『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』は、『glee/グリー』を手がけたライアン・マーフィー制作総指揮のホラー作品。
高校生が歌って踊るポップな作風からガラリと180度趣向を変えた、エミー賞受賞のホラー作品です。
オスカー俳優のジェシカ・ラングはもちろんのこと、エヴァン・ピーターズの怪演にも心奪われます。
ホラー作品でありながら、スタイリッシュで、エロティックな演出、人間の深層心理を突いた恐怖に訴えかけることから、根強いファンも多い『アメリカン・ホラー・ストーリー』。
キャストを変えずに、シーズンごとに、時代背景や設定を変える新しいスタイルを『アメリカン・ホラー・ストーリー』で発表しており、野心作を作りを続けるライアン・マーフィーの真骨頂ともいえます。
- 心機一転をはかる家族
- 「殺しの館」
- すべてを知る隣人コンスタンス
- 館の持つ魔力
- ヴィヴィアンの出産
目次
海外ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』あらすじ・感想【ネタバレなし】
ヴィクトリア様式の古い館
1920年代に建築されたヴィクトリア朝様式の館に、ボストンから越してきたばかりの精神科医でセラピストのベン(ディラン・マクダーモット)、妻のヴィヴィアン(コニー・ブリットン)と娘のヴァイオレット(タイッサ・ファーミガ)のハーモン一家。
以前のオーナーが無理心中をしたといういわくつきの館を拠点に、ロスで心機一転をはかろうとします。
そんな一家の館に勝手に入り込んできた隣人の娘のアディ(ジェイミー・ブルーワー)を追い、魔よけのセイジを引っ越し祝いに持ってきた風変りな隣人のコンスタンス(ジェシカ・ラング)。
家に遠慮なしに入り込んでくるコンスタンスやアディに戸惑いが隠せないヴィヴィアンは、気に留める様子のない2人に不信感を抱きます。
セラピストで診療を自宅の書斎で行うベンもまた、コンスタンスの息子のテイト(エヴァン・ピーターズ)を患者として受け入れることになり、ハーモン一家の新生活は始まったのでした。
死産をしたばかりのヴィヴィアンに不貞を働いたベン、夫婦仲は冷え切ったかに見えましたが、古い館での新しい生活でヴィヴィアンは双子を妊娠、一家は家族の再生に期待します。
その一方で、娘のヴァイオレットはベンの患者のテイトに案内された館の地下室で異質な存在を感じ、不安になるのでした。
かつて、館でメイドをしていたというモイラ(フランセス・コンロイ)を雇うハーモン一家。
妻のヴィヴィアンから見れば、モイラは初老の女性ですが、夫のベンには男を惑わせる若く美しいモイラ(アレクサンドラ・ブレッケンリッジ)にしか見えません。
モイラの存在は人を本質で見る女性のヴィヴィアンと、モイラを欲望の対象として見る男性のベンとでは、見え方が違うという作品のテーマに関係する存在です。
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惨劇の続く館の歴史
入居した館が、実は「殺しの館」と呼ばれ観光ツアーの殺人現場の名所の一つであることを知ったヴィヴィアン。
1920年代に館を建設した初代の住人の医師のチャールズ・モンゴメリー(マット・ロス)と妻のノーラ(リリー・レーブ)の無理心中をはじめに80年もの間、時代を変え、看護師や女優の卵、乱射犯、ゲイカップルの無理心中といった殺人や死が取り巻く惨劇の舞台となった場所だったのです。
そして不可解なことが起こる館に恐怖を感じたヴィヴィアンは、買ったばかりの家を売りに出すことを決めます。
そんなときに迎えたハロウィン。
この家で起こる不可解な出来事が、館で非業の死を遂げたゴーストたちの仕業だと、娘のヴァイオレットだけが気付くのでした。
ハロウィンの時にだけ、館の敷地から出られるゴーストたち。
これまで誰がゴーストで誰が生きているのかがあいまいだった登場人物が、ここにきて、館の中で殺害された死者たちだったことが明かされます。
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ヴァイオレットの前では、優しく穏やかなテイトを演じるエヴァン・ピーターズの怪演ぶりも見事です。
かつての館の住人コンスタンス
かつては、「殺人の館」と呼ばれる館の住人であったコンスタンス。
南部出身で上流階級の意識が強く、気位の高いコンスタンスは、女にだらしのない夫とメイドのモイラを射殺し、裏庭に夫とモイラの死体を埋めていたのです。
経済的な理由で館に住めなくなってしまった後も、これまでの生活を捨てられないコンスタンスは、館の当時の住人だったラリー(デニス・オヘア)を誘惑し、重い障害を持って生まれきた息子のボーをラリーに殺害させるという後ろ暗い過去をもった女性でした。
高校で乱射事件を起こし、警察に追いつめられ館で絶命した息子のテイトが、この館ではまるで生きているかのように現れることに気付いたコンスタンスは、息子たちに会える館に執着を持つようになったのでした。
母同様に館の秘密を知っていた娘のアディは、兄弟や他の死者たちへの好奇心から、ハーモン家が入居した後も敷地に無断侵入を続けていたのです。
