『悪夢のエレベーター』あらすじ・感想!これは誰の悪夢?二転三転するストーリー展開!【ネタバレなし】

映画『悪夢のエレベーター』あらすじ・感想!これは誰の悪夢?二転三転するストーリー展開!【ネタバレなし】

出典:Hulu

産気づいた妻のところへ急いで帰ろうとしていた男が目を覚ますとエレベーターに閉じ込められていました。

一緒に乗り合わせたのはマンションの住人と空き巣とゴスロリ少女。

でも何だかおかしい、何がおかしい?

ポイント
  • “違和感”が散りばめられた系の話が好きな人におすすめです
  • あとは内野聖陽斎藤工が好きな人にもおすすめ
  • テレビドラマ、舞台にも展開された木下半太の小説が原作

それではさっそく映画『悪夢のエレベーター』をレビューしたいと思います。

『悪夢のエレベーター』作品情報

作品名 悪夢のエレベーター
公開日 2009年10月10日
上映時間 105分
監督 堀部圭亮
脚本 鈴木謙一
堀部圭亮
出演者 内野聖陽
佐津川愛美
モト冬樹
斎藤工
大堀こういち
芦名星
本上まなみ
主題歌 タカチャ

『悪夢のエレベーター』あらすじと感想【ネタバレなし】


マンションのエレベーターに閉じ込められた4人

ある日の夕方、試合が終わった野球場で“消化試合ではない人生を送っている人間はどれだけいるだろう”と物思いにふける安井三郎(内野聖陽)は、たいして意味のない、ただ生きているだけの人生に意味を見いだせずにいました。

そして煙草を肺の奥まで吸い、もう暗くなってしまった夜空を見上げました。

遠くで誰かが叫んでいる声がして目を覚ますと、小川順(斎藤工)はマンションのエレベーターの中で気を失って倒れていました。

物凄い音を立てて頭を打っていたと教えてくれたのは、赤いシャツにストライプのスーツを着て関西弁を喋るヤクザ風の男・富永(内野聖陽)と、派手な黄緑色のジャージを着て黒縁眼鏡をかけた男です。

ヤクザ風の男は空き巣を生業としていると語り、ジャージの男・牧原静夫(モト冬樹)はジョギングに出かけようとしていたと言います。

そして、エレベーター内の隅で体育座りをして小さくなっているゴスロリ少女が1人。

順が乗ってすぐ、急降下したエレベーターは止まってそのまま動かなくなり非常用ボタンも作動せず、4人は閉じ込められている状況だといいます。

映画『悪夢のエレベーター』

(C)2009「悪夢のエレベーター」製作委員会

焦った順が外界と連絡を取ろうと携帯を取り出せば充電切れ。

富永はこんな日に限って携帯を家に忘れてきたと言い、もうずっと黙ったままでいる少女に声をかけ、携帯を貸してほしいと土下座して頼み込みます。

そこまで必死になるには理由があって、今まさに子供が生まれそうなのです。

しかし、少女も携帯を持っていませんでした。

使わないから捨てた、と言いました。

順に対する疑問が浮上

どうにかして助けを呼ぼうと順が大声を出して扉を叩き暴れていると、少女が「うるさいうるさい」と半狂乱でカッターを振り回し始めました。

順は妻・麻奈美(本上まなみ)との会話を思い出していました。

「出産に絶対に立ち会ってほしい、何があっても絶対に」と言う妻に対して、何があっても立ち会うと約束したのです。

エレベーターに閉じ込められたままでは、それは叶わなくなってしまいます。

ふと、順は腕時計をしていないことに気が付きました。

外した覚えはないのに、いつの間にかつけていませんでした。

不意に牧原が「産気づいた妻のところに行こうとしたというなら、それまでどこでどうしていたのか」という疑問を投げかけました。

妻のところに行く=このマンションの住人ではない、ということから浮かんだ疑問を解消すべく問い詰めれば、富永が「誰だって人に言えないことの一つや二つあるだろう」と言い出します。

