大人が思わず泣いてしまう、そんなアニメーション映画を数多く手がけてきた原恵一監督。
『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『カラフル』でその名を轟かせました。
そんな監督本人が自信作と公言しているのが2019年公開の『バースデー・ワンダーランド』。
主人公の声を新進気鋭の女優・松岡茉優が演じた他、豪華俳優陣が参加したことでも話題になりました。
- 大人も楽しめるファンタジーアニメーション
- 美しい背景や色彩、魅力的なキャラクターデザイン
- 豪華俳優陣による声の演技
それではさっそく映画『バースデー・ワンダーランド』をネタバレありでレビューしたいと思います。
目次
『バースデー・ワンダーランド』作品情報
作品名 | バースデー・ワンダーランド |
公開日 | 2019年4月26日 |
上映時間 | 115分 |
監督 | 原恵一 |
脚本 | 丸尾みほ |
原作 | 柏葉幸子「地下室からのふしぎな旅」 |
出演者 | 松岡茉優 杏 麻生久美子 東山奈央 藤原啓治 矢島晶子 市村正親 |
音楽 | 富貴晴美 |
【ネタバレ】『バースデー・ワンダーランド』あらすじと感想
“日常”のすぐそばにある“非日常”の世界
物語は主人公のアカネが誕生日前日に仮病で学校を休むところから始まります。
アカネの憂鬱な気持ちを表しているかのように、部屋は自然光が差し込むだけで、なんとなく薄暗いです。
同じように回想シーンに出てくる学校の廊下や教室も薄暗く、背後に映る窓の外も曇り空に見えます。
対照的に窓から覗いた外の世界は、とても明るく描かれています。
よく晴れた青空、色鮮やかな植物で溢れたテラス付きの庭にブランコ。
まるでファンタジーの世界に出てくるお花畑のようです。
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アカネの母・ミドリの存在もまた非日常的です。
庭仕事をしている姿や美味しそうな朝食をサッと作る姿は、さすが専業主婦!と感じさせます。
しかし、テラスで林檎を片手にブランコに乗る姿はまるで少女のよう。
薄暗いリビングから続く日陰のテラスで食事をするアカネと、明るい庭でブランコに乗るミドリの様子は対照的です。
また、麦わら帽子を被ったミドリが摘んできた花をアカネの鼻先に持っていく描写は、何とも日常的な母と娘の光景とは思えません。
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ワンダーランドへの入り口も日常の中にあります。
アカネへの誕生日プレゼントを預けてあるという、叔母・チィの店です。
チィの店は異国情緒が漂う不思議な雰囲気で、アカネの家とはまた違った非日常感があります。
ただ、やはり薄暗くどこか窮屈さを感じさせます。
地下から不意に現れたワンダーランドの住人に、世界を救う女神として誘われるアカネ。
ノリ気なチィとは対照的に、アカネはその誘いを拒み続けます。
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少年少女の現実逃避
辿り着いたワンダーランドは、色と光がとても豊かに使われています。
特に最初に登場する町で栽培されている花ははっきりとした濃いピンク色で、そこから作られるセーターなどの編み物は少しギョッとしてしまうほど鮮やかな色です。
ワンダーランド全体の景色としても、町並みや砂漠、雪山や水中など、登場するそれぞれの場所に合った明るい色調が使われています。
植物や地面の色、人々が身につけているものから建物、食事まで。
どこを見ても目が楽しい色使いで、自然豊かな美しい世界が表現されています。
唯一対象外なのが、宿敵となるザン・グが現れる場面です。
ザン・グがいる場所はところ構わず暗く描かれます。
邪悪さや恐怖心を引き立てるためでしょう。
しかし、もうひとつ意味があると考えられます。
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憂鬱な気持ちを抱えたアカネの部屋やチィの店が薄暗かったのと同じように、暗く描くことでザン・グの心情を表しているように思います。
実はザン・グはワンダーランドの王子様で、世界を救う雨王となることへの恐怖から逃げていたのでした。
アカネも学校で友人が仲間外れにされているのを見て見ぬ振りをしてしまった罪悪感から逃れるため、仮病を使って学校を休んでいました。
住む世界は違っていても、抱える悩みは思春期特有のもの。
二人の共通点は現実逃避をしていたことであり、この共通点が一緒に世界を救うためのきっかけになります。
誕生日プレゼントとは何だったのか
紆余曲折を経て無事に元の世界に戻ったアカネは、ミドリに「素敵な誕生日プレゼントをありがとう」と言います。
ミドリはその言葉を聞いて不思議そうな顔をしますが、アカネの「世界って大きいね」「世界って綺麗だね」という言葉には同調して頷きます。
そして、眠りについてしまったアカネが持っていた雨王からの贈り物を見て、何かを察するのでした。
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ミドリは誕生日前日に憂鬱な気持ちで部屋の中にいるアカネに対して、暗いところにいるよりも太陽の下に出た方がいいと、チィの店へ向かわせたように思います。
しかし、そこには思わぬプレゼントがついてきたのでした。
ワンダーランドへの旅を経て知った「世界は広い」ということです。
薄暗い部屋や日陰のテラスではなく、庭の日向でブランコに乗っていたミドリは、世界が広いということをよく知っていたのでしょう。
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偶然なのか必然なのか、アカネがワンダーランドへ旅したことによって伝わったであろう想いは、アカネにとって何よりの誕生日プレゼントになったことでしょう。
少年少女の冒険だけではなく、親子の物語としての側面も持っている『バースデー・ワンダーランド』。
原恵一監督らしい、大人も子供も楽しめるファンタジーアニメーションになっていました。
ハートフルな気持ちになりたいとき、前向きになりたいときにおすすめの作品です。
『バースデー・ワンダーランド』まとめ
今日は #旅の日 👣
ふしぎな生き物たち🐑🐈に会いに行ってみては❓#バースデー・ワンダーランド🌈 pic.twitter.com/DCVWkAB3bP— 映画「バースデー・ワンダーランド」公式 (@birthdayw_0426) May 16, 2019
以上、ここまで映画『バースデー・ワンダーランド』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- 王道ファンタジーでありながら日常的
- 色彩豊かで目が楽しい映像
- 大人も子供も楽しめるアニメーション映画