映画『ミナリ』あらすじ・ネタバレ感想!アカデミー賞席巻、ほぼ全編韓国語の新たな家族映画の傑作!

『ミナリ』

出典:『ミナリ』公式ページ

世界各国の映画賞を席巻し、2021年開催の第93回アカデミー賞において作品賞を含む6部門にノミネートされている『ミナリ』。

1980年代後半のアメリカを舞台に、農業で成功することを夢見てアメリカへやってきた韓国系移民の家族を待ち受ける、思わぬ運命を描きます。

海外ドラマ『ウォーキング・デッド』の人気キャラクター・グレンを演じ、『バーニング 劇場版』にも出演したスティーヴン・ユァンが主演を務め、アジア系アメリカ人として初めてアカデミー賞主演男優賞にノミネート。

さらに破天荒な祖母役を演じたユン・ヨジョンも、韓国人として初めてアカデミー助演女優賞にノミネートされるなど初めてづくしで、非常に注目を浴びている作品です。

ポイント
  • 第93回アカデミー賞において作品賞・監督賞含む6部門にノミネート
  • オスカー常連となりつつあるA24とプランBがタッグを組んだ、韓国系移民を描くドラマ映画
  • 『パラサイト 半地下の家族』に続く新たな家族映画のマスターピース

マルコヤマモト

それでは、アカデミー賞の有力候補と言われる『ミナリ』をネタバレありでレビューします。

映画『ミナリ』作品情報

『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

作品名 ミナリ
公開日 2021年3月19日
上映時間 115分
監督 リー・アイザック・チョン
脚本 リー・アイザック・チョン
出演者 スティーヴン・ユァン
ハン・イェリ
アラン・キム
ノエル・ケイト・チョー
ユン・ヨジョン
ウィル・パットン
スコット・ヘイズ
ダリル・コックス
エスター・ムーン
音楽 エミール・モッセリ

【ネタバレ】映画『ミナリ』あらすじ


夢を抱いてアメリカにやってきた韓国系移民の一家

農業で成功することを夢見てアメリカにやってきたジェイコブ(スティーヴン・ユァン)一家。

農場を経営できるくらいの広大な土地を求めて、一家はカリフォルニアからアーカンソー州の片田舎へ引っ越してきました。

しかし一家が暮らすのは、野原に放置されたタイヤ付きのトレーラーハウス。

『ミナリ』

出典:IMDB

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まるでドラマ『北の国から』のようなオープニングです。

ジェイコブと妻のモニカ(ハン・イェリ)は、ひよこの孵卵場でオスメスの選別をする仕事でとりあえずの稼ぎを凌いでいました。

アメリカンドリームを成し遂げる希望しか持っていないジェイコブに対して「こんなところで暮らせない!」と、不安で怒り心頭のモニカは毎日喧嘩ばかり。

娘のアン(ネイル・ケイト・チョー)と息子のデビッド(アラン・キム)は、紙飛行機に「Don’t Fight」(喧嘩はしないで)と書いて2人の方へ飛ばそうとしますが、あまりの迫力に部屋に戻っていきました。

農地を耕すために、アメリカ式の木の棒を使ったダウジングで水脈を当てる事になるジェイコブ。

しかし相当なお金がかかりすぎる上に信用できないとそれを断り、「韓国人は頭を使うんだ!」と言って、なんとか自力で地下水脈を掘り当てます。

『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

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ジェイコブはアメリカ式のものや、自分が信じているもの以外のことをあまり信じたくないようです。それと、自力で地下水脈を当てれば水道代は払わなくて良いわけですから、断然そのほうが良いに決まっているのですが…。

そして、大変信心深いポール(ウィル・パットン)という男からトラクターを買い取り、ともに草原を耕し始めました。

韓国からやってきた破天荒なハルモニ(祖母)

まもなくして、韓国で1人暮らしていたモニカの母・スンジャ(ユン・ヨジョン)が同居を開始。

乾燥唐辛子や煮干しなど、たくさんの韓国食材を持ってきてくれたスンジャにモニカは思わず涙しました。

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今でこそアジア系のスーパーも増えていますが、異国で本当に美味しいアジア食材って手に入れにくいんですよね…。母のありがたさを感じます…!
『ミナリ』

