2020年に開催された第92回アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』。
『ほえる犬は噛まない』は、そんなポン・ジュノ監督の長編デビュー作です。
- 『殺人の追憶』が日本で注目を浴び、劇場公開されたポン・ジュノ監督の長編デビュー作
- ペ・ドゥナが主演を務めたコメディで、今作でブレイクするきっかけになった
- すでに『パラサイト 半地下の家族』への兆しが見られていた!?
マルコヤマモト
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目次
『ほえる犬は噛まない』作品情報
作品名 | ほえる犬は噛まない |
公開日 | 2003年10月18日 |
上映時間 | 110分 |
監督 | ポン・ジュノ |
脚本 | ポン・ジュノ ソン・テウン ソン・ジホ |
出演者 | ペ・ドゥナ イ・ソンジェ キム・ホジョン ピョン・ヒボン キム・レハ コ・スヒ キム・ジング |
音楽 | チョ・ソンウ |
【ネタバレ】『ほえる犬は噛まない』あらすじ
冴えない非常勤講師ユンジュ
韓国の中流家庭が暮らす団地に住むユンジュ(イ・ソンジェ)は、犬が嫌いな冴えない大学非常勤講師で、妊娠中の年上の妻・ウンシル(キム・ホジョン)に養ってもらいながら大学教授のポストを狙っていました。
なんとしても教授の地位を手に入れたいユンジュでしたが、教授になるためには真面目なだけではダメ。
学長に巨額の賄賂を渡すという裏の手を使う必要があったのです。
妊娠中のウンシルに顎で使われ、教授になって見返してやりたいと考えていたユンジュでしたが、ペット禁止のマンションで吠える犬の声も加わってストレスが頂点に達してしまいます。
しかし、とある飲み会の帰りに教授候補の講師が電車に撥ねられて亡くなりポストが空いたことで、ユンジュにチャンスが訪れたのですが、薄給のユンジュには賄賂を用意できるような蓄えもありません。
その後、隣の犬の飼い犬を見つけたユンジュは、ふと魔が差してその犬を団地の地下に置いてあるタンスに閉じ込めてしまったのです。
次の日自分が閉じ込めた犬の「迷い犬ポスター」を見つけたユンジュは、その犬が声帯を手術していて吠えることができないということを知り愕然とします。
間違いに気づいたユンジュがふたたび地下室に戻ると、なんと団地の警備員(ピョン・ヒボン)が昨日の犬を犬鍋にして食べていたのです…!
そして、よく吠える犬の正体が同じ団地に住むおばあさん(キム・ジング)の飼い犬だということがわかると、ユンジュはすきを見ておばあさんの飼い犬を奪い、団地の屋上から投げ落としました。
冴えない事務員ヒョンナム
団地の管理事務所で経理を担当しているヒョンナム(ペ・ドゥナ)は、飼い犬が居なくなり悲しみに暮れる女の子の代わりに、ポスターを街中に貼り付けていました。
仕事はあるものの、退屈な日々を送っているヒョンナムは、銀行強盗に勇敢に立ち向かう窓口の女性行員の姿をテレビで見て、自分も英雄になりたいと思い始めます。
そして、飼い犬が行方不明になったおばあさんがポスターの届け出をしに来た時、「今こそが退屈な日常を変えるチャンス」と立ち上がったのです。
ヒョンナムは犬を探すために友人のチャンミ(コ・スヒ)とともに団地の屋上から、双眼鏡を使って眺めていました。
向かいに見える山にいつか行きたいと思いつつ双眼鏡を覗いていると、反対側の建物の屋上から犬を投げ落とす男の姿を目撃したのです!
ヒョンナムが男に「コラ!」と声をかけると、男は団地中を逃げ回ります。
ヒョンナムも必死に追いかけますが、間一髪のところで男を取り逃してしまいました。
その後、ヒョンナムは一部始終を話し、飼い犬の落下現場におばあさんを連れていきましたが、ショックを受けたおばあさんは倒れて、入院することになってしまったのです。
ヒョンナムの怒りが爆発!
