あけましておめでとうございます。ねおと申します。
2022年はさっそく1月中に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、クリント・イーストウッド監督『クライ・マッチョ』、ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ』など続々と注目作が公開。映画好きにとっては忙しない年明けですが、新年最初の記事ということで2021年に日本で公開された作品の中で特に良かった5作品をランキング形式で振り返りたいと思います。
目次
第5位『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』
ある日突然耳が聞こえにくくなったドラマーの苦悩と葛藤を描いたアカデミー賞受賞作。2021年10月に劇場公開されましたが、2020年12月からAmazonプライムビデオで配信されています。厳密にはランキング対象外ですが、素晴らしい作品なので第5位で紹介することにしました。
恋人と組んだバンドのドラマーとして活動していたルーベン・ストーン(リズ・アーメッド)はある日耳が聞こえにくくなっていることに気づきます。医師の診断の結果、ほとんど聴力が残っていないことを知り自暴自棄になっていくルーベンは、聴覚障害者の自助グループのもとへと連れていかれます。
本作では圧巻の音響効果で聴力を失う喪失、絶望を疑似体験します。リズ・アーメッドの表現力も素晴らしく、かつてない没入感を感じました。これから初めて本作を観る場合は、音響効果を100%体感するためにイヤホンでの観賞を推奨します!
第4位『SAYONARA AMERICA』
1947年生まれの細野晴臣は、「はっぴいえんど」や「イエロー・マジック・オーケストラ」としての活動、松田聖子など歌謡界での楽曲提供、映画主題歌や劇伴、プロデュースやレーベル主宰など多方面にわたり活躍してきた音楽家。そのルーツは戦後直後にGHQによって日本に持ち込まれたアメリカのカルチャーでした。
曲間に「アメリカの古い音楽に感謝を伝えるために来ました」と語る場面がありましたが、まさに細野晴臣の集大成といえるアメリカン・ミュージックへのリスペクトに溢れたライブ映像は必見です。
第3位『すばらしき世界』
佐木隆三の小説「身分帳」を原案とし、13年ぶりに出所した元殺人犯が社会の一員として懸命に生きる姿を描いた作品。主演の役所広司をはじめ、仲野太賀、長澤まさみなどキャスト陣の素晴らしい演技力によって、リアルな感触と説得力で現代社会の問題点を突きつけられる傑作です。
身分帳とは、刑務所の受刑者の経歴を詳細に記した台帳。1990年刊行の小説「身分帳」は、佐木隆三のもとに元殺人犯から「これを小説にしてほしい」と身分帳の写しが送られてきたことがきっかけとなり誕生しました。小説の主人公が刑期を終えたのは1986年ですが、本作『すばらしき世界』は時代設定が現代に置き換えられています。
反社会的勢力は淘汰され、もっと小さなレベルでも一度社会のレールから外れた人には徹底的に冷酷な今の社会は果たして「すばらしき世界」なのか、タイトル自体が観る者への問いかけとなる作品です。
第2位『ラストナイト・イン・ソーホー』
ファッションデザイナーを夢見てロンドンの大学に入学したエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は学生寮に馴染めず、ソーホー地区で一人暮らしを始めます。新居のアパートで眠りにつくと、60年代のソーホーで歌手を夢見るサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に憑依してしまいます。現実と夢の中での体験がシンクロし、エロイーズは充実した日々を送っていましたが、ある日サンディの身に起きた恐ろしい出来事がエロイーズを追い詰めて…
キャストの魅力と、60年代ロンドンの音楽やファッションの魅力が相まって、とても「おしゃれ」な映像に仕上がっていますが、その華やかさの裏側にある闇を見事に表現した作品です。タイムリープなどファンタジーな要素がありますが、本作で描かれる恐怖は実社会にありふれた恐怖です。
エンターテインメントとしての美しさだけでなく、意義のあるメッセージ性も兼ね備えた秀作であり、とにかくたくさんの人に届いてほしい!と思いました。
第1位『サマーフィルムにのって』
2021年もっとも良かった映画です。主演は元乃木坂46の伊藤万理華、監督は本作で長編初挑戦となる松本壮史、次世代俳優や若手クリエイターたちで作り上げた青春映画です。
「座頭市」を敬愛する高校3年生のハダシ(伊藤万理華)は、キラキラ恋愛映画ばかり撮っている映画部で時代劇を撮れずに悩んでいました。ある日、彼女の前に理想の武士役にぴったりの凛太郎(金子大地)が現れ、文化祭でのゲリラ上映を目指して時代劇「武士の青春」の撮影を開始!
「映画が好き!」という気持ちだけでどこまでも突き進む高校生を描いた映画。まさに映画愛に溢れた瑞々しい傑作です。スマートフォンで手軽にアクセスできるショート動画が主流になりつつある今、本作『サマーフィルムにのって』から映画の未来へ送るメッセージが胸に刺さりました。
映画に没頭すること=経験したことがない景色、感情を追体験すること、だと私は思っています。愛おしい青春を追体験できる本作だけでなく、このランキング記事で挙げた他の作品も追体験が肝です。2021年は『サマーフィルムにのって』を筆頭に、「映画という追体験」の魅力を再発見する作品に多く出会うことができました。
まとめ
第5位『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』
→聴力を失っていくドラマーの喪失、絶望を疑似体験
第4位『SAYONARA AMERICA』
→新型コロナウイルスによって失われた音楽ライブの空間を感じ取れる細野晴臣ソロ初のアメリカ公演を収めたドキュメンタリー
第3位『すばらしき世界』
→元殺人犯が現代社会で生きる姿を通して社会のあり方に問題提起
第2位『ラストナイト・イン・ソーホー』
→美しいエンターテインメントと実社会にありふれた恐怖を両立したサスペンス・ホラー
第1位『サマーフィルムにのって』
→映画への愛に溢れた瑞々しい青春映画