人は弱いから強くなろうとする。
でも、強くなんてならくていい。頑張るだけでいいんだ。
いじめがあったクラスの、いじめた側の生徒たちの心に触れる教師の物語。
- 2008年に公開され、第21回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」出品作品
- いじめが身近にあった人には、少しギクリとする場面があるかもしれません
- 泣けるとか泣けないとかじゃなくて、心に残る作品だと思います
それではさっそく映画『青い鳥』についてレビューしたいと思います。
目次
『青い鳥』作品情報
作品名 | 青い鳥 |
公開日 | 2008年11月29日 |
上映時間 | 105分 |
監督 | 中西健二 |
脚本 | 飯田健三郎 長谷川康夫 |
原作 | 重松清 |
出演者 | 阿部寛 本郷奏多 伊藤歩 重松収 太賀 |
音楽 | まきちゃんぐ |
『青い鳥』あらすじ
いじめによる自殺未遂などなかったかのような、平穏な新学期を迎えた中学校。
そこへ新たに赴任してきた極度のきつ音である臨時教師の村内(阿部寛)は、事件後転校した被害者生徒の机を教室に戻すように命じて生徒たちに衝撃を与える。
そんなある日、いじめに加担したことに苦しむ真一(本郷奏多)は、その苦しい胸の内を村内にぶつけるが……。
出典:シネマトゥデイ
『青い鳥』みどころ
ベストセラー作家、重松清の同名連作短編集の中の作品を映画化したヒューマンドラマ。
いじめによる自殺未遂が起きた中学校で、傍観者となったクラスメートたちときつ音の教師との交流を丁寧につづる。
ハンディキャップを持ちながらも生徒たちと真摯に接する教師を阿部寛が熱演。
一度だけいじめにかかわったことに苦しむ繊細な少年には、『テニスの王子様』の本郷奏多が挑戦した。
複雑さをはらむいじめ問題に真正面から向かう教師の言葉を通して、生と死や救いなど多くのことを問いかける。
出典:シネマトゥデイ
『青い鳥』を視聴できる動画配信サービス
『青い鳥』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。
なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。
- 動画の配信情報は2019年9月27日時点のモノです。
- 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。
ご覧のとおり、2019年9月27日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。
動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。
【ネタバレ】『青い鳥』感想レビュー
ある冬、2年1組に訪れた教師
バスに揺られ小説を読む男は、休職している教師の代理として転任してきた村内先生(阿部寛)。
同じ寒い朝、イヤホンをして手袋をはめて自転車で登校する男子は、村内先生が転任する学校の生徒・園部真一(本郷奏多)。
二人の向かう先である東ヶ丘中学校は、かつていじめを苦に自殺未遂を図った2年1組の生徒・野口の一件から立ち直ろうとしているところでした。
野口はすでに他の学校に転校しており、2年1組も学校もようやく日常を取り戻し始めたのは最近のことです。
横断歩道が青になったとき、信号待ちをしていた園部はハンドルを切って別の方向へと走り出しました。
向かったのはコンビニエンスストア「のぐち」。
しかし、シャッターは閉まっており“都合により閉店させていただきます”の貼り紙がしてありました。
一方、村内先生を乗せたバスは学校前に到着し、村内は校門をくぐります。
入って行った部屋の前には“青い鳥BOX”という小鳥箱のような青い箱が設置してありました。
今、東ヶ丘中学校ではベストフレンズ活動として、誰にも打ち明けられずにいる悩み事や相談を顔の見えない状態で投函するために青い鳥BOXを校内に三つ設置しているのです。
起立、礼、着席のあと村内先生は名簿を開いて生徒たちの顔と名前を一致させるかのようにゆっくりと一瞥しました。
そして名簿を閉じると「村内といいます」と名前を述べ、“休職された高橋先生が復帰されるまでこのクラスの担任をします。”と言いますが、その語調はスムーズではありませんでした。生徒たちは笑いました。
