【国内編】現代最高の偉大な脚本家たち6人を徹底解説!虚淵玄、岡田麿里、古沢良太らの代表作を解説!

【国内編】現代最高の偉大な脚本家たち6人を徹底解説!虚淵玄、岡田麿里、古沢良太らの代表作を解説!

出典:映画.com

突然ですが問題です。

日本映画史上不朽の名作『七人の侍』(1954)の監督といえば黒澤明…ですが、では世界のクロサワと共同で脚本を手掛けた2人の脚本家は誰でしょうか?

ニコ・トスカーニ

正解は小国英雄と橋本忍です。

二人はいずれも日本映画史に残る名脚本家で、国際的にも高く評価された映画の脚本を何本も手がけています。

西部全米脚本家組合(WGAW)より、功労賞にあたる「ジャン・ルノワール賞」を授与されています。

ですが、その知名度は世界のクロサワほど高いとは言えません。

脚本は作品の中核を成す部分ですが、監督、メインキャストに比べると脚本家の名前が前に出てくることは少ないです。

ニコ・トスカーニ

それは大変にもったいないことだと思うので、今回は優れた実績を残している脚本家たちを何人かピックアップしたいと思います。

彼らは監督やプロデューサーもやっていますが脚本をメインフィールドにしている、あまり前面に名前の出てこない縁の下の力持ちたちです。

今回は日本の現役脚本家編です。

注意点
本記事では、あくまでも「脚本家」のキャリアにフォーカスしてます。

脚本家であると同時に監督・演出家としても有名な是枝裕和、宮崎駿、西川美和、内田けんじ、三谷幸喜、周防正行、庵野秀明などは挙げていません。悪しからず。

【国内編】現代最高の偉大な専業脚本家たちの解説

虚淵玄(1972-)

代表作品
  • 『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)
  • 『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012)
  • 『翠星のガルガンティア』(2013)
  • 『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)
  • 『GODZILLA』三部作(2017-2018)

現代日本を代表する超売れっ子脚本家です。

ニコ・トスカーニ

アニメ、ゲームをメインフィールドとしており、二次元メディア好きであれば名前をご存知の方は多いのではないでしょうか。

もともとはアダルトゲームというアングラな分野で活躍していた人ですが、自身が原作ゲームのシナリオを手がけた『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』(2000)あたりからアニメに進出し始め、あれよあれよという間に超売れっ子になってしまいました。

脚本家としてのフィルモグラフィーを並べてみると、上記の代表作以外にも『Fate/Zero』(2011・原作)、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013-2014)などもあり質・量ともにすさまじく、虚淵玄が本当に1人の人物の名前なのか疑わしくなるほどです。

虚淵氏の作風は明快で、「エロスとバイオレンスのエンターテイメント」です。

彼はもともとアングラな人でした。

狂気とエロスが連打されるアダルトゲーム時代の『沙耶の唄』(2003)などいわゆる鬱ゲームの代表格であり、決してお日様の下に出るような存在ではありませんでした。

しかし、アダルトゲームを離れてから芸風が変化。

エロスは薄くなり、バッドエンディングだけでなくハッピーエンドも書くようになりました。

ニコ・トスカーニ

特に『翠星のガルガンティア』あたりからはっきり作風がマイルドな方向に変わってきたように思います。

それでいてがっしりとした構成や世界観の作りこみはより洗練されており、虚淵氏の合理的な話運びはシナリオを書く人にはぜひ参考にしていただきたいです。

ニコ・トスカーニ

筆者個人としては好きな作品が何本かありますが、一番万人受けするのは『楽園追放 -Expelled from Paradise-』ではないでしょうか。

「どこかで見たことのあるベタな設定」と揶揄する意見がありましたが、ベタな設定=多くの人に受け入れられる普遍的な設定で、これは何も悪いことではありません。

ニコ・トスカーニ

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』は誰でも思いつきそうな普遍的な設定と普遍的な話運びを極めて高いレベルで実現させている作品で、こういう作品をこそ映画やドラマを作る人にはぜひ参考にしていただきたいと思います。

岡田麿里(1976-)

代表作品
  • 『花咲くいろは』(2011)
  • 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)
  • 『心が叫びたがってるんだ。』(2015)
  • 『キズナイーバー』(2016)
  • 『空の青さを知る人よ』(2019)

