2014年4月16日に韓国で仁川から済州島へ向かっていた大型旅客船「セウォル号」が沈没した事件は、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか?
特に、修学旅行中の235人の高校生が乗船しており、多くの若い命が失われた事件であったため、韓国国内には衝撃が走りました。
歳月が流れても遺族の方々、そして国民の「心の傷」になっているのは間違いないでしょう。
『君の誕生日』はセウォル号事件で高校生の息子を亡くしたある夫婦の喪失感が”共感・共有”に変わるまでを描いた感動的な作品です。
主演は、「カメレオン俳優」として数々の映画賞を受賞するなど韓国映画界には欠かせない名優ソル・ギョングと、「カンヌの女王」とも呼ばれこちらも数々の映画賞を受賞しているチョン・ドヨン。
2人は映画『私にも妻がいたらいいのに』以来、18年ぶりの再共演とのことで話題を呼びました。
監督自ら、ボランティア活動で長年遺族の方々と丁寧に接している中で生まれた本作。
遺族の方々の傷も癒えない状況の中、セウォル号事件を真正面から描いた初の作品となりました。
- 「セウォル号沈没事件」を初めて真正面から描いた作品
- 韓国最高の実力演技派俳優の18年ぶりの共演
- 悲痛な事件を共に寄り添い乗り越えていく模様に注目
それでは『君の誕生日』をネタバレありでレビューします。
目次
『君の誕生日』作品情報
作品名 | 君の誕生日 |
公開日 | 2020年11月27日 |
上映時間 | 120分 |
監督 | イ・ジョンオン |
脚本 | イ・ジョンオン |
出演者 | ソル・ギョング チョン・ドヨン キム・ボミン ユン・チャニョン キム・スジン イ・ボンリョン パク・チョンファン クォン・ソヒョン タン・ジュンサン チェ・ヒョンジ |
音楽 | イ・ジェジン |
【ネタバレ】『君の誕生日』あらすじ
父・ジョンイルの帰国、そして…
久々に韓国へ帰国するジョンイルは、どこか気が重そうな顔をしていました。
おもむろにスマホを出し、誰かに連絡を入れるジョンイルですが、相手は電話に出ません。
仕方なく妹の家に行くジョンイル。
電話に出ないお相手は妻のスンナムでした。
妹に連れられ、娘イェソルに会うために小学校の門前で待つジョンイル。
まだ幼い頃に離れてしまったイェソルと再会し、笑みを浮かべるのですが、彼女は父親を覚えていないようで不思議そうな顔をします。
しかし血のつながった親子だけあってすぐにイェソルはジョンイルに心を開き、ついてきてくれました。
その後ジョンイルはやっとスンナムに会えますが、彼女は会うなりジョンイルに「離婚届」を突きつけてきます。
そんなつもりhaさらさらないジョンイルは返答を保留にすることに。
ジョンイルは、長い間家族をおいて韓国を離れ海外で働いていたのですが、その間にスンナムは一人で必死で息子スホとイェソルを育ててきました。
ジョンイルの代わりに男らしく家族を守ろうとしていたスホは、スンナムにとっては心の支えでした。
しかし、そんなスホは楽しみにでかけた修学旅行でセウォル号事件に巻き込まれて帰らぬ人となったのです。
その後も息子の死を受け入れられず、玄関の電灯が不定期につくとスホが帰ってきたと思うスンナム。
学校の課外学習で海遊びなのに海が怖くて入れないイェソル。
それぞれが亡きスホへの「心の傷」を未だ抱えたまま生きていることを知ったジョンイルは、その間自分が不在だったことにとてつもない責任感を感じます。
被害者遺族の支援団体の人間からスホの誕生日にお祝いを開くことを提案されたジョンイルは、前向きに検討しようとしますが、それを聞いたスンナムは…。
認められない、認めたくない現実
セウォル号事件の起こった4月16日、犠牲者墓地ではスホと同じ亡くなった同級生の父兄が多く集まり、毎年のように思い出を語りながら食事をしていました。
色々な思い出を話しながら、笑ったりして楽しそうにしている父兄を見て、スンナムはやるせない思いになり、その場を逃げるように去っていきます。
しかし、父兄の方々も本当は未だに悲しみ乗り越えられていない人が多い中、前向きにならねばと笑顔を絶やさず努力しているのです。
未だに現実を受け入れたくないスンナムは、どうしてもそこで明るく振る舞うことはできませんでした。