村内先生は極度の吃音症でした。あまり上手に喋れないけれど本気で喋るからみんなも本気で聞いてください、と言いました。
そして、本気で喋ることを本気で聞くのは当たり前のこと。
でも、みんなはそれができなかったから先生はここにきました。と続けました。
村内先生は日直の園田と高木に、ある机とイスを取りに行かせます。
それはもともと教室の中の、窓際の列の前から三番目にあった机。
今いる生徒を一席ずつ後ろにずらし、元あったその場所に机を置かせました。
そして「野口くん、おかえり」と呟きました。
野口の机を教室に置くことの意味、村内先生の思惑
翌日。村内は教室につき生徒たちが礼をしたあと「野口くん、おはよう」と空席の机に向かって声をかけました。その翌日も、毎朝。
あるとき村内先生が屋上から体育の授業を眺めていると、校内放送で呼び出されます。
野口の机を教室に戻したことについて、2年1組の生徒の保護者から電話があったようです。
そして事件のことが書かれた新聞のスクラップファイルと、生徒全員に書かせた反省文の束を渡されました。
野口は首を吊って自殺未遂を図り、当時の担任教師は見て見ぬふりをしていました。
村内先生を呼び出した教師は、過ぎた事件を蒸し返すな、生徒たちが動揺し保護者たちも口うるさくなる、と遠回しに言うのです。
職員室で村内先生が新聞のスクラップを読んでいると、島崎先生(伊藤歩)が声をかけました。
島崎先生が見ていた限りでは、野口は明るいムードメーカーのような生徒で、悩んでいることなんてわからなかったと言います。
他の先生たちも、わからなかったと言いました。
野口本人はいじめられていると思っていたけれど、周りはいじっているだけだと思っていたということや“周り”というのが生徒たちだけではなく教師たちもそうだった、ということが少しずつ明るみに浮かび上がってきました。
青い鳥って、何?
青い鳥BOX第一回目の開封の日がやってきました。
三つそれぞれの箱の鍵を開けると、中にはたくさんのいたずらの紙、つまりゴミが入っていました。
しかしその中に一通、丁寧に折られた白い紙が入っており「青い鳥って何?」と印刷されていました。
園部は、野口が書いた遺書に名指しした三人の生徒は主犯格の井上武志(太賀)・梅田光太郎(鈴木達也)と、自分の名前も書かれているのではないかと悩んでいました。
たった一度だけ、野口を“いじる”生徒たちに混じってしまったことを悔やんでいたのです。
二度目の青い鳥BOX開封の日、中身は一度目と変わらずゴミばかりでしたが、また丁寧に折られた紙が出てきます。
そこには「人を嫌うこともいじめになるのか」と書かれていました。
ベストフレンズ活動に力を入れている生徒指導の石野先生(井上肇)は、的を射ない質問に対して適当にあしらいましたが、園部は「俺も知りたい、教えて欲しい」と食い下がります。
思うところのあった村内先生が口を開き、「人を嫌うことがいじめになるのではない。本気で話している人の話を本気で聞かないことがいじめになる」と答えました。
園部は村内先生の言葉を受けて「こんなポスト何の役にも立たない」と部屋を飛び出し、教室の野口の机にある落書きを消しゴムで必死に消そうとしました。
後を追ってきた村内先生に対して自白するかのように、野口はクラスメイトから物を要求されてもいつもおどけて笑っていたことや、自分が一度だけポテトチップスを要求したとき一瞬悲しそうな顔をしたこと、もしかたら野口は自分に助けを求めていたかもしれないと思うことを打ち明けました。
そして野口の机を教室に戻したことについては「罰ゲームなのか」と尋ねました。
村内先生いわく、それは罰ゲームなんかではなくて、人間が負うべき責任。
野口は教室にいたかったはずで、いじめは一生忘れられないことであり、それを周りが忘れようとするのは卑怯だと伝えました。
さらに村内先生は、世の中には色々な人間がいて、自分のように喋るときにどもってしまう人や、野口のようにおどけないと本音を語れない人がいるから、本気で話を聞かないといけないのだと言います。
園部は、自分がしたことを忘れずにいたら強くなれるのかと問いました。
村内先生は去り際に「人間はみんな弱いから強くならなくてもいい。だから本気で頑張るんだ」と言いました。
“反省文”
ある雨の日、いつものように村内先生が教室に入ると野口の席がなくなっていました。
そして今日の日直を訪ねると、生徒は誰一人として口を開きません。
黒板に書かれた名前を見て、千葉と角田に声をかけますが井上が睨みを利かせたために二人は動きません。
