『ビューティフル・ボーイ』あらすじ・ネタバレ感想!依存症の青年と家族の「愛と苦難の実話」を基に描いた作品

出典:THE RIVER

薬物中毒に悩む青年を父親の視点から描き、青年の薬物依存の治療に成功したノンフィクション映画です。

ポイント
  • everything――すべてをこえて愛している。言葉どおりの父親の深い愛情が、胸に突き刺さります。
  • タイトルそのまま、まさにビューティフル・ボーイなティモシー・シャラメと、スティーブ・カレルの圧巻の演技力。
  • 依存症に苦しむ息子と、支えようとする父親の困難な道程。ドラマティックな作りではなく、淡々と進む物語だからこそ、薬物依存について深く考えさせられる問題作。

それではさっそく映画『ビューティフル・ボーイ』をレビューしたいと思います。

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『ビューティフル・ボーイ』作品情報

『ビューティフル・ボーイ』

出典:映画.com

作品名 ビューティフル・ボーイ
公開日 2019年4月12日
上映時間 120分
監督 フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン
脚本 ルーク・デイヴィーズ
フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン
出演者 スティーヴ・カレル
ティモシー・シャラメ
モーラ・ティアニー
エイミー・ライアン
ケイトリン・ディーヴァー
ティモシー・ハットン
リサ・ゲイ・ハミルトン

【ネタバレ】『ビューティフル・ボーイ』あらすじ・感想


美しい映像、印象的な音楽。だからこそ一層、薬物依存の闇が浮き彫りに。親の無償の愛情や人の弱さをリアルに描いた秀作。

てっきり「青年が家族の愛に支えられて立ち直ってハッピーエンド」という感動作なんだろうなと、そんな漠然とした考えを持って鑑賞した『ビューティフル・ボーイ』。

しかし途中から、ガツンと殴られたような衝撃を受けることになってしまいました。

父と息子、それぞれが描いた自伝が基になっているだけあり、とにかくリアルです。

成績優秀で、スポーツも万能。そんな優秀な学生だったニックは、軽い気持ちで手を出しだだろうドラッグの依存症になってしまいます。理由は明確には提示されません。

両親は離婚していても、いつも愛してくれる優しい父親と、義理の母や半分血の繋がった可愛い弟と妹と幸せに暮らすニック。

サーフィンをやって、大学もいくつも合格。

お洒落な家で暮らし、弟妹には懐かれ、義理の母親も理解力がありそう。

両親が泥沼離婚で義理の母が嫌な人間だったとか、父親が新しい家族にばかり愛情を注いで自分を見てくれなくなったとか。

受験で追い詰められた、大きな怪我をして痛み止めを常用し始めたとか。

そういう理由があるなら、簡単に理解できるんですよね。薬物に手を出す気持ちが。

でも、現実では決してすべての人に明確な理由があるわけではなく、みんなやってるからと軽い気持ちで手を出した、という人が多いのでしょう。仲間外れがいやで、だったり。

ニックの場合、自伝を読んでいないので映画から伝わる限りで考えてみると、大きな理由があったようには思えません。

強いて言うなら、父親を愛しているからこそ、自慢の息子でありたいという気持ちが、実はプレッシャーになっていたから。

義理の母親や弟妹にとっても、いい家族でいたかったから。とにかく簡単に手に入る環境だから。

そういったことが絡まりあい、ふと手を出してしまったのかな、という。

愛する息子が、自分の知らないうちに薬物依存になっていたことを知る親の気持ちは、どれほどのものでしょうか。

父デヴィッドの絶望と葛藤も、本当にリアルです。

薬物依存症は病気。そう言われても、家族は楽になれるわけがない。

軽い病気だったらまだしも、依存症は薬を飲んだり、手術をすれば治るものではないんですから。だから、本人だけでなく家族も苦しむ。

自分に何ができたのか、何が悪かったのか、とデヴィッドは悩み続けます。

先の見えない地獄のような日々。観ていてずっと痛々しく、息苦しさすら覚えます。

確かに知っていたはずの息子を、これは一体誰なんだろうと思う瞬間。昔の愛らしかった息子を思い返す瞬間。

愛しているからこその悲しみや、自分では救えないのかと絶望する親の気持ちは、誰もが容易に想像できるでしょう。

だからこそ、痛烈に胸を抉ります。

信じ、支え続けていても裏切られ、今度こそと願っても息子はまた薬物に手を出す、の繰り返し。

実際にはニックは8年間、13回の依存症再発で、7回治療センターを訪れたそうです。気の遠くなるような年月だと思います。

それでも息子を愛し、寄り添おうとし続けたデヴィッド。

まだ幼いニックにデヴィッドが伝えた言葉、すべてをこえて愛している――Everythingが、決して嘘でも綺麗ごとでもなく、疑いようのない真実だったからこそ、ラストの微かな希望につながったと思います。

