映画『青燕』あらすじ・ネタバレ感想! 実在した時代に翻弄される朝鮮の女性飛行士を描く!

映画『青燕』あらすじ・ネタバレ感想! 実在した時代に翻弄される朝鮮の女性飛行士を描く!

出典:Amazon.co.jp

日本が朝鮮を植民地としていた時代に生まれ育ち、幼い頃から夢見ていた飛行士になるため日本に渡った女性「朴 敬元パク キョンウォン」の生涯を描いた作品。

大人たちは朝鮮が日本の植民地になることを嘆くのですが、子どもたちは忍者は空を飛べるのか?という疑問で盛り上がっていた時代、「国も性別も関係なく、空を飛ぶ夢だけ叶えたい」という想いを膨らませる一人の少女キョンウォン。

彼女は成長して日本に渡り、必死に男性と肩を並べて血を流しながらの厳しい訓練にも耐え、見事に念願の飛行士になる夢を叶えるのですが…。

ポイント
  • 一人の女性が夢を叶えるまでのリアルストーリー
  • 実在した映画のモデル「パク・キョンウォン」とは?
  • 大がかりな飛行セットにも注目

それではさっそくネタバレありで映画『青燕』をレビューしていきたいと思います。

映画『青燕』作品情報

作品名 青燕
公開日 日本未公開
上映時間 131分
監督 ユン・ジョンチャン
脚本 ユン・ジョンチャン
出演者 チャン・ジニョン
キム・ジュヒョク
笛木優子
ハン・ジミン
仲村トオル
音楽 ミヒャエル・スタウダッハー

【ネタバレ】『青燕』あらすじ・感想


夢の実現へ、喜び、出会いに満ち溢れるキョンウォン

幼い頃から、空を飛ぶことが夢だった一人の少女キョンウォン(チャン・ジニョン)。

大人に成長し、日本に渡り必死にタクシー運転手のバイトをこなして、無事に立川にある飛行学校へ入学できたキョンウォンは、喜びと夢の実現への希望に満ち溢れていました。

かとリーニョ

当時、朝鮮は日本の統治下に置かれていたので、朝鮮人ももちろん日本語がしゃべれます。キョンウォンを演じるチャン・ジニョン他、韓国俳優たちはかなり多くの日本語のセリフを披露しています。

タクシーのアルバイトをしている中、一人の男性のお客を乗せることになったキョンウォンは、その男性から幾度もご指名を受けて送迎をするのですが、ある夜にタクシーが故障!

その男性は、雪の降る中でタバコをふかし、「朝鮮語」で歌を歌い始めます。

『青燕』

出典:IMDB

驚いたキョンウォンは、「もしかして、朝鮮人ですか?」と聞きます。

キョンウォンは、久々に同胞の人に会えて心休まる思いをするのですが、それは乗客の男性も同じでした。

その男性の名はハン・ジヒョク(キム・ジュヒョク)、日本名は石田を名乗っていました。

彼がこの後の多大なる影響を与える人になるとは、思ってもいないキョンウォン。

ジヒョクの父は親日派で、ジヒョクを日本軍人にさせようとしていました。

それをなんとか逃れたかったジヒョクでしたが、とうとう父親の怒りにふれ、日本で陸軍士官学校へ入学することになるのです。

そしてキョンウォンは、立川飛行学校の同胞の仲間にも支えられながら、男性陣と同じ血の出るほど厳しい訓練にも耐え、無事に初飛行を果たすことになります。

別れ際にジヒョクからもらった革の手袋を胸に…。

めきめきと飛行技術を伸ばすキョンウォンに、教官である徳田(仲村トオル)はほれ込み、彼女を朝鮮初の女性飛行士にさせるために支え続けます。

朝鮮初の女性飛行士になったキョンウォンの順風満帆な日々

無事に朝鮮初の女性飛行士となったキョンウォンは、祖国でも話題になっていました。

彼女に憧れて日本に渡ってきたジョンヒ(ハン・ジミン)も、立川飛行学校に入学し、キョンウォンを姉のように慕い、共に生活するようになります。

同僚のカン・セギ(チン・テヒョン)とジョンヒ、そしてキョンウォンは、共に楽しく生きる力に満ち溢れ、日本で充実した毎日を送っていました。

ある日、出勤するキョンウォンの前に日本陸軍の制服を着た見おぼえのある顔が現れます。

父の勧めで日本陸軍の軍人になったジヒョクが、立川飛行学校に志願して、移動してきたのです。

久々の出会いに喜ぶ2人。

ジヒョクは訓練中のキョンウォンを指名し、初の飛行を体験します。

そして、2人の距離はぐっと縮まり、愛し合うようになっていきました。

ライバル木部の存在、セギの事故死、そして飛行大会

立川飛行学校では、外務省主催の飛行大会が開催されることに。

教官である徳田は、キョンウォンをぜひ飛行大会にと校長に申し出るのですが、優秀な日本人飛行士・木部がいたこともあり、キョンウォンの出場はできない結果に。

不満を抱くキョンウォンは徳田教官を責めますが、結局どうすることもできず、飛行大会の開催を待つことになります。

そんな中、飛行大会に高度部門で出場するセギは、タイムが伸びず大会当日の朝に徳田教官の指導を受けている最中、操縦部品が故障して、そのまま地面に機体が突っ込んで炎上、帰らぬ人となってしまいます。

セギの変わりにキョンウォンを大会に出せ!と校長から言われる徳田は、キョンウォンの体験したことがない競技のため無理ですと反対しますが、キョンウォンはセギのために出場を決意します。

