もし日本に陪審員制度があったら。
そんな架空の設定から始まる、三谷幸喜脚本の密室コメディ映画です。
1991年に公開された『12人の優しい日本人』。
観終わったあとに「自分がこの12人の中にいたら、どう振る舞っていただろう」と、思わず考えてしまう映画でした。
・個性豊かな12人のキャラクター
・豊川悦司の静かな存在感
それでは『12人の優しい日本人』をネタバレありでレビューします。
目次
『12人の優しい日本人』作品情報
公開:1991年12月14日
監督:中原俊
脚本:三谷幸喜、東京サンシャインボーイズ
原作:三谷幸喜
出演:
上映時間:116分
「12人の優しい日本人」は、三谷幸喜さんによる戯曲で、映画「十二人の怒れる男」へのオマージュとして描かれた密室劇です。
三谷幸喜さんが主催する劇団「東京サンシャインボーイズ」のために書き下ろし、1990年に初演されており、1991年に映画化されました。
『12人の優しい日本人』キャスト
陪審員1号:塩見三省
陪審員2号:相島一之
陪審員3号:上田耕一
陪審員4号:二瓶鮫一
陪審員5号:中村まりえ
陪審員6号:大河内浩
陪審員7号:梶原善
陪審員8号:山下容莉枝
陪審員9号:村松克己
陪審員10号:林美智子
陪審員11号:豊川悦司
陪審員12号:加藤義博
【ネタバレ】『12人の優しい日本人』あらすじ
始まりは「全員無罪」から
夫を死に至らしめた罪に問われた、21歳の若い女性。
12人の陪審員が集められ、有罪か無罪かを決める話し合いが始まります。
事件の概要はこうです。
ヒモ状態の夫に愛想を尽かした被告人が、5歳の息子を連れて家を出ていた。
復縁を望む夫は夜道で被告人を待ち伏せし、2人がもみ合いになったところでトラックにはねられ死亡。
被告人は「突き飛ばしていない」と主張するものの、目撃者の主婦と運転手が食い違う証言をしていた。
最初の多数決で、なんと全員が「無罪」に手をあげます。
早くも話し合いは終わり、かと思いきや、陪審員2号(相島一之)が「きちんと話し合いましょう」と言い出します。
2号は自ら有罪に票を変え、孤軍奮闘で議論を引っ張り始めました。
有罪、無罪の理由

© アルゴピクチャーズ
「21と言えば青春真っ盛り」
「有罪にしてはかわいそうだ」
体育会系の熱血漢・陪審員7号(梶原善)は陪審員2号に訴えます。
有罪を主張する2号は、「それなら、なぜさっき無罪に手をあげたのか」と責められました。
2号は自分の間違いを謝罪し、有罪にした理由を熱く語り始める。
「彼女は不幸な境遇にあります」
「でも人を殺したら罪になるんですよ」
「彼女の外見に誤魔化されちゃダメなんですよ」
仕切り屋の陪審員12号(加藤義博)は「被告人の正当防衛が成立するかどうか」と主張します。しかし2号は聞く耳を持たず、目撃者の主婦の証言を持ち出します。
熱血漢・陪審員7号(梶原善)は「被害者みたいなクズ男が大嫌いだから無罪」という、まったく根拠にならない理由を堂々と口にします。
話し合いに参加していなかった陪審員11号(豊川悦司)が、無罪の理由を問われようやく口を開きました。
「有罪の場合でも執行猶予がつく。どうせ刑に服さないなら最初から無罪でいい」
11号の主張に2号以外は納得します。
いつまでたっても話し合いが平行線のため、無記名投票で多数決を取ることになりました。
ただし、条件は「有罪が増えていなければ、2号は妥協して無罪にすること」です。
議論が続く
投票の結果、なんと有罪が2票になっていました。
しかし、陪審員12名に対して票の合計は13となっており、2号のズルが発覚します。
みんなは呆れ果て、当初の条件通り会議を終わらせようとしたが、陪審員9号(村松克己)が突如有罪派に寝返りました。
議論は徐々に白熱し、ずっと消極的だった陪審員10号(林美智子)や陪審員4号(二瓶鮫一)も発言し始めます。
