映画『ベン・イズ・バック』あらすじ・ネタバレ感想!薬物依存からの更生を歩む息子と母親のたった一日の物語

映画『ベン・イズ・バック』あらすじ・ネタバレ感想!

出典:『ベン・イズ・バック』公式ページ

薬物依存からの更生を歩む息子と、息子を愛する母親のたった一日の物語。

アメリカ社会が抱える処方薬物依存問題に警鐘を鳴らす良作です!

ポイント
  • ジュリア・ロバーツのキャリア最高とも言える演技に脱帽。そんなジュリアに一歩も引けを取らないルーカス・ヘッジズは、相も変わらずさすがの演技力を見せてくれます。
  • 家族の愛と絆だけでは解決できない深すぎる闇や、薬物依存の危険性を多面的に、サスペンスフルに描いたドラマ映画。
  • 処方薬物での依存の恐ろしさを改めて知ることもでき、アメリカの社会問題について深く考えるきっかけにもなります。

それではさっそくレビューしたいと思います。

映画『ベン・イズ・バック』作品情報

映画『ベン・イズ・バック』作品情報

出典:映画.com

作品名 ベン・イズ・バック
公開日 2019年5月24日
上映時間 103分
監督 ピーター・ヘッジズ
脚本 ピーター・ヘッジズ
出演者 ジュリア・ロバーツ
ルーカス・ヘッジズ
キャスリン・ニュートン
アレクサンドラ・パーク
音楽 ディコン・ハインクリフェ

映画『ベン・イズ・バック』あらすじ


クリスマスイブの朝。19歳のベン(ルーカス・ヘッジズ)が薬物依存症の治療施設から勝手に実家に戻ってきて、母のホリー(ジュリア・ロバーツ)ら家族は驚く。

継父のニール(コートニー・B・ヴァンス)と兄を案じながらも戸惑う妹のアイヴィー(キャスリン・ニュートン)は、彼がトラブルを起こすのではないかと警戒するが、ホリーが監視することで滞在を1日だけ許す。

だが家族が留守にしている間に家の中が荒らされ、飼っていた犬が連れ去られてしまう。
出典:シネマトゥデイ

映画『ベン・イズ・バック』みどころ

映画『ベン・イズ・バック』みどころ

『エリン・ブロコビッチ』などのジュリア・ロバーツ、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのルーカス・ヘッジズらが出演したヒューマンドラマ。

薬物依存症の治療施設を抜け出してきた息子に対する家族の心情を映し出す。

メガホンを取るのは、ルーカスの父で『エイプリルの七面鳥』などのピーター・ヘッジズ。

『スリー・ビルボード』などのキャスリン・ニュートン、ドラマシリーズ『LAW & ORDER クリミナル・インテント』などのコートニー・B・ヴァンスらが出演する。
出典:シネマトゥデイ

映画『ベン・イズ・バック』を視聴できる動画配信サービス

『ベン・イズ・バック』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年7月7日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年7月7日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレあり】映画『ベン・イズ・バック』感想レビュー

登場人物の感情がリアルで胸が締め付けられる、安易な感動作ではない、ずっしりと重い人間ドラマが描かれている映画

薬物依存症の家族の絆を描いた映画と言えば、最近『ビューティフル・ボーイ』を鑑賞したばかり。

目を奪われるほどの美形のティモシー・シャラメとスティーブ・カレルの演技に、圧倒されたのも記憶に新しいです。

最近同じようなテーマが続くなぁと思いつつ、ルーカス・ヘッジズが出演するならば観て損はないだろうと『ベン・イズ・バック』は即鑑賞することを決めました。

そんな本作は、ジュリア・ロバーツ演じる母親の、何があっても息子を守ろうとする深い愛情と、家族の絆がテーマとなっている映画です。

大まかすぎるあらすじだけ見ると、二つの映画は本当によく似ていますが、どちらも鑑賞してみると受ける印象はまったく違うものでした。

『ビューティフル・ボーイ』が、依存症で苦しむ息子を、父親を中心とした家族が何年も見守り、支え続けている姿を描いているのに対し、『ベン・イズ・バック』は、たった一日の出来事を描いた映画です。

