写真家・浅田政志の実話ベースにした感動のヒューマンドラマ。
映画前半は主人公の成長とそれを助けた家族が中心になっています。
中盤からはカメラマンになった主人公と被写体となる家族との出会い、そして東日本大震災の被災地で繰り広げられる写真と家族の物語が中心になっており、まるで三部作のような映画です。
涙腺ポイントが劇中にはいくつも組み込まれており、どうぞハンカチをお忘れにならないようにしてください。
見終わった後に、家族について思いをはせる作品となっています。
大切な人と一緒に観るのにもおすすめです。
- ハンカチ必須!女子はアイメイクに注意!様々な家族の物語に涙すること間違いなし
- 「役者・二宮和也」の新局面に立ち合える作品
- リアルに描かれた被災地の日常と被災者の哀しみ
それでは『浅田家!』をネタバレありでレビューします。
『浅田家!』作品情報
作品名 | 浅田家! |
公開日 | 2020年10月2日 |
上映時間 | 127分 |
監督 | 中野量太 |
脚本 | 中野量太 菅野友恵 |
出演者 | 二宮和也 妻夫木聡 風吹ジュン 平田満 黒木華 菅田将暉 渡辺真起子 北村有起哉 野波麻帆 池谷のぶえ 後藤由依良 駿河太郎 松澤匠 篠原ゆき子 |
音楽 | 渡邊崇 |
【ネタバレ】『浅田家!』あらすじ・感想
家族の物語
『浅田家!』は家族の物語です。
劇中には浅田家の面々だけでなく、何組もの家族が登場します。
写真家になって家族写真を撮り始めた政志は、様々な家族と出会い、人としても写真家としても成長していきます。
斎藤あやめ
映画冒頭のどうしようもないドラ息子だった政志と同一人物とは思えないくらいの変化です。
政志がカメラマンとして、そしてボランティアとして出会った家族の物語の数々は、政志だけでなく観客の心をも鷲掴みにします。
政志が出会った家族が特別だったわけではありません。
どんな家族にだってドラマがあります。
そこに複雑な環境や生い立ちなんて必要ありません。
どんな普通の家族にも、その家族だけの物語があるもの。
『浅田家!』は、そういった家族のドラマが連なったような映画です。
斎藤あやめ
震災
前半は政志の成長と浅田家の家族写真の物語が主軸でしたが、映画の終盤からは東日本大震災の震災地に物語の舞台は移ります。
かつて撮影した被災地に住む家族の安否を確認するために被災地を訪れた政志。
そこで目の当たりにしたのは、以前とは変わった街の様子でした。
家族の安否が掴めぬまま呆然としていた頃、政志は津波で泥だらけになった写真の洗浄・返却のボランティアをする小野に出会います。
政志は、このボランティアを通して、また様々な「家族」に出会うのです。
斎藤あやめ
3.11の地震では多くの人が津波で家族を失いました。
行方が分からない家族の生存を願う気持ちも、時間が経てば経つほど、その願いは絶望に変わります。
予想もしていない急な別れの上に、遺体の確認どころか安否の情報さえも手に入らない。
喪失感でぽっかり穴が空いた心を抱える中、行方不明の家族の写真が偶然見つかった時の家族の思いは計り知ることができません。
目の前の写真を通して行方不明の家族との再会を果たした人もいれば、気持ちに区切りをつけた人もいるでしょう。
その思いは人それぞれです。
斎藤あやめ
また洗浄されて返却するために並べられた写真の数々は、どれも有り触れた日常が切り取られたものばかり。
まさに家族の記録であり、被写体の人生の一部分です。
そこに写る人が何年か後に、自分の写真が避難所で並べられるなんて思うはずがなく、屈託のない笑顔を浮かべています。
劇中では、洗浄された写真1枚1枚が映し出されるシーンがあります。
どれもごく普通の家族の写真ばかりでした。
映し出された泥だらけの写真は、ただの紙切れなんかではありません。
誰かの生きた証なのです。
しかし、その写真に写っている人は、もう今はいないのかもしれない。
家族が必死の思いで探しているのに、もう彼らには会えないのかもしれない。
そこに写る誰もが当たり前の日常を送り、次の日も次の日もその日常が続いていくと信じてやまなかったはず。
斎藤あやめ
本人に会えたわけではないのに、その人が写っているものを見れば再会したような気分になれ、また、当時の空気や匂いまでも思い出させてくれる写真。
そういった写真が持つ力に、映画の後半は言葉が失われるくらい感動させられます。
他にも政志が被災地で出会う少女・莉子とその父親のエピソードも非常に印象的なものです。
斎藤あやめ
全部が分かった上で、政志が腕時計を使って撮った内海家の写真は、たとえ父親の姿がそこになかったとしても、間違いなく家族写真なのです。
いくつものドラマ
