『ベケット』は、ジョン・デヴィッド・ワシントン主演のわけもわからず異国の地で何者かに命を狙われることになった男が追手から逃げまどうノンストップ・アクション。
楽しい休暇だったはずのギリシャ旅行で交通事故に遭い、逃避行を余儀なくされる『ベケット』配信前の予告編のハラハラとは裏腹に、本編ではなぜ追われるか、その謎に深くせまる描写が少なく、ベケットがひたすら逃走する印象の強い作品です。
・事故に遭っただけなのに
・理由もわからず襲われるベケット
・逃避行の果てに
それでは『ベケット』をレビューします。
【ネタバレ】『ベケット』あらすじ・感想
ギリシャ旅行と交通事故
本来ならギリシャのアテネのホテルに滞在するはずだったベケット(ジョン・デヴィッド・ワシントン)とエイプリル(アリシア・ヴィキャンデル)は、ホテル前の広場で政治集会が行われると知り、都会の喧騒から逃れてギリシャの田舎町を旅していました。
アテネを離れ田舎の観光地をのんびりするふたりが、次の町のホテルに向かうのにすっかり暗くなった夜につづら道で車をとばします。
そして、夜道の運転をあやまり車もろとも山道から外れ、崖を落ちてしまうベケットとエイプリル。民家に車がひっくり返った状態で壁に突っ込んだベケットは、朦朧と遠のく意識の中、廃屋で赤毛の少年と金髪の女性の人影を目にしたのでした。
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この導入部分に、以後の物語のヒントが少し埋め込まれているのですが、後半になって、これを思い出すのにひと苦労をしました。
理由のわからない襲撃
病院で意識を回復したベケットが、知ったのはエイプリルの死。
見知らぬギリシャの田舎町で警官のクセナキス(パノス・コロニス)の聴取を受けるも、言葉の壁に阻まれ不安な状態に呆然とするのでした。
エイプリルの遺体にも対面できす、意気消沈するベケットが訪れたのは事故現場の古い民家。
意識を失う前に目撃した人影を怪訝に思っていると、いきなり正体不明の金髪の女性(レナ・キッソプーロウ)に銃弾を撃ち込まれたベケット。
そこにまた銃を向ける警官のクセナキスも現れ、ベケットは、わけもわからず身を隠し、異国の山中にあてもなく逃げることになったのです。
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はじまった逃避行
警官や正体不明の女性の凶弾から命からがら逃れ、地元のハンターや養蜂家の協力で何もない山中からカランバカの駅までたどり着いたものの、乗り込んだ電車で警官のクセナキスに拘束されてしまったベケット。
すんでのところで逃げ出したものの、自分の命を狙われる理由がわからないベケットは、警察や正体不明の組織の追跡をかわしアテネのアメリカ大使館をめざすのでした。
ギリシャの田舎町で政治集会のポスターを貼る活動家のレナ(ヴィッキー・クリープス)とエレニ(マリア・ヴォッティ)に出会ったベケットは、そのポスターにのる少年に写真の姿に目をとめます。
少年がギリシャの政治家カラス(ヨーゴス・ピルパッソプーロス)の甥ディモス(フィリッポス・イオアニディス)で、彼が誘拐され行方不明だということを知り、愕然とします。
そしてベケットの車が突っ込んだ廃屋で、少年ディモスを目撃したことが、政治家カラスの失脚をもくろむ組織の陰謀に自分を巻き込んだと気づくのでした。
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ポスターの写真が、ベケットの見た赤毛の少年というのも、そもそも視聴者にすぐにわからず、ピンときませんでした。
巻き込まれた不運
政治家カラスの集会に参加する活動家のレナとエレナの車でアテネまで逃れたベケット。
追手をふりきりアメリカ大使館に駈けこみ、保護されたもの束の間、大使館のタイナン(ボイド・ホルブルック) にまで襲われ、その不穏な動きに動揺をするのでした。
そしてそのタイナンが語った真実とは…。
そんな中、ホテル前広場の政治集会で決行された政治家カラスの暗殺。混乱するアテネ市内で、誘拐された少年ディモスを拘束する謎の金髪の女性を見かけたベケットは、その女性を追い、これまでの逃走からディモスを救助するための追う側へと立場を変えたのでした。
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視聴者も、「え?そうだったの?」とあまりの雑な説明に狼狽します。
『ベケット』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ベケット』をレビューしてきました。
『ベケット』は、恋人とふたり休暇で訪れていたギリシャの田舎町で交通事故に遭い、混乱の極みに陥ったベケットの逃避行を描いた物語。ベケットを襲う突然の状況に、一切の説明がないまま、つき進む逃走劇に、私たち視聴者は、ベケット以上に混乱します。
ジョン・デヴィッド・ワシントンを主演に据え、恋人のエイプル役にアリシア・ヴィキャンデルも迎え、その配役からも秘密や陰謀があるのかと思いきや、なにもなし。
エイプリルは、ストーリーの語部となることなくあっさり死んでしまいします。そしてまたベケットを追う謎の団体やの説明はなく、追手の金髪女性に至っては、視聴者が顔を識別できるだけのアップもなく、役名すらありません。
・逃げ惑うベケット
・不明瞭な理由
・納得のいかないエンディング
巷にあふれる数多くのサスペンス映画の、スリリングな逃走劇に慣れた映画ファンに、『ベケット』は、全てが凡庸で退屈、物足りなさを感じるかもしれません。
劇的な変化やひねりの利いた何かが起こると、劇中に期待をかけるものの、その望みは叶えられることなくエンディングへと向かった『ベケット』。
のっぺりした平面的なストーリーで、ベケットと視聴者に明確なヒントの提示のないまま中盤を迎え、憶測に基づいて物語は続きます。最後の20分でようやく真相が明かされ、クライマックスに突入するかと思いきや、見せ場となるシーンもキレがなく、グダグダでスッキリしません。
ギリシャ国内の政治抗争の一端と思われていた少年の誘拐事件が、実は、政治家の金がらみのトラブルで、それ乗じたギリシャの極左勢力を排除する流れに作りたかった政府関係者の思惑に巻き込まれただけのベケット。
逃げ惑うベケットを、見守る視聴者の求めるジューシーな答えはなく、命を狙われたのも、ただ運が悪かっただけと、視聴者の気持ちは報われることなく、どこか置き去りにされたまま。
ギリシャ国内を必死に走り抜け、ベケット同様に罪もなく誘拐された少年を助けたのに、それを「よかったね」と、視聴者が感情移入することもありませんでした。
そして最後は、恋人を失くしその死を悼むこともできずに逃げ続けた、やりきれないベケットのひとことを耳にして物語は幕を閉じます。
物語にメリハリがなく、ただ長く、待ったなしだったベケットの逃避行。物語のキーパーソンとなるカラスやディモスとベケットが直接対話する場面はなく、犯罪の背景もちらっとセリフで説明するだけと、人物や背景の相関関係を追うのも難しい、あまりにシンドイ作品でした。
ジョン・デヴィッド・ワシントン、アリシア・ヴィキャンデルといった実力派俳優をキャストに据え、ミステリー要素を盛り込んだよく出来た配信前の予告編だっただけに、フタをあけてみてビックリだった『ベケット』。
こういう残念な作品もたまにはあるんだね、というネタにするのがミソかもしれません。
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