映画『アントキノイノチ』あらすじ・ネタバレ感想!さだまさし原作のヒューマンドラマを岡田将生&榮倉奈々で映画化

映画『アントキノイノチ』あらすじ・ネタバレ感想!さだまさし原作のヒューマンドラマを岡田将生&榮倉奈々で映画化

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映画『アントキノイノチ』は、死を迎えた人の残したものを整理する“遺品整理”を題材として歌手さだまさしが著した長編小説を実写化した作品です。

第35回モントリオール映画祭イノベーションアワード受賞、第16回釜山国際映画祭「アジアの窓」部門で上映されるなど、日本のみならず世界でも高い評価を受けました。

無縁社会とも言われる今、今を生きる人に問われるのは“どう死んでいくか?”。

過去に心を傷つけられた2人の若者が、遺品整理を通して“生きる”ことを学んでいく物語。

人生には辛くとも“温かい結末”が待っている、と思わせてくれるラストに泣けました。

ポイント
  • 俳優・岡田将生の本気がわかる…冒頭20秒の演技は必見!
  • いつか迎えうる“死”をリアルに体感することで、“生きる”を深く考えさせられる
  • 苦しみぬいて演じきった悪すぎる難役、松坂桃李の鬼気迫る怪演が凄い
  • 人から傷つけられてできた過去のトラウマを人が癒していく…人の“再生”物語

それでは『アントキノイノチ』をネタバレありでレビューします。

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映画『アントキノイノチ』作品情報

作品名 アントキノイノチ
公開日 2011年11月19日
上映時間 131分
監督 瀬々敬久
脚本 田中幸子
瀬々敬久
原作 さだまさし
出演者 岡田将生
榮倉奈々
松坂桃李
鶴見辰吾
檀れい
染谷将太
柄本明
堀部圭亮
吹越満
津田寛治
宮崎美子
原田泰造
音楽 村松崇継

【ネタバレ】映画『アントキノイノチ』あらすじ・感想


冒頭20秒の全裸衝撃…心が2度死んだ青年・永島杏平(岡田将生)

映画『アントキノイノチ』は、とにかくスタートの画の衝撃が印象的!

床にズタズタに切り裂かれた高校の制服…そして、その上に突きたてられたハサミ。

部屋の窓へ視線を送るとベランダには大きな脚立。

「僕は2度、親友を殺した…そして僕の心は壊れた。」

声と共に画面上に現れたのは、真昼間から全裸で屋根の上に座る青年!

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演出の力…心が壊れた瞬間のようなものを一瞬で把握。

閑静な住宅街にある一軒家の屋根で真っ裸で体育座り…ただただ景色を眺めている彼の名は、永島杏平(岡田将生)。

少し猫背気味で骨ばった背中から、何とも言えない孤独感が伝わってきます。

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この青年に何が…?冒頭20秒で掴まれました。

それから3年後、杏平は遺品整理を扱う会社「クーパーズ」で働くことに。

看板には会社名の下に「天国への引越しのお手伝い」と記載。

さだまさしさんは、実在する遺品整理専門会社「キーパーズ」をモデルにしたそう。

キーパーズの社長・吉田さんも、同じ言葉をホームページに綴っています。

クーパーズ社長・吉田(鶴見辰吾)は“遺品整理の心得”を初出勤の杏平に説きます。

「遺品整理ってのは、荷物を片付けるだけじゃない。遺族が心に区切りをつけるのを手伝う仕事。言うてみれば、俺たちは“プロの遺族”だ。」

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実在する会社がモデルということもあり、リアルすぎる描写に顔を背け胸が痛くなる場面も多々。それでもこの映画を最後まで見ることができたのは、“死というものの行く末”を“生きるということの意味”を感じたい一心があったからだと思います。

全裸で佇んでしまうほど人生に絶望した青年の心を、遺品整理という仕事が救っていきます。

杏平(岡田将生)の遺品整理初仕事は、死後1カ月で発見された家

杏平の教育係になってくれたのは、物腰の柔らかな上司・佐相(原田泰三)。

『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

佐相が、社歴2年の久保田ゆき(榮倉奈々)を紹介します。

「俺の彼女だから。」

「ふふ。そうやって紹介するのやめて」と笑うゆきに、佐相も微笑みます。

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佐相は、映画公開前にスピンオフドラマが放送されたほど、ストーリーの中で重要な人物!新人が来るたびに、佐相は本当は彼女ではないゆきを「自分の彼女だ」と言って紹介するらしい。佐相の真意が理解できた時…彼の優しさに胸打たれます。
「アントキノイノチ ~プロローグ~天国への引越し屋」

