第40回日本アカデミー賞では6部門受賞、そのうち2部門では最優秀賞を獲得。
また、第41回報知映画賞、第31回高崎映画祭、第26回日本映画批評家大賞ではそれぞれ4冠、第38回ヨコハマ映画祭では3冠を達成するなど賞を総なめにした映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。
- 喉が渇いても涙が止まらなかった、全身の水分が全部抜けるほど泣かされ続ける。
- 観た人の評判が口コミとなってヒットした作品。作品の持つ本物の底力が凄い!
- 残された時間を一生懸命生きる姿に感動せずにいられない、心温まる家族の愛の物語。
- ちょっとサスペンス?最後、本当に熱い湯を沸かして逝った母の愛に衝撃と感動が一度にやってくる!
一言で申し上げると「号泣 of 号泣」する映画です。
それではさっそく映画『湯を沸かすほどの熱い愛』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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目次
『湯を沸かすほどの熱い愛』作品紹介
作品名 | 湯を沸かすほどの熱い愛 |
公開日 | 2016年10月29日 |
上映時間 | 125分 |
監督 | 中野量太 |
脚本 | 中野量太 |
出演者 | 宮沢りえ 杉咲花 伊東蒼 松坂桃李 オダギリジョー |
音楽 | 渡邊崇 |
主題歌 | きのこ帝国「愛のゆくえ」 |
【ネタバレ】『湯を沸かすほどの熱い愛』あらすじ・感想
アカデミー賞の最優秀主演女優賞(宮沢りえ)と最優秀助演女優賞(杉咲花)W受賞が納得の鳥肌演技!
命の終わりが近づいていく人間を心から考えて演じたという、それぞれの俳優さんの嘘のない表情が魅力の『湯を沸かすほどの熱い愛』。
制服を隠されるという悪質なイジメにあう安澄(杉咲花)が、クラスメイトの前で制服を返して欲しいと下着姿で訴えるシーン。
全身から気持ちがビシビシ伝わってきます!
いじめっ子たちも引くほどの決心!
安澄にグッと心を掴まれた瞬間でした。
本当にすごい女優さんだなと尊敬します。
そしてこの映画は、宮沢りえさんが命を削って演じた名演が光ります。
「毎シーン毎シーン身を削るように演じ、大事に大事に撮った宝物」
ストーリーが進んでいくにつれ…本当に死んでしまうんじゃないかというくらいにリアルな演技にハラハラします。
映画ということを忘れ、本当に心配して、話が進んでいくのが怖かったほどです。
さらに、見ごたえは出演者だけではないのです。
脚本は本作『湯を沸かすほどの熱い愛』が商業用長編デビュー作という中野量太さん。
主人公が病にも関わらず、スピーディーに話が進んで視聴者をまったく休めません。
心を持っていかれて、ラスト突き放されます。
3ヶ月という余命宣告を受けた幸野双葉(宮沢りえ)
「少しの延命のために自分の生きる意味を見失うのは絶対イヤ。私にはどうしてもやらなきゃいけないことがまだある。」
ステージ4の膵臓がんが原発巣、生きても3ヶ月という余命宣告…。
脳にまで転移し、抗がん剤も使えない状態の幸野双葉(宮沢りえ)が言った言葉です。
重い内容のはずなのに…双葉という女性の残された人生の生き方、迷いが全然なく清々しさすら感じて驚きます。
双葉の家族は、娘・安澄(杉咲花)と湯気のように蒸発した夫・一浩(オダギリジョー)。
家業は銭湯「幸の湯」。
まず双葉は、1時間だけパチンコに行くと言って失踪した一浩を見つけだし、9歳の隠し子・鮎子(伊東蒼)とともに家に連れ帰ります。
過去、ひと晩の浮気でできた鮎子の存在が発覚し、鮎子の母に泣きつかれ一緒に暮らしていたら、鮎子の母親が出て行ってしまい帰れなくなったというしょうもなさ。
「大丈夫か…この夫」と不安しか感じない。
もちろん、双葉がどうしようもない一浩を呼んで、罵倒すると思いきや…。
「死んだら全部許すから、後のことはよろしくお願いします。」
頭を下げてたった一言、お願いするのです。
もう夫を罵倒する時間も惜しいほど、時間がない。
彼女は生きる意味を見失わずに、まっすぐに進んでいました。
あまりの迫力に、まるで「あなたはちゃんと生きている?」と問いかけられているよう…。
こうして、双葉の願いである家業「幸の湯」は無事に再開しました。
起きた過去にこだわらない双葉、だって彼女にはまだ限られた未来でやらなくてはいけないことがあるのですから。
鮎子(伊東蒼)の言葉に声を出して泣いてしまった
いきなり知らない家に連れてこられた鮎子は、母のことが忘れられません。
母が迎えに来てくれると約束していた誕生日の日、鮎子はひとり、前住んでいたアパートの扉の前で母を1日中待ちますが、母は来ず…本当に捨てられたことを思い知ります。