ティモシー・シャラメとスティーブ・カレル。2人の素晴らしい俳優が作品の要。

『君の名前で僕を呼んで』で、日本でもファンを増やしたティモシー・シャラメ。

今回の撮影で9キロ体重を落とした分、線の細さが際立ち、妖しいまでの美しさです。

まさに芸術的。特に目。目がいいんですよね。

『君の名前で僕を呼んで』を観た時は、またずいぶんと綺麗な子だなあ、と感心したものです。

完璧な容姿なのに、どこか危うい不安定さを感じさせ、だからこそ目が離せない少年。そんなイメージ。

『ビューティフル・ボーイ』のティモシーは、観ていてとても痛々しくなるニックを、まさに体当たりで演じています。

明るい笑顔で笑っていた青年が、いつの間にか堕ちていた闇。

急に怒ったり、嘘をついたり、刹那的な行動に出てしまう。

もう大丈夫なのかと観客を安心させる顔をして、また薬物に手を出している。

その演技が自然すぎて、ぐいぐい引き込まれます。

愛らしい弟妹と遊んでいるときの彼は、見惚れるほど輝いているんですけどね。

弟と妹も本当に可愛い上に、遊んでいる庭が光に溢れてキラキラと美しいので、まるで1枚の絵画のよう。

これからの活躍が、本当に楽しみな青年です。

そして、おそらく観客の多くが共感を覚えただろう父親デヴィッド役の、スティーブ・カレル。

彼の演技がまた、素晴らしいのです。もう本当に最高でした。

息子への変わらぬ愛情、それでもふとした瞬間に訪れる絶望と悲しみ、怒り。その先にある諦念。

デヴィッドの心の動きが、手に取るようにわかるんですよ。

上手い人だとは思っていましたが、普通の父親役だと余計に上手さを感じてしまいます。

『バイス』を見たばかりだったので、ラムズフェルドだー、と冒頭だけは考えたりもしましたが。

同時期に日本で公開されている2つの作品、演じている役の振り幅が広すぎですよね。

義母のカレンを演じたモーラ・ティアニーも良かったです。

海外ドラマファンには『ER 緊急救命室』のアビー役でおなじみ。

カレンが車で思わずニックを追いかけるシーンは、映画の中でも特に印象深いシーンの1つです。

薬物依存症について考えるきっかけになる映画。だからこそ、若い人たちにも特に見てほしい。

『ビューティフル・ボーイ』で衝撃的だったのは、エンドロールで「アメリカでは50歳以下の死因の1番が過剰摂取」と出た時です。

映画鑑賞後に思わず調べてしまいましたが、日本では20~30代は自殺が1位、40代が悪性新生物(癌や腫瘍)とのことです。

死因の5位までに、全年代でも過剰摂取は入っていません。

主要国の薬物生涯経験率を見ると、アメリカと日本の違いは歴然としていました。

2012年のアメリカと2017年の日本で比べてあったのですが、大麻経験者はアメリカで44.2%、日本では1.4%です。コカインは14.8%と0.3%。ヘロインは1.8%と、統計なし。これだけの違いがあります。

アメリカでは2002年から16年で、ヘロインの過剰摂取による死亡者は533%も増加したそうですから、上記のデータはまた変わっているでしょう。

しかし、少し古いデータを見ているだけでも、日本と違ってアメリカの若者に薬物がいかに身近な存在かわかってきます。

日本で芸能人が逮捕されると大騒ぎになるのも、一般人には薬物が遠い存在だから、とも思います。

まぁ日本ではわかりやすく犯罪だからというのは、大前提ですけども。

作品に出てくる薬物は、大麻やメタンフェタミン=クリスタル・メス。

大麻はまだしも、クリスタル・メスがすぐに日本でのスピード、シャブだとわかる人も少ないはず。

ちなみに日本でも1番検挙率の高い薬物です。

『ビューティフル・ボーイ』のニックは、このクリスタル・メスの依存症になってしまいます。

クリスタル・メスの副作用はおそろしいものです。

皮膚が弱り、炎症や吹き出物ができたり、皮膚の下を虫が走っているような幻覚に襲われ、皮膚をかきむしってしまう。

数年で一気に老けてしまい、内臓も歯もボロボロに。精神的にも不安定になり、怒りっぽくなったり、興奮したり。

薬物依存症は、本人がやめたいと思っても、体がやめられなくなってしまうそうです。

これはアルコールだけでなく、他の依存症の人も同じですよね。

みんなもやってる、自分は大丈夫。すぐにやめられる。

そんな軽い気持ちで始めて、ずるずると、あり地獄に落ちるようにはまっていく。

ニックが今度こそもうやめると決めたのも、嘘ではないでしょう。

でも、結局は脳が覚えた快感に負けてしまい、また薬に手を出し、そのことで落ち込んで、の繰り返し。

いくら何より愛している存在でも、デヴィッドが1度は支え続けるのが限界となってしまったのは、当然に思えます。

薬物に手を出さないのが1番だとは、誰もがわかっているはず。

しかし薬物が世界からなくなることはないでしょうし、日本でもこの先、若年層が今よりずっと手にいれやすい社会になる可能性は、大いにあります。

自分の大切な人が、もし依存症になったら。

そのとき自分は、社会は、何をしてあげられるのか。寄り添い続けることができるのか。

そんなことを見終わってからも、深く考えさせられる映画です。

だからこそ、本当は若い人たち、特に繊細な10代の子どもたちにも見てほしい。

そして薬物が自分自身を壊すだけでなく、自分の周囲の人たちの生活をも壊してしまうことを、理解してほしいです。

『ビューティフル・ボーイ』まとめ

以上、ここまで『ビューティフル・ボーイ』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • ニックが立ち直って、今は脚本家として成功しているのが救い。Netflixのドラマ『13の理由』が観たくなりました。
  • やっぱり薬物は、絶対ダメ。これが基本。でも人はみんなそんなに強くない、誰もが依存症になる可能性はあります。だからこそ依存症患者への理解と、サポートが充実する社会の構築を考えるきっかけに。
  • エンドロールでティモシー・シャラメが朗読する、ブコウスキーの詩。最後まで聞いてから席を立ちましょう。

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