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

「天国への引越し屋さんは、まず自分のことは我慢だぞ。」

佐相は優しく丁寧に、仕事を教えてくれます。

杏平の初仕事の家は、76歳で亡くなった大沢秀治宅。

家の前まで来た息子・大沢稔(堀部圭亮)は「適当に片付けて」と後ろめたそうに言いながら、遺品整理代を手渡して足早に去っていきます。

きちんと挨拶をして部屋に入った佐相とゆきは、時間をかけて合掌をして遺品整理にとりかかります。

心筋梗塞で亡くなり、死後1カ月後に発見されたという現場、寝たまま亡くなったそのベットには体液の跡や虫の死骸…。

「何をすればいいですか?」

目を背けてしまいそうな光景に、怖気づかない杏平を見て佐相は驚きます。

杏平が動じないのは、彼の経験した壮絶な過去に理由があります。

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心がズンと重くなりました…考えさせられる映像、怖さで涙。それでも、ご供養の箱とご不要の箱…2つの段ボールに丁寧に仕分けている様子に心温まりました。

同級生・松井(松坂桃李)の悪意と、親友・山木(染谷将太)の壮絶な死

杏平には軽い吃音があり、緊張すると咄嗟に声が出ない癖がありました。

彼がいないところで、高校の同級生・松井新太郎(松坂桃李)は杏平の真似をします。クラスメイトたちが笑う様子を見てしまった杏平でしたが、何事もなかったかのように教室へ。

松井は、自ら友達の悪い噂話を作っては吹聴するような悪い奴。

みんなわかっているのに、みんな逆らわないようにしています。

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クラスメイトの中には仲野太賀も。他にも吹越満、檀れい、津田寛治、宮崎美子、柄本明など素晴らしい俳優が続々と登場。

「その頃はみんな変だった…どこかイライラして、何かに怯えていた。そのくせ、波風立てることが嫌…もちろん、僕も。心の中ではぐるぐる邪悪なものが渦巻いていて…人前だと穏やかな空の下にいるように見せかける。それを誰もが了解していた。」

思春期真っ只中、杏平の心の叫びが聞こえます。

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松井という難役に挑んだ松坂桃李さんは「松井に共感できず…本当に苦しみながら、時に自己嫌悪に陥りながら演じた」と。この自己嫌悪しながらの演技によって“松井の悪意”がより際立って見えるんです。
『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

松井の若さゆえの暴走は、杏平の親友・山木信夫(染谷将太)に暗い影を落としていきます。

山木が熱心に取り組む熱帯魚ブログに誹謗中傷を書き込んだり、熱帯魚を解剖している酷い写真を送りつけて来たり。

次第にエスカレートする嫌がらせに、山木の心は病んでいきます。

「永島くんは知ってるのに気づいてないフリしてる!それでいいの?」

我慢の限界を迎えた山木は、学校でナイフを振りかざして松井に襲いかかります。

駆けつけた先生に抑え込まれて殺害を阻止された山木は、一気にトーンダウン。

「お騒がせしました。永島くんは味方だって思ってたんだけど…それでいい、しょうがない。さようなら。」

一瞬の隙をついて、走り出した山木。

杏平に視線を送りながら、ためらいなく校舎から飛び降りたのでした。

勢いよく地面に落ちて横たわった山木を、杏平は今も鮮明に覚えています。

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孤独死の現場で動じなかったのは、親友の自殺を目撃していたから…。

さらに悲しいことに、山木の死後行き場を失った松井の悪意は全て杏平に向けられていくのです…。

友を殺した杏平(岡田将生)と同級生に殺されたゆき(榮倉奈々)、惹かれあう2人

親友が亡くなった日と同じような空を見ると、杏平は動揺してしまいます。

あの日と似た空の日、遺品整理現場から杏平は急に飛び出します。

そんな彼を案じた佐相の計らいで、2人で飲むことになった杏平とゆき。

「重度の躁鬱って言われて、1年前まで精神科の薬飲んでて。医者からお酒止められてる…」

死にそうなくらいひどい時期があったことを杏平は話します。

「私、高校のとき一度殺された…。高校も途中で辞めちゃった。」

ゆきも杏平に、高校の時に同級生からレイプ被害に遭ったことを打ち明けます。

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トラウマから、ゆきは男の人に触られるのが怖いと知っていた佐相は、「自分の彼女」と言ってゆきを守ってくれていました。佐相優しすぎる…

お互いの深い傷を知った2人は、同僚以上の感情を少しずつ抱くように。

『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

ある日の仕事帰りの観覧車デート、ゆきが問いかけます。

「どうして病気に?」

言葉がでない杏平を見て、ゆきは深く聞くことをやめて語り出します。

「前は1人でも平気って思えた。でも、今はそこら辺に住んでいる人や歩いている人に何か言いたい…なんて、言えばいいかわかんないけど。」

ゆきの思いを聞いた杏平は観覧車の窓から「うわぁー!!」と何度も何度も絶叫。

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まるで、ゆきの代わりに何か伝えているみたいな叫び。

観覧車からの景色を見た杏平の脳裏に、山岳部で行った断崖絶壁の岩山からの見晴らしが浮かびます。

松井と一緒に岩山へ登ったあの日、岩場から足を踏み外した松井を殺そうとし…思い留まったものの、松井の度重なる嫌がらせに杏平の心は限界値を超えていました。

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ロケ地は、山口県右田ヶ岳にある大岩壁。杏平に蓄積して膨らんだ“松井への殺意”と杏平の心持ちを表すかのような…1歩間違えば死が待つ、足がすくむような切り立った岩場にゾッとします。