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祖母であるスンジャと初めて会うデビッドは緊張してどう接していいかわからず、同室で寝るのを嫌がります。

子供たちと花札で遊んでは「ザマアミロ!」「この野郎!」など口汚い言葉を発したり、Tシャツに短パン姿で過ごすスンジャは、デビッドからして「おばあちゃんらしくないおばあちゃん」でした。

しかしそんなこんなで、最初はスンジャが苦手だったデビッドも次第に心を開いてゆき、2人の間には奇妙な絆ができ始めます。

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デビッドとスンジャが一緒にプロレスを観たり、デビッドが悪戯で自分のオシッコをスンジャに飲ませたり、かなりほのぼのとしたおばあちゃんと孫のシーンに癒されること間違いなしです。
『ミナリ』

出典:IMDB

ある日スンジャと子供たちが散歩に出かけると、農場の奥の方に湿地帯を見つけます。

スンジャはジェイコブに「ミナリ(セリ)」を植えてはどうかと提案しますが、ジェイコブは軽い気持ちで受け流していました。

しかしスンジャは「私が勝手に育てるからいい」と言って、自分でその湿地に「ミナリ」の苗を植えたのです。

友達のいないモニカを不憫に思ったジェイコブは、日曜日に教会へ出かけます。

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回ってきた献金から100ドル札をこっそりせしめるなど、ここでもスンジャが破天荒ぶりを発揮。

子供たちは教会で友達を見つけますが、まだまだ英語が苦手なモニカは逆に萎縮してしまい、その結果日曜日も仕事へ行くことを決意します。

『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

教会からの帰り道、ジェイコブ一家は十字架を背負いながら歩くポールの姿を見かけます。

車で送って行こうかと尋ねるジェイコブに対して、ポールは「これが私の教会だから」と断り、そのまま歩き続けました。

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どんな形であれ神様を信じ続けるポールは、異国にやってきて「誰も信じられない」ジェイコブと対になるキャラクターなのかなと思いました。やりすぎる感があるところが、ジェイコブには特に異様に映ったことでしょう。
『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

ある時、ジェイコブは農場の土が乾いていることに気がつきます。

どうやら干ばつが起きていたようで、せっかく引いた地下水が枯れていました。

ジェイコブは農場を続けるために、不本意ながらも水道水にホースを繋いで凌ぐことにします。

家族を襲う数々の試練

水が復活したおかげで、ナスや唐辛子などの野菜は美しく実ります。

しかし、いざ出荷というところで取引先に断られてしまうという事態が発生。

ジェイコブ一家にさらなる試練が続きます。

なんと水道水を農場に使ってしまったため、家の水が全く出なくなってしまったのです。

子供たちは教会で出会った友達の家で過ごすことになり、デビッドはそこで前の農場主が経営に失敗して自殺したことを知ります。

『ミナリ』

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ある日デビッドとスンジャが「ミナリ」を植えた湿地に向かうと、そこにはしっかりと根を張った「ミナリ」が青々と茂っていました。

「ミナリ」はどんな料理に入れても美味しいし、薬にもなるというスンジャの言葉をきいたデビッドは思わず、「ミナリ、ミナリ、ワンダフルミナリ〜」と歌を歌い始めました。

『ミナリ』

出典:IMDB

その夜、心臓病を患っているデビッドは、夜同室で寝ているスンジャに素直に死が怖いことを打ち明けます。

するとスンジャはデビッドを抱き寄せ「ミナリ」の歌を歌い、デビッドはスンジャの胸の中で眠りにつきました。

次の日の朝、デビッドはスンジャの異変に気づきます。

デビッドとアンは教会からモニカに連絡し、モニカがスンジャを病院に連れていきました。

教会からの帰り道、子供たちはバスの中から十字架を担ぐポールの姿を見かけますが、他の子供たちがポールを馬鹿にしているのを見て思わず知らんふりをしてしまいました。

どうやらスンジャは夜の間に脳卒中を発症していたらしく、体の半分が麻痺し始めていました。

モニカは信心深いポールを家に呼んで悪魔祓いをしてもらいますが、ジェイコブにはポールの行動がますます理解できず、再び夫婦関係に溝ができてしまいます。

その夜、デビッドは寝たきりのスンジャに向かって「おばあちゃんなんかアメリカに来なければよかったのに…」とつぶやきました。

『ミナリ』の結末

デビッドの心臓の診察のために、一家は都市部へ向かうことに。

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しかし、この時スンジャを一人で留守番させたことによって、とんでもない事件が起こってしまいます。