現代を代表する超売れっ子その2です。

ニコ・トスカーニ

虚淵氏と同じく非常に多作で、2011年の上半期にはアニメ6シリーズのシリーズ構成を担当し、しかもそのうちの3本は原作なしのオリジナルだったという1人の人間で可能なのか疑わしくなるほどの仕事量をこなしています。

彼女もアニメをメインフィールドにしていますが、虚淵氏がスケールの大きなアクション・エンターテイメントを中心にしているのに対し岡田氏は小規模で日常的なドラマの人です。

原作付きよりもオリジナル作品が見ごたえがあり『花咲くいろは』(2011)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)、『凪のあすから』(2013)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015)、『キズナイーバー』(2016)、『空の青さを知る人よ』(2019)あたりはよく特徴が出ていると思います。

岡田麿里作品は非常に似通ったテーマを扱っていて、思い切り煎じ詰めるといずれも「雨降って地固まる」話です。

ニコ・トスカーニ

基本的に和解で終わる人間関係を描いており、単純化するとメロドラマ。それも非常によくできたメロドラマです。

びっくりするようなことは起きないものの、感情の機微が繊細に描かれ、彼女もまたベタな物語を高いレベルで作れる人と言えるでしょう。

ニコ・トスカーニ

虚淵氏とは違った意味で脚本を書く人にはぜひ参考にしてもらいたい1人だと思います。

奥寺佐渡子(1966-)

代表作品
  • 『学校の怪談』(1995)
  • 『時をかける少女』(2006)
  • 『サマーウォーズ』(2009)
  • 『リバース』(2017)
  • 『コーヒーが冷めないうちに』(2019)

実写とアニメの両方で活躍するベテラン脚本家です。

ニコ・トスカーニ

このタイトルを出すのはちょっと恥ずかしいのですが、私が最初に挙げたいのは『学校の怪談』(1995)です。

当時、絶大なブームとなった学校を舞台にした怪奇現象、いわゆる「学校の怪談」に題材をとったホラー…と思って本作を見ると意表を突かれます。

同作は「怪異がウヨウヨしている旧校舎に閉じ込められた子供たちの冒険」で、ホラーというよりも冒険ジュブナイルと言った方がふさわしく、子供だけでなく大人の観客からも評価されました。

2000年代以降はアニメにも進出。

特に細田守監督とのコンビが目立ちます。

いずれも少年少女を主人公にした『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(2009)は興行的にも批評的にも大成功を収めました。


奥寺氏の脚本からは圧倒的なまでの感性の若さを感じます。

ニコ・トスカーニ

『時をかける少女』は筒井康隆氏の小説(1967)を一応の原作としていますが、全く昭和の匂いがしません。

特にラストシーンでヒロインが「すぐ行く。走って行く」と叫ぶところなど完全に21世紀の感性です。

ニコ・トスカーニ

昭和のヒロインならば「ずっと待ってる」と言いそうなところです。「作家が書けるのは自分の実年齢+-10歳まで」と言われますが、感性が若い人はいつまでも若いんですね。

吉田玲子(1967-)

代表作品
  • 『ガールズ&パンツァー』(2012-2013)
  • 『たまこラブストーリー』(2014)
  • 『聲の形』(2016)
  • 『若おかみは小学生!』(2018)
  • 『きみと、波にのれたら』(2019)

アニメをメインフィールドにしているベテラン脚本家。

特に2010年代に入ってからの仕事の質の高さが目立ちます。

上記の代表作以外にもTVアニメ『SHIROBAKO』(2014)、映画『夜明け告げるルーのうた』(2017)、映画『リズと青い鳥』(2018)など質・量ともに大変に充実しています。

ニコ・トスカーニ

吉田氏はとにかく器用な人です。

『ガールズ&パンツァー』はミリタリー、

『ガールズ&パンツァー』

出典:U-NEXT

『たまこラブストーリー』はティーンのラブストーリー、


『聲の形』はシリアスドラマ、


『夜明け告げるルーのうた』はファンタジー、


『リズと青い鳥』は百合風味の青春もの。


ニコ・トスカーニ

バラバラのジャンルを手掛けながらいずれも優れた結果を出す尋常では無い器用さです。

どのような注文を受けても水準以上に仕上げる、ある意味優れた職人的な人と言えるのではないでしょうか。

古沢良太(1973-)