犬を殺してしまったユンジュが家に変えると、妻のウンシルが犬を買って帰ってきたことに驚愕します。
教授になるための賄賂を工面するために奔走していたユンジュは犬の世話まで任され、ウンシルに対しての不満をつのらせていきました。
しかしある日、ユンジュが犬を散歩させている途中、消毒液を散布で周りが見えなくなったすきに、犬の姿が消えてしまったのです!
帰宅したウンシルにことの一部始終を説明するも「探してきて!」と命じられ、ついにユンジュの怒りが爆発します。
そんなユンジュに対して、妊娠を機にリストラに遭ったウンシルは、もらった退職金で初めて自分のためにお金を使い犬を飼うことを決意したと告白しました。
そして、それ以外の退職金をユンジュの賄賂のために使うと告げられて、ユンジュは妻の想いに打ちのめされます。
こうなったら飼い犬を探し出すためにユンジュもポスターを街中に貼りまくり、その姿を見かけたヒョンナムも犬殺しの犯人を探すためにユンジュに協力することに。
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しかし、自分の仕事をおろそかにしていたとして、ヒョンナムは管理事務所をクビになってしまいました。
また、飼い犬を殺されたおばあさんが亡くなったという知らせを受けヒョンナムは激怒し、犬殺しの犯人を必ず捕まえると決意したのです。
『ほえる犬は噛まない』の結末
身寄りのないおばあさんは、優しく接してくれたヒョンナムのために「屋上の切り干し大根を食べて良い」という遺言を残していました。
遺言の通りヒョンナムが屋上へ向かうと、そこにユンジュの飼い犬を焼いて食べようとする浮浪者(キム・レハ)の姿を見つけたのです!
ヒョンナムは怯えましたが、今こそ自分が英雄になる時と意を決し、パーカーのフードをかぶると男へ向かって走り出しました。
男から間一髪で犬を奪ったヒョンナムを、浮浪者の男がものすごい勢いで追いかけてきます。
エレベーターに逃げ込み追い詰められそうになるヒョンナムでしたが、危機一髪で友人のチャンミが現れ犯人を撃退しました。
そして、ヒョンナムはユンジュのもとに飼い犬を返すことに成功したのです!
その後、ユンジュは賄賂のおかげで大学教授になることができましたが、泥酔した帰りにヒョンナムに再会した時、犬探しのせいで仕事をクビになったことを知ります。
ユンジュは罪の意識に苛まれ、告白することがあると言ってヒョンナムに自分の背中を見せました。
「この背中に見覚えはないか?」
そして、ユンジュは突然走り出したのです。
ユンジュのあとを追いかけるヒョンナムでしたが、「あの日」の追跡劇を思い出すことはなく、ユンジュの脱げた靴を笑って差し出したのです。
マルコヤマモト
『ほえる犬は噛まない』感想
ユンジュ、それは成功なの?
『ほえる犬は噛まない』は、『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『パラサイト 半地下の家族』で知られるポン・ジュノ監督の劇場長編デビュー作です。
マルコヤマモト
『ほえる犬は噛まない』の原題は『フランダースの犬』。
劇中にイ・ソンジェ演じるユンジュがアニメの主題歌を歌うシーンが登場しますが、ポン・ジュノ監督的にはこのシーンからなんとなく付けたタイトルです。
しかし、このタイトルには「子供ながらの純粋さ」という意味も込められているということです。
マルコヤマモト
犬や猫のペットを飼うということは、カワイイから、寂しいからと言う理由もありますが、お金持ちの一種のステータスとして考えられる気もします。
最終的には奥さんの退職金から支払った賄賂のおかげで大学教授になれて、そこそこお金持ちになったはずのユンジュ。
マルコヤマモト
結局、犬殺しの罪がバレていないものの、ユンジュのせいでヒョンナムが仕事をクビになったことなど心にずっとずっとモヤモヤを抱えて生きることになるわけです。
ヒョンナムが純粋であればあるほどユンジュが辛い。
ヒョンナムのように正直になれないユンジュというキャラクターの対比は上手く表現されていると思います。
マルコヤマモト
ポン・ジュノ監督他作品との共通点がありまくり!