4号は「彼女は子供のためにピザの宅配を注文していた優しい母親だ」と被告人を弁護します。
しかし9号は「帰りが遅くなることを予測してピザを注文したのであり、これは計画殺人の証拠になる」と主張しました。
なかなかまとまらない意見に、11号は「傷害致死で有罪にすれば執行猶予になる」という建設的な意見を出し、他の人もそれがベストだと考えました。
ところが4号だけが無罪で譲らず、10号も4号に賛同します。
終盤、陪審員11号が動き出す
無罪派に寝返った11号は、事件の証言を整理していきます。
もし事故当時にクラクションが鳴っていたなら、目撃者の視線はそちらに向くはず。
しかし主婦が目撃したのは、すでに事故が起きた現場でした。
つまり、クラクションは鳴っていなかったのです。
目撃者の証言が崩れていき、議論は大きく動き始めました。
2号と9号以外は確信を持って無罪を主張します。
そして9号も納得して無罪に変えました。
ところが、最後まで2号は納得せず、自分の意見を押し通そうとします。
2号は自分を捨てた妻と被告人を混同し、どうしても許せない気持ちになっていたのです。
11号に「ここで裁かれているのは被告で、あなたの奥さんじゃない」と指摘され、言葉を失います。
長い議論の末、12人の陪審員は評決を出しました。
「全員一致で無罪」
そして12人の優しい日本人は議論に満足し、それぞれの日常に戻っていく。
【ネタバレ】『12人の優しい日本人』感想

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ほとんど1室だけの演出
最初から最後まで、ほとんど1つの会議室で話が展開されます。
裁判のシーンもない。
アクションシーンもない。
あるのは、12人の会話、それも議論ばかりです。
しぃぷ
ずっとそれぞれが主張し議論しているだけなんです。
しかし、まったく飽きません。
議論がどこへ転ぶかわからないスリルが、ずっと続きます。
「次はどっちに転ぶんだろう」と気になって、気づけばエンディングを迎えていました。 セットも衣装も最小限なのに、これだけ引き込まれる映画はなかなかないと思います。
個性豊かな12人。でもどこかにいる
人の意見を聞かずに、自分の意見を押し付けようとする2号。
子供っぽい性格で、いじけると手に負えない7号。
誰からも嫌われたくなくて、他人の言動に無闇に同調する8号。
常に上から目線の10号。
そんな個性豊かな陪審員12人が展開するストーリー。
しぃぷ
個性豊かだけれど、会議やグループワークなどで会ったことがあるようなキャラクターたち。
だからこそ、最後まで見入ってしまったのかもしれません。
豊川悦司の存在感
豊川悦司さん演じる11号は、序盤はタバコを吸っているだけで、議論には参加していませんでした。
しかし、終盤になると、別人のように動き始め、いつの間にか議論の中心になっていました。
声を荒げることもせず、証言の矛盾を冷静に整理し、他の陪審員させていきます。
しぃぷ
あまりにも対照的で、11号の存在感が喋っていないのに際立ちました。
そして、最後の場面で主張した根拠。
あまりの説得力に
「最初からずっと全部わかってたのではないか」
という考えがぐるぐると巡りました。
当時まだ29歳だった豊川悦司さんの、静かな迫力は必見です。
『12人の優しい日本人』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
・どこかで見たことがある12人の個性豊かなキャラクター
・豊川悦司の静かな存在感と、終盤の活躍
しぃぷ
難しいテーマを押しつけてこないのに、終わった後にじんわり残るものがある。
推理ものが好きな人や、三谷幸喜作品が好きな人には特におすすめの1本です。