松井だけでなく、見てみぬフリをする周囲の人々にも嫌気がさした杏平。

「なんで黙ってるんだよ?関係なくないだろ?」

文化祭の日。

『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

気がつくと、杏平は山木と同じように松井にナイフの刃を向けていました。

赤ちゃんが自殺…ゆき(榮倉奈々)の抱える辛い過去が明らかに

「永島くんとだったら…」

ゆきが杏平を誘ったのはホテル。

高校でレイプされてしまって以来、男の人が怖くなったゆき。

杏平に手を握られて平気だったゆきは、一線を越える決意をします。

しかし、震えが止まらない。

「私ひどい…ごめん。」

実はゆきは、レイプ被害で妊娠していました。

相手の家に行って事実を伝えると「お前が誘った!」と怒鳴られ…悲しくなって一緒に行った母の手を握ろうとすると、母からは「どうしてあんな男について行った?」と責められました。

「私が悪いんだ…死にたい。」

その考えがゆきを追い詰めて、何度もリストカットをして自殺未遂をしてしまいます。

すると、お腹の子は母の思いを察したように流れていったと。

「私のために赤ちゃんが自殺した。きっと、私の人生を考えて…あのときの命が私を救ってくれたの。でも、あの子の命は何だったんだろう…そのかわりに生きている私は何なのだろう。」

泣きながら苦しい心の内を打ち明けるゆき。

「俺も自分がどうして生きているのか分からない…けど、生きてる。」

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“あの時の命”という大事なフレーズが出てくるシーン。失った命を思いながら、生きる辛さを同じように抱える2人の気持ちが痛いほど伝わってきます。

その後、ゆきは育児放棄で子供が餓死してしまった家の遺品整理へ。

小さなベビー服を見たゆきの目から、止めどなく涙が溢れます。

「…やっぱり忘れられない。私はちゃんと生きたい。」

その言葉を残し、ゆきは突然いなくなってしまいました。

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この「ちゃんと生きたい」には心揺さぶられました。

「元気ですかーー?」が愛おしいラストに感涙!

突然姿を消して海辺の老人ホームに勤めていたゆきを探し当てた杏平には、どうしても2つ伝えたいことがありました。

「あの時亡くなったあの子の命が君に繋がっているよ。」という言葉と、自らの過去について。

杏平はゆきに全てを打ち明けます。

ナイフを振りかざした文化祭の日。

杏平にナイフを向けられた松井は、「死ぬのが怖い。」と泣きました。

そんな松井をやっぱり殺せなかった杏平。

「永島くんと同じ。あの時亡くならなかった命が永島くんと繋がってる…だから永島くんもここにいる。忘れなくてもいいんだよね?」とゆきは言います。

『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

杏平から「『あのときの命』って、ずっと口の中で繰り返して」と言われ、素直に繰り返すゆき。

すると、杏平は「プロレスの人になっちゃわない?」とイタズラっぽく笑います。

「ふっwアントキのイノチ?」

気づいたゆきも笑います。

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えっここに繋がるの!?と、びっくりwまさか“アントニオ猪木”さんからきていたとは!

ふと閃いたゆきは「みんなに言いたいこと見つかった!」と嬉しそうにします。

そして、「元気ですかーー!」と声の限り叫びます。

思わず杏平も「元気ですかーー!」と声をあげていました。

答えを見つけた2人は抱き合います。

「もう独りじゃない、はじめてそう思えた…私は彼に出会い、もう一度生きようと思った…」

ゆきの嬉しそうな声がします。

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海に向かって叫ぶ2人が清々しい!ここから、予想だにしないラストへ。

直後、ゆきは車に轢かれそうになった子供を助けるために亡くなります。

亡くなった彼女のアパートへ遺品整理にきたのは、杏平と佐相でした。

彼女に助けられた女の子が挨拶に来ると、杏平は「元気ですかーー?」と声をかけます。

その声掛けに、少女はニコッと笑うのでした。

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遺品整理=心の区切り…死後に向き合わせてくれるラスト。どう死んでいくかを考えさせられたことで、どうしようもなく溜まってしまった心の檻のようなものを軽く解きほぐしてくれた映画です。

映画『アントキノイノチ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

『アントキノイノチ』

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

以上、ここまで『アントキノイノチ』をレビューしてきました。

要点まとめ
  • 死んだ人々が残してくれたものは、傷を負った2人の若者に“生きたい”という強い思いを与えてくれた
  • 人に傷つけられた傷は、人によって癒される…人間の良さ&素晴らしさを再確認
  • 思わず自分の遺品整理にはいくらかかるのかを調べてしまったほど…遺品整理の現場を知ったことで“どう生きていくか?”という“自らのこれから”に考えをめぐらせる機会が持てた
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