アメリカ西部のモハーヴェ砂漠の真ん中にあるバグダッド・カフェを舞台に、名曲「calling you」が優しく響く。
心に切なさや弱さを抱きながらも確かな希望へと向かっていく、2人の女性の友情物語。
- バグダッド・カフェにいる人たちの生活感がなんとも魅力的
- 共通の痛みを経験したジャスミンとブレンダの関係の変化にほっこり
- ジェヴェッタ・スティールの歌う名曲「calling you」に癒されること間違いなし
それではさっそく映画『バグダッド・カフェ』についてレビューしたいと思います。
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目次
『バグダッド・カフェ』作品情報
作品名 | バグダッド・カフェ |
公開日 | 1989年3月4日 |
上映時間 | 95分 |
監督 | パーシー・アドロン |
脚本 | パーシー・アドロン エレオノーレ・アドロン |
出演者 | マリアンネ・ゼーゲブレヒト CCH・パウンダー ジャック・パランス クリスティーネ・カウフマン モニカ・カローン |
音楽 | ボブ・テルソン |
主題歌 | ジェヴェッタ・スティール「calling you」 |
【ネタバレ】『バグダッド・カフェ』あらすじ・感想
魅力的なバグダッド・カフェの人たち
ドイツから、アメリカに旅行者としてやってきたジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は、アメリカ西部にあるモハーヴェ砂漠の真ん中で、夫と喧嘩してしまいます。
二人は別れ、ジャスミンは夫の車を降りると重たいトランクを引いて砂漠の中を歩きだします。
そんな中でジャスミンがたどりついたのは、モーテルとガソリンスタンドも経営しているバグダッド・カフェでした。
カフェのボスのブレンダ(CCH・パウンダー)は、子育ての疲れなどからいつも怒っていて、ジャスミンと同じように夫と喧嘩し、出ていかれてしまっていました。
泣いているブレンダに近づき、「オフィスはどこ?」と聞くジャスミン。これが二人の最初の出会いです。
カフェではいつも、ブレンダの家族や個性的な常連が家族同然に過ごしていました。
- カフェの近くのキャンピングカーで暮らすヒッピー風のコックスさん。
- 入れ墨師のセクシーなお姉さん。
- いつもピアノでバッハを弾いているブレンダの息子のサロモやその赤ちゃん。
- オシャレが大好きなブレンダの娘。
- ブーメランで遊ぶバックパッカー。
そして、店員は、いつも暇そうにハンモックで寝ていたり、みんな気ままな様子です。
そんな姿にジャスミンはなんだか拍子抜けしながらも、なんとなく居心地の良さを感じていきます。
ジャスミンとブレンダの友情
次第に、カフェのみんなと仲良くなっていくジャスミン。
しかし、それをブレンダはよく思っていませんでした。
ジャスミンが、ブレンダのお買い物中にオフィスを掃除したことにも大激怒。
コックスさんの修理した銃を片手にブレンダは、今にも引き金を引いてしまいそうな勢いで怒りまくり。
そんな様子にカフェのみんなも、またそれを遠くから見ていたブレンダの夫も思わずため息。
そして、ある日ジャスミンが子供たちと遊んでいると、ブレンダがやってきてジャスミンに思わず「自分の子と遊びな!」と言ってしまうのです。
その言葉に「子供はいないの」と答えたジャスミン。ブレンダは言いすぎてしまったことを謝ります。
人種も、バックグラウンドも異なるジャスミンとブレンダですが、女性ということは同じです。
この件から少し打ち解け、次第に仲を深めていきます。
ジャスミンは、カフェに来るときに夫のトランクと自分のトランクを間違えて持ってきてしまっていました。
そして、そのトランクの中には男物の洋服やマジックキッドが入っていて、ジャスミンはそのマジックキッドを使ってひそかにマジックを練習します。
そして、カフェのみんなとさらに打ち解け、バグダッド・カフェの名物として人気者になっていくのです。
ブレンダともすっかり打ち解け、一緒にマジックをするまでになっていました。
マジックが話題となってバグダッド・カフェは大繁盛。
しかし、ジャスミンはもともとドイツから来た旅行者でした。
ビザも切れてしまって、労働報告書もないジャスミンは、帰ってしまいます。
ジャスミンのいなくなったカフェは、また寂しい日々が続きますが、ジャスミンはバグダッド・カフェに帰ってきます!
よく見ると、帰ってきたジャスミンには、左手の薬指にあった指輪がなくなっています。
再会したブレンダとジャスミンが抱擁をかわすシーンでは、彼女たちがかけがえのない存在になったことがわかりました。
ブレンダとジャスミンの心が近づくときに流れるのが、あの「calling you」です。
アカデミー賞最優秀主題歌賞も受賞したこの曲は、数々のアーティストにもカバーされた名曲です。
砂漠の何もない空間にゆったりとした音楽、ジェヴェッタ・スティールが歌う切ない歌詞とが絶妙にマッチングしていて、まさに『バグダッド・カフェ』にぴったりのテーマソングです。
バグダッド・カフェのショータイム
帰ってきたジャスミンとブレンダのマジックショーのシーンは最高です!
マジックショーでブレンダとジャスミンが歌う歌の歌詞も魅力的。
「浮世の悩みはマジックで消える」
「愛さえあれば今日も生きられる」
バグダッド・カフェは、モハーヴェ砂漠のまさにオアシス。
ショータイムは超満員で、ブレンダとジャスミンのマジックにお客さんも大賑わい。
それをこっそりのぞいていたブレンダの夫も思わず笑みがこぼれます。
ブレンダはショータイムの後、再会した夫とも仲直り。
ジャスミンもコックスさんからのプロポーズを受けます。
コックスさんと結婚できれば、アメリカ市民になれるジャスミン。
それに、コックスさんには以前から心を開いていました。
けれど物語の中ではジャスミンは返事をしません。
ジャスミンが「ブレンダに相談する」といって『バグダッド・カフェ』は終わります。
きっとそれを聞いたブレンダはもちろん喜んでくれたことでしょう。なんて、想像させられるラストになっています。
進化し続ける『バグダッド・カフェ』
この映画が1987年に完成し、日本での公開は1989年となりました。
初公開の頃は、監督が自らシーンをカットした91分バージョンの[オリジナル版]でした。
しかし、このカットは、監督の意向ではなく、アメリカの配給会社からの意見を取り入れたものだといいます。
そして、1994年に[完全版]とされて発売されたものが、最初に撮られたままのものだそうです。日本でも同年にリバイバル上映されました。
そしてさらに、2008年にはパーシー・アドロン監督による[完全版]の色やカットのトリミングを調節した[ニュー・デュレクターズ・カット版]が制作されます。
[完全版]と[ニュー・デュレクターズ・カット版]は、編集自体は全く同じですが、過去のバージョンとは違ってタイトルやスタッフのクレジットの色がオレンジ色から青色になっていたりと、細かい変化があるようなので見比べてみても面白そう。また、2019年の4月には、[4k修復版]が発売されるそうです!
どんどん鮮やかに生まれ変わっていく『バグダッド・カフェ』が、今回もどんな風に変化しているかを見るのも楽しみですね。
『バグダッド・カフェ』まとめ
以上、ここまで『バグダッド・カフェ』について感想を述べさせていただきました。
- 間違いなく不朽の名作に数えられる映画。
- ブレンダとジャスミンの静かな友情が最高!
- 雰囲気や色使い、そして名曲「calling you」にも癒されること間違いなし
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