映画『悪夢のエレベーター』

(C)2009「悪夢のエレベーター」製作委員会

すると唐突に少女が立ち上がり「自分は人に言えない事はない」と言いました。

友達がいるわけでもないマンションに夜中にいる理由は、このあたりで一番高いマンションから飛び降りるため

それは自分を蔑み虐げてきた奴らへの復讐だと、すべてを打ち明けました。

そして取り出したボイスレコーダーに録音されていたのは、中学生時代にいじめた人たちや担任の名前や思いの丈を記録したものでした。

しかし、人に言えない事、やましい事はないと言いきっていた少女ですが、他人の体に触れると心が読める能力を持っている牧原が触れると「火に包まれた家が見えた」と言われ動揺しました。

少女と牧原と富永の“うしろめたい事”

実は少女は中学の途中からずっと引きこもっていて、親とも顔を合わせないような生活をしていました。

ただ一人、姉だけはどんな時も味方でいてくれる例外的な存在でした。

親たちが精神科に入れようとしたときも反対してくれた姉。

そんな姉は上京し、少女のひきこもりは悪化しました。

ある日、メンタルフレンドという、青少年なんとかセンターから派遣されてきたカウンセリングのボランティアがやってきます。

週に二日ほど来ていたメンタルフレンドは、休みに戻ってくる姉に会うことが目的でした。

だから少女は、青少年なんとかセンターを燃やしたのでした。

少女の過去を暴いた牧原は、その能力のせいで子供の頃に化け物だと罵られ、いじめられていたと言います。

そして話の流れで富永に触れると、「凄く高い塀が見えた」と言いました。

富永は空き巣専門のプロで、マンションへも空き巣のためにやってきたのでした。

7階に住む会社の社長が今日から家族旅行だから“仕事”をしようと思っていたのです。

次々と3人がうしろめたい事を話していくなか、順だけが何もないと言い張ります。

なかなか白状しないことに痺れを切らした少女はカッターをかざし、富永はスパナを手にし、順ににじり寄って行きます。

順の“うしろめたい事”と、違和感

牧原は、実は順が意識を取り戻した時に“見えて”しまっていました。

「キャンドルの明かりでキラキラ輝く指輪を見た」という言葉に観念した順は自分の事を話し始めました。

さっきまでいたのは不倫相手の須藤陽子(芦名星)の部屋でした。指輪は誕生日にプレゼントしてあげたもの。

酔いつぶれた陽子をソファに寝かせて、さてどうしたものかと思っていたところに妻から電話があり、急いで乗ったエレベーターが停止して閉じ込められて、いま。というわけです。

閉じ込められたまま出られなかったら餓死してしまうかもしれないと少女が言い出した事がきっかけとなり遺書を残すことになります。

しかし紙もペンもない状況、どうしようかというところで少女がボイスレコーダーを取り出しました。

順は妻に向けて遺書を録音しますが、やっぱりつけていたはずの腕時計がないというところから“何かがおかしい”という違和感に襲われて口を噤みました。

これから7階に空き巣に入ろうとしていた人と、屋上から飛び降りようとした人がどうして1階に向かうエレベーターに乗っているのかという違和感。

そもそも屋上に向かおうとしていたという少女は順が乗ったときには“乗っていなかった”

3人の正体と関係性、そして順はどうなってしまうのか?

ぜひ、映像で楽しんでください!