村内先生が自ら机を取りに教室から出ると、ほどなくしてびしょ濡れで机を運び戻ってきました。
そして村内先生が来た初日のように、また野口の席に机が置かれました。
島崎先生の言うことには、2年1組の生徒が提出した反省文は何度も何度も書かせたものでした。
原稿用紙五枚以上、表向きに反省しているように見える文章になるまで、何度も。
まるで試験のように“合格”が出るまで何度も続く書き直しのたびに生徒の顔が見えなくなっていったと言いました。
そして、そんな反省文に何の意味があるのか、人を教えるのってどうしたらいいのか、と涙ぐみながら問いました。
村内先生は反省文の束を、燃やしました。
最後の授業。
ある時、村内先生が担当授業ではない時間に教室に入ってきました。
明日から高橋先生が戻ってくるため、これが最後の授業になると説明したうえで「前に書いた反省文を思い出して、それでいいと思う者は自習。書き直したいと思う者は原稿用紙を取りに来て欲しい」と言いました。
教室は静まり返り、誰も彼も周りが動くのを待っている状況のなか、学級委員の生徒が教科書を出して自習を始めました。
他の生徒たちも次々に自習し始めます。
園部は迷っていました。空気を読んで自習するか、原稿用紙を取りに行くか。
そのとき井上が立ち上がり「一枚くらいしか書けないけど良いですか」と原稿用紙を取りました。
井上が行動したことに続く生徒も数人いました。
園部もまた、そのうちの一人でした。
原稿用紙に向かい一行目に“反省文”と書いたあと、それを消して“野口へ”と書き直して野口への想いを綴りました。
村内先生が学校を去ろうとしたとき、島崎先生が呼び止めました。
村内先生は前に島崎先生が泣きながら問いかけたことに対しての返答のような言葉を伝えます。
教師は何も教えられず、ただ生徒の側にいることしかできないのかもしれない。
それでも運が良ければ、“なにか”を教えてあげることができるのかもしれない、と。
泣ける映画ランキングで、よく挙げられている作品
私が『青い鳥』を見た動機は、泣ける映画が見たいなぁと思ったというだけのことでした。
阿部寛が主演でいじめを扱うもの、生徒役に本郷奏多…ほぉ、泣けそうだな?と思ったんですけど泣けなかったです。
きっと現実はこうなんだろうな、という話です。
自殺未遂をした野口という子は、自分の中ではいじめられていて辛かったけれど、何かを要求されたりするたびにヘラヘラ笑っておどけることしかできなかった。
周りはそれを見て、いじられて笑われることで“クラス内のそういうポジション”をおいしいと思っていると、思い込んでいた。
輪の外から見れば2年1組は笑いの絶えないクラスだった。
野口は笑いの中心にいたわけで、だから教師たちから見てもいじめが起こっているとは到底思えなかった、って感じですかね。
いじめに関した作品は今やたくさんあって、どれが良いとか悪いとか言うつもりはないけれど、きっと現実から逸脱していないって意味でリアルなのが、この『青い鳥』かなと思いました。
いじめられっこが直接的に出てくるわけでもなく、当人が転校したあとに残されたクラスのみんなに視点を置いているのがよくある“いじめもの”と違うところでした。
泣けるとか泣けないとかそういう次元で判断して見るものじゃないなって、思いました。
主題歌を歌う“まきちゃんぐ”
物語が始まってほどなくして流れ始めるのが「鋼の心」、エンディングは「さなぎ」(『青い鳥』ver)です。
そこまでメジャーな歌手ではないかもしれないけど私は好きな歌うたいなので、久しぶりに聞いた声にグッときました。
結構いろいろなドラマとか番組のテーマ曲に起用されていたので聞いたことのある人も多いかもしれませんが、私の周りには知っている人がいないという。
人の心に素手で触れてくるような歌詞が魅力的で、やわらかく耳に馴染む声がすっと入ってきます。
だからきっと『青い鳥』にもぴったりだったんだなぁって感じです。
興味のある方はぜひ他の歌も聞いてみてください。
私は「ハニー」という歌が一番好きです。
『青い鳥』まとめ
以上、ここまで映画『青い鳥』について紹介させていただきました。
- 学校の道徳の授業とかで見ていたら、価値観が少し違っていたかもしれないなと思う作品
- もちろん大人になってから見ても何かしら心に残るものはあります
- 淡々と進んでいくストーリーの中で、少しずつ成長していく園田くんに心を揺さぶられます