そして『ビューティフル・ボーイ』と違い、まさかのサスペンス要素まで盛り込まれていたので、ちょっとびっくりしました。

映画は、薬物依存者用の施設にいたベンが、クリスマス・イブの朝に施設には無断で突然家に帰って来て、家族を驚かすところから始まります。

一日だけならと家への滞在を許可し、ミサに出掛けたベンの家族。

しかし、家に帰ると部屋の中は荒らされ、飼い犬も連れ去られていました。

ベンは愛犬を取り戻しに向かい、母親のホリーは息子の後を追いますが、そこで知ることになるのは大切な息子の過去の深すぎる闇。

静かで保守的な田舎でも、簡単に手に入るドラッグ。

今までも何度も何度も薬物絡みで問題を起こしてきたことが、家族の会話の端々から読み取れるベン。

兄の帰宅を無邪気に喜ぶ小さな弟妹とは違い、義父にすぐ連絡する妹と、おそらくは慌てて帰宅してきただろう義父。

母のホリーはクリスマスに会えたことを喜びながらも、薬の瓶や貴重品を息子の目に触れないように隠します。

物語が進んでいくと、ベンが薬物依存に陥ってクリスマスを台無しにしてきたことや、過剰摂取により階段で死にかけていたことがわかってきます。

義父のおかげで何度も更生施設に入れていること、家族で話し合い今度こそと今の施設に入所したこと。

義父のニールと妹アイヴィーは、ベンをまだ少しも信用していないこと。

一日だけ滞在を許されたベンは、家族にクリスマスプレゼントを買いたいからと、ホリーとショッピングモールに行きますが、ここから物語は何とも不穏な空気をまとい始めます。

上手いなと思うのは、フラッシュバックで安易な回想シーンを見せたりせず、説明的でない自然な台詞で、過去に何があったのかを少しずつ明らかにしていくところです。

さすがピーター・ヘッジズの脚本・監督作品なだけはあります。

ショッピングモールで会った認知症を患った医師、ベンの顔見知りらしい男、急遽行った依存症のミーティングで会うまだ若い女性。

何よりミサの教会で会う、マギーという娘を亡くした女性のベス。

ベンが所謂医療ミスで処方された、多すぎる鎮痛剤で依存症になったこと。

使用していただけでなく、売人でもあったこと。

ベンが薬物を勧め、依存症になったマギーは、過剰摂取で死んだこと。

過去が明らかになればなるほど、ニールとアイヴィーが急に帰ってきたベンに不信感を拭えないのは、当然だと思えます。

ホリーですら愛する息子を信じたいけれど、それでも心からは信じられない、複雑すぎる気持ちを抱えているのも。

教会のミサのシーンは、とても良かったです。

ベンの何とも言えない表情、息子を挟んで座るホリーやニール、きっとこれからいい方向に行くのでは、と見ているこちらにも小さな希望を持たせるような、そんなシーン。

けれど帰宅した家族を待っていたのは荒れされた室内で、ベンの命を過去に救った飼い犬ポンスは、誰かに連れ去られていました。

ニールはベンが帰宅したせいで、またトラブルが起きたと言い、ベンも自分のせいだと思い、家を出て行ってしまいます。

ホリーはベンを追いかけ、息子が言う「自分に恨みを持っていそうな人物」を、二人で訪ねて行くことになります。

母親が処方された鎮痛剤を売っていた教師。

ベンのせいで娘が死んだと恨んでいるマギーの父親。

ホリーが昔オムツを替えたこともある依存症の青年。

娯楽が少ない保守的な田舎街でも起きている、薬物依存の深刻さの一端が垣間見えてきます。

再び自分の前から車に乗って消えてしまった息子を探すため、ホリーはマギーの母親・ベスに助けを求めることに。

ベスは娘を結果的には依存症にしたベンに必要になるかもしれない、過剰摂取の応急処置用キットをホリーに託し、車も貸してくれるのでした。

ベンも最初は被害者だったと、この時は観客にもわかっていても、マギーに対しては明らかにベンは加害者。

愛する娘を死に追いやった青年を恨んで当然と、正直私は思ってしまいました。

なので、マギーの父親がベンを見て、車のドアガラスを割った行動の方がわかりやすく、理解もできます。

だからこそ、マギーの母親であるベスの行動は、自分にはとてもできないと驚くと同時に、まったく癒えていない悲しみや娘を救えなかった後悔をも感じて、やりきれない思いになります。