『悪夢のエレベーター』の感想

2007年にテレビドラマ化され、2008年に舞台化されて2009年に映画化された今作品なわけですが。

vito

さまざまな展開からもわかるように「え?何なの?どうして?」みたいな展開が次から次へと起こって面白い作品です。

まず普通に安井三郎が主人公の話だと思って見始めたら、エレベーターの中の場面では冒頭のシーンが別作品かのように小川順が主人公っぽく話が進んでいって。

最初の安井は何だったんだろう?と思ったらエレベーター内のヤクザ風の男が安井だと気が付いて。

なんだか人生に落胆していたようだったし、裏稼業に手を出してしまったのかぁ…でもそれとこれとどういう繋がりがあるんだろうと思ったら実は…!とかいう何だそれは!なオチ。

二転三転って言葉がしっくりくるほど、いろんなことがひっくり返ってどっちが裏でどっちが表かよくわからないような感覚になります。

vito

ネタバレなし、としてしまったのでふんわりとしか書きませんけど、ラストは結局どうなったのか私にはわかりませんでした。

ただ、安井は消化試合の人生で良いことがなくても、自分なりに正義みたいなものを見つけて“正しく”あろうとしたのかなぁと思いました。

ちなみにこの記事をネタバレなしで書いたのはラストに驚愕して欲しいとかそういうわけではなくて、単純にあらすじで書いた先の展開を楽しんで欲しいからです。

vito

これは文章で読むより映像で見た方が絶対に面白い、という理由のもと。

『悪夢のエレベーター』を見るきっかけになったのはキャスト

何はなくとも内野聖陽

最近だとドラマ『きのう何食べた?』で矢吹賢二を演じて話題になりましたね。

vito

ちなみに私が一番好きな役はドラマ『ブラックペアン』の佐伯清剛です。

個人的に舞台の人って印象が強いせいか、お芝居の振れ幅が広いなぁと思ったりもします。いつかナマモノの舞台も見てみたい。

それはそれとして…。

好みの問題もあるだろうけど、もし安井の役が他の人だったらここまで面白いとは感じなかったんじゃないかなとも思います。

そして斎藤工。ドラマ『昼顔』で見かけて、おっイイ顔してる男がいるぞっ!と思ったのが私と工との出会いです。

vito

いや、出会ってはない。

それから、なかなかドラマでも映画でも見る機会がなくてバラエティで見てばかりだったので、よく考えてみたらまともにお芝居してるところを見たのはこの作品が2つ目かもしれない。

10年前の作品なのに顔も雰囲気も変わらなくて、年を取らないタイプの人なんだなぁと思ったりしました。

そして今作では産気づいた妻の元へと急ぐ男とかいう愛妻家っぽい役ですが、裏ではしっかり不倫していて、そういう遊び人っぽい感じとか色気とか本音がどこにあるのかわからない目の表情とか、ぴったりだなぁと思いました。

ラストはやっぱり芦名星

少女も牧原も差し置いて、順の愛人がランクインです。いや、ランキングではない。

vito

『検察側の罪人』の記事でも書いたけれど、私は芦名星が凄く好きなんです。顔とか声とか雰囲気とか、演じる役柄とかも含めて好きです。

なので、『悪夢のエレベーター』で一番好きな場面とセリフも芦名星絡みです。

誕生日をお祝いしてもらった直後、部屋に来てくれた順が妻の元へ帰って行ってしまったあとでマンションの屋上から飛び降りようとする場面。

あらすじには書いていない場面ですが、本筋とはそこまで掠らない程度に書きます。

安井が取り繕った前向きな言葉で慰めようとして、考え直して「明日にはきっと今日より辛い事がある。生きていたって辛い事の方がきっと多い」と切り出したところ。

辛い事があればあるほど、いつかきっと今日の事なんてどうでも良くなると言った安井に対して、「早く来ないかなぁ、辛い事、たくさんたくさん来ないかなぁ」って言いながらしくしく泣くんですけど。

vito

その場面の表情だとか声が凄く好きです。グッときます。

『悪夢のエレベーター』まとめ

映画『悪夢のエレベーター』

(C)2009「悪夢のエレベーター」製作委員会

以上、ここまで『悪夢のエレベーター』について紹介させていただきました。

要点まとめ
  • ちょっとおかしなミステリーが好きな人にはハマると思います
  • メインテーマは“嘘”だという作品ですが、安井の言葉から“人生とは”みたいな事を考える瞬間もあったりします
  • ただ個人的にはスカッとするラスト希望だったなぁ、という印象だったりして