「韓国のタブー」と言われる事件を描いた『1987、ある闘いの真実』は、韓国でその映画の公開から1ヶ月後で観客動員数が700万人を超えました。
軍事政権下の韓国で国を変えたのは普通の人々の「信念」でした。
信じられないでしょうが、たった30数年前の韓国での出来事です…。
- 韓国の歴史の暗部を暴き、国に立ち向かった実際の人々の熱意に感動。
- 名優たちによる真実を伝えるための熱演に涙が止まらない。
- 私たちは「非力」ではないということを思い知らされた。
この作品を観た後に、あなたは何を思いますか?
それではさっそく映画『1987、ある闘いの真実』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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『1987、ある闘いの真実』作品情報
作品名 | 1987、ある闘いの真実 |
公開日 | 2018年9月8日 |
上映時間 | 129分 |
監督 | チャン・ジュナン |
出演者 | キム・ユンソク ハ・ジョンウ ユ・ヘジン キム・テリ ソル・ギョング カン・ドンウォン パク・ヘスン イ・ヒジュン ヨ・ジング |
『1987、ある闘いの真実』主要キャスト
韓国民主化闘争の最中に、国に立ち向かったのは一般の人々でした。
登場人物たちはほとんどが実在の人物で、女子大生のヨニは架空の人物。看守のハン・ビョンヨンは複数の実在の人物を組み合わせたキャラクターです。
ハ・ジョンウ / 役:チェ検事
- 公安部長だがアルコール依存症の問題児でもある。
- 権力に屈せず自分の首をかけて問題に立ち向かう。
イ・ヒジュン / 役:ユン・サンサム
- 東亜日報の新聞記者。
- 取材中にどんなひどい目に遭おうとも真実を書くために奮闘する。
ウ・ヒョン / 役:カン本部長
- 治安総督
- 事件を隠蔽するためには部下を犠牲にしても構わない。
キム・ユンソク / 役:パク所長
- 北朝鮮生まれの脱北者。
- 富裕層の家庭に生まれたが家族を殺され、共産主義思想の撲滅には手段を選ばない。
パク・ヘスン / 役:チョ・ハンギョン
- 刑事で班長
- 大学生死亡事件の責任を取らされて投獄されてしまう。
ユ・ヘジン / 役:ハン・ビョンヨン
- 永登浦刑務所の看守でアン・ユの部下
- 自らの危険を顧みず、影で民主化運動に励んでいる。
- 民主化運動家たちに手紙を届ける伝書鳩役を秘密で行っている。
キム・テリ / 役:ヨニ
- デモに対してもあまり関心がなく、世の中は変わらないと思っている女子大生。
- 叔父のハン・ビョンヨンが逮捕され次第に心が変わっていく。
- 大学生のハニョルに恋するが…。
カン・ドンウォン / 役:イ・ハニョル
- 延世大学校の学生。
- 大学生死亡事件から目を背けることができず民主化運動に没頭していく。
- 同じ大学生のパク・ジョンチョルにシンパシーを感じている。
ヨ・ジング / 役:パク・ジョンチョル
- ソウルの大学生
- 察の取調中に拷問で死亡する
ソル・ギョング / 役:キム・ジョンナム
- カトリックの神父ハム・セウンのもとに身を隠す民主化運動家の主導者。
- 警察から指名手配されている。
チョ・インギ / 役:キム・スンフン
- カトリック正義具現全国司祭団の団長で民主化運動家
- 韓国ではキリスト教が1970~80年代の民主化運動の原動力となっていた。
【ネタバレ】『1987、ある闘いの真実』あらすじ・感想
『1987、ある闘いの真実』の簡単な概要
大学生死亡事件とは?
1987年、日本がバブルに浮かれている頃。
たった30数年前…韓国はまだチョン・ドファンによる軍事政権下にありました。
『タクシー運転手~約束は海を越えて~』で紹介した「光州事件」から7年後。
民主化を求める人々と国の対立は激しく、民主化運動はピークを迎えていました。
チョン・ドファン政権はアメリカの政権を背景に「北朝鮮の脅威」を言い立て、強圧な軍事独裁体制を敷いたのです。
そして言論の自由を封じ、批判の声をあげた市民を「北の手先」や「アカ」と呼び拘束しました。
その最中に、ある「不可解な事件」が起こります。
警察に捕まったソウルの大学生パク・ジョンチョルが警察の取調べ中に心臓発作を起こして亡くなったと言うのです。
しかし、現場に到着した医師の「部屋に浴槽があった」「遺体が濡れていた」などの証言から、大学生が取調べ中に刑事たちから拷問を受けていた可能性が浮かび上がりました。
検察やマスコミが真実を追求しようと奔走するなか、警察はこの事件を隠蔽しようと暗躍し始めます。
同時に民主化運動家、事件の真相を知った永登浦の看守たちや「光州事件」「大学生死亡事件」を知った大学生たちが、事件の真相解明のために行動を起こします。
その成果あって、カトリックの司祭団が大学生死亡事件の真犯人5人の名前を発表!
それが知れ渡ったことで韓国全土40万人の国民たちも立ち上がりました…!