そして、最高の記録を出し、会場を感動の渦に巻き込んだキョンウォンは、日本でも朝鮮の優秀な「女性飛行士」として名が知られていきます。

『青燕』

出典:IMDB

かとリーニョ

飛行大会後、さらにジヒョクとの愛も深まって幸せいっぱいなキョンウォンですが、次第に時代の黒い影が忍び寄るとは、思ってもいなかったでしょう。

キョンウォンの大きな夢と、忍び寄る時代の黒い影

日本でも朝鮮でも、名前の知れ渡ったキョンウォン。

優勝祝賀会が行われますが、日本中心の考え方に不満を感じるキョンウォンは、日本との親善飛行として指名されても、あまり乗り気がしません。

またジヒョクも、父が日本の議員になり、立川飛行学校へ訪問することに嫌気がさします。

キョンウォンは、木部の協力で祖国朝鮮へ親善飛行をする計画を試みますが、なかなかうまく行かず。

キョンウォンと結婚したいジヒョクと夢を終わらせたくないキョンウォンとの間でのわだかまりもあり、2人は次第にうまくいかなくなっていきます。

そして、飛行学校にジヒョクの父が訪問する中、とある新聞記者がいきなりジヒョクの父に向かって発砲し、その新聞記者も自害する事件が起きてしまいました。

新聞記者は反日を推進している「朝鮮赤色団」の一員。

その記者の友人であったジヒョク、またキョンウォンも憲兵に逮捕されてしまいます。

ジヒョクの死を胸に…

日本の憲兵隊にむごい拷問を受けるジヒョクとキョンウォン。

ジヒョクは、キョンウォンも拷問を受けていることを知り、彼女を守るために自白することになります。

木部の熱心な計らいで外務大臣が動いたのもあり、「日本政府に飛行士としては守られる」ことになりますが、その条件として日本政府に利用されることになるキョンウォン。

そして、ジヒョクは拷問で死んでいました…。

あの時彼の思いを受け入れていたらと後悔するキョンウォンですが、もうすでに彼はいません。

悲しみに暮れている中、夢であった祖国朝鮮への親善飛行が実現されることになるのですが、キョンウォンは複雑な思いのまま。

かとリーニョ

夢の飛行を目前に、彼女は多くのものを失いました。

最愛のジヒョク、仲間、同僚、全てを失ったキョンウォンに残されたものは飛行だけ。

キョンウォンはジヒョクの遺骨を持ち、飛行機に乗り込みます。

ですが、彼女を見守る大切な人たちは側にいました。

教官の徳田、ライバルから親友へと変わった木部、そして妹のような存在のジョンヒ。

夢の祖国への飛行でしたが、途中悪天候に見舞われ最悪な状態になります。

キョンウォンの機体へ「帰ってこい」と信号を送る徳田ですが、キョンウォンの返事はなく、いやな予感がした徳田・木部、そしてジョンヒは、最後にもう一度信号を送ります。

「オンニ(お姉さん)、戻って」と。

ですが、キョンウォンからは、「カンダ(じゃあね)」と返ってきたのです。

そしてそのまま音信普通になり、キョンウォンの消息は途絶えました。

かとリーニョ

彼女はジヒョクの元へ行く決意をしたのでしょうか?

国も性別も関係なく、自由に空を飛びたい

かとリーニョ

日本統治時代の朝鮮と日本の関係を描く題材は、非常に難しいのではないかと個人的に思うのですが、やはり『青燕』も韓国では「親日派の主人公」が描かれているとして、不評に終わりました。

日本でも、映画祭での特別上映のみでDVDの発売もかなり後になってからでした。

主人公となった朴敬元は、「日本の力を借りて飛行士になった」と歴史から抹消されていました。

朴敬元

出典:Wikipedia

ですが、今作の監督が韓国で忘れ去られた彼女の名前を再び蘇らせたいと思い、制作されたようです。

キム・ジュヒョク演じるハン・ジヒョクは架空の人物ですが、この時代背景を描くには彼の存在は必要でした。

劇中に「朝鮮赤色団」と出てきますがこの組織も必要で、日本が朝鮮を植民地にしていた頃の背景をここでしっかり描いてるのです。

かとリーニョ

映画の後半は拷問など目を覆いたくなるシーンも多く出てきますが、ここは目をそらさず、過去に出来事に向き合いながらご覧頂きたいと思います。

最後に、朴敬元の飛行機は伊豆半島の熱海近郊の「玄岳」に墜落したようで、今でも山中には慰霊碑があり、同じく熱海の「韓国庭園」にも彼女を追悼する慰霊碑が建てられています。

本作の撮影前に、主役のチャン・ジニョンとキム・ジュヒョクは慰霊碑を訪れ、参拝をしていました。

かとリーニョ

そして主役のチャン・ジニョンは2009年に胃がんで、キム・ジュヒョクは2017年に交通事故ですでに帰らぬ人となってますので、ある意味「貴重な映画」なのです。

冒頭にも書きましたが、難しい時代が舞台の映画なので見る方によって印象が違うと思います。

かとリーニョ

政治的なことは忘れて、ピュアに楽しんでほしいです。

映画『青燕』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

以上、ここまで映画『青燕』についてご紹介させて頂きました。

要点まとめ
  • 日本統治時代の朝鮮を今一度知って頂きたい
  • 実在の人物・朴敬元の足跡を追ってみるのも面白いのでは
  • すでにこの世にいない主役2人の「ある意味貴重な作品」