウとニコール・キッドマン、他にもトロイ・シヴァンが出演と、何気に豪華キャストが顔を揃えています。
  • 同性愛者の葛藤だけでなく、宗教や信仰心、家族のあり方など、考えさせられる問題が様々あり、邦題には少し違和感があるかも。

それではさっそく『ある少年の告白』をレビューしたいと思います。

映画『ある少年の告白』作品情報

『ある少年の告白』

出典:映画.com

作品名 ある少年の告白
公開日 2019年4月19日
上映時間 115分
監督 ジョエル・エドガートン
脚本 ジョエル・エドガートン
原作 ガラルド・コンリー『Boy Erased: A Memoir』
出演者 ルーカス・ヘッジズ
ニコール・キッドマン
ラッセル・クロウ
ジョエル・エドガートン
チェリー・ジョーンズ
グザヴィエ・ドラン
音楽 ダニー・ベンシ
ソーンダー・ジュリアーンズ

映画『ある少年の告白』あらすじ


アメリカの田舎町で育った大学生のジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は、あることがきっかけで自分が同性愛者だと気付く。

息子の告白に戸惑う牧師の父(ラッセル・クロウ)と母(ニコール・キッドマン)は、“同性愛を治す”という転向療法への参加を勧める。

その内容を知ったジャレッドは、自分にうそをついて生きることを強制する施設に疑問を抱き、行動を起こす。
出典:シネマトゥデイ

映画『ある少年の告白』みどころ

『ある少年の告白』みどころ

ガラルド・コンリーの著書を原作にした、同性愛の矯正を強いられた青年を描く人間ドラマ。

主演は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのルーカス・ヘッジズが務め、彼の両親をニコール・キッドマンとラッセル・クロウが演じるほか、グザヴィエ・ドラン、シンガー・ソングライターのトロイ・シヴァン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーらが共演。

『ラビング 愛という名前のふたり』などの俳優ジョエル・エドガートンが長編2作目のメガホンを取った。
出典:シネマトゥデイ

映画『ある少年の告白』を視聴できる動画配信サービス

『ある少年の告白』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年5月1日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年5月1日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレあり】映画『ある少年の告白』感想レビュー

ガラルド・コンリー氏の回想録であるベストセラーが原作の今作。派手さは一切なく、一人の少年の葛藤をじっくり、そして丁寧に描く

舞台はアメリカのアーカンソー、保守的な南部の街で、牧師の父親と信心深い母親に育てられた主人公のジャレッド。

しかし大学に入り、新しく友人になったヘンリーに性的暴行を受けたこともあり、自らの性的指向を自覚します。

可愛い彼女がいても、それとなく男性に視線を向けていたりするシーンがあり、自分自身認められなかっただけかなという感じですが、しかしきっかけは友人からの悲惨な性的暴力。18歳の少年にとっては、過酷すぎる出来事です。

その後、暴行した友人からジャレッドの両親への告発の電話があり、ジャレッドは両親に自分はゲイだと思うと打ち明けます。

父親は福音派の牧師で、息子が同性愛者であることをどうしても認められず、同性愛を治療することを目的とした矯正施設にジャレッドを送ることにします。

映画はここから、矯正施設でどんな「治療」が行われるかを描いていくのですが、これがまた目を疑うようなものです。

宗教的に許されない、という考えの影響が大きいのでしょうが、それにしても行いが正しいと信じていると、ここまで人は人を傷付けられるのか…とゾッとします。

だいたい治療の内容は外に漏らすな、という辺りで、完全に怪しいのですけれど。実際詐欺的な施設もあるようですね。親からお金を巻き上げることを目的とした。

施設ではトイレまで監視付き、施設にいる間は携帯電話も財布、日記なども取り上げられる。告白文を読み上げさせられ、なぜか走ったり、バッティング練習をしたり、女性は膝下スカート必須。何の科学的根拠もない、意味のわからない治療が行われます。

それでも施設の人間は、それがセラピーを受けている人間のためだと思っています。

決して同性愛者を卑下して差別しているのではなく、同性愛は病気だから治してあげようという、彼らにとっての正しい行いで、ある意味善意から治療に手を貸している人たち。

もうね、ホラーですよ、これ。しかも現在進行形で、今も矯正施設があることが、一番おそろしいわけですが。

施設での治療が原因で自殺をしたり、鬱になってしまう人がいるのも納得です。

自分を否定され、罪人だと言われ、平気でいられるわけがないです。

多様性を訴える割には、ずいぶんと不寛容な社会だと苛立ちますが、信仰心を頭から否定するのもまたおかしな話なので、結局は根深い問題なわけですけれど。

『ある少年の告白』の原題は「Boy Erased」。直訳すると「消された少年」。

矯正施設に送られた何十万という人たちが、自己を消されるような治療を受けさせられていた、今も受けさせられていると思うと、深く考えさせられてしまいますね。

主演ルーカス・ヘッジズの演技を観るだけでも価値がある、と言いきります!

