ロブ・ロウがホストをつとめる『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』は、映画に存在する定番表現を紹介するバラエティ番組。
いつの頃からか私たち観客も、映画製作の「お約束」を受け入れ、それを無意識に理解した上で、映画を楽しんでいると、驚きの指摘をしております。
映画をよりドラマチックにするための演出や編集、数々の「映画あるある」が、どのように生まれたのか?その理由や背景を俳優、監督、キャスター、映画評論家が、映画の製作現場の事情を解説。
映画ファンであってもなくても「映画あるある」に、納得と合点がいく、そんな作品です。
それでは『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』について解説していきます。
・観客の想像をかきたてる表現手法
・少しずつ確立していったお約束
・観客も理解している「映画あるある」
目次
『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』解説・感想
映画の定番表現を紐解く
ちょっとユルく、くだけたトーンのホストとして登場するロブ・ロウが紹介するのは、映画製作における「お約束」と言われる定番表現の数々。
毎年、数多くの映画が公開されているものの、今では都合のいい筋書きや、お決まりは、観客もそれを織り込んだうえで楽しんでいるというだから驚きです。
『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』は、その映像表現ならではの事情や背景を紐解き、映画業界の裏話を盛り込んだ内容となっております。
現実ではありえないことが映画ではお約束
最初の「あるある」として紹介されたのは、恋愛映画における男女の不思議な出会いの数々。映画では何事もドラマチックでないといけないことから、どの出会いも不自然で現実ではありえない展開がまかり通っていると指摘します。
確かに例としてあげたヒット映画の男女の出会いのシーンは、どれも非現実的で陳腐。冷静な目でみるとおかしなセリフや行動ばかりです。
それでも観客は、俳優たちが織り成す世界、恋に落ちていく様を映画の中で体験したいがために、特に気にすることなく作品へと没頭。
冒頭から映画ならではの事情を、わかりやすく解説してくれています。
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映画「ジュラシック・ワールド」で暴れる恐竜から逃れるのに必死に走るヒロインのクレアが履いているのはハイヒール。
ハリウッドでは、女性を美化するのに、どんな時でも女優にハイヒールを履かせるのは、昔からある流れと言います。
恐竜から逃げるクレア演じるブライス・ダラス・ハワードの足元は、必死に走る彼女の形相より、はるかにインパクトがありました。
こういったハイヒール・アクションは、映画の演出の中で最もリアリティのない描写なのに、いまだに存在しているのは、ハリウッドらしいとお約束と言えます。
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観客の想像力に訴えかける演出
ハリウッド映画の中のセックス描写は、制作陣の創意工夫の賜物。性的描写を制限するかつてのヘイズ・コードや現在のレイティング・システムといった規制があることで、観客に暗示をかけて想像力を働かせる演出が発達していったといいます。
気持ちが高まった男女ふたりが音楽で盛り上がり、美しい身体が映しだされ、その後はシーツを握る手といった想像をかきたてる演出で、男女が結ばれるシーンを作り上げているのです。
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映画の中であるお約束の演出「飲み物を吹き出す」は、登場人物が驚いたり、ドタバタ感を出すのに使われ、生意気で横柄な態度を表現するのに、俳優が「リンゴをかじる」。
「怒りに任せて机を一掃する」は、文字通りの映画ならでは事情。現実ではやらないけど、ビジュアル的にわかりやすく、登場人物の心情を表すにはぴったり、その上、面白いから受け入れられるとして利用される演出手法だと伝えています。
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物語を語る定型キャラクターや手法
物語を語るうえで、観客がわかりやすいようにハリウッドでよく用いられるのは、定型化したキャラクターや手法。
規則を守らない型破りの刑事や、登場した瞬間に死が約束されている登場人物、主人公が救いを求める可愛い不思議ちゃん「マニック・ピクシー・ドリーム・ガール」、ホラーでは、最後まで生き残る「ファイナル・ガール」と、その定番キャラクターには名前さえついているというのだから、興味深いです。
パリなどシーンの地理を語る上では、誰にでもわかるようにエッフェル塔を画面に映しこんでいるし、映画を見る際には、セリフだけに頼らない視覚的、感覚的表現方法を多用されているのをあらためて語っています。
映画「ロッキー」で使われたのは、モンタージュ手法で、たくさんの情報をひとつの画面に入れ込んで、短時間で物語を盛り上げる手法は、映画製作の中で開発され、蓄積されてきた技術ともいいます。
ヒーローは、夕日に向かってかけてゆく
映画の終盤で観客は、主人公が勝つかハラハラして見守っている…ところが、勧善懲悪の映画の場合は、ヒーローが勝つことをわかっているし、決まっているのです。
問題は、観客が渇望するエンディング「善人が悪人を倒す」を映画制作陣は、どうまとめるかということ。
そして、どの作品も、最後は、観客の納得する見事な展開を「お作法」にのっとって作り上げられ、ヒーローは栄光に浸って夕日に向かって走り去る…との解説されるのでした。
『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』解説・感想まとめ
以上、ここまで『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』をレビューしてきました。
・現実ではありえない表現
・ドラマチックな展開が必要
・だから映画は面白い
映画ファンと制作陣をつなぐ「お約束」
『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合~』は、誰もがわかっているけど意識すらしていなかった映画のお作法をあらためて気がつかせてくれる作品。
ロブ・ロウの言う通り、私たち観客は、映画の映像表現にすっかり慣れてしまい、敢えてそれを見に行くようなところがあります。
アクションや、コメディ、ラブコメ、ホラー、それぞれにジャンルは違えど、どの映画にも必ず「お約束」はある!ホラーでは、最初に殺されるのは誰?最後に生き残るのは誰?と無意識に物語の中の安心を探していたり、恐怖やビックリ・ポイントを、わかっていながらハラハラしていたり。
フィスト・ファイトでは、ひとりずつ殴り合いをするし、お葬式では主人公がひとり、遠くからながめていたり…実際の世界ではありえない映画独特の表現方法を、私たち観客は、すでにそれを受け入れていると指摘しており、ちょっと笑ってしまいます。
ヒーローは絶対に死なないし、負けないのも知っているはずなのに最後までハラハラドキドキして気が抜けないしくみは、お約束通り。
映画表現の可能性は、無限に広がっていて、今後、どんな斬新でセンセーショナルな作品が生まれても、映画ファンと制作陣をつなぐ「お約束」は、これからもずっと共通言語として、存在するはずです。
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