『浅田家!』には、いくつものドラマが詰まった映画といえます。
政志の成長、浅田家の物語、政志が撮影を通して出会う家族たち、さらには被災地で出会う人々の物語と盛りだくさんです。
しかも、このたくさん詰まった物語の1つだけでも映画が1本できそうなくらい、どれもが濃いものばかり。
普通は、1つの映画にいろいろな物語を詰め込みすぎると、下手をするとラストで伏線の回収ができなかったり、感動の濃度が薄まってしまたり、つながりに不自然さが生じてしまったりしてしまう危険性があります。
しかし『浅田家!』の素晴らしいところは、こういった物語の詰め込みすぎによって生じる矛盾や問題などが一切ないことなのです。
斎藤あやめ
とはいえども、1つ1つの物語のつなぎ目が自然で、その物語が今生じるのは当然であって必然のようにもすら思わせる展開は、観客に不自然さを感じさせる隙さえも与えません。
斎藤あやめ
中野監督の代表作は『長いお別れ』そして日本アカデミー賞を受賞した話題作『湯を沸かすほどの熱い愛』といった作品があります。
どちらの作品もテーマは家族です。
とはいえども「普遍のテーマ」である家族の物語をただただ普通に描いているわけではありません。
ウィットに富み、そしてエッジが効いた演出が作中に振りまかれているのが、中野作品の持ち味です。
観客はその演出によって、いつの間にか作品やキャラクターのペースに巻き込まれて、予期していなかった登場人物の心情を知り、まさかの結末に涙してしまいます。
『浅田家!』のラストにおいても「またハンカチの出番だ」と心の準備をしていた観客の予想を裏切るまさかの展開でエンディングロールが流れます。
ラストシーンまで、ずっと様々な家族の物語に涙していた観客にとって、まさに浅田家の面々に救われたような爽やかな気分で映画館を後にできます。
斎藤あやめ
中野量太監督の次回作が、本当に楽しみです。
二宮和也の役者としての新境地
ジャニーズ事務所のタレントの中でも、役者としての評価が高い二宮和也。
クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』では、その高い演技力が世界的にも評価されました。
2019年の11月に結婚を発表し、また、2020年末には嵐の活動が休止ということもあり、彼自身の人生の転機の時期ともいえる今、『浅田家!』では役者として一皮も二皮も向けた二宮和也が発見できます。
斎藤あやめ
彼の持ち味ともいえる飄々とした空気感を崩すことなく、普通の家庭で育った天真爛漫で甘えた末っ子を演じています。
劇中の前半、二宮演じる政志は腑抜けた青年そのもの。
何に反抗し、何故そこまでして頑なに動き出そうとしないのか理解が難しいものの、その目からだんだんと生気が失われていくことだけはスクリーンからでも見て取れます。
そんな死んだ目をした政志に変化が現れるのは、再び写真と向かい合おうと決意した時からでした。
そこからの政志の変化、もとい、成長は著しいものです。
前半の政志と本当に同一人物かと思うほど、後半は顔や表情が異なります。
斎藤あやめ
そんな政志の変化や成長をちょっとした眼差しと表情だけで分からせる二宮和也の技量には感服です。
また、劇中、二宮演じる政志が涙を流すシーンが幾度かあります。
どの涙にも流れるまでに物語があり、涙の色合いもそれぞれ異なります。
とくに印象的な涙は物語の中盤にある、脳腫瘍の幼い息子とその両親の家族写真を撮影していた時のものでした。
息子が脳腫瘍を患うという辛い経験をした家族。
斎藤あやめ
カメラを覗き込む政志もその姿に自然と涙します。
多くの観客はその家族の美しさはもちろんのこと、政志の流した涙の美しさにも胸を震わされることでしょう。
『浅田家!』あらすじ・ネタバレ感想
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邦画史上初の快挙🎊
第36回「#ワルシャワ国際映画祭」
#最優秀アジア映画賞 受賞‼️⠀⠀⠀✧₊ 映画『#浅田家!』
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🙋#浅田家焼き増し(リピート鑑賞)には#レディースデー の本日がオススメ✨🏠劇場一覧https://t.co/Rlpj2b0znU#二宮和也 pic.twitter.com/kYPvHrkLUG
— 映画『浅田家!』 (@asadake_movie) October 21, 2020
以上、ここまで『浅田家!』をレビューしてきました。
- ぎゅっと詰まったエピソードの数々が分散することなく、一つの物語になっている
- 主人公の成長と変化にも目が話せない
- 1つ1つの「家族」の物語の美しさに涙する