マンチェスター・バイ・ザ・シー』は、私が映画館で泣けて泣けてどうしようもなかった2016年の映画。

『ある少年の告白』の主演ルーカス・ヘッジズは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でケイシー・アフレックの甥役を演じて、弱冠20歳でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。

父親を亡くしたことで、久しぶりに幼いころ好きだった叔父と再会するティーンエージャーの役でしたが、これがまた本当に素晴らしかったんです。

主演男優賞を獲ったケイシーに、引けを取らない存在感。確かな演技力。

またすごい子が出てきたなあ、と鑑賞後に思ったものです。

ルーカス・ヘッジズくんは、洗練された都会の青年役より、片田舎で暮らす普通の若者役が似合う、と勝手に思ってます。

色白で涼やかな目元、顔立ちも端正、独特ではっと目を引く雰囲気の持ち主なんですけどねぇ。

同年代のティモシー・シャラメとは、また違う魅力を持つ若手俳優です。

スリー・ビルボード』でも、主役のフランシス・マクドーマンドの息子役で出演していましたが、こちらも舞台は架空の田舎町でしたね、そう言えば。

日本でももうすぐ公開の『ベン・イズ・バック』では、ジュリア・ロバーツの息子役で出演しているので、こちらも今から楽しみで仕方ないです。

ちなみに『スリー・ビルボード』も『マンチェスター・バイ・ザ・シー』も、大変見どころのある映画でオススメです。

マンチェスター・バイ・ザ・シー』は泣ける映画でもあるので、涙もろい方は、ティッシュの準備を忘れずに。

脇役も何気に豪華で、父親役のラッセル・クロウの確かな演技力、母親役のニコール・キッドマンの相変わらずの美しさ、主題歌も歌っているトロイ・シヴァンの存在感も、見どころのひとつだと思います。

監督脚本を担当したジョエル・エドガートンも施設の責任者役で出演しています。

監督としては、本作が二作目。『ある少年の告白』は次の監督作品が楽しみになる出来栄えです。

矯正施設の実態を知るだけでなく、同性愛と宗教についても改めて考えるきっかけになる、今の時代に観て損のない作品。

これが過去の話しではなく、現在でもアメリカの35の州で矯正施設が存在していることが、一番恐ろしいことです。

同性愛は治療するもの=同性愛は病気、と考える人がそれだけ多いのは、やはり宗教が関係しているのかと鑑賞中も鑑賞後も考えさせられます。

欧米では同性愛が合法であることは多くても、主な宗教では禁止というか否定しているものが多いです。

キリスト教では、基本的に禁止のカトリックと禁止のプロテスタント、ユダヤ教もヒンドゥー教も禁止、イスラム教も一部例外を除き禁止。

記述なしは仏教と神道くらいなのです。

同性愛者だからと言って、罪人呼ばわりされたり、暴行を受けて殺されたり、という話が日本ではあまり聞かれないのも、この宗教が関係しているのも大きいのでしょうね。

『ある少年の告白』では、ラッセル演じる父親はプロテスタント教の牧師ですから、息子が同性愛者だとは教義的に受け入れられない。

信者である母親も戸惑いが大きい。けれど父親が息子を愛しているのは、間違いないなくて。

だからこそ、同性愛を治すために施設に送ろうと考えるのも、わからなくもないです。まったく受け入れられる行為ではありませんが。

同性愛は病気でない、治す、変えられるものではない、という当然の考えが、宗教を通すと通じなくなるのが問題になっているわけです。

しかも大きく解決も難しい、多くの人が抱えているだろう問題。

ジャレッド目線で見ると、あまりにもつらい体験です。

アイデンティティーに悩んでいたところに性的暴行を受けたことで、目をそらしていただろう(信仰的に許されていないからもあるのかなと)性的対象が同性という現実を認める。

家族へカミングアウトをしたら、転向療法を勧められる。

自分のため、両親のためにも、同性愛を治したいと思う気持ちで、間違っていると頭ではわかっているため治療を受ける。

18、9歳の少年の心が傷ついていく過程は、観ているだけでもつらいです。

しかし父親の心情も、わからないわけでもない、というよりわかってしまうのが、またつらいんですよね。

敬虔な信者であればあるほど、あっさりと息子のカミングアウトを受け入れられないのは当然でしょう。

だいたい普通の親でも、すぐに認められる人は少数でしょうし。

父親がジャレッドに、自分の仕事(自動車販売会社を経営しているっぽい?)を譲ろうと思っていた、孫を抱きたかった趣旨の発言をしますが、それは親として誰もが思うことのはず。

息子を愛しているなら、息子の何もかも全部を即時受け入れろ、というのもこれはこれで少し乱暴な話だと思っています。親だって一人の人間なんですから。

生きてきた時代の違い、信仰の違い、そういったものは年を重ねた人ほど簡単に変えられるものではないんですよね。

それでも父親は最後に、息子を理解しようと努力している姿を見せて、そう伝える。そこに深い安堵を覚えました。

変わりたくても変われないものがある、そんな親子がそれでもお互いを諦められず、アイデンティティーや信仰を尊重した上で歩み寄ろうとする。

それは様々な問題を抱える誰にとっても通じるだろう、一つの答えでもあるように思えます。

映画『ある少年の告白』まとめ

以上、ここまで『ある少年の告白』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • ルーカス・ヘッジズのこれからが、ますます楽しみになりました。
  • 変われないものはあっても、寄り添い、理解しようと努力することはできると、一組の親子の愛情が教えてくれます。
  • エンドロールで流れる登場人物の一人の表記に、一番の驚きが。そこまでは席を立たないで!
  • 車窓から手を出したくなる気持ちはわかるけど、それは絶対やっちゃダメ。