韓国の食料品を扱う店のオーナーと会う約束を取り付けていたジェイコブは、採れた野菜からさらに厳選したものを箱に詰めました。

デビッドの診察が終わり医師の診断を待つ間、ジェイコブとモニカの間には重苦しい雰囲気が流れていました。

子供たちに父親が成功する姿を見せたいジェイコブは、思わずモニカを突き放してしまうような言葉を発してしまったのです。

我慢の限界を迎えていたモニカは、必死に怒りを表に出さないように耐えていました。

『ミナリ』

出典:IMDB

しかし、ジェイコブの診察の結果はなんと良好。

心臓に空いた穴が徐々に小さくなっており、手術をせずに経過を待つことになったのです。

医師は「水が良いからだ。今の生活を続けなさい。」と言いますが、ジェイコブとモニカは苦笑いして顔を見合わせました。

帰り道に寄った食料品店で、ジェイコブは農作物を納品する契約を取り付け、再び家族関係が好転しようとした矢先、1人で留守番していたスンジャが誤って農作物の倉庫を燃やしてしまう事態が発生。

焦げ臭い匂いに気づいたジェイコブとモニカはその光景を見て驚き、燃え盛る倉庫から必死に野菜を取り出します。

倉庫から離れて泣きながらどこか行こうとするスンジャを、デビッドが走って引き止めます。

「ハルモニ!ハルモニ!僕たちの家はあっちだよ!」

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ハルモニとは韓国語で「おばあちゃん」の意味です。病気のため走っちゃいけないと言われていたデビッドが、スンジャのために必死に走るシーンは涙が止まりませんでした…。「おばあちゃんなんて来なければよかったのに」と言う言葉は、きっとデビッドとスンジャの心に残っていたのでしょう。

倉庫の火事は鎮火し、疲れ果てた家族はリビングの床で雑魚寝をしていました。

スンジャは一筋の涙を流しながらその姿を見ていました。

それから少し後のこと。

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Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

ジェイコブは農場を再開することを決意し、自分の勘ではなくアメリカ式の木の棒を使ったダウジングで水脈を探していました。

あれから時も経ち、スンジャが湿地に植えた「ミナリ」も以前よりたくさん茂っていました。

デビッドとともに湿地にやってきたジェイコブは「おばあちゃんのお手柄だ…。美味しそう、美味しそう。」と言うと、「ミナリ」を収穫し始めました。

ここで物語は終わります。

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その後スンジャが亡くなったのか、まだ家族とともに暮らしているのかは描かれていませんが、おそらく亡くなったのでは…と思います。エンドロールの最後には「全てのおばあちゃんへ」という一言が添えられており、胸がキュンと締め付けられました。

【ネタバレ】映画『ミナリ』感想

良かった点

テレビドラマ『ウォーキング・デッド』のグレン役を演じ、一躍有名になったスティーヴン・ユァンが主演を務めた『ミナリ』。

『ウォーキング・デッド』で初登場した時の少年の姿から一変、アジア系アメリカ人初のアカデミー主演男優賞にノミネートされるほど成長した姿と、英語と韓国語を操る見事な演技を見せてくれました。

『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

また、舞台がアメリカであってもほぼ全編韓国語の作品がアカデミー賞の外国語映画賞ではなく作品賞にノミネートされることも驚きで、本選でどう評価されるかに注目したいと思います。

アカデミー賞ノミネートの点で言えば、破天荒なハルモニ役を演じたユン・ヨジョンの演技は必見。

戦争時代を生き抜いた力強い破天荒なハルモニと、後半の病に倒れたハルモニの演技の落差がすごく、本当に悲しくなりました。

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個人的にはユン・ヨジョンが今作の主演でもいいと思ったほど。
『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