古沢良太

出典:映画.com

代表作品
  • 『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(2005~2012)
  • 『キサラギ』(2007)
  • 『探偵はBARにいる』シリーズ(2011~2017)
  • 『リーガル・ハイ』(2012-2013)
  • 『コンフィデンスマンJP』(2018)

アニメの話が続きましたが、この人は実写をメインフィールドにしている人です。

舞台劇も手掛けており映画『キサラギ』(2007)は自身の舞台劇を映画に転用したものです。

ニコ・トスカーニ

古沢氏の脚本で優れているもの、それは何といってもコメディセンスです。

人気作となった『リーガル・ハイ』(2012-2013)、『コンフィデンスマンJP』(2018)など、その作風を代表する例と言っていいでしょう。

古沢氏は抜群のコメディセンスの持ち主です。

ニコ・トスカーニ

デフォルメの領域にまで踏み込んだ大げさな表現ですが、その中に皮肉を潜ませ、時にはシリアスも交える。コメディをメインにしつつも一本調子になることのない巧みな構成ができる人です。

優れたコメディセンスに加えて、サスペンスも得意とし『相棒』(2005-)にもたびたび登板して手腕を発揮しています。

ニコ・トスカーニ

コメディかつサスペンスの『キサラギ』などこの人にしかできない芸当だと思います。

坂元裕二(1967-)

坂本裕二

出典:映画.com

代表作品
  • 『東京ラブストーリー』(1991)
  • 『Mother』(2010)
  • 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)
  • 『カルテット』
  • 『anone』(2018)

古沢氏と同じく、実写をメインフィールドとする人ですが作風は180度違うと言ってもいいほど異なります。

坂元氏が脚本家として脚光を浴びたのはかなり早く、トレンディドラマ最盛期のヒット作『東京ラブストーリー』(1991)の脚本を手掛けていました。

ニコ・トスカーニ

これは現在の坂元氏の芸風を考えると、にわかには信じがたいことです。

彼の芸風は『Mother』(2010)あたりからはっきりと変わってきます。

Mother

出典:U-NEXT

それ以降、『それでも、生きてゆく』(2011)、『Woman』(2013)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)、『カルテット』(2017)、『anone』(2018)とまるで何かに吹っ切れたかのようにスタイル転換以降の芸風を固めていきます。

ニコ・トスカーニ

プライムアワーに放送されるテレビドラマを手掛けているにも関わらず、坂元氏の脚本は驚くほどエンタメ性に乏しいです。

人物設定は影があり、物語の起伏は乏しく、表現は控えめです。

集約すると「暗い過去を背負った人物がそれでも生きていく」話が中心で、一般受けとは程遠い内容です。

にも拘わらず、近年の坂元氏の脚本作品で唸らされなかったことは一度もありません。

坂元氏の凄さは、暗いテーマを扱っているにも関わらず絶妙なバランスで深刻になり過ぎないさじ加減ができることです。

ニコ・トスカーニ

笑わせにかかったあざとい笑いではなく、深刻な話をしている最中に思わず吹き出してしまうようなセリフ回しのセンスが絶妙です。

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では「普通のおじさんと5,000円でカラオケいくのは危ないけど、社長と10万貰ってカラオケいくのは安全なの」などという「うまいこと言いやがって!」と言いたくなるようなことをシリアスな物語の中に潜ませてくるのです。

『anone』を最後にしばらく連ドラを休み、映画、舞台を中心にすることを宣言。

初の戯曲「またここか」で権威ある岸田國士戯曲賞の候補になっています。

ニコ・トスカーニ

この人のスタイルは長尺の連続ドラマで最大限に活かせるものだと思うので、また連ドラに戻ってきて欲しいです。

【国内編】現代最高の偉大な専業脚本家まとめ

映画でもドラマでもクレジットの前面に出てくるのは監督とメインキャストです。

脚本家がフューチャーされることは少ないですが、脚本家の腕は作品の出来と密接に結びついています。

ニコ・トスカーニ

脚本家の名前に注目すると新しい作品の選び方ができるものと筆者は思います。

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