マルコヤマモト
コメディ?シリアス?なんとも言えないような作品の雰囲気は、『グエムル-漢江の怪物-』や『パラサイト 半地下の家族』にも現れています。
さらに、『パラサイト 半地下の家族』で印象的に描かれていた「消毒液の散布」シーンは、『ほえる犬は噛まない』『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』にも登場するのです。
マルコヤマモト
デビュー作である『ほえる犬は噛まない』が興業的に振るわなかったものの、後の作品にこんなに爪痕を残すシーンがあるとは驚きでした。
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また、『ほえる犬は噛まない』にも、団地の地下で暮らす浮浪者が登場します。
『パラサイト 半地下の家族』が世界中で評価されたからこそ、浮き彫りになった韓国の深刻な格差社会や貧富の差ですが、本当はポン・ジュノ監督がずっとずっと前から伝えていたことなのではないでしょうか?
マルコヤマモト
ポン・ジュノ監督の作品を初めて見る人は、もしかしたら「これのどこがオモシロイの?」と理解できない部分もあるかもしれません。
またコメディともシリアスとも言えない、ジャンルレスな感じがかえって中途半端に思える可能性があります。
マルコヤマモト
『パラサイト 半地下の家族』を観てオモシロイと感じた人やポン・ジュノ監督の作品に興味を持った人は、今作でその答え合わせをしてみてはいかがでしょうか?
SNSでのみんなの感想・評判
ポン・ジュノ「ほえる犬は噛まない 」視聴。とある団地で飼い犬が次々と失踪する事件を、解決に向け奔走する女の子と事件の犯人兼被害者の青年、二つの視点から描いた作品。本作がポンジュノの長編初監督作品であるが、見事な登場人物達の対比構造と団地の印象的なカットが素晴らしかった。 pic.twitter.com/oX3KVzRkTf
— ナナシイ (@7shiy) July 12, 2020
『ほえる犬は噛まない』鑑賞👴🏻
ポンジュノ監督作を漁っている中の一本♫初長編らしいけど見事なまでにパラサイト味を感じるほど痛烈な社会風刺と皮肉さを絶妙なユーモアと恐怖を交えて描くスタイルは既に完成の域✨物語に個人的な消化不良を感じたけど面白かった🍀犬好きな方には特に辛い描写あり🙈💦 pic.twitter.com/0XptbYkAQL— もん吉田さん (@monkichidasan) July 11, 2020
2回目のポン・ジュノ監督映画『ほえる犬は噛まない』
何故また見たかって、この映画を最初見たときの衝撃が凄くってね。韓国映画って自国の恥部をネタに映画作るんだ!スゲーなって感動したんです。
っで、一度劇場で見てみたいと思ったのですわ。
ペ・ドゥナはやっぱりいい(*´∀`) pic.twitter.com/oUIKRE2dQL— 負け犬チョンミ (@Chonmi6973) July 5, 2020
『ほえる犬は噛まない』を観て、警備員が犬を調理するシーンにぎょっとした人も多かったと思いますが、朝鮮半島にはもともと犬食文化なるものがあります。
マルコヤマモト
犬は基本的にペット扱いな日本人には、ちょっと考えられないですよね。ちなみに犬肉は、滋養強壮、精力増強、美容に良いと言われています。
文明開化で西洋化された日本で、犬は愛玩動物として扱われるようになり完全に犬食文化がなくなったことに対して、朝鮮半島には残ったということです。
マルコヤマモト
確かに犬が好きな人には辛い描写もありますが、冒頭テロップにあるように「安全に撮影」しているとのことなので、ひとまずご安心を。
『ほえる犬は噛まない』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
マルコヤマモト
- 原題は『フランダースの犬』=純粋さを表している。ペ・ドゥナがとにかくカワイイ
- コメディと不気味な部分が共存する点は今後のポン・ジュノ監督の作品に大いに通じるものがあった
- 『パラサイト 半地下の家族』を観てから鑑賞すると、新たな気づきがあるかも…!
マルコヤマモト
『パラサイト 半地下の家族』をご覧になってから『ほえる犬は噛まない』を鑑賞したみなさんがお気づきになったとおり、この2作品には共通する点がいくつもありました。
例えば消毒液を噴射するシーンや、団地の地下に暮らしている浮浪者…など。
マルコヤマモト
『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞を記念して、ポン・ジュノ監督作品が再び注目を集めています。
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