本作『アンソニーのハッピー・モーテル』のストーリーは、主人公のアンソニーが精神病院から退院したところから始まります。
以前の強盗仲間ディグナンに誘われて、もう一度盗みで一山当てようと企みます。
1度目は成功するも、悪事は長いこと続きません。
計画を謀っても手抜きだらけの結果、大失態を犯してしまいます。
- 異端児ウェス・アンダーソン作品群の出発点
- 本作は、強盗映画の佳作
- ラストまで目が放せないスプラスティックコメディ
本作は昔からあるドタバタコメディを土台に作り上げたコメディ風強盗映画です。
それではさっそく『アンソニーのハッピー・モーテル』をネタバレありでレビューしていきたいと思います。
目次
『アンソニーのハッピー・モーテル』作品情報
作品名 | アンソニーのハッピー・モーテル |
公開日 | 日本未公開 |
上映時間 | 94分 |
監督 | ウェス・アンダーソン |
脚本 | ウェス・アンダーソン オーウェン・ウィルソン |
出演者 | ルーク・ウィルソン オーウェン・ウィルソン ネッド・ダウド シェア・フォウラー ヘイリー・ミラー ロバート・マスグレーヴ アンドリュー・ウィルソン ブライアン・テネンバウム ジェニ・トゥーリイ テンプル・ナッシュ ジェームズ・カーン クマール・パラーナ |
『アンソニーのハッピー・モーテル』あらすじ
精神療養施設から”退院”したばかりのアンソニーは、彼が”脱走”してきたと信じ込む少々ネジの外れた相棒、ディグナンによる強盗計画に巻き込まれてしまう。
ディグナンの頼りは大物犯罪者のヘンリー氏だったが、彼らの犯罪が予定通りに進むはずも無く…。
出典:Yahoo!映画
【ネタバレ】『アンソニーのハッピー・モーテル』感想レビュー
本作『アンソニーのハッピー・モーテル』は、監督の原点的作品
鈴木友哉
アメリカ映画界きっての異端児であることを念頭に入れて読んで欲しいです。
アンダーソン監督の作品は、常人とはかけ離れた思考の独特な作風です。
どの映画でもおとぎ話を読んでいるような、飛び出す絵本を開いているような煌びやかな世界を創造してくれています。
アンダーソン監督の映画は他に類を見ない唯一無二の作品ばかりです。
また、美術や小道具と言った細部まで気にかけ、しっかり作り込まれ舞台装置を左右対称のシンメトリーにするなど、監督なりのこだわりも見受けられます。
余りにも凝りすぎていますが、この演出こそが彼の作品の魅力でもあり、観る点でもあります。
鈴木友哉
しかし、本作『アンソニーのハッピー・モーテル』は、その本領とも言える作品の細部へのこだわりが微塵も見えない、いつものアメリカのコメディ映画に過ぎない域に留まっている点に驚きを隠せないのです。
率直に言えば、ウェス・アンダーソンらしくない映画と言えば、伝わりやすいかと思います。
それでも見どころはいっぱいあって、主人公のアンソニーたちは素人並みの強盗で手際がとても悪く、不器用だからこそ逆に笑えます。
下手は下手なりに一生懸命に悪事を働く姿に、冷たい視線を送りながらも応援したくなってしまうのです。
手際の悪いアンソニーたちだからこそ、頑張っている場面に熱が入ります。
ハラハラさせられるはずの強盗シーンは、この作品だからこそ笑えると思います。
監督の脱力したコメディのセンスは、後々の作品にも十二分に発揮されています。
『アンソニーのハッピー・モーテル』はアンダーソン監督の処女作で、原点的作品と言っても過言ではありません。
鈴木友哉
本作『アンソニーのハッピー・モーテル』は、強盗映画の中でも良作に入ります
世の中には、強盗を題材にした数多くの作品が存在しています。
アクションからサスペンス、コメディに至るまで、その数は無数にあります。
そんな大量に製作された同じテーマの作品の中でも、本作『アンソニーのハッピー・モーテル』は比較的名作と言ってもいいでしょう。
鈴木友哉
古い映画なら『サイレント・パートナー』や『地下室のメロディ』、比較的新しい作品なら『トリプル9 裏切りのコード』や『バンク・ジョブ』と言った作品が記憶に新しいと思います。
また、少し変わり種としてコメディ映画『ジーサンズ はじめての強盗』や『ピザ・ボーイ 史上最凶のご注文』が、思い浮かびます。
少しコアだと『エディ・コイルの友人たち』や、そのオマージュ作品『ザ・タウン』が印象的です。
こうして強盗関係の作品をリストアップすると、たくさん製作されていることが分かります。
本作『アンソニーのハッピー・モーテル』も、他の作品同様に強盗がメインのストーリーとなっています。
鈴木友哉
ここに出てくるモーテルとは、アンソニー達強盗団が犯罪後身を潜める場所として“モーテル”を選んでいます。
そこから、関連付けて題名が付けられているのです。
また、本作『アンソニーのハッピー・モーテル』で印象的な場面といえば、強盗のシーンであることは言うまでもありません。
初めて本屋に押し入る場面は観ていてハラハラしますし、ラストのドタバタ喜劇のように強盗の計画が失敗する場面は面白い仕上がりになっています。
ラストまで目を放してはいけない痛快コメディ
本編のラストで、思わぬ結末を用意してくれているのが『アンソニーのハッピー・モーテル』最大の見どころ。
強盗を繰り返すうちに、感覚が麻痺していったアンソニーたち。
ほんの些細な気の緩みが、失敗に繋がってしまいます。
小さな綻びが徐々に徐々に外れて行き、最終的には仲間から逮捕者を出してしまうほどです。
何度か犯罪を成功させていると、予想外のところで仕返しが来るものです。
油断大敵という言葉があるように、注意を怠れば緻密に計算した計画にも穴が開いてしまいます。
鈴木友哉
この細かく計算されたコメディ部分の要素が作品の見どころであり、旨味でもあることを忘れてはいけません。
また、緻密に構成された脚本は実によく練られていて、デビュー作のシナリオとは思えないほど面白いです。
ストーリー上でどこに関心を寄せるかといえば、映画の冒頭と終盤対比して描かれている点です。
物語の始まりは主人公のアンソニーが精神病院を退院するところからです。
親友のディグナンが、病院を出ていく彼の脱走を手助けする設定が面白いです。
また、少しネタバレとなりますが、映画の終わりでは強盗で捕まったディグナンが刑務所に収監されます。
アンソニーが投獄させられる彼を金網越しに見届けています。
この場面は本作『アンソニーのハッピー・モーテル』の終盤です。
退院と収監の対比。
入る人物と出る人物の相互性が脚本を通して描かれているところにも注目すべきでしょう。観て欲しい一作です。
『アンソニーのハッピー・モーテル』まとめ
以上、ここまで映画『アンソニーのハッピー・モーテル』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- デビュー作と思えない作り込まれた名作
- 強盗映画を選ぶ時は、この作品を忘れてはならない
- 最初から最後まで目を放さずに見届けたい