次の日の朝、朝ごはんの食卓で絞り出すような声で切り出します。
「これからは…もっともっと一生懸命働きますので、どうか…できればで良いのですが…この家にいたいです。でも…でもまだ…ママのこと。好きでいてもいいですか?」
ポロッポロ大粒の涙を流して、9歳の女の子がこう言うのです。
悲しくて、いじらしくて、大人が不甲斐なくて…。
双葉は「バカ、当たり前でしょう」と言って鮎子の涙をそっと拭います。
今思うと双葉は鮎子に自分を重ねていたのだと分かります。
まだ、この家族には衝撃の事実が隠されているのです。
本当の母娘じゃない、仰天の事実
双葉は、安澄と鮎子と車での旅行を計画。
道中、ヒッチハイクの青年・向井拓海(松坂桃李)に出会い、双葉は彼の「人生に腐り行くあての無いヒッチハイク」に目的を与えます。
日本の最北端まで行ったら双葉のところへ報告にくることを約束し、別れます。
早く再会に来てと言う双葉。
抱きしめたくなる切なさです。
拓海は後にちゃんと会いにやってきます。
そして旅行で伝えたのは、なんと双葉と安澄は実は血がつながっていないという事実。
旅の行先にいたのは聴覚障害がある安澄の本当の母親・酒巻君江(篠原ゆき子)。
双葉は、本当の母・君江と話してきなさいと安澄をいったん置いて去ります…。
安澄はすぐに君江と会話できました…手話で。
双葉が「いつかきっと役に立つから勉強しておきなさい」と手話を習わせていたのです。
いつか再会の日、お母さんと話せるように…そう考えて手話を。
母娘の再会を一番望んでいるのは、双葉だったのです。
双葉は力尽き、とうとう倒れ…緩和ケアセンター。最後の場所へ。
実の母親からのひどすぎる仕打ち
実は、双葉も自分の母に「必ず迎えに来るね」と捨てられていた過去がありました。
お母さんの居場所が分かり、一目会いたくて…細くなった体を引きずりながら会いにいきます。
ところが、母からは「そんな娘(双葉)はいない」と冷たく追い返されます。
世田谷の大きな家の中で、母はもうひとりの娘と楽しそうに孫をあやしている様子が見えました。
双葉と安澄と鮎子…みんな母親に捨てられていたという共通点。
双葉の行動はきっと「本当は自分が誰かにしてほしかったこと」ですよね。
鮎子のときも、安澄のときも、双葉は二重に辛かったに違いないのです。
会うことを拒否されても「お母さん…」とか細く求める声、今思い出しても涙が止まらないのです。
火曜サスペンスばりの結末が圧巻
双葉が亡くなり、銭湯「幸の湯」でお葬式をします。
みんなとお別れをし、霊柩車が出発。
しかし、なぜか霊柩車は河川敷で停車…みんなでお昼を食べたりしてゆっくりします。
この時、なぜかまだ銭湯の湯船の所に双葉の亡骸があります。
そのあと、みんなでニコニコお風呂に浸かっています。
お湯が沸いてボコボコ…沸かしている薪と大きな炎が見えます。
煙突からモクモク、双葉の好きな「赤」の煙。
ここで終わり。
もしかして、双葉(の亡骸)で沸かした?
そう想像せざるを得ない終幕。
『湯を沸かすほどの熱い愛』の指し示す本当の意味をラストのラストで知ります。
さっぱりしたラストに拍子抜けしましたが、尾を引かない幕引きが潔く気持ちがイイ!
深いテーマなのに、こんなに気持ちの良かったラストは初めてです。
血の繋がりだけが家族じゃない…どんな境遇でもご飯を一緒に美味しく食べたり、喧嘩したり、抱き合ってハグしたりすれば、心が繋がって家族になれるんだ、と教えてくれた素晴らしい映画でした。
『湯を沸かすほどの熱い愛』まとめ
2019年2月13日22本目
湯を沸かすほどの熱い愛今更で本当に失礼だが、今年鑑賞した映画でダントツの今年ベスト💯
久々に知人全員に激推ししまくってしまった😓
宮沢りえの素晴らしさは当たり前として。私は杉咲花にやられた😭
そりゃアカデミー賞も取るよね笑
本当にこの映画を観れて良かったです☺️ pic.twitter.com/OF4aE3tLCM— 次郎😋 (@Wg0K3q9tMynwMoz) 2019年3月6日
こちらのツイートにもある通り、日本の賞を総なめした理由がわかるほどに良い映画なのです。
以上、『湯を沸かすほどの熱い愛』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- まるでドキュメンタリーを見ているような気持ちにさせるリアルな演技。
- 家族がいるのに、この家族が羨ましいと思うほど素敵な絆。
- 母と思っていた人が本当の母親ではなかったからこそ感じる深い愛に嗚咽が止まらない。
- 大きな秘密にはでっかい愛が隠されていました。
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