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最後は何も語らず、表情だけで見せる演技が見事。元気な頃のハルモニを見て「自分も強くて賢い、おばあちゃんらしくないおばあちゃんになりたい」と、思わず憧れてしまうほどでした。

また、タイトルにもなっている『ミナリ』(=韓国語でセリ)にも注目ポイント。

タイトルの「ミナリ」は、韓国語で香味野菜のセリ(芹)。たくましく地に根を張り、2度目の旬が最もおいしいことから、子供世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味が込められている。

出典:『ミナリ』公式ページ

『ミナリ』に込められた意味のように、私たちの世代が子供や孫に何を残せるか、また親や祖父母の世代から私たちが何を受け継いだかということを考えると、祖父母世代、両親世代、子供のいる家庭の親は、今作からより多くのことを感じ取れると思います。

また「ミナリ」の力強さは、移民としてアメリカにやってきた外国人たちが、その土地に根を張って生きる力強さにも共通していると感じました。

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ハルモニがどうやって食べても美味しいと言った「ミナリ」が、物語にどう関係するかも注目してご覧ください。

残念だった点

『ムーンライト』や『レディ・バート』などでアカデミー賞常連となりつつあるA24と、ブラッド・ピット率いるPLAN Bが惚れ込んだ脚本ということや、第93回アカデミー賞に6部門ノミネートされていることで注目されている『ミナリ』。

しかしながら期待を大きくしすぎると、意外と劇中で何も起こらないことにがっかりするかもしれません。

ドラマ的には緩急があまりなく最後まで比較的淡々と家族に起こった出来事を描き出していますが、それがじんわり温かい気持ちに変わっていくのが不思議。

まるで、一家の生活をのぞいているような感覚に陥ります。

『ミナリ』

出典:IMDB

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優しいエンディングテーマ「RAIN SONG」とエンドロールで流れる自然の虫たちの声に癒されて、いつの間にか心が満たされていました。

日本映画に例えると、小津安二郎や山田洋次、是枝裕和作品を見ている感覚に近いものを感じます。

『ミナリ』は決して、1人の男がアメリカンドリームを成し遂げるサクセスストーリーではありません。

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アカデミー賞のノミネート作品だからと言って期待を膨らませすぎず、まずは『ミナリ』という作品を直感で感じ取って欲しいと思います。

SNSでのみんなの感想・評判

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そうそう!デビッド役を演じたアラン・キム君が可愛すぎ…思わず自分の子供に重ね合わせて抱きしめたくなるほどかわいかったです。

特にハルモニとデビッドのやり取りは映画の中でもホッコリするポイントで、2人の場面では劇場でも「ふふふ」という優しい笑いが溢れていました。

『ミナリ』

Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

そしてまさかの新海誠監督も絶賛!

『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督は、第93回アカデミー賞の監督賞にノミネートされているだけでなく、なんとハリウッド版『君の名は。』の監督も務めるということで、新海監督とは意外な接点があったわけですね。

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普段は淡々とした作品が苦手な私でも最後は「いい作品を見たな」という気分になれたので、気になる方は早めに劇場でご覧ください。

映画『ミナリ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

マルコヤマモト

映画『ミナリ』について、ネタバレありでご紹介しました。 
要点まとめ
  • 祖母役を演じたユン・ヨジョンの演技が圧倒的
  • とある家族の普遍的な毎日を垣間見ているような感覚になる
  • 祖父母世代、親世代、子供がいる親に特に見てほしい作品

泥だらけになって何度失敗しても立ち上がり、私たちの毎日は続いていく。

映画に登場する一家を見て、そんなことを思いました。

心を大きく揺さぶるような劇的なドラマはなくても、『ミナリ』は心がじんわり温まる作品でした。

また、その内容から若者世代よりも特に祖父母世代・親世代・子供がいる親は、今作からより多くのことを感じ取れると思い、特にその世代の人たちに多く鑑賞して欲しいです。

マルコヤマモト

とにかく祖母役を演じたユン・ヨジョンの演技が素晴らしすぎたので、ぜひアカデミー助演女優賞を受賞してほしいですし、彼女の演技は一見の価値あり!

果たして映画『ミナリ』は、アカデミー賞にどのような影響を与えるのか、2021年4月26日の第93回アカデミー賞授賞式を楽しみに待ちましょう!

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