同時にアメリカ社会に蔓延する、薬物依存の闇も感じてしまいました。

ベンは愛する飼い犬を救うため、売人時代のボスに会いに行き、最後に一度だけ運び屋をすることを了承しますが、ホリーは車でそんな息子を探し続けます。

一度は疲れ果て、おそらくは諦めもあったのでしょうが、ニールに電話をして家に帰ろうとするホリー。

けれど方向転換して警察署に駆け込み、息子を見つけてと訴えます。

その頃ベンは、ホリーの車の中で取り返したポンスに別れを告げ、見つけた人に連絡してくれるようフロントガラスにメモを残して、薬を持ったまま立ち去ります。

ポンスを見つけてくれた人間から携帯に連絡が入り、慌てて警察署を飛び出したホリーは、ポンスと無事再会します。

しかし、走り出すポンスを追ったホリーは、近くの小屋で倒れているベンを発見します。

薬物摂取で呼吸が止まっているベンを、ベスに渡された応急キットや人工呼吸で必死に蘇生させようとするホリー。

戻って来て、という彼女の想いが通じたのか、ベンが息を吹き返したところで、映画は幕を閉じます。

決して、めでたしめでたし、ではないラストです。

ベンは77日クリーンだったのに、また薬物に手を染めてしまいました。

誘惑に勝てなかったというより、自暴自棄になったのではと感じましたが、またイチから治療のやり直しが待っています。

密売グループも、これでベンからあっさり手を引いたのか、疑わしいところもあり。

この家族に明るい未来が待っているとは、簡単に思えない。

けれど何とかベンに、愛してくれる家族のため、何より自分のために立ち直って欲しいと思わずにはいられない、そんな終わり方でした。

『ベン・イズ・バック』というタイトルが、ダブル・ミーニングだと気づいたのは、観終わってから。

ベンが施設から帰って来た、という意味はもちろんのこと、死の淵からベンが戻って来たという意味もあったのか、という。

その意味をラストに知って、やっぱり上手いなあ、と脚本に唸ってしまいました。

監督・脚本を担ったピーター・ヘッジズは『ギルバート・グレイプ』や『アバウト・ア・ボーイ』の脚本も手掛けています。

殺人や銃撃戦、派手なアクションなどがなくても、観る者を惹きつける物語性は相変わらず健在。

鑑賞後はアメリカが抱える大きな社会問題を、深く考えさせられる作りになっています。

しかし薬物依存の治療が成功するには、周囲のサポートは当然のこと、はっきり言えば「お金」がないとね、という事実もさらりと描かれているのが納得するしかなくても、何とも言い難い気分にさせられました。

ジュリア・ロバーツとルーカス・ヘッジズ。二人の演技力はさすがの一言!

鑑賞前にジュリア・ロバーツの演技が最高だとの評論はいくつか見ていたので、そんな意味でも楽しみにしていた『ベン・イズ・バック』。

ジュリアが演じたのは、盲目的に息子を信じているだけの母親でも、誰に対しても良き人間でもありませんでした。

息子が依存症になる原因になった治療をした医師には、彼の妻が席を立った隙に、とんでもない悪態を吐きます。

相手が認知症だとはいえ、そこまで言うのか、というほど。

けれどベンの母親としては、恨んで当然の相手。

鎮痛剤の量が適量ならベンは依存症にならなかったかも、そしてマギーは死なず、家族の苦しみもなかったかも、と考えるに決まっています。

ベンの居場所を聞き出すためなら、幼かった姿を覚えている青年にも、薬物を渡してしまうシーンもあります。

それでもジュリア演じるホリーを一人の親とて見したら、どちらも息子を想う気持ちから取った行動で、自然な行動なんですよね。

ホリーとベンの関係が共依存に見えなくもないですが、しかし一度は過剰摂取で失いかけた息子、依存症になるまでは活発で人気者だったらしい息子を、救いたいと思うのは親としては当然とも思えるのです。

だからホリーがベンに対して取る行動も、依存と言うよりは諦めそうになる瞬間もあるけれど息子を救うためなら何でもできる「母親」の愛情からきている、と受け取れました。

感情が爆発する瞬間のジュリアの演技はどのシーンも本当に素晴らしく、終始圧倒されるのですが、そんなジュリアに一歩も引けを取らないのが、息子ベン役のルーカス・ヘッジズ。