ジョンイルからスホの誕生日をみんなで祝うことを提案されても、それを受け入れてしまうと、スホの死を「認めてしまう」ことになるのでかたくなに拒否します。
スホの誕生日が近づくにつれ、スンナムはいないスホのために洋服を新調したり、スホが大好きだった魚を食事に出したりしますが、それによってイェソルは嫌な気分になってしまいます。
死んだ兄ばかり特別扱いされてひがむイェソルに冷たくあたるスンナムは、イェソルを外に追い出すことさえありました。
また、近所迷惑になるほど号泣したりと、スンナム自身も精神的に追い込まれ、精神安定剤を使用するまでになっていたのです。
かとリーニョ
ジョンイルが思い至ったのはやはり「スホの誕生会を開催すること」でした。
またスンナム以外にも、スホが死んだ現実を受け止められず逃げている人たちがいました。
それはスホの親友や、事故時にスホに助けられた同級生。
スンナムとも仲の良かったスホの親友も事故後はなんて声をかけてあげればいいのか?と悩み、スンナムを街で見かけても隠れてしまったり、同級生もスホの名前が出ると話をそらしてしまったりと、誰もがなかなか現実を受け入れられずにいたのです。
君の誕生日
ジョンイルがみんなを説得し、やっとの思いで開かれた「スホの誕生会」。
スホと共に亡くなった同級生の父兄、そしてクラスの親友・同級生・弟のような近所の後輩など、本当にたくさんの「スホが大好き」な人たちが集まりました。
幼いスホの写真を見て笑ったり、写真と共にスホの成長を振り返ったりしながら、幸せな時間を過ごします。
スホの思い出を語る親友は、その場で「スンナムさんを見かけても、どう接したらいいかわからず逃げていました。」と正直に告白。
彼はこれからはスンナムを元気にさせていくと宣言します。
またスホに助けられた女子の同級生は、涙ながらにスホに感謝。
今までうちに秘めていた思いや感情をみんな打ち明けることができ、やっと現実を受け止められました。
そして、スンナムも「こんなことなら、もっと早くからやればよかった」とやっと!前向きになれたのです。
さらに、今まで申し訳なさでいっぱいだったジョンイルも、うちに秘めていた思いが爆発し、とうとう涙を流して語りだします。
「スホが、私のところにきたのです!早く帰ってあげてと…」
自分の代わりにスンナムやイェソル、そして家をしっかり守ってくれていたスホには感謝しかないとジョンイルは言いました。
時が経ち、学校から帰ってきたイェソルが一番に向かったのは、ジョンイルのところでした。
ベランダで笑顔で会話する2人にスンナムが合流します。
スホの誕生日会をきっかけに再び「家族」がそろい、映画は幕を閉じました。
【ネタバレ】『君の誕生日』感想
とにかく涙腺崩壊
かとリーニョ
未だに韓国国民の「心の傷」となっているセウォル号事件ですが、特に亡くなった遺族の方々の傷は癒されぬままではないでしょうか?
それでも、現実を受け止めていかねば前に進めません。
かとリーニョ
間違いなく心の痛みや喪失感に対する「共感と共有」には時間がかかり、そこにたどり着くまでにはいろんな難しさや厳しさがあります。
最後の誕生日会は、本当に温かくそして感動させられるシーンばかり。
かとリーニョ
この作品を通して未だ苦しみや悲しみから抜けられない方々が、少しでも「前向き」になれたらと思える本当に素敵な映画です。
かとリーニョ
『君の誕生日』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
『#君の誕生日』
明日11月27日(金)公開✨イ・ジョンオン監督から、日本の観客の皆さまへ向けたメッセージ映像が到着いたしました。
2015年、亡くなった子どもたちの誕生日会を開くボランティアに参加した監督は、そこで遺族や犠牲者の友人たちの話を聞いた経験や想いを映画の中に込めました。 pic.twitter.com/v9rPJ9zYsV
— クロックワークス|アジアエンタメ情報 (@klockworxasia) November 26, 2020
以上、ここまで映画『君の誕生日』についてご紹介させて頂きました。
- この悲劇の事故を絶対忘れてはいけない
- 未だ悲しみから抜けられない方々が少しでも「前向き」になれますように
- 「共感と共有」までの歩みを大切にご覧頂きたい