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凶暴化するゴーストのヘイデン
ベンの子供を妊娠したと館を訪れたヘイデン(ケイト・マーラ)。
館のまわりをうろつくラリーはベンとヘイデンがもめているのを見て、ヘイデンをあっさり殺してしまいます。
浮気相手のヘイデンが来たことをヴィヴィアンに知られたくないベンは、迷うことなくヘイデンの死体を庭に作った東屋の下に埋めてしまうのでした。
館の敷地内で命を奪われてゴーストとなってしまったヘイデンは、館の持つ魔力で死者と生者の境界線のないことを逆手に凶暴化、妊娠中のヴィヴィアンに襲いかかります。
館で次々と起こる不可解な出来事に、限界を迎えたヴィヴィアンは、錯乱してしまい夫のベンを銃で撃ってしまうのでした。
死者と生きている者の境界線がない館
テイトと、館の恐ろしい秘密を知り、ショックを受け自殺をはかろうと薬を飲んで以来、館に住むゴーストたちが見えるようになってしまったヴァイオレット。
霊を信じないヴァイオレットでしたが、コンスタンスの知り合いの霊媒師のビリー・ディーン・ハワード(サラ・ポールソン)の「館自体に欲望があり、境界を打ち破って現世に移るために、ここで死んだ者をパイプ役として利用する邪悪なものが存在する」という話にヴァイオレットは、聞き入るのでした。
家族の失いたくないベンとヴィヴィアンに連れられ、仕方なしにロスへと引っ越してきたヴァイオレットは、館を忌み嫌う母と違い、館を気に入っており出ていくことを拒みます。
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ヴィヴィアンの出産
錯乱してベンを銃で撃ってしまったことで、精神病棟に隔離されてしまったヴィヴィアン。
夫婦仲はすっかり冷え切り、ヴァイオレットと2人でフロリダの妹夫婦の元に身を寄せることになったのですが、その前に「殺しの館」に立ち寄ります。
なんとなく眺めた後、館から去ろうとするヴィヴィアンでしたが、お腹に鋭い痛みが走ります。
そして、ヴィヴィアンが何よりも恐れていた恐怖の館での出産の時を迎えてしまうのでした。
これまでハーモン一家を取り巻くすべての不可解な出来事は、この館に住むゴーストたちの意思を汲むテイトの仕業。
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ヴィヴィアンの異常な苦しみように、館に住むゴーストのモンゴメリー医師や看護師たちが次々と現れ、館自体が協力する形となったヴィヴィアンの出産。
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最後までぐいぐい見せきる傑作ホラー
『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』は、生きている者と死んだ者との境界がない不思議な魔力を持つ古い館で展開されるホラーです。
新天地での心機一転をはかる家族が移り住んだ「殺しの館」。
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物語の序盤、中盤で、次々と驚愕の真実がもたらされ、どのエピソードにも隙がなく、ぐいぐいとエンディングまで引っ張られていきます。
衝撃のラストを迎えてなお、ズシっと心に怖さが残るホラー作品です。
ジェシカ・ラング演じるコンスタンスの圧倒的な存在感は、作品に品位と迫力を与えており、その年のジェシカの受賞歴が、それを物語っております。
さらに『アメリカン・ホラー・ストーリー』では、情け容赦なくバタバタと人が死んでいきます。
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しかし、『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』の持つストーリーの魔力は相当なもので、ひねりの利いた恐怖に魅せられ、最後まで一気に見たくなるのも事実です。
ホラーの苦手な方も、『アメリカン・ホラー・ストーリー』は、食わず嫌いをせずに、ライアン・マーフィーの恐怖の世界観を体験することをお勧めします。
海外ドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』あらすじ・感想まとめ
以上、ここまで『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』をレビューしてきました。
- 惨劇が続く呪われた館
- 館の秘密すべてを知るコンスタンス
- 死者との境界がない館の持つ魔力
- ヴァイオレットの秘密
- 「意思」を持つ館での出産
あらゆる方面で、じわじわと怖い『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズ。
続くシーズンは、「呪いの館」以上に楽しめる作品となっていることは、ここで予告しておきます。
ヒット・メーカーのライアン・マーフィー制作総指揮の作品にハズレなしです。
『アメリカン・ホラー・ストーリー:呪いの館』は、人間の深層心理に訴えかけ、恐怖を感じる濃厚な作品です。
ぜひご覧ください。