片田舎の青年をやらせたら、右に出るものはいないんじゃないか、と思うほど相変わらずピッタリはまってました。

保守的な田舎の、けれど問題を抱えた青年役が。

とにかく演技が上手い、特に表情が素晴らしい、と毎回思うんですが、今作もまたさすがとしか言いようがなく。

ジュリアが息子役にと熱望した、という記事も納得してしまいます。

父親の映画には絶対出ないと言っていたルーカスが『ベン・イズ・バック』に出演したのも、ジュリアのラブコールを知ったからですけどね。

毎回大物俳優と共演しても、一歩も引けを取らないルーカス・ヘッジズ。

次回作も今から楽しみです。

ベンの依存症の原因、アメリカ社会の処方薬物による依存症問題。

『ベン・イズ・バック』は依存症患者と、その家族のたった一日を描いた作品です。

たった一日。

けれど依存症患者にとって、一日薬物に手を出さずに過ごすことが、誘惑に負けずにいることが、どれほど大変なことなのかをこの映画で一端がわかります。

ベンはまだ14歳の時に医師から処方された麻薬性鎮痛剤が原因で、依存症になってしまいました。

この鎮痛剤には文字通り麻薬成分が含まれていて、アメリカでは鎮痛剤の過剰摂取で、年間数万人の人が亡くなっている現実があります。

犯罪系海外ドラマや映画では耳に馴染みのありすぎる、オピオイド。

簡単に言えば、アヘンと似た性質を示す化合物の総称です。

例えばモルヒネ、ヘロイン、オキシコドンなどが、オピオイドになります。

オピオイドは中枢神経や末梢神経に存在しているオピオイド受容体に結合し、神経の伝達を抑制することによって、強力な鎮痛作用をもたらします。

しかし鎮痛作用だけでなく、多幸感をもたらし不安感を除くことから、依存性が問題になるわけです。

日本ではアメリカで問題になっているような強力な鎮痛剤は、癌患者にしか処方されていません。

アメリカのように、スポーツでの怪我や労働災害では使えません。

医師が処方するにも、麻薬施用者免許が必要だそうです。

何やかんやと叩かれることも多い厚労省ですが、病院や薬局での薬の管理は、アメリカとは比べ物にならないほど厳しいのです。

その麻薬成分を含んだ強力な鎮痛剤が、アメリカでは怪我の治療に、しかも子供にも処方されているのが現実です。

2016年の薬物関連死による死亡者数63,632人中、オピオイドによる死亡者数は66%を占めていたそうです。

このうち四割が処方されたオピオイドによって死亡している、という報告には正直ゾッとしました。

医師が処方している薬で、アメリカでは一日に46人が亡くなっている計算になるからです。

ただ、アメリカでのオピオイド消費量が、他国と比べて突出しているわけではないそうです。

問題は不適切な処方だったり、処方薬を家族や友人、もしくは売人から簡単に入手・購入できることでしょう。

非癌患者へのオピオイド処方が急増したのは1990年代終わり頃。

エビデンスが不十分なまま、オピオイドが非癌患者への治療法とされ、製薬会社が常習性が低い薬物として使用を推進したのです。

そして、日本と大きく違う医療制度も問題に関わってきます。

医療保険では賄えないことの多い理学療法、代替ケアや緩和療法。

クリニックへのアクセスが困難な人間も多いこと。

オピオイドが処方されやすい環境が、現状の「オピオイド禍」を作り上げたのだと言えると思います。

日本では国が決める薬の値段も、アメリカではマーケットで決まります。

製薬会社が利益追求に走ることも、起因のひとつでしょう。

政治家への多額の献金で、発言力も大きくなる製薬会社。

薬の値段がはね上がり、治療ができなくなった患者の話を聞くと、日本は国民皆保険制度があって良かった、と心から思います。

アメリカで「オピオイド禍」をめぐり、司法や行政を告発する動くが大きくなり、司法省が動き始めた今だからこそ、日本でも若者たちに警鐘の意味も込めて観て欲しい映画ですが、あまりに宣伝されなくて寂しい限りです。

いい映画ですよ、ぜひともご鑑賞を!

映画『ベン・イズ・バック』まとめ

以上、ここまで『ベン・イズ・バック』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • 母親の我が子への愛情は、時に他人に対しては身勝手であることもさらりと描いた、アメリカの社会問題に切り込んだ問題作。
  • 脇役の継父ニールを演じたコートニー・B・バンスや妹アイヴィー役のキャスリーン・ニュートンも好演。キャスリーンはやっぱり可愛い。
  • ぜひ『ビューティフル・ボーイ』と併せて観て欲しい。薬物依存の恐ろしさを、また違う形で描いている作品です。