マルコヤマモト
多くの犠牲を払って民主化を手に入れた韓国の闇の歴史が、今作『1987、ある闘いの真実』によって現代に暴かれることとなったのです。
極秘に行われていた映画製作
2018年に公開された『1987、ある闘いの真実』は、製作にも大変なエピソードがありました。
マルコヤマモト
そんな中、チャン・ジュナン監督は極秘裏に今作の製作を進めました。
2017年に逮捕されたパク・クネ元大統領の政権下でも文化業界を弾圧する姿勢があったようですが、監督は政権からどんな不利益を受けようとも本作『1987、ある闘いの真実』を作り上げると決意したそうです。
そして、今作で民主化運動の象徴的存在の大学生イ・ハニョルを演じた人気俳優カン・ドンウォンも自ら出演を希望し、イ・ハニョルを演じさせてほしいと監督に願い出たそうです。
他にキャスティングした俳優たちからもOKの返事が次々とあり、監督にとっては映画を作る大きな力となりました。
マルコヤマモト
真実を伝えるための俳優たちの熱演に涙
そんなわけで、思わぬ名優たちが揃って出演した『1987、ある闘いの真実』。
マルコヤマモト
物語が進むにつれ主人公がリレーのように変わっていく今作ですが、特に注目すべき俳優を改めてピックアップして紹介したいと思います!
パク所長(キム・ユンソク)
大学生死亡事件を隠蔽しようとする今作『1987、ある闘いの真実』の大悪役です。
本物の悪役なので観ていて逆に気持ちが良いくらいで、現実では無理でも映画だから「こんだけ本物の悪役なら許す!」というくらい納得させられてしまいました。
マルコヤマモト
ハン・ビョンヨン(ユ・ヘジン)
今作にも登場しています。顔面人情派のユ・ヘジン様!
マルコヤマモト
ありふれた普通の韓国のおじさんなのですが、最近その魅力に取り憑かれつつあります。
国側に付くはずの刑務所の看守でありながら、民主化運動家との密通がバレてしまい、逮捕され拷問を受けるシーンは酷過ぎで「もう止めてくれ」とテレビに向かって泣きました。
マルコヤマモト
ヨニ(キム・テリ)
デモには興味がない、今どきの女子大生ヨニを演じたキム・テリ。
マルコヤマモト
そんな可愛いヨニは架空のキャラクターですが、恋する相手イ・ハニョルがデモで負傷したことを知ると我慢できずに立ち上がります。
物語の最後は、立ち上がった群衆を目の前にしたヨニの後ろ姿で終わります。
ヨニの後ろ姿と、広場の群衆に思わず震えます。
マルコヤマモト
イ・ハニョル(カン・ドンウォン)
民主化運動で犠牲になった実在の人物イ・ハニョルを演じたカン・ドンウォン。
自分から出演を希望したほど、本作『1987、ある闘いの真実』に対する愛が伝わりました。
マルコヤマモト
普通の大学生の好青年が、なんでこのようなことで命を落とさなければいけないんだろう…と悲しくもなりました。
あと!チョイ役なのですが、すごく好きだったのがコ・チャンソク演じる「東亜日報の主任」?です。
こんな状況下のなか「真実を書け!」と部下の記者たちを鼓舞する姿や、催涙弾から部下たちを守ろうと「近づくな!」と言って自分が近づいて行って涙を流すコミカルな演技も見せてくれて、少しの出演ながらも印象的で好きなキャラクターになりました。
『1987、ある闘いの真実』を観終わった後に何を思うか?
市庁舎前に集まった群衆や、立ち上がった韓国の国民たちを見て「私たちは非力ではない」と感じました。
立ち上がったのは私たちと同じ普通の国民です。
この民主化運動があって韓国は1987年6月に民主化を手に入れました。
国を変えたのは、明らかに国民たちです。
マルコヤマモト
こんなに大勢の人が気持ちを同じくし、恐れず何かを変えようとすることは不可能ではないのですね。
今も度々起こっている韓国のデモを見ると「なんだか日本って平和だな~(皮肉)」と思ってしまうのです…。
なので『1987、ある闘いの真実』を観て、私も声を上げて立ち上がる側の人間になりたいと思いました。
特に、女子大生ヨニの存在は、事件を知らない私たちに置き換えることができます。
マルコヤマモト
映画の最後には実際の事件の写真や、イ・ハニョルたちの葬儀の映像が流れます。
『タクシー運転手~約束は海を越えて~』の時のように、こういった事件を忘れないということがとても大切です。
事件を知っている人はあの時のことを鮮明に思い出し、誰かに伝えるかもしれません。
そして、映画を観て新たに事件を知った人が考える機会にもなるでしょう。
マルコヤマモト
『1987、ある闘いの真実』まとめ
以上、ここまで『1987、ある闘いの真実』について、ネタバレありで感想を述べさせていただきました。
- 多くの犠牲の上に成り立つ歴史を知ることは、未来をつくることになると思った。
- どんな状況下でも真実を伝えることの大変さ、大切さを学んだ。
- 「民主化運動」を題材にする韓国映画はこれからも増えていくし、増えてほしいと願う。
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